トップページ > その他 > ファミリー通信

我が家のファミリー通信 No.80

道北鉄ちゃんの旅


発寒駅から旅が始まる

12時17分発寒駅発の列車に乗り込み、鈍行列車を乗り継いでで稚内を目指す鉄ちゃんの旅が始まった。
まずは岩見沢まで行って、そこから旭川行の列車に乗り継ぐ。

今回の旅のきっかけとなったのは、北海道ふっこう割である。
道内の旅行や宿泊が、最大で35,000円まで費用の約半額を補助されるこの制度。旅行形態や金額により補助額が決まっている。
この中で私たちが利用したのが、1名利用以上の宿泊で合計金額が1泊6000円以上だと3000円が補助されるというもの。
この上の区分だと1泊12000円以上について6000円の補助となる。
私たち夫婦の旅でいつも利用する素泊まりのビジネスホテルならば、一番下の1泊3000円の補助で十分だった。

岩見沢駅のホームに設置されたリアルなばん馬の像に驚きながら、旭川行普通列車に乗り換える。
この駅を毎日利用する人には、この像も日常の風景の一つなのだろうけど、駅のホームのど真ん中に置かれたばん馬像は、これを初めて見る人には衝撃的な風景に映るだろう。

岩見沢駅のばん馬の像
岩見沢駅のばん馬の像


滝川から札幌までの鉄道は、去年の札沼線の旅の帰りに利用したことがあるけれど、滝川以北の鉄道を利用するのは今回が初めてである。
途中で石狩川の神居古潭の風景を見られるだろうと楽しみにしていたのに、この間の線路が全てトンネルになっているとは考えてもいなかった。


車窓から見る石狩川(江部乙付近)

宿泊費はふっこう割りのおかげでかなり安くなるけれど、JRの運賃も安くならないだろうか。
そう考えて調べてみたが、特急を利用したお得きっぷはあっても、普通車のものは見当たらない。
乗車券の往復割引きっぷも、根室や函館ではあるのに、何故か稚内は無いのである。

最後に辿り着いたのが青春18きっぷ。
名前だけは知っていたけれど、実際に利用するのは今回が初めてである。

青春18きっぷは、5回分の1日乗り放題がセットになっているきっぷで、金額は11,850円。
2泊3日を予定している私たちの旅には正にピッタリで、最初の発寒・旭川間の2,810円の乗車券を買い足すだけで済んでしまう。

稚内まで2人分の往復乗車券の金額は29,360円になるので、圧倒的に安い。
利用期間に制限のあるきっぷだけれど、偶然にこの期間に入っていて、旅の費用はかなり安く収められたのである。


立派になった旭川駅

15時38分、旭川駅に到着。
初めて降り立った旭川駅が、あまりにも立派なのでビックリしてしまう。
お友達との旅行の際に昔の旭川駅を利用していたかみさんも、その変わり様に唖然としていた。

駅の立派さにも驚いたけれど、駅の直ぐ南側には忠別川が流れ、その手前には美しいガーデンが広がっている。
雪のない季節にも是非もう一度訪れてみたい旭川駅である。

今日の宿であるホテルテトラ旭川駅前にチェックイン。
素泊まり1泊2人で6,000円と、ふっこう割り補助の条件はクリア。
3,000円の補助が付いて、2人分の宿泊費は3,000円と格安である。
そんな安宿だけあって、部屋の暖房はエアコンのみで、おまけにチェックイン前にエアコンを動かしておくようなサービスも無く、冷え切った部屋は1時間たっても温まらない。


これが一番派手だった七条緑道のイルミネーション

この料金じゃ文句も言えないなと思いながら、夜の旭川の街へと出ていく。
旭川には何度も来ているつもりだったけれど、街の中心部を歩くのは初めてだった。
勿論、駅前の買物公園も初めてである。

今の季節は、どんなに小さな町でも大体はイルミネーションで飾られている。
夕食を食べる予定の店が17時半開店なので、それまでの間旭川市内を彩るイルミネーションを楽しむことにする。

しかし、北海道第二の都市である旭川のイルミネーションとしては、ちょっと寂しいものだった。
その前に見ていたのが福岡のイルミネーションだったと言うことを差し引いても、やっぱり見栄えがしない。


買物公園のイルミネーション

それでも、こんな所でもと言ったら失礼かもしれないが、街の中で中華系観光客の姿を良く見かけた。
これも旭山動物園の影響なのだろうか。

17時半を過ぎたので、予定していた自由軒に入る。
ここは、テレビ東京のドラマ「孤独のグルメ」で放送されていた店である。
旭川では、この自由軒と居酒屋の三四郎の2軒がドラマの中に登場していたが、居酒屋は次の稚内で入る予定だったので、こちらの自由軒を選んだのだ。

