トップページ > その他 > ファミリー通信

我が家のファミリー通信 No.79

九州の旅二日目(高千穂峡・天岩戸神社)

二日目の予定は、かみさんが九州で一番行きたがっていた高千穂峡の観光である。
旅行の計画を立てている時、熊本から高千穂へ向かう途中に何か見るものが無いかと調べていて、地図上に通潤橋の名前を見つけた。
石造りのアーチ橋から放水された水が放物線を描いて流れ落ちる様子は、写真でも何度か見たことが有る。
初めての九州で何処に何が有るかさっぱり分からない状態なので、知っている場所を見つけると何だか嬉しくなる。

残念ながらこの通潤橋も熊本地震により一部が崩落し、現在は放水が行われていなかった。
それでも、160年以上も前に作られた石造りの橋は十分に見ごたえがある。


水は出ていなくても見ごたえのある通潤橋


その橋よりも興味を引いたのは、木の皮や藁など自然素材だけで作られた造形物である。
調べてみると、ここ山都町で行われる八朔祭の名物ともなっている「大造り物」と呼ばれるものだった。
通潤橋の道の駅や山都町観光文化交流館の前にも、それぞれ数体展示されていた。
自然の素材だけでこれだけ素晴らしいものが造れるとは驚きである。


自然素材だけで作られた大造り物

美女と野獣をモチーフとした大造り物


そうしてやって来た高千穂峡では、真っ先にボート乗り場に向かう。
高千穂峡の渓谷に流れ落ちる真名井の滝は、観光案内の写真等では真っ先に出て来る高千穂峡のシンボルである。
その滝をボートに乗って渓谷の中から見るのが一番の楽しみであったのだ。


ボートの上から眺める高千穂峡名久井の滝


シーズン中はボートに乗るのに何時間もかかることがあるみたいだが、さすがにこの時期は待ち時間なしで乗ることができた。
ボートを漕ぐのは元ボート部のかみさんに任せて、私は写真撮影に専念しようと思っていた。
しかし、とても元ボート部とは思えない下手さに呆れて、途中で漕ぎ手を交代する。
競技用のボートとは全く勝手が違うようである。


違う方向から名久井の滝を眺める


ボートの貸し出し時間30分ギリギリまで渓谷の風景を楽しみ、その後は渓谷沿いの遊歩道を歩く。
渓谷の中から見上げる滝の風景も美しかったが、観光ガイドに載っているような橋の上から見た名久井の滝もやっぱり美しい。


渓谷の上から眺める名久井の滝


 


高千穂峡については、この名久井の滝の風景しか知らなかったけれど、他の場所の風景も素晴らしかった。
高千穂は神話の里とも呼ばれているけれど、ここで神話が生まれるのも不思議ではないと思えるくらいに、神々しい風景が続いていた。


名久井の滝以外も素晴らしい風景が広がる高千穂峡


しかし、私たちが来るのに合わせるようにこの神話の里で悲惨な事件が起こっていたのである。
前日に高千穂町の民家で6人の遺体が見つかり、その事件に関係していると思われる男性が橋の上から飛び降りて死亡していたという事件。


一番奥に見える橋から身を投げたようだ

昨日の夜、ホテルのニュースで見た映像では、男性が飛び降りた橋はどうやらここ高千穂峡に架かっている橋みたいだ。
警察関係の人間も沢山見かけるし、昼食を食べた茶屋のおかみさんに聞いてみたところ、その身を投げた橋はやっぱり目の前に見えている橋だったのだ。

この日は警察で現場検証をやっているのだろうと思っていたら、夜のニュースを見るとこの日の午前中に遺体を回収したとのことだった。
深い渓谷なので、昨日のうちには遺体も回収できなかったのだろう。
私たちがつい先ほどまでボートに乗ったいた場所は、そこから僅か700m程の下流にあたる。
さすがにあまり良い気持ちはしなかった。

高千穂峡の散策を終えて車まで戻ってくると、NHKのアナウンサーにインタービューされてしまった。
「子供を含めて6人も殺された事件をどう思うか」と聞かれ、内心は「横溝正史の小説みたいだ」とか「旅行の良い記念になった」と思っていたけれど、「驚きました、こんな悲惨な事件は起こって欲しくない」と教科書に書いてあるような受け答えをしておいた。


高千穂神社に参拝


高千穂神社に参拝し、そこで御朱印帳を購入。
四国遍路の時は御朱印を貰いながら回ったけれど、それ以外では御朱印を貰う習慣は我が家にはなかった。
せっかく神話の聖地にやった来たので、これからは神社の御朱印も集めようと思い立ったのである。


ここから神域へと足を踏み入れる

次に向かったのは、その本当の聖地ともいえる天岩戸神社。
天岩戸神話の舞台ともなった岩窟がここの御神体である。
天照大神が籠ったと言われるこの天岩戸は境内からは直接見られない。
30分ごとに神職の方が中を案内してくれるので、それに参加することにした。

お祓いを受けた後に拝殿横の木戸をくぐって神域へと入る。
勿論、写真撮影は禁止である。
岩戸川を挟んだ対岸に岩窟らしきものが見えるが、それ自体は大したことがない。
それでも、あまりにも有名な神話の舞台でもあり、ありがたく参拝させていただいた。



