我が家のファミリー通信 No.48

道東の旅(根室編)


今日の昼食は厚岸で牡蠣蕎麦を食べることにしたので、塘路から道道221号塘路厚岸線経由で一路厚岸を目指した。
ところが途中の上尾幌で、厚岸市街と書かれていた道路標識の矢印に従って道を曲がり、道道1128号の厚岸昆布森線へ入ってしまう。
道迷いルートその後も道路標識に従いながら交差点を曲がっていくと、ずーっと道路地図を見ていたかみさんが「何か変よ・・・」と言いはじめた。
言われてみると太陽が変な方向にある。
「えっ?ここはどこなの?」
混乱しながら辺りを見回すと、途中で横断したはずの国道272号を釧路方向に向かって走っていたのである。

どうしてこんなことになったのか、さっぱり分からない。
そのまま走り続けると、国道を横断した時の見覚えのある交差点までやってきた。
これで見事に一回りしたことになる。
後で距離を測ると13キロの一回りだった。

以前に、阿寒から足寄へ向かう時に途中の交差点を曲がらずに津別町へ向かってしまった時、道央道の江別東ICから札幌へ戻ろうとして旭川方向の車線に入ってしまった時、カヌークラブのメンバーを先導して音江山の山頂に向かっているつもりが違う尾根に登ってしまった時、それ以来の痛恨の道間違いである。
何れもここ最近の話であり、加齢による脳の衰えを痛切に感じてしまう出来事であった。

牡蠣蕎麦そんなトラブルに見舞われながらも無事に厚岸に到着。
ここでも、勘違いして全く違う店に向かう失態を演じながらも、駅前の藪蕎麦という店でぷりぷりの牡蠣の天麩羅がのった蕎麦を美味しく食べることができた。

国道44号を根室へ向かう途中、国道沿いの茶内酪農展望台に登ってみる。
冬は閉鎖されているのかと思ったら、雪は積もっているものの、そのまま解放されていた。
武骨な鉄骨造りの展望台は高さもあり、おまけに階段は雪が積もって凍っているので、登るのも結構スリルがある。
かみさんは怖気づいたので、私一人で根釧台地の冬の風景を楽しんだ。

茶内展望台から駐車場を見下ろす他にも冬の霧多布湿原とか落石岬とか寄りたいところは沢山あるけれど、欲張っている時間もないので諦めるしかなかった。
真冬に釧路から東へ来るのは、私にとって初めての経験なので、何度も訪れているところでも全く別の土地の様に新鮮に感じられるのだ。

根室では風蓮湖のほとりのバンガローに泊まりたかったけれど、ちょうどこの週末は根室バードランドフェスティバルが開催されている関係で満室となっていた。
しょうがなく中心部のホテルを利用することにする。たまたま職場の福利の補助が効くホテルがあったので、1泊3千円を切る料金で泊まることができ、バンガローよりはかなり安上がりとなる。

明朝の行動の下見のため、道の駅「スワン44ねむろ」に立ち寄る。そこではちょうど、バードランドフェスティバル関連の展示がされていた。
それには大して興味は無く、道の駅の横から湖に下りられることを確認して、次の目的地である春国岱へと向かった。

流氷の海と春国岱2年前の春国岱での野営は本当に刺激的で印象に残るものだった。
その春国岱の冬の風景を是非とも見てみたかった。

駐車場までは普通に車を乗り入れられる。
消波ブロックで遮られたその先の海は、既に全面が流氷に埋め尽くされていた。
今年の冬は流氷の南下も早く、根室では平年よりも11日早く1月31日に流氷初日を観測していたのである。
最近は流氷の少ない年が続いていたので、それが根室の地でこうして流氷を見られたのはかなり幸運だったといえるだろう。

ザックにスノーシューを取り付けて、木道を歩き始める。
真っ白な雪原の中に木道だけが真っ直ぐに続いている光景は、私の心を強く刺激する。私にとって春国岱は、常に最果ての地をイメージさせてくれる土地なのである。