番組の中で松重豊演じる井之頭五郎が食べたものとが五郎セットとしてメニューに載っていたので、それをかみさんが注文。
私は、店の一番人気らしい塩焼きを注文。

五郎セットはホッケフライとカニのクリームコロッケ。番組の中で五郎さんは、この他に店名物の味噌汁(ライス付)を食べていたけれど、それは省略。
五郎セットも私の頼んだ塩焼きも、どちらもとても美味しく、満足して店を出た。
この後は何時も通りにコンビニで金麦とつまみを買って、ホテルの部屋飲みである。


自由軒の店構え

自由軒の店内


 

 
 

翌朝は5時半にホテルを出て、6時3分発の稚内行普通列車に乗る。
この列車、名寄までは2両編成で、通学の高校生が利用しているようだ。
士別で降りる学生もいれば、士別から乗り込んで名寄で降りる学生もいる。
そんな通学風景を見ていると、清水町から帯広まで汽車通していた私の高校生の頃を思い出し、懐かしく思った。


まだ暗い旭川駅のホーム

東風連駅で降りていった学生達


名寄で1両が切り離され、乗客も急に少なくなって、いよいよローカル線らしい旅が始まる。
ここで私が楽しみにしていたのは、今年の夏にダウンザテッシで下った天塩川を車窓から眺めることである。


窓が曇ってしまって外の風景が見えない

ところが、外気温が下がってきたのか列車の窓が曇り始めて、拭いても拭いても直ぐにまた曇ってしまう。

川の写真は撮りたいし、秘境駅の写真も撮りたいし、動いている汽車の中で窓を拭きながらシャッターチャンスを狙うのは、なかなか大変である。

それでも、走っている間はずーっと、窓にしがみ付くようにして外の風景を眺めていた。

道内を何時も車で走り回っているけれど、こんな風にゆっくりと風景を眺めることは出来ない。
これが私にとっては、列車やバスを利用した旅の一番の良い所なのである。


車窓から見る天塩川(紋穂内付近)

紋穂内駅の模様は劣化した塗装


列車の行き違い等で駅に停車している時間が長い時は、ホームに出て落ち着いて写真を撮れる。
こんな時にカメラを抱えてホームに出てくるのは、大体が鉄ちゃんだと言って間違いない。


私たちが乗っている1両編成の列車(音威子府駅で)


如何にも鉄ちゃんらしい人が数名は乗っていた。
旭川から稚内まで直通している普通列車は、現在はこの1本しか無く、乗り鉄の鉄ちゃんには外せない存在なのだろう。


車窓から見る天塩川(雄信内付近)

隣に停車していたラッセル車?(雄信内駅)


青空の下に真っ白な利尻富士の姿が見えてきた。
車の旅でも列車の旅でも、道北に向かう時に私が一番感動する瞬間である。


豊富駅で上り列車と行き違い

雪原の向こうに見える利尻富士(豊富付近)


そうして12時7分、日本最北の稚内駅に到着。
稚内には何度も来ているけれど、冬の稚内は初めてである。
さぞかし寒いだろうと覚悟していたけれど、昨日旭川駅に降り立った時と比べると、全然暖かいくらいだ。


日本最北端の駅に到着

日本最北端の線路終点


 


 

昼食は何度か入ったことのある青い鳥で、塩ラーメンを食べる。
かみさんはしょう油ラーメンを食べたけれど、そちらも美味しかったようである。

時間がたっぷりとあるので、バスで宗谷岬に向かう。
他に近くで観光する場所がないか調べたけれど、ノシャップ岬の寒流水族館も稚内公園の開基百年記念や北方記念館も冬期間は全て閉館中。
稚内市は冬の観光は完全に諦めているんじゃないかと思ってしまう。


バスで宗谷岬までやって来た

しょうがないので宗谷岬に行くことにしたのだけれど、バスで往復1人2,500円もかかってしまう。
レンタカーを借りた方が安上がりだけれど、せっかくの車を使わない旅だったので、ここでもバスに乗ることにしたのだ。
今回の旅の中では、このバス代が一番高くついたかもしれない。

宗谷岬へのバスには、同じ列車に乗り合わせていた人が数人、他には欧米人のカップルなどが乗っていた。
冬の稚内、観光する場所は限られている。

10メートルの風が吹く宗谷岬だったけれど、気温がマイナス0.3度と暖かかったので、何とか耐えられる寒さだった。


宗谷岬で記念撮影

間宮林蔵と観光客


遠くにサハリンの島影が確認できる。
宗谷岬からサハリンが見えたのは、これが初めてだったかもしれない。


宗谷岬から見えたサハリン


40分ほど宗谷岬に滞在して、ほぼ定刻通りにやって来た稚内行のバスに乗って市内へと戻る。
夏場だとこの時間で岬周辺を見て回るのは厳しいけれど、冬場ならばこの時間で丁度良かった。
もしも、折り返しのバスがやって来るまで1時間以上あったとしたら、見るものも無くなって寒さで震えながらバスを待っていることになるだろう。


