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我が家のファミリー通信 No.54

別海町パイロットマラソン


マラソン会場入りいよいよ、私達にとって初めてのフルマラソン、別海パイロットマラソン当日を迎えた。
会場に隣接するキャンプ場に泊まっていたので、10時スタートに間に合うようにのんびりと会場入り。
この大会に何度も出場しているこうめさんことkenjiの姫さんが一緒なので、とても心強い。
マラソン会場の雰囲気にのまれることもない。

準備は完璧。
2週間前に30キロを走り、一週間前からは1時間程度のウォーキングを2日間しただけで休養も十分。
9月には30キロ走2回と20キロを1回走って、久しぶりに走行距離が月間200キロに達した。
3時間前に朝食もたっぷりと食べたし、トイレも済ませたし、後はスタートの合図を待つだけ。


ミルパー
パイロットマラソンのキャラクター「ミルパー」 こうめさんと一緒だと心強い

スタート前フルマラソン参加者は男女合わせて1500人くらいだろうか。
スタート地点には「サブ3を目指す人」「サブ4を目指す人」と書かれた看板が立っていて、勿論私達はそんなところには並ばない。
それでも、何となくそれ以外の集団の前の方に並んでしまった。
私の目標タイムは4時間半。
それも少し遠慮気味に設定したタイムである。
過去の30キロ走では3時間10分程度で走れていたので、残りの12キロを1時間20分で走れば良いのだ。
本番になれば練習よりももっと早く走れるかもしれない。 そんな目論見をしていた。

ただ不安なのは、過去の30キロ走では、走り終えた段階で余力はゼロ。フルマラソンではそこから更に12キロの未知の世界を走らなければならないと言うことだった。
いよいよスタート不安と共に楽しみでもある。 もしかしたら、私が未だに経験したことの無いランニングハイの世界に行けるかもしれない。
何せ、本格的に走る様になる前から、疲れも知らずに長距離を走っている夢を何度も見ていた私なのである。

スタートのピストルを合図に、大きな集団が一斉に動き始める。
別海の市街地を抜けるまでノロノロしたペースが続く。
次第にその集団がばらけてきて、自分のペースで走れるようになってきたが、周りの流れに合わせてゆっくりと走る。
もしも、こうめさんからのアドバイスが無ければ、この辺りからどんどんと追い抜きをかけていたかもしれない。
「最初は遅すぎると感じるくらいのペースでちょうど良い。キロ6分30秒から6分50秒のペース」
でも、自分はあくまでも4時間半が目標なので、GPS腕時計を見ながら6分30秒を少し切るくらいのペースで走っていく。

余裕たっぷり最初の5キロの給水。
ゆっくりと歩きながらコップ1杯の水を飲み干す。
2年前に初めて走った余市のハーフマラソンで、テレビで見ているように走りながら水を飲もうとして失敗し、その後喉が渇いて苦労したことがあったので、給水だけは確実に取る様にしていた。
それに今日は天気が良いので、スタート前の浅井恵理子さんの挨拶でも、水分はこまめに補給するようにと言われていたのである。

コースの周辺には牧草畑が広がり、そこに積まれた牧草ロールにはペンキで応援メッセージが書かれている。
ウエストポーチにカメラも入れてあったので、そんな風景を写そうとするが、二人だけで走っている時と違って、本番レース中ではゆっくりとカメラを構える余裕もない。


沿道風景 牧草ロールメッセージ
並べられた牧草ロールにはメッセージが 笑わせてくれる

キロ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
タイム 6:33 6:24 6:21 6:19 6:24 6:25 6:15 6:21 6:24 6:35

10キロ毎の給水所には水の他にスポーツドリンクとオレンジジュースが用意されている。
飲み慣れていないのには手を出さず、ここでも水を1杯飲み干す。

手を振って応えるkenjiさんが小さなスクーターでコースの途中に先回りし、写真を撮ってくれる。
国道の片側1車線を通行止めにしてマラソンコースにしているので、スクーターで先回りすると言っても容易なことではない。
何せ、根釧原野の道路事情なので、国道を通らずに先回りするためにはとんでもない遠回りを強いられるのである。
そんなkenjiさんに手を振ってこたえる余裕が、まだ十分にあった。