木道を歩いて春国岱へ 上空には既に月が昇っていた
木道を歩いて春国岱を目指す 湿原を横断する木道、上空には月が

凍り付いた春国岱の湿原途中で木道を降りてみると、氷の様に固く締まった雪は木道の上よりも歩きやすかった。
多分この辺りは水面が広がっている場所のはずだ。
所々に水が浸み出して氷った様な跡があり、そこだけが青く輝き何とも美しい。
しかし、そんな様子を見ると足元の氷が不安定なものに感じてきて、足がすくんでしまう。

雪原の向こうには木製の展望台がオブジェの様にポツンと見えている。
少し傾いたその展望台は、現在は立ち入り禁止になっている筈で、まさしくオブジェそのものなのだ。

立ち枯れたエゾマツの森木道はアカエゾマツ林の中へと続いている。
海水と接する部分のアカエゾマツは立ち枯れたものが多く、野付半島のトドワラの様な風景を作っている。
野付のトドワラは風化が進み、枯木の残骸が僅かに残るだけになっているのに比べて、こちらは既に倒れたものから、立ち枯れて間もないものまでが混ざり合い、景観的には圧倒的に勝っている。

既に太陽は地平線近くまで高度を下げ、このまま林の中へ入ってしまうと肝心の日没シーンを見逃してしまいそうなので、途中から引き返して、雪原まで戻ることにする。

海岸の消波ブロックの上に登ると、一匹のキタキツネが流氷の上から陸へと戻ってくるところだった。
展望台の回りに集まるエゾシカ達キタキツネはそのまま雪原を横切って森の中へと入っていった。

木製展望台の周りにはエゾシカの群れが集まっていた。
彼らもまた、夕日が空を赤く染める中、森へと帰っていく。
春国岱の森は生き物たちの格好のねぐらとなっているのだろう。

その森の木々をシルエットに変えながら太陽が沈んでいく。
春国岱に沈む夕日をたっぷりと堪能してから車へと戻る。
満月に近づきつつある月が空高く輝いていた。


春国岱の風景 残照に染まる春国岱にお別れ
荒涼とした風景のかなに展望台がポツンと一つ 残照に染まる春国岱にお別れ

夕焼けの中をねぐらに帰るエゾシカ達
立ち枯れたエゾマツがシルエットに変わる頃エゾシカ達はねぐらに帰る

次第に暗さが増してくる中を根室市内のホテルへと車を走らせる。
私たちがテント泊以外で旅行する時は、できるだけ安い宿を探す。
私はとほ宿なども面白そうだと思うのだが、かみさんがそんなところは苦手なので、結局は気兼ねせずに泊まれるビジネスホテルを利用することになる。
夜は居酒屋へコンクリートに囲まれた部屋は味気ないけれど、こんな時の楽しみは夜の街に出かけることである。

ホテルに到着して落ち着く間もなく、直ぐに街に繰り出した。
強烈な寒さに身震いする。そんなに気温は下がっていない筈なのに、春国岱を歩いている時よりも寒さが身に染みてくる。
海が流氷に覆われている影響もあるのだろうが、街の中を吹く風は、自然な中で受ける風よりも寒々しく感じるのである。

目指す店は「郷土料理炉ばた俺ん家」。
暖簾をくぐると、私たちが最初の客だった。
今日は土曜日である。去年の11月、青森で同じ土曜日に居酒屋に入ろうとしたところ、どこも満員で空いている店を探すのに一苦労させられた。
寂しい根室の街の夜そんなことがあったので、ホテルを出る前に予約の電話を入れようかとさえ考えたのだが、もしもそんな電話をしていたら店の人に驚かれたことだろう。
かみさんから「青森と根室を一緒に考えるのが間違いなのよ!」と諭されてしまう。

美味しい料理を堪能して店を出る。
結局、私たちがいる間に入ってきた客は他に2組だけだった。
根室の夜の飲食店街には人の姿は無く、通りに飾られたイルミネーションが空しく輝いている。
流氷原を渡ってきた冷たい風がその中を吹き抜けていく。
何だか根室らしくて良い風景だった。

根室の日の出翌朝は7時にホテルを出る。コンビニで朝食を買い、それを食べる場所を探して納沙布岬方向に向かって車を走らせる。
その途中で朝日が昇ってきた
流氷の眺めが良い場所見つけ、そこに車を停めて食事にする。
岬の先端まで行くつもりはないので、食後は半島の中を適当に車を走らせ、その茫洋たる風景を楽しむ。