ホテルの裏から顔を覗かせるエゾシカ親子

市内まで戻ってきて、そのまま今日のホテルに向かう。
泊まるのは「天北の湯ドーミーイン稚内」。
旭川で泊まったホテルよりも1人千円ほど高いけれど、温泉はあるし、部屋は広いし、アメニティも質が高く、何と言ってもチェックインイン時に既に部屋の中が暖かいのが嬉しい。
まあ、それが普通なのだけれど、昨日の旭川のホテルが寒かったのには閉口していたのだ。

ホテルに着いた時、建物の裏からエゾシカの親子2頭が顔を覗かせていたのには驚いてしまった。
札幌の街中にだってエゾシカが出没することがあるのだから別に驚くことも無いのだが、ホテルの横でエゾシカが出迎えてくれると言うシチュエーションは、とても新鮮だった。

夕食はホテルの近くの「北の味所 竹ちゃん」に入る。
稚内に来たからには、やっぱりタコしゃぶは食べておかなければならない。
刺身の7品盛り合わせはどれも新鮮でおいしい。稚内らしく生タコのから揚げ。博多の屋台で食べて味をしめた明太子卵焼き。飲み物を含めて8,100円也。
我が家にとってはプチ贅沢だったけれど、今年の我が家の忘年会も兼ねて、これくらいは許されるだろう。


竹ちゃんの店構え

稚内名物のタコしゃぶ


最終日、帰りの列車の稚内始発は10時27分。
ホテルの部屋でゆっくりしてから、北防波堤ドームに向かう。

ここは私の大好きなスポットである。
車で来た時は、何時も慌ただしく見て回るだけで、直ぐに次の目的地へと移動していたけれど、今日は時間があるので、長さ427mの端から端までゆっくりと往復する。


稚内北防波堤ドームの内部


隣の岸壁には海上保安庁の巡視船りしりが停泊していた。
私は船フェチじゃないけれど、その格好良さに惚れ惚れしてしまう。


北防波堤ドームは外から見ても格好いい

巡視船りしり


稚内駅までやって来ると、何時の間にか真っ黒な雲が広がり、雪が舞い始めていた。
旅行者としての視線で見れば、この方が何となく稚内らしく感じてしまう。


鉄ちゃんの旅に駅弁は欠かせない

駅弁を買って、名寄行の1両編成の列車に乗り込む。
旭川からは稚内行きの普通列車が1本だけあったけれど、稚内からの普通列車は何故か名寄行きしかない。

車窓からの写真は昨日で十分に写したので、今日は大人しく座っているつもりだったけれど、天気が良くて窓ガラスも曇っていないものだから、、今日も列車の中を動き回って車窓からの風景をカメラに収める。

今日は本格的な鉄ちゃんが1人乗っていて、自分の席には殆ど座らずに、運転席の後ろでカメラを構えている。
「運転士には声をかけないで」との張り紙も気にせずに、列車の運転士と楽しそうに話を交わしていた。
若い運転士さんで、多分彼も鉄ちゃんの一人なのだろう。鉄ちゃん同士で会話が弾んでいる雰囲気である。
今のJR北海道に敢えて入社するような人は、鉄ちゃんしか有り得ない気がする。

車窓から見える天塩川は、所々で氷に覆われていた。
もう暫くすれば川全体が結氷し、それと同時に道北は厳しい冬へと突入していくのだろう。


氷に覆われ始めている天塩川


3連休の初日ということもあるのか、名寄から先は乗客も多くなり、のんびりとしたローカル線の旅の雰囲気は無くなる。
何時もこれだけの乗客がいれば、鉄路ももう少し存続できるのかもしれないが、今回の旅ではやっぱり鉄路の存続の難しさを感じさせられた。
今回は、殆ど気まぐれでJRの利用を思いついたのだけれど、車で稚内まで行った方がお金はかからないし、時間も早いだろう。

旅の計画を立てる時も、時刻表を見て列車の本数の少ないことに改めて驚かされた。
乗客が少ないので運行する本数を減らし、本数が減ると使いづらくなるので、ますます列車離れが進む。
完全にこの悪循環に嵌ってしまっているようだ。

でも、列車の旅の良さも確かに存在する。
18時57分、長い列車の旅を終えて発寒駅に降り立った。
列車に乗り疲れていたけれど、車で自宅まで戻ってきた時よりも大きな充実感を得られた気がした。



ページトップへ
今週のキャンプの運勢は?