我が家のファミリー通信 No.56

雪国へ行こう


日本のアメダス観測地点の中で常に最深積雪を記録している青森県の酸ヶ湯。
「何時か行ってみたいね」
雪が大好きな私たち夫婦なので、何年もそう言い続けていたけれど、そろそろ実行に移す時である。
例年、積雪が一番多くなるのは、2月の中〜下旬ごろ。
できればその時期に合わせて予定を組みたいけれど、仕事の都合もあって上手くいかない。
それに、この季節のJRでの移動は、天候のことも心配である。
急行はまなすチャンスは限られてしまうので、週間予報で比較的天候が安定しているのを確認して5日前に出発日を決定。
JRや宿、スノーシューツアーの手配などを一気に済ませた。

そうして2月6日木曜日の午後10時、急行はまなすに乗って、雪まつりの観光客で賑わう札幌駅を後にした。
急行はまなすのB寝台を利用するのは、3年前の白神山地への旅以来、2度目である。
寝台車で寝ることに慣れたとは言っても、やっぱり熟睡はできない。
少し寝不足気味のまま、午前5時半、雪の舞う青森駅に到着。
ここ数日、日本中が寒気団にすっぽりと覆われていて、青森までやってきても、その寒さに変わりはない。
ただ、道路の真ん中から水が流れ出していて、それで雪を解かしているのは、札幌では絶対に考えられないことである。
北海道の中でも比較的暖かな札幌でも、そんなことをしたら道路上にスケートリンクを作ることになってしまう。


急行はまなすB寝台 雪の舞う青森駅
B寝台の下段、向かい合わせの席を確保できた 雪の舞う青森駅に到着

寒さに震えながら、アウガの地下の朝5時から営業している新鮮市場へと入る。
朝早い時間に青森駅に着いても、この市場があるおかげで退屈しないで済むのだ。

新鮮市場近くには朝6時から営業している「まちなか温泉」と言う温泉施設もあって、そこで朝風呂に入るのも良いかもしれない。
でも、これから寒い場所に向かうのに、朝から温泉に入っていると心が萎えてしまいそうなので、今回はパス。
朝市の中にある食堂で食事も済ませて、駅へと戻る。

金曜日なので、駅は通勤客で賑わい始めていた。
駅の中にあるドトールに、朝7時の開店と同時に入る。

スターバックスとかドトールとかの類のコーヒーショップに入るのは、実はこれが初めての経験だった。
経験という程の大げさなことではないかもしれないが、昔ながらの喫茶店しか知らない私なので、こんなコーヒーショップに入るためには結構な勇気が必要なのである。
おかげでこれからは、一人で臆せずに街中にあるスタバとかに入ることができそうだ。


マグロの解体中 市場内の食堂
さすが青森、マグロの解体中だ 新鮮市場内の市場食堂で朝食

8時のバスで、まずは八甲田へと向かう。
目的は、そこのロープウェーに乗って、樹氷を見ることである。
かみさんは、酸ヶ湯よりも八甲田の樹氷を見ることの方が楽しみだったみたいだ。

バスの中からしかし、バスで山に向かうにしたがって、雪の降り方も次第に激しくなってきた。
旅行日程の中ではこの日の天気が一番安定しているだろうと思っていたのに、これはちょっと予想外である。

今年に入ってから今日までの、酸ヶ湯での日照時間合計は僅か9.9時間しかないのだ。
青空はもともと期待していなかったが、ここまで天気が崩れると、一面に樹氷が広がる風景は見られそうにない。

八甲田ではスノーシューのツアーを申し込んでおいたので、スキー客で賑わうロープウェー駅に着くと、早速ガイドの方が声をかけてきてくれた。
観光客向けのツアーに参加するのも、私にとってはこれが初めての経験である。
旅行の計画を立てる時、自分たちでスノーシューを持ってくることも考えてみた。
でも、ここのツアーはロープウェーの料金とスノーシューレンタル料も含めて3300円しかかからず、それならばわざわざスノーシューを持ってくる必要もないのだ。
おまけに、今日泊まる予定の酸ヶ湯温泉でも、スノーシュー散策が用意されているのである。

ロープウェーの中は、平日にもかかわらずスキー客で満員である。
山頂駅ではガイドの方が、至れり尽くせりって感じで準備をしてくれる。
山に入れば全て自分たちの責任で行動すると思っている私達は、そんなサービスをとてもこそばゆく感じてしまう。
猛吹雪の中でしかし、建物から一歩外へ出た途端、そのガイドの方に全て頼るしかなかった。

