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我が家のファミリー通信 No.31

フウマと一緒にコテージ泊


 我が家の恒例になっている年に一度の温泉旅行、今年は丸瀬布のマウレ山荘コテージに泊まることになった。
 毎年、この時だけは家で留守番をさせられているフウマだけれど、下痢のために一日に少なくとも5回以上はウンチをするような状況なので、今年は一緒に連れて行くしかない。
 ペットと一緒に泊まれるような温泉宿もあるけれど、そんなところではウンチの度に外に連れ出すのも大変である。それで、ここのバンガローに目を付けたのだ。
 しかし、5人用のコテージで1棟の料金がオフシーズン平日宿泊で21,000円、そこに夫婦二人だけで泊まって、おまけにペットの宿泊料金が1匹1,500円かかる。
 かなり割高になってしまうが、今のフウマを連れて歩くにはこれくらいの出費は仕方が無いし、コテージに温泉が付いているのは魅力である。

 別料金でホテルでの食事も付けられるけれど、そこまで贅沢はできないので、出発前に近所のスーパーで食材を仕入れる。
 ちなみに、食事を別に頼めば最低でも一人5,250円から、一番上のピリカコースでは一人11,550円もするのである。
 食材に思いっきり金をかけても、絶対に自炊した方が安く上がる。
 そう考えると気持ちが大きくなり、そこのスーパーで一番高い肉、100g1,250円也のシャブシャブ用黒毛和牛を何のためらいも無く買い物かごに放り込む。
 お寿司だって、大好きなカニが沢山乗っているのに手が伸びる。
 次のビールコーナーでは、思わず第三のビールに伸びそうになった手を、無理やり向きを変えてサッポロ黒ラベルを掴ませた。
 ワインだって豪華に、何時も飲んでいるワインの2倍もする、きゅうひゃくはちじゅうえんの高級ワインをチョイス。
 しかし、もともとが貧乏性な性格なもので、贅沢すると言ってもこの辺までが限界。
 最後にレジに並ぶ頃には、「少し無駄遣いをしてしまったかな・・・」と後悔の念が湧き上がってくるのである。

 買出しを終えて高速道路で北に向かう。
 最近は高速道路を走るのが恐ろしい。
 後部座席で寝ているフウマが突然立ち上がるのは、以前は「窓から顔を出したい」のサインだったけれど、最近のそれは「ウンチが漏れそう」のサインなのである。
 高速道路上で車を停めて、犬のウンチをさせているわけにもいかない。
 「ま、待て!フウマ!もう少し我慢しろ!」
 今回はその後直ぐにパーキングにたどり着いたけれど、高速道路を走るのはリスクが大きいのだ。
 こんなフウマを連れての旅行は、まだまだ沢山のトラブルが待ち構えていそうである。

ラーメン村 旭川で昼になったので、初めて旭川ラーメン村に行ってみることにした。
 大きな三角屋根の建物に8店のラーメン屋が入っている。
 ちょうど大型の観光バスが到着してゾロゾロと人が降りてきていたので、混雑する前にと、ネットで検索して名前だけを知っていた「天金」に慌てて飛び込んだ。
 平日の昼食時間帯なのにあまり客の入っていない店内、素っ気の無い内装、シンプルなメニュー、もうちょっと店を吟味してから入ったほうが良かったかなと後悔する。
しょう油ラーメン 注文して出てきたしょう油ラーメンは麺につやが無く、如何にも粉っぽそうな外観で、これは旭川ラーメンの特徴かもしれない。
 でも、一口スープをすすると、それらのマイナスイメージも吹き飛んでしまうような美味しいラーメンだった。
 帰り際に他の店の様子も見てみたけれど、観光客向けに派手なメニューを並べたところが多く、案外と正しい店の選択だったような気がする。

