市民レガッタ大会当日、会場は小樽港の第3埠頭横の港内である。
女子の参加チームは5組、かみさんのチームは1試合目に出場だ。一緒に出場するチームの中には、過去3年連続で優勝しているチームも入っていて、今年もここが優勝候補のようである。
このチームはかみさん達の高校の先輩がメンバーになっていて、高校の頃には全国大会にも出ているという強豪チームだ。
そのチームが出場チーム中で一番年齢が高くて50代、かみさんチームは40代、残りは全て30代チームという構成。
ボート競技と年齢がどれくらい関係あるものなのか、さっぱり見当がつかないが、年齢的なハンディは大きそうな気がする。
男子チームの競技中に、写真撮影のために私だけが対岸の岸壁に移動した。
そもそも、私がボート競技を見るのはオリンピックのテレビ中継の時くらいである。
筋肉の盛り上がったお兄さん達が、ピタリと揃ったストロークでオールを漕ぎ、艇は凄い早さで水面を疾走する。
ところが今、目の前で繰り広げられてる競技は、オリンピックではなくて市民レガッタ。真っ直ぐ進むのもおぼつかないような状況で必死になってオールを漕いでいる。
レースの距離は300mだが、その前で完全に息が上がってしまって、審判員から「まだゴールしてませんよー」と注意されるような有様だ。
「これならば、かみさん達のチームの方が早いかも・・・。」
いよいよかみさん達のレースが始まった。
私は真ん中よりややゴールよりの場所でカメラを構えて待ち受ける。
ファインダーの中で次第に大きくなってくるかみさんチームにフォーカスを合わせながら、ふとカメラから目を離すと、「あれ?もしかして先頭漕いでいる?」
私の前を通過する時もまだぎりぎり先頭を保っていたが、追い上げてきた強豪チームにほとんど並びかけられている。さすがにストロークの力強さが違っていた。
ゴール地点での順位は私の位置からは確認できなかったが、どうやら最後は抜かれてしまったようです。
大会本部まで戻って張り出されているレース結果を見ると、タイムは1分45秒06、1秒60差の2位になっていた。
ところがそのタイム、男子チームのタイムと比較しても、全体の中で4位に入るという素晴らしい結果だ。
この後、敗者復活戦があるが、彼女たちはもう完全に決勝まで行くつもりになっている。次のレースで1位になれば決勝へ進むことができるが、他のチームとのタイムを比較するとそれもほぼ確実な感じだ。
そして敗者復活レースが始まった。
今度は大会本部側から応援することにしたが、その位置では斜めから見るようになるので、順位がはっきりと解らない。
楽勝と思っていたのに、2位の艇にほとんど並ばれているように見える。レース結果の放送を聞いて、初めて1位でゴールしたことが解った。
タイムは1分39秒63、予選の時よりさらに5秒以上短縮していた。
艇を降りて戻ってくる彼女らの様子が、次第に堂々としたものに見えてくる。ただ、やたらに賑やかである。
いかにも体育会系女子の集まりといった雰囲気だが、その中に一人だけポツンと置かれた私は、さしずめ、気弱な男子マネージャーといったところだろうか。
かみさんがボートを漕ぐ姿を一度くらい見てみようとの軽い気持ちで出かけてきたつもりが、いつの間にか彼女たちと一緒になって興奮していたりする。
決勝レースの体力が残っているのか心配だったが、「予選の時よりも体がほぐれて調子よくなってきたわ。」なんて、頼もしいことを言っている。
もしかしたら、強豪チームを破って優勝しちゃうんじゃないだろうか。そんな期待が高まってきた。
いよいよ決勝レースのスタートである。
スタート地点はかなり遠くなので、最初の内は順位がどうなっているのかはっきりと解らない。次第にその姿が大きくなってきたが、強豪チームの方がより大きく見える。
確かに強豪チームの方が、皆さん体も大きめなのだが、そればかりではなさそうだ。明らかにストロークの力強さが違っていた。
これではちょっと勝ち目はなさそうだ。
6秒の差をつけられてゴールを通過。それでも堂々の2位である。タイムも1分33秒89と、前のレースよりもまたまた6秒近く短縮されていた。
彼女らは2位の結果にも十分に満足している様子だ。それにタイムがさらに縮んだことに大喜びしている。
それを見ていた役員の方が、「自転車と同じで、一度体で覚えたものは直ぐに思い出せるんだよ。」と声をかけてくれた。
明日からはボートとは無縁のいつもの生活に戻り、また来年、この場所で皆で再会することになるのだろう。
「男女、混合チームでも参加できるので、旦那さんも来年は一緒にやりませんか?」
「い、いや、ボ、ボクはちょっと・・・。(;^_^A 」
とてもじゃないが、彼女達のパワーには敵いそうにない。
それにかみさんのパワーにも・・・。
(2004.08.01) |