半島を横断して友知海岸へと出てきた。
さすがにこちらまで流氷は来ていないが、波打ち際の海水はシャーベット状に氷っている。
その氷が波打つ向こうには友知島などが浮かんで見えている。

凍りかけた海防波堤の上に一羽のオオワシが悠然と羽を休めていた。警戒心が強く、カメラを構えてそーっと近づいたが、直ぐに逃げられてしまった。
でも、ここでがっかりすることは無かった。
今日の午前中のイベントは風連湖の氷下待網漁に集まるオオワシやオジロワシの姿を撮影することなのである。

バードランドフェスティバルの行事で「オオワシ探鳥会」なるものが午前8時から開かれることになっている。
それに参加すれば確実にオオワシを見られるところに連れて行ってくれるのだろうが、団体行動が嫌いな我が家なので、何時もの様に自分たちだけで行動するつもりだ。

道の駅に車を停めて風蓮湖の湖上へと降り立つ。
氷の上に薄く雪が積もっているだけなので、スノーシューを履かなくても大丈夫だった。 固く吹きだまった場所ならば全く埋まらないので、キュッキュッと音を立てながら小気味よく歩くことができる。

風蓮湖を歩く広大な風連湖の湖上の方々に網が仕掛けられているようだ。
その間を時々スノーモービルが行き来している。でも見える範囲では網が上げられている様子は無かった。

オオワシ探鳥会は道の駅からもっと先の川口漁港付近で行われている。
できれば私達もそちらへ行きたかったのだが、車を停められそうな場所がないので諦めたのである。
自分たちだけで行動するのは気楽で良いけれど、車の駐車など地元の人の迷惑になることだけは避けなければならない。

オオワシを見ることにそれ程こだわっていたわけではなく、こうして氷った風蓮湖の上を歩けるだけで十分だった。
対岸に見える春国岱の森を目指して歩いていく。
真っ白で広大無辺な風蓮湖の湖上にポツンと放り出された感覚が堪らない。両手を真っ青な空に向かって思いっきり広げる。その風景全てを自分のものにできた気がする。

大きく翼を広げて空を横切っていく鳥。「おぉっ!オジロワシだ」とカメラで連写したが、液晶画面で拡大してみるとただのトンビだった。
春国岱の森に着いたそれでも別にかまいはしない。黙々と湖上を歩き続ける。

次第に春国岱の森が大きく見えてきた。
風景が広大すぎて距離感が全く掴めないが、道の駅の湖岸からは約1.3キロ。
毎朝走っている距離と比べれば、散歩よりも楽なものである。

昨日の夕日が沈んだ森のちょうど反対側になるのだろう。
こちら側も水際には立ち枯れたアカエゾマツが林立している。
湖から上がると雪が柔らかくなるので、そこからはスノーシューを履く。

枯れたヨシ原の中から、エゾシカがこちらの様子をうかがっていた。
塘路のエゾシカと違って春国岱のエゾシカは人馴れしていないのだろう。私が足を進めると、アシ原の中をピョンピョンと跳ねながら遠ざかっていった。


林立するエゾマツの枯木
墓標のように立ち枯れたアカエゾマツが林立する

草むらの中から様子を窺うエゾシカ トドワラの様な風景が広がる
こちらの様子を窺うエゾシカ 本物のトドワラを上回る様な風景

照り付ける太陽もっと遠くまで探検してみたかったけれど、この後もまだイベントを予定していたので、適当なところで引き返すことにする。
相変わらず素晴らしい青空が広がり、真っ白な雪原を太陽が照らし出す。
このまま何時間も湖上を歩いていたら顔が真っ黒に焼けてしまいそうだ。

待網漁の網が仕掛けらた場所に一羽のオオワシがいた。
そーっと近づいたけれど、またしても逃げられる。
かみさんから「何か餌でつらないとダメなんじゃない?」と笑われてしまった。

こうして根室でのイベントは終了。
道東旅行最後の宿泊地は川湯温泉である。
根室を後にして、まずは尾岱沼へ向かうことにした。
(2012年2月4日〜5日)

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