 今日はホテルに入る前に山彦の滝を見に行くつもりでいた。
 冬期間は道路が除雪されていないために、滝までは2km程歩かなければならないけれど、凍りついた滝の姿はなかなか見事らしい。
 しかし、旭川でラーメンを食べているうちから雪が降り始めてきてしまった。
 今日から明日にかけて、北海道はこの冬一番の大荒れの天気になるとの予報が出ているのだ。
 低気圧は南から進んでくるので、北の方ならば雪の降り出しも夕方頃になるかもしれないと淡い期待を抱いていたのに、天気の崩れは予報よりも早まっているようである。
今日の宿 丸瀬布に着く頃には既にホテルのチェックイン時間も過ぎていたので、山彦の滝は諦めてそのままホテルに入ることにする。
 フロントでロッジの鍵を受け取ると、その瞬間に何となく自由を手に入れたような気分になれる。普通の部屋泊では、こうはいかないだろう。
 ロッジはホテルから300m程離れていて、その前に1台分の駐車スペースが雪を除けて用意されている。
 玄関前に置かれたスコップとほうきを見て嬉しくなった。雪が積もれば自分で何とかしなさいと言うことなのだろう。
 ロッジの内部は、外から見た以上に広く感じる。そして、内装は壁から天井まで全てパイン材で覆われている。
 今回は使うことも無さそうな一人用と二人用のベッドルームも、とても良い雰囲気で、二人で泊まるのが勿体無く思えてくる。
 洗面所にはアメニティグッズも一通り揃っていて、これならばホテルの部屋に泊まるのと全く遜色が無いだろう。


リビング 寝室

 風呂の方からちょろちょろと水音が聞こえてくるので中を覗いて見たら、そこには小さな宿の温泉と比べてもそん色無いような広々とした湯船があった。
 そこには温泉水が常に注がれて、溢れたお湯はそのまま洗い場の床を流れて排水口へと吸い込まれていく。ロッジの中にある施設にしては、何とも贅沢なお風呂である。
テラスから直ぐ外へ  リビングからは直接テラスに出られて、そしてその前には雪原と森が広がっていた。
 もしかしたら、風呂よりもこちらの方が嬉しい施設かもしれない。
 何せ、お腹全体に広がっている癌の影響なのか、フウマのトイレの回数は半端では無いのである。
 これならば直ぐに外に出られて、周りを気にせずにウンチをさせることができる。
 早速、スノーシューでテラスの前を踏み固めて、フウマのウンチ場を作った。
 ついでにそのまま森の中まで歩いていみる。
 元気な時のフウマならば、大喜びでこの森の中を、雪をこいで走り回っていたことだろう。
 しかし今のフウマは、ヨロヨロと外に出てきて、「こらっ!そこはまだテラスの上だ!もっとそっちに行って!」などと叱られながら、やっとの思いで用をたすのである。
 ここではウンチの始末は勿論のこと、後の宿泊者のことを考えるとオシッコの跡も残せないので、その部分の雪をスコップで掘り取って、目立たない場所へと捨てなければならない。
 自宅では、玄関を出たら直ぐにその付近でオシッコをしてしまうものだから、玄関の周りが黄色く染まってとても見苦しいのである。

源泉かけ流しの温泉でまったり ビールで乾杯をした後は、早速温泉に入る。
 自宅の風呂に入る感覚で源泉かけ流しの温泉に入れるのだから、何とも贅沢な話である。
 思いっきり手足を伸ばしても、まだまだ余裕のある広さだ。4人くらいで入っても窮屈な感じはしないだろう。
 泉質はアルカリ性単純泉なので無色透明だけれど、肌がツルツルして温泉気分をたっぷりと味わえる。

 風呂から上がり、いよいよ最高級牛肉でのシャブシャブである。
 コテージに一通りの自炊道具は揃っていたけれど、卓上コンロと土鍋を持ってきていたのでそれを使うことにする。
 お湯が沸騰してきて、「さあ、食材投入!」と思った瞬間にぷすりと火が消えてしまった。
 以前から調子の悪かった卓上コンロだけれど、とうとう壊れてしまったようである。
 幸いなことにコテージの備品に卓上電磁調理器があったので、お湯をそちらに移し変えて事なきを得たけど、それが 無ければ台所での立ち食いシャブシャブになるところだった。

