もう一つの不満は、今のオデッセイよりも馬力が無いこと。
これについても、高速道路の登り坂で追越するのを我慢さえすれば、それ程気にもならないだろう。
歳を経るにしたがって、遅い車の後ろに付いてもイライラしないだけの我慢強さが身に付いてきているのだ。
商談の際に当て馬にするようなライバル車も見当たらず、購入する車はエクストレイルにあっさりと決まってしまった。
車のグレードも、余計なものは要らないので標準的な20Xにすんなりと決定。
メーカーの希望小売価格は245万で、補助金や値引きを考えると、オデッセイを買った時よりも安くなりそうだ。
そこに突然かみさんが、「ディーゼルにした方が維持費を考えたら得になるんじゃない?」と言い始めたのである。
勿論、ディーゼルの方が燃費も良いし燃料代も安いのは分かっていたが、最近発売されたばかりのオートマ車は314万もするのだ。
私にとって、たかが車に300万以上の金をかける事は、ありえない話しなのである。
そもそもそんな金が何処から出てくると言うのだ?
「ん・・・?、かみさんだって値段のことは知っているはずだし、それでもディーゼルが良いと言う事は・・・!」
私の場合、我が家の家計については全くノータッチで、貯金がいくらあるかも全然知らないのである。
別に私が、金のことにはこだわらない大らかな性格だという訳ではなく、かみさんに聞いても教えてくれないので、それ以上知ろうともしないだけの話である。
私が管理しているのは、残高30万ほどの通帳一つだけで、パソコンとか趣味の道具類とか、私が個人的に欲しいものは全てここから支出している。
今回は、私のこのささやかな個人資金からの拠出までは要請されていないので、全てかみさんが管理している通帳から支払い可能なのだろう。
このディーゼル車はガソリン車よりも圧倒的に馬力もトルクもあり、今のオデッセイよりも性能は高い。
300万の金額に抵抗を感じることに変わりは無いけれど、車の性能は別である。
車には興味が無いとは言っても、どんな車でも良いと言うわけではない。
信号が青に変わった瞬間には隣の車がバックミラーに写るくらいまで引き離したいし、高速道路で追抜きをかける時はなるべく短時間で済ませたい。
つまり、それなりに走ってくれなくては満足できないのである。
そこで、かみさんがディーゼル車が良いと言い始めた時は、内心はニンマリとしていたのだ。
これならば高速道路の登り坂も気にならないだろうし、無料化で渋滞する一車線しかない高速道路でも、追い越し区間で一気に遅い車の列を抜き去り・・・。
いやいや、そんな危険な運転はしないで、遅い車の列を半分だけ抜き去り、残りの半分は次の追い越し区間で抜き去ることにして、それまでは遅い車の後ろを我慢して付いて行くのである。
こうして車種とグレードまで決まり、残るは色だけ。
私は最初から赤しか眼中に無かったけれど、かみさんは「もう歳なんだから、5年後のこととか考えると、もっと落ち着いた色の方が良いんじゃない?」と言ってきた。
でも、色だけは譲れなかった。
どうせ遊びに使う車なのだから、色は派手な方が良いのだ。
もしもまっ黄色があれば、躊躇い無くそちらを選んだことだろう。
全てが決まったところで週末にディーラーに出かける。
最初に入ったのは展示車両も多い比較的大きな店だった。
まずまずの値引き条件が示され、「赤は在庫が2台しかないので直ぐに契約した方が良いですよ」と勧められる。
私達夫婦は二人揃って、図図しく値引き交渉をすることができないタイプである。
それでもさすがに、最初に入った店の初回の交渉で車を買ってしまう程には単純でないので、「ちょっと検討してみます」と言って店を出てきた。
かみさんは「もうこれで決めても良いわね」と言っているが、念のために我が家から直ぐ近くの小さな店にも入ってみることにした。
対応してくれた女性セールスマンは「ディーゼルは燃費が良いと言っても、それで元を取るには10年以上かかるので、 私はガソリン車をお勧めします」と見当違いのことを言ってきて、内心「わざわざ来なくても良かったかな」と思いながら一応見積りを出してもらう。
そしてその、出てきた金額を見てビックリしてしまった。
先ほどの店とは比べ物にならないくらいの値引きなのである。
そしてその系列のディーラーには赤は1台しかなくて、現在他のお客さんが交渉中だけれど、今日中に決めてくれればこちらの権利になるとのこと。
如何にもセールスマンが良く使う手口にも思えたけれど、補助金が何時打ち切られるかも心配だったので、とうとうそこで購入を決めてしまった。
家に帰ってから最初の店のセールスマンから電話がかかってきた。
既に他の店で決めたこと、そしてそこで出された条件を教えてやると「こちらならもっと良い条件を出せる、もう一度考えて欲しい」と言ってきた。
それなら最初からその条件を出せば良いのに。
多分もう少し粘れば、オプション品などでまだまだ安くできただろうけれど、値引き交渉の苦手な私達なので、少しずつ下げてくるようなセールスマンを相手にする気にはならないのである。
後は納車を待つだけの状態になって、ちょっとだけ問題が起きた。
オデッセイで十勝へ出かけようとした時、ブレーキを踏む度に異音がするようになってきたのである。
ブレーキパッドが磨り減っているのが原因だろうと想像が付いたので、気にしないでそのまま札幌を出発。
以前にディーラーで点検した際に指摘されていたのだけれど、もう半年持てば良いだけなので修理せずに放置していたのだ。
ところが次第にブレーキを踏まなくても音がするようになってきて、十勝から戻ろうとした時には周りの人が驚くくらいの音の大きさになっていた。
様子を見てみると、ディスク面にかなりの傷が付いているのが分かる。
車の構造については全然分からないので、果たしてこの状態で札幌までたどり着けられるのか心配になってきた。
まあ何とかなるだろうと開き直って、そのまま車を走らせ何とか札幌まで戻って来られた。
ホンダのディーラーに見てもらうのも気が引けて、日産の店に相談しに行くと親切に対応してくれて、結局材料費5千円の負担で修理してくれることになったのである。
でも、考えてみれば、新しいエクストレイルは登録も終えて、代金も半分は先払いし、それなのにまだ納車されていないのは相手の都合なのだから、これくらいは当然受けるべきサービスなのかもしれない。
それにしても、最後の最後まで頑張り続けるオデッセイである。
そうして今は、納車になった翌日からカヌーを積んで十勝へ出かけたのを初めとして、道東、道北、道南へとエクストレイルで快適に走り回っているのである。
高速道路の坂道での加速にも不満は無く、それにやっぱり燃費の良さが嬉しい。
これまでのようにガソリン代を気にすることも無く、おまけに高速道路も無料で、週末のたびに遠出している。
心配していたカナディアンカヌーの搭載も問題なく、これまでのように一人で積み下ろしが出来なくなったが、それは主に私の非力さの影響の方が大きそうだ。
|