我が家のファミリー通信 No.21

旭岳スキー&スノーシュー


 何処へ出かけても宿泊場所はテントの中、そんな我が家のささやかな贅沢が冬の間の温泉1泊旅行である。
 今年は山スキーを購入したばかりなので、それで遊べそうな場所と言うことで旭岳温泉に泊まることにした。
 後の問題は天気だけ。初の山スキーでキロロに行ったときは猛吹雪で酷い目にあったので、今度こそは青空の下で山スキーを楽しみたい。
 1週間前の週間予報では金曜日だけが晴れマークになっていた。しかし、週間予報ほど当てにならないものはない。翌日の天気さえ当たらないのに、1週間先の天気を予報するなんてばかげた話しだ。
 なんてことを書くと気象協会の方に申し訳ないが、コロコロと毎日のように変わる週間予報を見ていると本当にそう思えてしまう。
 ところがこの予報は前日になっても変わらないままだった。天気によっては予定を変更するつもりでいたので、これでようやく安心して休暇を申請し宿にも予約を入れることができる。

雪のトンネル ナラの巨木
生憎の曇り空 アカエゾマツの間を滑り降りる

 当日は予報どおりの素晴らしい青空、運転していても自然に頬が緩んできてしまう。高速道路で一気に旭川まで北上し、そこから南へと進路を変える。
 前方には真っ白な大雪の山並みが見渡せて期待感が高まってくるが、それまでの真っ青な空が何となく霞んできたような気がした。旭岳の山頂にも薄い雲がかかっているようだ。
 すっきりとした風景は望めないかもしれないが、まあそれでも前回のキロロよりはましだろう。
 クリスマスツリーのように真っ白な雪が積もったアカエゾマツの森の中を快適に車を飛ばし、旭岳のロープウェイ乗り場に到着した。
 ところがそこから見る旭岳山頂は完全に雲の中に隠れてしまい、膨らんでいた期待がプシューッと音を立ててしぼんでいくような気がした。
 ロープウェイで姿見の駅まで上ると、風もかなり強く吹いているし、視界もあまり良くない。
 せっかくここまで来たのだからと、スキーにシールを貼って白い煙を噴き上げる噴気口付近まで登ったが、全然楽しくない。
 早々に退散して麓まで滑り降りることにした。
 ロープウェイ終点から上の斜面はシュカブラができていて、私の技術ではとてもターンしながら滑ることはできない。
 ロープウェイ駅からは圧雪した林間コースが続いているが、旭岳までやってくるスキーヤーならばそんな場所は滑らずに、木々の間のフカフカな深雪の中を滑り降りていくのだろう。
 我が家の場合、コースから外れると何処に出るかも解らないので大人しく圧雪斜面を滑り降りた。
 上の方はそれなりの斜度もあって楽しく滑られるが、途中からは傾斜も緩くなり退屈な林間コースになってしまう。ところがスキーを滑るのに退屈しても、周囲のアカエゾマツの森の美しさがそんな退屈さを吹き飛ばしてくれた。
 たっぷりと雪が積もった見上げるようなマツの巨木に圧倒されながら、その間をゆっくりと滑り降りる。
 途中でその森の中に分け入って、本当は山の上で食べる予定だった昼食をとることにした。
 お湯を沸かしてカップ麺のいつものパターン、持ってきたおにぎりは食べている間に凍ってしまいそうだ。実際に、こぼれた水はあっと言う間に凍り付いてしまっている。
 それでも風が当たらないので、それほど寒さは感じない。静かな森の中の一時を楽しんだ。
 このアカエゾマツの森は、スキーで滑るよりもスノーシューで歩いた方が絶対に楽しそうなフィールドである。
 明日はじっくりと森の中を歩き回ることにしよう。

急斜面を降りる 半月湖が下に
山頂はすぐ目の前 山頂を目指すスキーヤー

 宿泊場所の湯元勇駒荘は「北海道の本物の温泉」という本で高い評価になっていた宿である。
 五つの源泉があってそれぞれ泉質の違う浴槽からは、惜しげもなくお湯が溢れ続けている。自然のままの岩がそのまま浴室の中に取り込まれていて、そこから直接温泉が湧きだしているような浴槽もある。
 お湯は全体的にぬるめなので、じっくりと湯船に体を沈めてスキーの疲れをとることができる。私にしては珍しく長湯をしてしまった。

