山を下っていくと、次々と登ってくる登山者とすれ違う。ほとんどが中高年登山者である。
太ったおばさんのガイドが率いる20名以上のツアー、そのおばさんガイドが「下りてくる人がいるので横に寄って下さ〜い」と号令をかけてくれる。
「ありがとうございます」と挨拶しながら、その横を駆けるように下っていく。
並んで待ってくれているおばさん達の間から、「さすがに若い人は早いわね〜」との声が聞こえてきた。
そう言われて悪い気はしないけれど、そのおばさん達と私達に、多分それほどの年齢差はないのだろう。
かなり下まで降りてくると、それまでの中高年登山者とはちょっと違って、小さな子供を連れた3世代ファミリーとか、若い男女のグループなどとすれ違うようになる。
3名の若い女性が楽しそうにおしゃべりしながら登ってきたのとすれ違う。
「こんにちは!」と挨拶を交わす。
ちょっとしてから、前を歩いていたかみさんがぐるりと振り返り、「今までとは随分、挨拶する声が違っていたわよ〜」と指摘された。
まあ確かに、ホッチャレみたいなおばさんと挨拶するよりは、若い女の子が相手の方が、こちらも思わず元気が出てしまうのである。
入山届けに下山時刻を書き込む時、途中ですれ違った女性の時間を見ると、私達より15分早く登り始めて、下山時間は更に1時間も早くなっていた。
ここまで差があるものなのかと驚いてしまう。
登山口は既に車で一杯でになっている。
そこにまた1台登ってきて、停まる場所がなくて困っているようなので、汗を乾かす間もなく海へ向かって出発した。
目指すは小樽海岸自然探勝路の途中にある山中海岸である。
近くのオタモイ海岸は有名だけれど、この山中海岸は、自然探勝路のことを調べている時に初めて聞いた名前だった。
車を停めた場所から20分ほど山道を下って、ようやく海岸へと出られるらしい。なかなか秘境っぽくて興味を惹かれる。
住宅街を抜け、そのまま真っ直ぐ海へと向かう坂道を登っていくと、小さな社の建つ広場へと出てくる。
ずらりと並んだ33体の地蔵尊が目を引く。
社の隣りには出羽三山神社小樽教会の看板が架けられた建物も。
何かの由来のある場所かとも思ったが、東北出身の信者が昭和46年に個人的に建立したものらしい。
地蔵尊の直ぐ後を小樽海岸自然探勝路が通っていて、そこから分かれて海の方へと下りる道が続いている。
大きな樹木に頭上を覆われ、歩くのが気持ち良く感じられる道である。
ただ、薮蚊が多くて、少しでも立ち止まると一斉に群がってくるのには閉口した。
途中の急斜面には、何処からか転がり落ちてきたらしい車が引っ掛かっていて、赤く錆び付いた無残な姿をさらしている。
ここの上には車が走れるような道も無いはずで、一体何処からこの車は降ってきたのか、ちょっとしたミステリーだ。
海岸へ下りるこの道は、計画的に作られたものではなく、自然と出来上がった踏み分け道のようである。
途中には分かれ道が沢山あるけれど、何れはまた1本の道に戻るので、どちらに進んでも問題はない。
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