素晴らしい風景に出合えて、晴々とした気分で車まで戻っていく途中、信じられない光景に出会ってしまった。
花が咲き乱れる中に、べたりと這いつくばっている一人のおばさん。
花のクローズアップ写真を撮ろうと、必死になっているのだろう。
しかし、その被写体として狙われている花の他に、一体何株の花がおばさんの下で潰されているのだろうか。
確かその付近には、カタクリがかなり密生していたはずである。
このおばさんは、何のために花の写真を撮影しているのだろう。
どんなに美しい写真が撮れたとしても、このようにして撮った写真に何の価値も無いことを、このおばさんに知ってもらいたいものである。
新しくなった真狩キャンプ場でお弁当を食べることにする。
普段は通らないような町道を走っていると、向いから走ってきたパトカーが民家の庭先に曲がっていった。
何か事件でもあったのかなと横目で見ながら通り過ぎると、何やら水のみ場らしい施設がちらりと見えた。
「何だ?あれは?」
直ぐに車をUターンさせて、先程のパトカーの後を追う。
そこでは警察官が、蛇口から流れ出している水をコップで受けているところだった。
「こらっ、お前ら!こんなところで何をやってるんだ!」と逆職務質問をしてやる。(実際に口から出た言葉は「ここは何の施設ですか〜?」だったけど)
するとその警察官は照れくさそうに、「ここの農家の方が施設を作って開放してくれているんです」と説明してくれた。
その施設の背後に見える羊蹄山。
京極町のふきだし公園や真狩村の湧水の里の湧き水も、きっとここの湧き水と何ら変わりは無いはずである。
そんなところで大混雑の中、順番待ちしながらポリタンクに水を汲むのなら、ここで汲ませてもらう方が絶対に良いだろう。
その大混雑する湧水の里を通り過ぎて、真狩キャンプ場へと向かう。
このキャンプ場は、去年までの工事を終えて、今年からサイトの一部がオートキャンプ場として再オープンすることになっている。
カタクリの丘で話した男性は、ここがオートキャンプ場になることを嘆いていた。
私も同感で、果たしてどの様に変わったのかを確認したくて、お弁当の場所に選んだのである。
駐車場に車を停めて、新しく完成した管理棟までの急な階段を登る。サイトはそこよりもまだ高い場所にあるので、階段を登っただけではキャンプ場全体の様子が分からない。
でも、工事完了直後の寒々とした雰囲気が漂う場内に、それ以上中に入る気にもなれず、弁当を食べる場所を近くの樹木園に変更して、そちらに向かった。
カツラ並木の中を通り抜け、殆ど訪れる人もいない樹木園の駐車場に車を停める。
池から流れ出す水音と小鳥のさえずりが聞こえるだけ。
やっぱりこんな場所が一番落ち着く。
おにぎりとカップラーメンの質素な昼食を済ませ、羊蹄山をぐるりと一回りしながら札幌への帰途に付いた。
2009/4/29 |