我が家のファミリー通信 No.13

京都紅葉の旅

一日目(2003年12月7日)

 久しぶりというか、初めてというか、子供が生まれてから夫婦だけで出かける道外への旅行。 キャンプ道具を背負っての旅行へは年がら年中出かけているが、2泊の道外旅行といえば結婚間もない頃に東北の方へ行って以来になる。
  行き先は京都。古いお寺が大好きというかみさんは、高校の修学旅行以来の京都だ。
  私の方も高校の修学旅行で京都に魅せられ、学生時代には一人で京都を歩き回ったりしていた。その影響もあって造園学を専攻することになり、就職してからも何回か京都へは出張などで訪れている。
  本当は11月末の紅葉の時期に訪れようと考えていたが、調べてみるとこの時期は一年中で最も混雑する時期なのだとか。行列の後にくっついてぞろぞろと庭園を見て回っていたら、とてもじゃないが侘び寂びの世界など味わっていられない。
  観光客も減って、運が良ければ散り遅れた紅葉も楽しめるかもしれないこの時期に狙いを定めることにした。

 まだ暗いうちから家を出て、雪の中を千歳空港へ向かった。
  8時の飛行機に搭乗して伊丹空港へ、高速バスで京都駅へ向かい、宿泊を予定している「ウェスティン都ホテル京都」のチェックインカウンターで荷物を預ける。この施設は京都駅構内にあり、ここで預けた荷物はホテルまで届けてくれるので、そのまま直ぐに観光に出かけられて本当に有り難いサービスだ。
  荷物を預けた後は直ぐにバスに乗り込み、50分ほど揺られてようやく最初の目的地一乗寺下り松町へ辿り着いた。
  そこで直ぐに昼食にすることにする。時間は12時半、家を出てから7時間近い大移動だった。
  昼食の場所はあらかじめ目星を付けておいた「豆花」という湯豆腐屋。3000円のコースを注文した。お金のない貧乏旅行なので昼食に3000円も支出するのは辛いところだが、せっかくの京都、一度くらいは湯豆腐を食べておきたい。
  まずまずの味だったが、はっきり言って水と大豆で豆腐の味が決まるのならば、絶対に北海道の豆腐の方が美味しいはずだ。それでも北海道では、いくら美味しい豆腐を使った湯豆腐コースをお店で出しても、3000円の料金では誰も注文する人はいないと思う。
  料理の味よりも京都文化を味わったような感じがした。

 店を出て、そこの直ぐ近くにある宮本武蔵と吉岡一門の決闘の場所として有名な一乗寺下り松へ行ってみる。
  学生時代、吉川英治著の宮本武蔵を愛読していた私は、どうしてもこの場所が見たくて、その頃京都へ来た時もここを訪れている。その時は、貧弱な松が1本と石碑があるだけのつまらない光景にとても失望したものだ。
  30年近い月日を隔てての再訪だったが、やっぱりそこに植えられている松は貧弱なままだった。

金福寺   詩仙堂
金福寺庭園     詩仙堂庭園

  そこから金福寺、詩仙堂、曼殊院をぐるりと回る。いずれも紅葉の名所として知られる寺院だが、さすがにこの付近では紅葉も終わりを向かえていた。
  それでも、途中の道では、夫婦二人で「わーっ、すっげー、柿が木になっている!、わーっ、ミカンが木になっているわ!」なんて、地元の人が聞いたら呆れるような会話をしながら、楽しく歩いた。
  札幌では見られないこんな風景が、旅をしている気分をとても盛り上げてくれるのだ
  バス通りまで戻ってきて、再びバスに乗り込み銀閣寺方面へ向かう。さすがに銀閣寺付近は、シーズンオフと言っても多くの観光客で賑わっていた。
  銀閣寺にはそれほど魅力を感じないし、人混みの中を歩きたくもないので、直ぐに琵琶湖疎水支流に沿う哲学の道に歩みを向けた。
  ここも昔から私の好きな場所の一つで、これまでも何回か歩いた事がある。今は落ち葉が水面をゆったりと流されているが、桜の散る頃にはそれが花びらに変わり、素晴らしい眺めが楽しめるのだろう。
  途中から山の方へ入って法然院、安楽寺を見学、この辺では紅葉もまだ残っていた。両寺とも茅葺きの山門が良い味を出している。山の中にひっそりと佇むこんな茅葺きの門が私は大好きだ。