15キロで給水。
5キロ毎の給水ポイントはちょうど良い区切りにもなる。
給水ポイントの中間地点では水を含ませたスポンジのサービスもある。
余市のハーフマラソンではそんなサービスは無かったので、嬉しくなる。
早速手に取って、腕を冷やしたり首筋を冷やしたりしてみる。
二人並んで走るでも、スタートする頃は良い天気だったのに、何時の間にか雲が広がり、風も強くなってきていた。
スポンジサービスの有難味も半減である。

これくらいの天気の方がマラソン日和と言えるのだが、半袖に短パンだと寒く感じるくらいだ。
汗もかかないので、途中で飲んだ水がそのままオシッコになってしまったのか、トイレに行きたくなってくる。

○キロではバナナや砂糖などのサービスがある
普段は毎朝走る前にバナナを1本食べているので、ここではバナナをチョイス。
半分に切って置いてあるので、その半分を食べる。
後でこうめさんに言われたのだが、ここでは1本分を食べておいた方が良かったかもしれない。


キロ 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
タイム 6:35 6:32 6:36 6:31 6:49 6:27 6:30 6:38 6:37 6:41

20キロを通過。
汗もかかず、喉もそれほど乾いていないので、ここでは水を少し飲んだだけだった。

中間地点で前に出るかみさん折り返し地点はまだ先だけれど、フルマラソンの中間地点を通過。
かみさんはここまで、ずーっと私の後に付いて走ってきたが、中間地点から先はそれぞれのペースで走ろうと言うことにしていた。
それを待っていたかのようにスルスルと前に出ていくかみさん。

私も少しペースを上げようと思ったが、体がどうも動かない。
20キロの手前ではかみさんと「まだ余裕があるな〜」と話していたのに、急にその余裕が無くなって気がする。

折り返し地点が近づいたところで、こうめさんとすれ違う。
今年に入って股関節の調子が悪いこうめさんは、タイムは気にせずにゆっくりと走ると言っていた。
その次にかみさんとすれ違う。僅かな時間で結構な差が開いていた。

途中でトイレに並んでいたこうめさんを追い抜かす。
ふくらはぎが痛くなってきて、とうとう途中で立ち止まり、足の屈伸をする。その間にこうめさんに追い越されたので、慌ててその後に付いて走り出した。
「このままこうめさんに付いて行ってみよう」
エネルギーが切れてきたそう思ったものの一緒に走れたのは数百メートルだろうか。こうめさんが速いペースで走っている訳ではなく、私のスピードがガクッと落ちてしまったのだ。

ここでポーチに入れてあったエネルギー補給用のゼリーを食べる。
これも後でこうめさんに言われたのだが、もっと早くにこれを食べておいた方が良かったみたいだ。

やっと25キロを通過。
何度も足が止まってしまう
これまで30キロ走を3回走っていたが、足の疲れ具合でいえば、今日の状態が一番悪いかもしれない。
初めて30キロを走った時も同じようにヨレヨレになっていたが、その時は気温が30度近くまで上がっていたのだ。
一体どうしてしまったのだろう。


空元気 疲労困憊
カメラに気が付いて元気な振りを でも直ぐに元の状態に

キロ 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
タイム 6:53 6:27 7:17 7:30 6:52 7:55 8:06 8:37 7:56 7:48

給水ポイントそうして30キロを通過。
ここでは水を止めてスポーツドリンクを飲むことにした。
普段はその変な甘さが嫌いなのだが、今日はその甘さが嬉しく感じた。
身体が糖分を欲しているようだ。
走っている間にずーっと感じていた寒気は、気温と風のせいばかりではないかも知れない。

これから未知の12キロを走らなければならないと言うのに、体力は限界に達していた。
いや、体力はまだ残っているのに、足が動かないのだ。

ザックを背負って自転車で走り回っているスタッフがいた。
最初は「彼らの役目は何なんだろう?」って思っていたが、ここから先、何度も彼らのお世話になることとなる。
ザックの中にはエアーサロンパスが入っていて、足が痛くて走れなくなった人を見つけてはそのエアーサロンパスを吹きかけてくれるのだ。

でもエアーサロンパスで足の痛みは一瞬消えるけれど、その効果は直ぐに消えてしまう。
走ったり歩いたりを繰り返す。
ライバル達周りもそんな人達ばかりになってきた。
皆が走ったり歩いたりを繰り返すものだから、その度に追い抜いたり追い越されたりを繰り返すことになる。