山頂駅のこの日の天候。昨日からの降雪量60センチ、気温−16℃、風速22m。
八甲田雪中行軍遭難事件もこんな中で発生したのかと思える様な天候である。

それなりに冬山にも登っていて、装備も山登りの時とほぼ同じ。
そんな私達でさえ、ガイドさんの後ろを必死になって付いて歩きながらも身の危険を感じてしまう。
今日のツアー参加者は私達二人だけだけれど、一般の観光客が相手でも、こんな天候でツアーをやっているのだろうか。
でも、何も知らない観光客の方が、こんな状況を単純にキャーキャー言いながら楽しめるのかもしれない。
30分ほど歩いて駅舎まで戻って来れた時は、心底ホッとした。


ロープウェーの駅舎も真っ白 八甲田の樹氷
近くまでこないと駅舎の存在も分からない 駅舎の直ぐ近くにある樹氷

ロープウェーの駅 駅舎の樹氷
ゴンドラ乗り場も樹氷に覆われ 施設の全てが凍り付いている

樹氷の姿は自分たちの直ぐ近くにあるものしか見られなかったけれど、八甲田の厳しい自然を味わえたのは貴重な経験だった。
レストハウスで食事を済ませ、12時40分の送迎バスに乗って酸ヶ湯温泉へと向かう。
スノーシューツアーそして宿に着いたら直ぐに、午後1時からのスノーシューツアーに参加。
こちらは宿泊者向けの無料サービスなので、他に3名が一緒だった。
ここでも、ガイドの方が一人一人のスノーシューの取り付けまでやってくれる。
私がガイド役を引き受けても良いくらいなのに、本当に恐縮してしまう。

酸ヶ湯のアメダス観測では、この日ついに積雪4mを記録していた。
月初めには雨が降るくらいの暖気があったそうだが、その後4日間連続で毎日30センチの雪が降り積もり、私達の訪れを歓迎してくれるかのようにシーズン最深積雪を更新したのである。
この日も含めて、最近3日間の最高気温は−12℃を下回っていて、降り積もった雪はふわふわの粉雪状態を保ったままである。

そうは言っても、先頭を歩く小柄なガイドさんは、腰の深さの雪をラッセルしながら歩くので大変そうだ。
その後に私、かみさんと続く。
他の参加者3名は、スノーシューを履くのも初めてらしく、おぼつかない足取りでその後ろから付いてくる。
雪のブナ林かみさんは先頭に出てラッセルしたくて堪らなかったようだ。

八甲田周辺はブナ林が広がり、雪の積もったブナ林の風景もなかなか美しいものである。
酸ヶ湯のアメダス観測地点にも案内してもらえた。
ガイドさんの説明に、他の参加者はただうなずいているだけだが、その数字を毎日眺めている私にとっては「ついに聖地に来ることができた」って気分である。

近くにはキャンプ場もあって、その施設も深い雪に埋もれている。
大きな照明灯の灯具が私達の目の前にあった。
一般的にこの様な灯具は、5〜6mのポールの先に取り付けられているものなのである。


腰までのラッセル アメダス
先頭のガイドさんは腰までの雪をラッセル 私にとっての聖地、酸ヶ湯のアメダス

照明灯と同じ高さ ガイドさんも楽じゃない
高さ6mの灯具が同じ高さに 外れたスノーシューを直すガイドさん

雪景色
美しい雪景色だ

部屋の窓からの眺め1時間ほどのスノーシュー散策を楽しんでから、宿にチェックイン。
築100年の建物は風情があり、部屋の窓からの眺めも良い感じだ。
名物のヒバ仙人風呂へは日帰り客がいなくなってから、ゆっくりと浸かる。
湯気が濛々と立ち込め、もしも女性が入っていたとしても、残念ながらその姿は湯気の向こうに隠れて見えない。
かみさんは、女性専用の時間帯に入浴していた。

客層は、スキー目的の客と一般的な観光客の2種類に分かれている感じだ。
純粋に湯治を目的としている人は、それ程いないのかもしれない。

翌朝、朝食を終えてから、宿の周りを散歩する。
昨日私達が歩いたトレースは、その後に降った雪で、既に消えかけていた。
天気もやや回復して、雲の中から薄日が差してくる。
もしかしたらこれで、今年に入ってからの日照時間の合計が10時間を超える、貴重な陽射しなのかもしれない。


酸ヶ湯温泉旅館
築100年の酸ヶ湯温泉旅館

雪の壁 貴重な日射し
道の両側は高さ4mの雪の壁 貴重な日射しだ

雪景色
白い木々

棟方志功記念館午前8時50分の送迎バスに乗って青森市内へ戻る。
そのバスの車窓から、八甲田山の姿が山頂まではっきりと見えていたのは皮肉な話である。
青森駅のコインロッカーに荷物を預け、そこから路線バスに乗って棟方志功記念館へ向かった。

写真ではない、実物の作品を間近で見て、その迫力に圧倒された後は、青森ラーメンの有名店「まるかい」で昼食にすることにした。
そのラーメン店までの距離をスマホの地図で調べると約2.5キロ。
私達には十分な徒歩圏内であり、路線バスの時間までまだ20分もあったので、徒歩で向かうことにした。

