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札幌岳(2010/02/21)

2週連続の青空


 再び天気に恵まれた週末。
 当初の予定では今シーズン初の雪中キャンプに出かけるつもりだったのが、諸般の事情により中止になってしまったため、この日は山スキーに出かけることに予定を変更。
札幌岳登山口 キャンプが中止になった口惜しさも、朝から広がる青空が忘れさせてくれる。
 先週の轍を踏まないように、6時40分には家を出発。
 向かった先は、今回初めてチャレンジする札幌岳である。
 定山渓を過ぎて豊平峡ダムへ続く道へと入り、通行止めゲートの前が登山口となっている。
 今日は8時前に着くことができたので、さすがに他の登山者の姿は見当たらない。
 車の温度計はマイナス15度、キーンと冷えた空気に身を包まれる。
 何時もと同じ装備で登り始めたけれど、直ぐに手の指先が痛くなってくる。
 そのうちに温まってくるだろうと気にしないで歩いていたけれど、更に痛さが増してきたので、堪らずにザックの中からオーバーグローブを取り出して二重重ねにした。
 指先の血行を良くしようと、手を叩いたり、指を曲げ延ばしたりしながら歩き続ける。

奥山の風景 昨日のものと思われるトレースが、薄っすらと積もった雪の中に残っていた。
 その様子から見ても、あまり多くの人は山に入っていないようである。
 そのトレースに従って、冷水沢沿いに登り続ける。
 雪を被ったトドマツの巨木が天を突くように聳え立っている。
 今シーズンに登った山は何れも、いわゆる里山と呼ばれるような山ばかりである。
 そんな山では、登り始めて暫くの間は、つまらない雑木林の中を歩かされることになる。
 札幌岳は、この区分で言えば奥山に位置づけられる山になるだろう。
 奥山を登る時は、最初からこんな風景に出合えるので登るのがとても楽しい。
 ただ、気に入った風景が次々に現れるので、その度にカメラを取り出して撮影することになり、なかなか先に進めないのが困りものである。


トドマツの森     巨大なトドマツ
トドマツの森   巨大なトドマツ

木の枝から雪が落ちる 時々、木の枝に積もっていた雪が、音も無く、真っ白な滝のようになって流れ落ちる光景に出くわす。
 運悪くその下にいたりしたら、全身雪まみれになってしまいそうである。
 その程度なら笑って済ませれるけれど、大きな雪の塊もそこら中に転がっていて、それらも同じように木の上から落ちてきたもののようだ。
 ストックで突いてみると、かなりの硬さである。それが頭の上に落ちてくることを想像すると、ぞっとしてしまう。真面目にヘルメットが欲しくなってきた。

 6年前の台風18号で倒れたと言われる倒木も多い。
 大きな雪山の中には根返りで倒れた樹木の根株が隠れているのだろう。
 それらを避けながら登っていく。
 アップダウンも多いので、下山時にここを滑り降りるのに苦労しそうだ。
 太陽の陽射しが沢の中にまで射し込んで来た。
 その程度では冷え込んだ今朝の空気は温まらないけれど、指先の痛みはようやく和らいできた。

 途中でスノーシューの男性二人連れに追い越される。
 登り始める時は、暫くの間は誰も来ないような様子だったけれど、ここまで随分と速いペースで登ってきたようだ。
 この様な場所を登る時は小回りの利くスノーシューの方が良いのかも知れない。
狭い谷間を登る 沢は次第に狭まり、両側から急な山の斜面が迫ってくる。
 その斜面には、雪の塊が転がり落ちた跡が幾筋も付いていた。
 もう少し気温が上がると、小さな雪玉がその斜面を転がり落ちる間に、まるでロールケーキのようになっている楽しい光景が見られる。
 しかし、中には巨大な塊が転がり落ちてくることもありそうで、これもまた恐ろしそうである。
 今日の気温が低いことに感謝をした方が良さそうだ。

 次第に周りの風景も、その白さを増してきた
 周辺の木々も、その上に乗せている雪の重みが更に増してきているように見える。
 眺めの良い場所で一休みしていると、一人の男性が追い抜いていったが、その人もスノーシューである。
 ここは本当は、山スキーで登るようなフィールドではないのではと心配になってきてしまう。

冷水小屋が見えた 再び歩き始めてしばらく進むと、V字谷の奥に山小屋が見えてきた。冷水小屋である。
 その前で休んでいた先程の男性二人連れを追い越して、先へと進む。
 そこから先のトレースは殆ど消えかけていて、ラッセルしながら進まなければならなくなった。
 次第に傾斜もきつくなり、再び登り始めた二人連れが私達の後を追うように登ってきていた。
 直ぐに道を譲るとラッセルするのを避けているように思われそうなので、無理をして先に進む。
 マイペースで登れないので、後ろから付いて来られるのはどうも苦手である。
 谷が更に狭まるところまでやって来て、エネルギーが切れてしまった。
 素直に先を譲ることにする。
 話しを聞くと、この先が一番の難所になっていて、その後は楽に登れるとのこと。
 その難所の様子はネットで調べてはいたけれど、雪の無い時期は多分そこは、滝が流れ落ちているのだろう。
最大の難所 先の二人の様子を見守っていると、途中で一人が動けなくなって、かなり苦労しているようだ。
 スノーシューでそれなのだから、スキーで登るのは無理かもしれない。
 二人の姿が見えなくなったところで、私達もその難所にチャレンジする。ヒールを固定して横向きに登ってみたが、傾斜がきつすぎて滑り落ちてしまう。
 諦めて、スキーを脱いでつぼ足で登ってみると、何の苦労も無く滝の上まで上がる事ができた。
 かみさんはそこで直ぐにスキーを履いているけれど、まだその先も急そうなので、私はもう少しつぼ足のまま登ることにする。
 するとやっぱり、2段目の滝が待ち受けていた。
 かみさんは、岩に挟まれたそこの狭い隙間をスキーを履いたまま強引に登ってしまい、私を呆れさせる。