 翌日の天気は曇りのち雪となっていたのに、朝起きると空は快晴、森の向こうには旭岳の山頂もはっきりとその姿を見せている。
 スノーシューの予定を変更して、再びロープウェイで上に登ることにした。
 昨日のことがあるので何時雲が広がってくるか気が気ではなかったが、山頂駅に着いても何処にも雲の姿は見えない。
 まさにピーカンの青空だ。その青空を背景に真っ白な旭岳が目の前に聳えている。
 大きなカメラと三脚を抱えたおじさんが、そのままツボ足で登り始めた。こちらは、はやる気持ちを押さえながらじっくりと身支度を調え、そのおじさんの後を追うように山頂駅近くの小さなピークまで登った。
 そこからの風景はまさに圧巻である。
優しい山並み 遠くに見渡せる大雪の山並みは、木が生えていないために真の白一色に染められ、滑らかな稜線が重なり合い、実際の冬山の厳しさを忘れてしまうような優しささえも感じてしまう。
 一方、目の前の旭岳は麓から白い噴煙が噴き上がり、ゴツゴツとした山肌が荒々しさを感じさせる。
 この白い世界を満喫するためには、絶対に青い空が欠かせない。
 噴気口の直ぐ側まで近づいて、記念撮影をする。積雪期以外は植生保護のため噴気口には近づけないという話しだが、今なら穴の中に顔を突っ込んでも大丈夫である。
 とは言っても、雪が崩れるのが怖いので少し距離をおいての撮影だ。それでも風向きがちょっと変わった拍子にその噴煙の中にまともに包まれてしまい、ちょっと焦ったりする。
 そこまで来ると、旭岳の山頂も直ぐ近くに見える。遠くの尾根には山頂を目指すスキーヤーの姿も見えるが、我が家には次のメニューが待っているので、そこから滑り降りることにした。
 途中で深雪の中にも入ってみたが、なかなか上手く曲がれない。まあ、下手に上達すると完全なパウダージャンキーになってしまいそうなので、この程度の方が良いのかもしれないが。

 駐車場に戻り今度はスノーシューの準備をする。
 そこから直ぐのクロスカントリーコース付近を歩いても、十分にアカエゾマツの森を満喫できそうだが、せっかくなのでインターネットで調べておいた森一周コースにチャレンジしてみることにした。
 まずは、スキーコースを辿って少し上まで登らなければならないのだが、スキーの疲れも出てきているせいか、これがなかなかきつかった。
 最初の急坂を上り終えたところで、既に息も上がり汗びっしょりである。一休みしてからいよいよスノーシューを履いて森の中に分け入った。
 後で地図をよく見てみたら、本来のコースはもう一つ上の坂を登ったところから森の中に入るのが正解だったみたいだ。その方が旭岳や樹海を楽しめる展望ポイントもあったみたいだが、この日の残された体力ではこれが精一杯だったと思う。

 一歩森の中へ足を踏み入れた途端、思わず感嘆の声をあげてしまった。
 落葉樹の細かな枝先まで真っ白に雪が積もった森の中の風景も素晴らしいが、針葉樹がクリスマスツリーのように雪 化粧した森というのもまるでおとぎの国のような美しさだ。
 それに、お互いの木々の間隔が広すぎもせず狭すぎもせず、まさに絶妙に配置されている感じである。これは、人工的に植林された森と違って自然林でしか味わえない雰囲気だろう。
 少し木々の間隔が広がった場所に出ると、「ここにテントを張ったら最高だろうな〜」と、思わずため息が出てしまう。
 我が家が目指す究極の雪中キャンプの場所とは、まさにこんな場所なのである。
 この森の中で、リスやウサギやキツネ達と一晩一緒に過ごすことができたら、最高に幸せな気分に浸れそうだ。
樹木からの雪崩 やや気温が上がってきたせいか、時々マツに積もった雪がサーッと落ちてくるようになった。「サーッ」くらいなら風情があるが、たまに「ドドドーッ」と豪快に落ちてくるものもあって驚かされる。
 高さ20m以上はありそうなマツから一気に雪の固まりが落ちてくるのだから、雪崩なみの迫力である。
 一度、直ぐ近くでこの樹上雪崩が起こり、すかさずカメラを向けたが、その後に巻き上がった雪煙に包まれ、あっと言う間に全身真っ白になってしまった。
 途中で休憩していると太陽に暈がかかっているのに気が付いた。
 キロロで晴天に恵まれた時もちょうど同じように暈がかかっていたのを思い出す。今時期に高い山の上まで青空が広がるのは、低気圧が近づいてきて季節風が弱まる僅かの時間だけなのだろう。
 アカエゾマツの木々の間からその暈を眺め、自分の幸運さをかみしめた。

 緩やかな傾斜に沿って降りていくと小さな沼が見えてきた。温泉の影響で冬でも凍結しない沼でカモ沼と名前が付いている。
 人間の気配に驚いたカモ達が一斉に飛び立った。
 本来のルートではもう少し先のワサビ沼に出てくるはずだったが、かなり短絡ルートを歩いてきたみたいだ。
 そこから先は、圧雪されたクロスカントリーコースが森の中を巡っている。手軽に雰囲気だけを楽しみたいのならここをスノーシューで歩くだけでも良さそうだが、少し頑張って山を登った方がもっと素晴らしい森を満喫できるだろう。

半月湖の湖上で ランチタイム
アカエゾマツの森1 アカエゾマツの森2

 帰り道は白金温泉に寄り道しながら富良野経由で札幌まで戻る。
 白金温泉に向かう道から正面に見える大雪の真っ白な山並み、来年は十勝岳に行こうと心に決めた。

大雪の白い山並み

戻る