青森のラーメンは焼き干しのダシが特徴らしく、まるかいのスープもあっさりとしていて、私達好み。
ただ、麺の方は、札幌で縮れ麺を食べ慣れている私にとっては馴染めないものだった。
これならば、青森魚菜センターの「のっけ丼」を食べた方が良かったかもしれない。
直ぐ近くの観光物産館アスパムでは「あったか鍋&丼フェスタ」のイベントもやっていたので、そちらの選択肢もあったようだ。

アスパムのパノラマ映画午後からは青森県立美術館に行こうと思っていたが、そのまま青森ベイエリアの観光施設を見て回るルートに変更した。
まずはアスパムの展望台に登り、360度のパノラマ映画を見る。
展望台からは、残念ながら八甲田山の姿は雲に隠れて見えなくなっていた。
今日は天気も下り坂なのである。
パノラマ映画は迫力があって楽しめた。

アスパムの後は、「ねぶたの家 ワ・ラッセ」でねぶたの展示を楽しむ。
我が家がねぶた祭りを見るために青森を訪れることは多分有り得ないので、実物のねぶたを見られるこの施設はありがたかった。


ねぶたの家 ワ・ラッセ ワ・ラッセのねぶた展示
ワ・ラッセのエントランス部 祭りで実際に使われたねぶたが展示されている

その後は、青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸を見に行く。
去年の函館観光の時も青函連絡船の摩周丸を見ていたけれど、その外観の写真を写しただけで終わっていた。
今回はゆっくりとその内部を見て回る。
人形の展示では、何時ものように人形と一緒にポーズをとってしまう。

車両甲板を見に行って驚いた。
一般的なフェリーのように車を積み込むスペースだと思っていたのだが、そこに有ったのは鉄道車両だったのである。
当時は貨物車両も青函連絡船で運搬していたのだ。

エンジンルームも凄かった。
男の子は誰でも、こんな機械を目にすると感動してしまうのである。
今回の市内観光の中では、この八甲田丸が一番楽しめた気がする。
ただ、暖房の入っていない船内を歩き回っているうちに、身体がすっかり冷え切ってしまった。
八甲田丸を見た後は、この日の宿泊場所である青森国際ホテルへと急いで向かった。


八甲田丸船内の展示 八甲田丸エンジンルーム
こんな人形を見ると一緒に写真を撮りたくなる 男の子ならばワクワクしてくる光景だ

ここのホテルは割引がきいてかなり安く泊まれるのだが、何時も利用しているビジネスホテルと比べると部屋も広くて、とても快適に過ごすことができた。
一休みしてから、「津軽じょっぱり漁屋酒場」へと向かう。
居酒屋で津軽三味線の実演3年前の白神山地への旅の時も、最終日にここに入ろうとしたが、満員で入れなかったところである。
今回は確実を期して予約を入れておいたけれど、午後5時の開店と同時に入ると、さすがに一番乗りだった。

美味しい食べ物に舌鼓を打っていると、午後7時から津軽三味線と民謡の実演が始まった。
それが、私達の座っている直ぐ目の前で三味線を弾いてくれたので最高だった。
一番乗りをすると良いことがあるのだ。

居酒屋を出て「灯りと紙のページェント」を見に行く。
同じ場所で午後6時45分からザ・もつけ祭の花火大会もやっていて、最初の予定では早めに居酒屋を出てその花火を見に行くつもりでいた。
でも、津軽三味線の実演が始まると聞いて、そちらの方を選択したのである。

灯りと紙のページェント風が強く、アルコールで温まっていた身体も直ぐに冷え切ってしまう。
この日は東京でも大雪が降って、大騒ぎになっていた日でもあったのである。
和紙のオブジェの写真を綺麗に写そうと思って三脚も用意していたのだが、寒くて堪らず、急ぎ足で歩きながらササッと写すだけで済ませてしまう。
後でじっくりと写真を見ると、当然のことながら手ぶれの写真ばかりだった。

最終日は青森県立美術館で「あおもり犬」に会いたかったのだが、帰りの電車は午前11時50分発。
美術館まではバスで20分もかかり、時間的にあまり余裕が無いので、徒歩圏内にある青森市森林博物館に行き先を変更した。
ここも味わいのある建物で、展示も結構楽しめて、変更は正解だった。
ただ、風が強く雪が降る中を博物館まで15分程歩いて、そして暖房の入っていない館内で展示を見ていると、またしても身体が冷え切ってしまった。

そして最後に、市場で今夜の夕食の買い出しをして、冬の青森の旅を終えた。
東京では交通網が寸断され大混乱している中、こちらの方は大したこともなく、札幌までたどり着くことが出来た。
寒さに震える雪国青森の旅だったが、それが如何にも冬の旅らしくて、雪国青森を満喫出来たのである。


青森市森林博物館
美しい森林博物館の建物 映画八甲田山のロケも行われた旧営林局長室


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