景色が良くなってきた 滝を登り終えると風景が一変した。
 長い谷を抜け出して、見晴らしも良くなってくる。
 分厚い雪のコートを着込んだトドマツやダケカンバが私達の周りを取り囲む。
 それぞれが個性的なファッションをしているので見飽きることが無い。
 樹木越しに遠くの山並みも見えてくる。
 昨日のトレースは完全に消えてなくなり、先の二人連れが森の中に新たに描いたトレースの中をありがたく歩かせてもらう。

  森を抜けると真っ白な斜面が目の前に広がっていた。
 そこを登れば山頂へと続く緩やかな尾根に出られるはずだ。
 尾根沿いには雪庇ができていて、それに沿うように生えているダケカンバが逆光の中に浮かび上がって美しい。
 枝数の少ない1本のダケカンバ、両腕を広げるように立っている姿がとてもユーモラスだ。


真っ白な森 広々とした斜面
何もかもが真っ白 尾根へ登る斜面

尾根へ出る斜面
ユーモラスな形のダケカンバが出迎えてくれる

尾根からの眺め そんな風景を楽しみながら登っていくと、先に尾根に上がったかみさんが歓声をあげていた。
 鳥帽子岳、定山渓天狗岳、更にその奥には手稲山も見えている。
 そのまま視線を転じていくと、真っ白な丘のような山が並んでいるのは無意根山や喜茂別岳だろうか。
 冬山に登るようになって、少しは山の名前を覚えてきた。その名前が分かると、単純な山の連なりもとても楽しめる風景に変わってくる。

 そこからは緩やかな登りとなるので、札幌岳の山頂は見ることができないが、もう少し歩かなければならないはずだ。
 クライミングサポートを一番低い位置に戻し、樹氷で真っ白になった背の低いダケカンバの林の中を歩く。
 強烈な太陽の陽射しを受けて、ダケカンバの枝先から樹氷が剥がれ落ちて、それがキラキラと輝きながら舞い落ちてくる。
 先週に引き続いて冬山の美しさを堪能する。
 残念ながら、これも先週と同じで、雲も少し広がってきていて、羊蹄山が裾野のあたりしか見えていない。
 尾根を更に登っていくと、大きく顔を突き出し、今にも歩き始めそうなモンスターが現れた。一本足で立つゴジラも登場する。
 本当に冬山に登るのは楽しい。


尾根の上の風景
雪片がひらひらと舞い落ちてくる

モンスター ゴジラ型モンスター
今にも動き始めそうなモンスター ゴジラと並んで

山頂で昼食 そうして札幌岳山頂に到着。
 登っていったその向こうには札幌の街並みが広がっていた。
 かなり山奥に入ってきたつもりでいたので、全く予想外の風景が突然現れて驚いてしまった。
 札幌岳と名付けられているのもこの風景と関係があるのかもしれない。
 支笏湖方面の恵庭岳や漁岳も見えている。
 風も弱いので、そのまま山頂で昼食にする。
 たとえ天気が良くても、風だけは強く吹いているのが冬の山だけれど、こうして山頂でのんびりと食事ができるなんて本当に今回は恵まれている。


札幌岳山頂からの展望
頂上からは札幌の街並みが一望できた

 同じように山頂で食事をしていた男性二人も、私達とほぼ同時に下山を始めた。
 彼らはスノーシュー。登ってくる時に散々そのトレースのお世話になったのに、降りる時にその横をスキーで追い越すのは気が引けるので、相手から見えないように大きく迂回して滑り降りる。
華麗に滑るかみさん 先程登ってきた純白の斜面、下まで降りるのにスキーを楽しめるのはここしかない。
 傾斜もそれほどきつくなく、我が家のレベルにはちょうど良いスロープである。
 純白の斜面にそれぞれのシュプールを描く。
 下まで降りてから振り返ると、明らかにかみさんのシュプールの方が優雅である。
 私の場合、深雪の中で大きなターンが上手くできないので、細かなターンでごまかすしかない。正直言って、最近はかみさんの滑りの方が上手なのである。

 登ってくる時に苦労させられた滝は、スキーを履いたまま横滑りで降りることができた。
 そして、あっと言う間に冷水小屋に到着。登るのに時間がかかっても、滑り降りるのは一瞬である。
 そこから先は狭い沢の中を慎重に滑る。
 所々で沢が開いているので、スピードが出過ぎないようにコントロールしなければならない。
 アップダウンも多いので降りるときは苦労するだろうと思っていたが、少々の上り坂なら滑ってきた反動で越えられるので意外と楽に降りられる。
 ただ、下山時になっても気温はそれほど上がらず、粉雪のままだったので、スキーコントロールもしやすかったのは確かである。
 これが、気温が上がって重たい湿雪になっていたら、スノーシューで降りたほうが楽になっていたかもしれない。
 今回は1時間で登山口に到着。
 2週連続で冬山を満喫できて、これで今シーズンは思い残すことなし。次はもう春スキーになるのだろうか。


登山口 冷水小屋 山頂

1:45(0:25)

2:00(0:35)
距離:6.1km 標高差:860m
( )内は下りの時間


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