車を停めた場所からは、5cmほどの雪が新たに積もっていたものの、スノーシューで歩いたような跡がずーっと続いていた。昨日あたりに誰かが来ていたのだろう。
これは我が家の短足犬フウマにとっては幸運だった。何時も深雪の中で悪戦苦闘しながら歩く羽目になるのだが、今日はそんな苦労もない。先頭を切ってその踏み分け道を走っていく。
道路の終点から夏の駐車場の場所までは僅かしか離れていなかった。そこから先は森の中に上り坂が続いている。
森の木々の枝にはたっぷりと雪が積もり、時折それが風に吹かれて落ちてくる。はらはらと舞い落ちるのなら風情もあるが、たまに固まりごとドサッと落ちてくるので冷や冷やさせられる。
それでも期待したとおりの雪の風景である。
坂を登り切ると足元に半月湖の白い雪原が見下ろせた。歩き始めてからまだ15分も経っていない。半月湖には昔一度来たことがあるが、こんなに近かっただろうか?ちょっと拍子抜けの感じである。
半月湖はその周りをぐるりと急な崖に囲まれているので、簡単には湖面まで降りることができない。
そこの尾根伝いにスノーシューの踏み分け道が続いているので、とりあえずそのまま進むことにした。そこはちょうど、雪を乗せた木々の枝が両側から覆い被さり雪のトンネルのようになっている。
そのトンネルを通り抜けた先に、一際大きなナラの木がそびえ立っていた。その先から踏み分け道は湖畔へ向かって下っている。
この道の跡が残っていなければ、湖畔に降りる場所が見つからなかったかもしれない。多分、雪がない時期には散策路になっていた場所なのだろう。
これ以外の場所では急すぎて、とてもスノーシューで下に降りることは不可能だ。
それでも、ちょっと足を踏み外すとそのまま下まで転がり落ちそうな感じで、結構スリルがある。
先に半月湖の雪面に降り立ったかみさんが、スタスタと真ん中まで歩いてい行く。すると、途中から慌てて引き返してきた。
水が染み出してくるというのだ。
なるほど、湖上の雪を少し掘ってみると直ぐに水が出てくる。昨日は気温もプラスまで上がっていたので、雪の下に水が溜まっているだけなのだろう。
用心深いかみさんは、二人で一緒に歩くと氷が割れそうだとか言って、私が対岸までたどり着いたのを確認してからその上を渡ってきた。
小さな湖は周りを急な崖に囲まれ、そこだけが別世界のようになっている。
キューッ、キューッと聞き慣れない鳥の鳴き声が聞こえてきた。ふと上を見上げると、大きな黒い鳥が湖上を横切って近くのマツの枝の中にその姿を隠した。
クマゲラがそんな声で鳴くことを初めて知った。
ようやく雲の切れ間から日が射してきたので、その日に照らされた場所に荷物を降ろし、お昼を食べることにする。
こんな場所では、ガスストーブでお湯を沸かすだけでも楽しい作業になる。
有料のスノーシューツアーとかに参加したらお昼にはチーズフォンデューとかを食べさせてもらえそうだが、白い世界を眺めながらのカップ麺とおにぎりの昼食でも十分に満足である。
雪に覆われた真っ白な森、そして真っ白な半月湖、もっと長い距離を歩きたかったけれども、白い世界を満喫できた今回のスノーシュートレッキングであった。
車まで戻ってくると、私は全然汗をかいてないのに、かみさんのジャケットの内側は結露でびしょ濡れである。
スノーシューを楽しむときは、通気性のある上着を忘れないようにしたい。
帰り道、小樽付近では再び猛烈な雪に見舞われ、高速道路も通行止め、やっとの思いで家にたどり着いたら、今度は日中に積もった湿った重たい雪の除雪。
スノーシューで疲れなかった分、しっかりと除雪で汗をかかされてしまった。
それにしてもやっぱり、週末は家でゴロゴロしているよりもフィールドへ出かけた方が絶対に気持ちいいのである。
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