天岩戸神社を出て次に向かったのが、天照大神に天岩戸から出てきてもらうために八百万の神々が集まって相談した場所とされる天安河原。
天岩戸神社から川沿いの散策路を歩いて行くのだが、ここの風景もまた素晴らしい。
その先には岩壁に巨大な洞窟が口を開けていて、その中には賽の河原の様に大小の石積みが無数に並んでいた。
まさにパワースポットといえる場所で、独特の霊気を感じられる。


霊気を感じる天安河原


この様な場所から神話が生まれたのか、それとも神話にこの場所が当て嵌められただけなのかは分からないが、ここに神様たちが集まってああだこうだと話し合っている姿をそのまま信じるのも、楽しいものである。

天岩戸神社からの帰り道、栃又棚田の展望所に立ち寄ると、遠くに見える鉄橋の上を列車がゆっくりと走っていくのが見えた。
それが多分、高千穂あまてらす鉄道のトロッコ列車なのだろう。
時間が有ればそのトロッコ列車にも乗るつもりでいたけれど、時間的に無理そうで諦めるしかなかった。


栃又棚田


道の駅に寄った後、高千穂での最後の観光として国見ケ丘に向かう。
雲海の名所として有名らしいが、日中ではその雲海も見られない。
高千穂盆地が一望できるものの、自分たちが何処を歩いてきたのか全く見当がつかなかった。

高千穂盆地の反対側には阿蘇五岳がお釈迦様が横たわっている姿に見えているとのことだったが、どれがその山なのか分からないままに国見ケ丘を後にした。


国見ケ丘から高千穂盆地を眺める


この日の宿泊は、阿蘇カルデラの東側にある阿蘇リゾートグランヴィリオホテル。
高千穂から阿蘇外輪山を越えてカルデラの中へと降りていく。
途中でダイナミックなカルデラの展望を楽しめるかと期待していたが、展望を楽しめる場所もないまま、下まで降りてきてしまった。

高森湧水トンネル公園
高森湧水トンネルを奥へと進む

ここで、高森湧水トンネルという場所が面白そうだったので寄り道する。
トンネル工事の最中に大量出水に見舞われ、その後も出水事故が度重なったことから、トンネル工事を中止して湧水公園として整備したそうである。

トンネル内に入れるのは午後5時までで、到着したのは午後4時半。
受付の男性に「急いで見てくださいね」と急かされて中へ入る。
そんなに時間がかかるのかと思ったら、トンネルの奥行きは550mあるらしく、急ぎ足で奥へと進む。

中央部を湧水が勢いよく流れているだけの何の変哲もないトンネルだけれど、クリスマスの飾り付けやイルミネーション、プロジェクションマッピング等もあって結構楽しめる。
一番奥で湧水を一口飲んでから引き返した。

高森湧水トンネル公園
高森湧水トンネル最深部


高森湧水トンネル公園
トンネルの入り口
高森湧水トンネル公園
色々なイルミネーションが楽しめる


今日のホテルは近くに食事できる場所がないので、高森湧水の近くにある「お食事処だいこんや」で夕食を済ませていくことにする
隣の畑からその日に採れた野菜を食材にしたメニューが中心で、私はだいこんや定食、かみさんはこの付近の郷土料理でもあるだんご汁定食を注文。

お食事処だいこんや
ホテルへ向かう前に夕食を済ませる

とても美味しかったけれど、だんご汁の味付けはかなり濃いめ。
この後旅行中に食べた汁物は、どれも濃い味付けのものばかりで、暑い地方は汗をかくので味付けも濃くなるというのが私たち夫婦の出した結論だった。

食事を終えてホテルに向かう頃は既に辺りも暗くなっていた。
こうなると知らない土地ではナビだけが頼りである。
レンタカーにもナビは付いていたけれど、普段から使い慣れているスマホのGoogleマップのナビをここまで使っていた。
Googleさんの指示通りに走っていると、突然脇道へと誘導された。
曲がりくねった1車線しかない細い登り坂で、街灯も無く周りは真っ暗、おまけに雨まで降り始める。
対向車が来たらどうしようかと思ったが、こんな道を走る車は他に1台もいない。
どの辺りを走っているのかも見当がつかず、このまま進んでいっても良いのだろうかと心配し始めた頃、突然スマホの画面が消えてしまった。
電池切れである。

ようやく太い道路に出てきたが、どちらに曲がれば良いのかも分からない。
この後、レンタカーに付いていたナビのおかげで何とかホテルまで辿り着けたけれど、危うく阿蘇の山中で迷子になってしまうところだった。
ホテルの方は、ツアー料金の他に追加料金が一人1300円余計にかかっているだけあって、ゴルフ場も併設された立派なホテルである。


夜のニュースでも事件のことを報じていた

その分、中国人の宿泊客も多いようだ。
それもあってか、チェックインの時に「温泉は外国人で混み合うので、内湯の方がゆっくり入れます」とアドバイスしてくれる。
私たちは勿論内湯の方に入ったが、そちらも源泉かけ流しで、露天風呂が無いだけで翌朝に入った本来の温泉よりも広くて快適だった。

ただ、かみさんの話によると女湯の方は誰も入っていなかったけれど、洗い場にはオケやイスが散乱し、シャワーはお湯を出したまま床の上に放置されていたりして、悲惨な状況だったらしい。
普通、日本人はそんなことはしない。

夜の9時からのNHKニュース。
高千穂でインタビューされた時、9時からのニュースで放送するかもしれないと言われていたので、ドキドキしながら見ていた。
現場の映像は流れていたけれど、私がインタビューされたところは放送されずに、ホッとしたのである。


九州の旅三日目へ 

 


ページトップへ
今週のキャンプの運勢は?