シャブシャブ食べよう! ここの食卓テーブルは掘りごたつ式になっている。
 フウマにとっては目線の高さにご馳走が並ぶので、嬉しい施設である。
 食事が始まりそうな気配を感じて、のろのろと歩いてきたフウマ。テーブルの上を覗き込もうとした瞬間、足を滑らせて掘りごたつの中にドタッと落ちてしまった。
 痩せ細って骨と皮だけになっているフウマなので、骨が折れなかったかと心配したけれど、何とか無事みたいだ。
 でも、落ちたショックで、少しオシッコをちびってしまったようである。
 テーブルとの隙間が狭くて、なかなか引き上げられない。かみさんが無理やりテーブルの下に潜り込んで、やっとの思いでフウマを助け出した。

 これでようやくシャブシャブを始めることができる。
 100g1,280円の肉はさすがに美味い。噛まなくても口に入れるだけでとろけてしまう感じである。
 フウマも、先程の転落のことなど完全に忘れてしまったかのように、かみさんの手の上に置かれた肉にむしゃぶりつい ている。高い肉と安い肉の違いは、フウマでも十分に分かるようである。
 しかし、100g1,280円の肉は犬に食べさせるような代物ではないことだけは確かである。
 「冥土の土産なんだから、どんどん食べなさい」と言いながらも、バクバクと食べ続けるフウマに、私達夫婦の表情も次第に引き攣ってくる。
 それでも、最近はすっかり食も細くなってしまったフウマなので、直ぐにお腹が一杯になってしまうようで、その美味しい肉からもそっぽを向いて、私達をホッとさせてくれた。
 静かにテーブルを離れていったフウマは、今度は部屋の真ん中で立ち尽くしている。
 「ゲッ!早速ウンチかよ!」
 食う、出す、寝るの行動パターンをしっかりと守っているフウマなのである。
 ジャケットを着込んでフウマを外に出してやると、最初に踏み固めた場所にもう10cm近くの雪が積もっていた。
 フウマのウンチを済ませて、これでようやく落ち着いてシャブシャブに集中することができる。フウマと一緒の時は、この程度のごたごたは常に覚悟しておかなければならないのだ。


コテージから灯りが漏れ出る

 しんしんと降り続ける雪。
 ロッジの窓から漏れ出す明かりが、森の木々を仄かに照らしている。
 大荒れの天気で行き帰りのことが心配だったけれど、それさえ気にしなければ、こんな雪の日に泊まれるなんて本当にラッキーだった。
 道路に積もった雪を掻き分けて、ホテルの様子も見に行ってみる。
 イルミネーションの灯りとライトアップされたホテルの姿、これもなかなか美しい。
 大きなガラス窓を透して、レストランで食事をする宿泊客の姿が見える。ピリカコース11,550円也のディナーだろうか。
 雪の降りしきる道路上からそんな様子を撮影していると、まるで自分が「幸せそうな家庭の様子をそっと窺い覗く、路上暮らしのみなしご少年」にでもなったような気がする。
 いや、そう思っているのは自分だけで、他人からは「寒空の下、夫婦喧嘩で家から追い出された哀れな中年親父」にしか見えてないかもしれない。



 コテージに戻って、もう一度温泉に入る。
 その間にフウマは到着後3回目のウンチ。雪がどんどん降り続けるので、テラス前に作ったウンチ場にも直ぐに雪が積もってしまう。
夜のウンチの世話 歩行もままならないようなフウマなので、少し雪が積もっただけで歩けなくなってしまうのだ。
 家にいる時は何時も、一緒に寝ているかみさんがフウマのウンチの世話をしているので、今日くらいは私が代わってあげよう。
 そう思っていたものの、酔っ払って爆睡してしまい、結局かみさんがフウマを外に連れ出すのにも気付かずじまいだった。
 夜中は雪の降りがさらに激しくなって、ウンチの世話も大変だったようである。