曼殊院   法然院

曼殊院庭園
 

   法然院山門
安楽寺   安楽寺
安楽寺山門   安楽寺庭園

  再び哲学の道へ戻り、予定では永観堂、南禅寺にも寄るつもりだったが、日も沈みかけていたのでそのままホテルへ向かうことにする。
  ウェスティン都ホテルは南禅寺の直ぐ近く、境内を抜けていくのが近道だ。その途中にある南禅寺の巨大な三門に圧倒される。小さな山寺の静かな佇まいも良いが、このような圧倒的スケールの仏教建築もまた感動的だ。
  ホテルに着く頃には足元がふらつくくらいに疲れ切っていた。地図を見ただけでは楽勝で歩ける距離だと思っていても、実際の現地は坂道が多かったりして、かなり足に堪えるのだ。
  それでも、夕食や高台寺のライトアップを見に行く予定もあったので、部屋で一休みしてから直ぐにホテルを出た。青蓮院の横を歩いていると巨大な楠に驚かされる。そのまま円山公園の中を抜けて祇園に出るのだが、ホテルからのちょうど良い散歩コースの感じである。
  ただ、疲れた足にはそのちょっとした坂道がとても辛く感じられる。
  夕食の場所はあらかじめ調べておいた「山ふく」というおばんざい屋、祇園の裏小路にある小さな店だが、京都の飲食店はどうしても値段が高いというイメージがあるので、恐る恐るといった感じで引き戸を開けた。
  店内は思っていたよりも狭くて、とても庶民的な雰囲気である。何だかホッとして席についてメニューを眺めた。
  値段を書いてないのが気になったが、肉じゃがなんかが千円以上するとも思えないので目に留まったものを適当に注文する。
  最後の会計の時はちょっとドキドキしたが、ビール1本に腹一杯食べて8000円でおつりが来た。
  できればメニューに値段まで書いて欲しいところだが、若い女性の二人連れがメニューを見て注文していると、店のおかみさんが「この魚は1200円するけど良いですか?」などと気を使ってくれている。
  若い人にはそんな風に忠告してくれるみたいだが、私たちが同じものを注文した時はどうしてくれたか、ちょっとだけ気になった。
  空腹が満たされると、いくらかパワーも回復してきたみたいだ。

八坂神社   高台寺
八坂神社の提灯     高台寺ライトアップ

  八坂神社の中を抜けて高台寺へ向かった。神社の境内には灯りの点った提灯がずらりと並び、歩いていて楽しくなってくる。こんな場所が繁華街の直ぐ隣にあるのが不思議な気がする。
  高台寺に近づくと、急に通りを歩く人の数が増えてきた。紅葉の時期にライトアップされているお寺はほとんどが先月で終わっていて、12月までライトアップされているのはここと清水寺くらい。それも今日が最終日だ。
  もっと空いているだろうと思っていたが、皆、最後の紅葉を楽しみに来ているのだろうか。紅葉の一番綺麗な時期だったら、一体どれくらい混むのだろうかと恐ろしく思えてしまう。
  人の流れに身を任せるように中に入っていくと、境内には幻想的な光景が広がっていた。正直、紅葉のライトアップにはそれほどの期待は持っていなかったのだが、これは嬉しい誤算だった。
  そんな光景をカメラで写そうとするが、当然ながら三脚の使用は禁止されているので、手すりの上にカメラを乗せたりとか撮影にも苦労させられる。こんな時は手ぶれ補正機能の付いたデジカメが欲しくなってしまう。
  紅葉のライトアップも良いが、竹林が照明に浮かび上がる姿もなかなか見事である。
  ただ、境内は意外に広く、階段を上り下りしながら外に出てくる頃には、回復したはずの体力も完全に使い果たしてしまっていた。
  再び歩くホテルへの道がとても遠く感じる。
  今日は午後からの半日観光だったのに、果たして明日、丸一日の京都観光に体力が続くのか、ちょっと心配になる一日目だった。

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