「やった〜!」と歓声を上げながら、木柵を飛び越えて海岸へと駆け下りて、そのまま流氷の上に飛び乗る。
何時ものことながら、流氷の姿を見るたびに圧倒的な自然の力に触れられる喜びで胸が一杯になってしまう。
しかし、この圧倒的だったはずの自然の力も、最近は人間の営みによって弱められつつあり、一面を埋め尽くしている流氷も、以前ほどの迫力が感じられない。
欠けらのような流氷がただ集まっているだけで、分厚い流氷の塊りが天に向かって突き上げられるように積み重なる、そんな迫力ある光景を作り出すような力のある流氷ではないのだ。
それでもこの時は、久しぶりに流氷の上を歩ける嬉しさだけで満足していた。
ただ、大きな流氷の縁などに見られる流氷ブルーとも呼ばれる神秘的な色合いが、何処にも見られないのがちょっと残念だった。
流氷原の彼方には海別岳が聳え、その先には知床連山の姿もぼんやりと見えている。
今回の温泉旅行の大きな目的を達成して、満足してそこを後にした。
次に小清水町の道の駅「はなやか小清水」に向かっていると、その直ぐ手前に踏切があって線路を渡れるようになっていた。
国道244号と平行して、海側にはJR釧網線の線路が通っているので、海に出られるような場所はほとんど無い。
それなので直ぐに踏み切りを渡って除雪された道を進んでいくと、突然キャンプ場の前に出てきてしまった。浜小清水前浜キャンプ場である。
こんなところにキャンプ場があるとは知らなかったのでビックリしたけれど、私の習性で直ぐに流氷キャンプができるかどうかの視点で周りを見てしまう。
車も近くに停められるし、トイレも、ちょっと遠いけれど道の駅まで歩いて行ける距離だ。
ただ、隣の丘の上に展望台があり、冬の間でも物好きな観光客がそこまで登ってくることもあるので、見世物になってしまうことがあるかもしれない。
それでも流氷キャンプ適地一箇所発見、と言ったところだ。
ここの道の駅はJR釧網線浜小清水駅に繋がっていて、ちょうど流氷ノロッコ号が停車していた。
その写真を撮ろうとしてかみさんが車から降りカメラを構えていると、動き出したノロッコ号がかみさんの前を通過していく。
列車が通り過ぎた後で、かみさんが顔を赤くして戻ってきた。列車に乗っていたお客さん全員が、カメラを構えてこちら側を向いており、そこでかみさんは乗客全員の注目を浴びていたようである。
道の駅の隣の「太郎山」と言うラーメン屋でラーメンを食べる。普通に美味しいラーメンだった。
その後も海岸沿いの道路を走りながら、流氷キャンプの適地が無いか探してみる。
すると小さな川の河口で、線路近くまで車で入れる場所を見つけた。そこに車を停めて、線路を超え海岸に出てみると、思わず「さあ、テントを張るか!」と言いたくなってしまった。
そこの砂浜は既に雪も解けていて、適当な流木もゴロゴロしている。それに、流氷もこちらの海岸のほうが変化に富んでいて、知床に近づいた分、山並みの姿も美しく見える。
流氷の縁で親子連れが網を持って何かを捕っているようだ。峰浜辺りの海岸ではクリオネを捕っている人もいるらしいので、近づいて聞いてみるとやっぱりそうだった。
バケツの中を見せてもらうと、ちょうど今捕れたばかりの2匹のクリオネが浮かんでいた。体が透き通っているので良く見ないと分からない。
これを氷の下から網ですくうのだから、なかなか難しそうである。上手な人なら百匹も捕ってしまうとのことである。
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