 朝目覚めると外の風景が一変していた。
 新たに降り積もった雪は50cmくらいだろうか。
 玄関前に停めてあった車は見事に雪の中に埋もれてしまっている。
 久しぶりに見るそんな光景がとても嬉しく感じる。


雪に埋まった車 隣のコテージも雪に埋まってる

 朝風呂に入ってベッドの上で寛いでいると、敷物の上で横になっていたフウマが突然むくりと起き上がった。
 「うわっ、またトイレか!ちょっと待ってくれ」と、慌てて着替えをしていると、スタスタと部屋の隅に歩いていくフウマ。
知らん顔で寝ているフウマ そしてそこで立ち止まって、部屋の角に頭を向けたまま固まってしまった。
 「おーい、フウマ、外に出るのはこっちだぞ〜」
 何時ものボケ症状だと思って見ていると、そのままおもむろに腰を下ろし始めた。
 「ま、まさか!ま、待て、フウマ!」と慌てる私。
 「後ろ足が滑ってるだけじゃないの?」とのんびり構えているかみさん。
 確かにフローリングの床で足を滑らせているけれど、その姿勢はちょっと怪しい。
 尻餅をついてしまわないように、両手で腰を支えてやる。やっぱりこれは、足が滑っているだけでは無さそうだ。
 「う、うわぁ、ど、どうしよう」
 尻餅をついたままウンチをされたらそれこそ悲惨な状況になってしまうし、フウマの腰を支えたまま何もできずにオロオロしていると、かみさんがフウマの飲み水が入っている器をサッとフウマのお尻の下に差し出した。
 その瞬間、ピシャピシャピシャと・・・。

 「ま、まるですいせんべんじょ・・・」



 朝食を済ませた後、スノーシューで森の中を歩いていみる。
 ふわふわのパウダースノーだ。
 今年の冬はフウマの介護のためにアウトドアフィールドには全く出ていなかったので、久しぶりの感触である
 かみさんがその上に仰向けに倒れこんだ。
 圧雪されてない雪の上にさらに新雪が50cmも積もっているので、一人では絶対に起き上がれない。
 裏返った亀のように手足をバタバタさせているかみさんを、見るに見かねて助け起こしてやった。

車を掘り出す 雪はまだ降り続けているものの、薄くなった雲の向こうに太陽の姿も確認できるようになって来た。
 雪に埋もれた車を掘り出して、札幌への帰途につく。
 丸瀬布を出るまでは猛烈な地吹雪に視界が全く利かなくなることもあったけれど、高速道路は幸い札幌まで全線開通しているようである。
 旭川紋別自動車道がまだ未完成の、浮島ICから上川天幕までは一般道を走るのだけれど、そこでまたフウマがムクリと起き上がった。
 山の中の道路なので、両側は雪の壁が続いていて、ここで停車するのはもしかしたら高速道路上よりも危険性が高そうだ。
 「もう少し我慢してくれよ〜、フウマ」
 しばらく走って、ようやくチェーン脱着場の駐車スペースを見つけ、事なきを得た。
 その後は旭川付近から青空が広がり、札幌までは良い天気。
 ところが、札幌市内が大雪で高速道路も通行止め。何だか雪の世界を抜け出して、再び雪の世界に戻ってきた感じである。
 その間フウマは後部座席でぐっすりと眠ったままで、時々ふと何かを思い出したように顔を上げるだけ。
 私達にとっては波乱万丈のフウマとのコテージ1泊小旅行だったけれど、フウマにとっては「食う、出す、寝る」の何時もと変わらない時間を過ごしただけなのかもしれない。

2009/2/20


フウマです


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