その中に若い女の子が一人混ざっていた。
おじさんに追い越されると腹が立つけど、彼女にならば何度追い越されても、「頑張れ〜」と声をかけてあげたくなる。

その彼女は何故か、途中の給食ポイントで手にしたバナナを2本、両手に持ったままで走り続けている。
多分、バナナを取ったものの食べる余裕も無いのだろう。
こちらは糖分不足に陥ってるものだから、そのバナナが気になってしょうがなかった。

疲れがピークに途中でkenjiさんがカメラを構えていたが、手を振る余裕も無くなってきていた。
やっと35キロを通過。

相変わらず尿意が消えないので、仮設のトイレに入ろうとしたが、ちょうど運悪く使用中だった。
ここまで来たら、トイレが空くのを待っていれば良さそうなものの、その時間がもったいなくて走り続ける。
いや、歩き続けるの表現の方が合っていそうだ。

誰かがコースからそれて防風林の陰で用を足しているのを見て、私もその真似をした。

残り5キロを切ってようやくゴールが見えてきた気がした。
毎朝走っているコースで考えれば、5キロ何て僅かな距離である。
でも、ここでは1キロ1キロが果てしなく遠いのである。

道路が林の中に入ると風が遮られ、冷えた体が何となく暖まってくる気がした。でも、その林を抜けると再び風が吹き付けてきて、体に鳥肌が立ちそうになる。指先も痺れてくる。
これで果たしてゴールまで辿り着けるのだろうか。

沿道から地元の人達が「頑張って」と声をかけてくれる。それに「頑張ります!」と答えて、自分に活を入れる。

「ここまで来たら、スピードを上げて一気に走ってしまった方が楽かもしれない」そう思ってスピードを上げてみたら、意外と早く走ることができた。
しかし、そうすると着地の衝撃が大きくなって、腹が痛くなってくる。
「まずい、内臓もダメージを受けていそうだ」
再びすり足のような走り方に戻す。

ゴールまでもう少し「何とか5時間以内で走ろう」
しかし、残りのキロ数と今のペースを考えると、それはもう無理な話だった。そんな事より、ゴールまで辿りつくことを考えなければならない。
街の中に入ってくると沿道の応援も多くなってくる。それを励みに走り続ける。

しばらく私の前を走り続けていた女の子が、とうとう歩き始めた。追い抜く瞬間に「もう少しだから頑張ろう!」と声をかけると、苦しそうな表情ながらも「はい!」と応えてくれた。

そうしてようやく競技場まで戻って来た。
トラックを一周、最後は万歳をしながらゴールイン。
スタッフの方が大きなバスタオルをかけてくれた。
走り終えた満足感よりも、そのタオルの温もりの方が嬉しかった。


キロ 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42
タイム 8:51 8:47 8:18 8:19 7:58 8:47 9:22 9:22 8:11 8:03 8:17 7:56

完走賞をもらって、鮭の引き替えコーナーへ。
発泡スチロールに入った鮭の重みが、走り終えた満足感よりも心に残った。

具沢山の鮭汁無料で振る舞われる暖かな鮭汁を食べてようやく人心地付けた。
その汁がちょっとしょっぱかったのは、もう終了間際で、汁も煮詰まっていたからなのだろう。

かみさんのタイムは4時間32分55秒、私は5時間11分56秒。
かみさんでさえ4時間半なのだから、私がそれを目標タイムにしていたのは無知であることの怖さだろう。
ちなみにこの大会の制限時間は5時間20分。危ないところだった。
完走者は男女含めて1180人。私の総合順位は1138位。
タイムや順位より、完走できたことが大きな収穫の初マラソンだった。

二人で鮭を抱えてキャンプ場に戻ると、その姿を見てkenjiさんがとても感激してくれた。
途中の私の姿を見ていたので、「完走できなかったら、どうやって声をかけよう」と心配してくれていたのだ。
何だか、私よりもkenjiさんの方が、完走できたことに感動してくれたみたいだ。
当の本人は、バスタオルの暖かさと、鮭の重たさと、鮭汁のしょっぱさくらいしか、心に残っていないのである。


3人で記念撮影


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