北海道キャンプ場見聞録
朱鞠内湖は裏切らない
朱鞠内湖畔キャンプ場(9月14日~16日)
珍しくかみさんが朱鞠内湖キャンプに行きたいと言うので天気予報を見てみたところ、翌日から三日間天気が続いて風も弱い。
朱鞠内湖キャンプにはお誂え向けの条件だった。
そんな感じで突然、朱鞠内キャンプが決まったのである。
何の予定もない生活は退屈だけれど、思い立ったら直ぐに行動に移せるのが良いところだ。
平日の火曜日だったけれど、少しでも早くキャンプ場について良いサイトを確保したかったので、最近の我が家にしては珍しく高速道路を使ってキャンプ場を目指す。
そうして午前10時にキャンプ場に到着。
久しぶりに第2サイトにテントを張ろうと思って様子を見に行くと、狙っていた湖畔のサイトはおろか、周辺の人気サイトには既にテントがずらりと張られていたのである。
人気の場所には既にテントがずらりと並んでいた
そこは諦めて、第3サイトに向かったがそこも同じ様な状況である。
しょうがないので、何時も利用している細長く岬状に伸びている場所の、かろうじて樹木の間から湖面が見えるサイトにテントを張ることにした。
ここのキャンプ場は1人1泊の料金システムなので、斜面に段々畑上に造られているテント床は自由に使うことができる。
この辺りのサイトならば贅沢に使っても問題ないだろう
私達はメインのテントの他に、かみさんのソロテントを一つ上の段に張って、一つ下の段は焚き火コーナーとして使うことにする。
混雑時に人気の湖畔サイトでこんな使い方をしたらひんしゅくを買うだろうけれど、焚き火用として確保したサイトは、テントが張られたような様子もなく、車の方向転換用にしか使われてなさそうな場所なので、問題はなさそうだ。
昼食はスパゲティ。
その間にも次々に車が入ってきては引き返していくので、どうも落ち着かない。
考えることは皆同じで、ここの先端部狙いで来ている人たちなのだろう。
せっかく早めに到着したのに、湖畔サイトが全て埋まっていてガッカリしたけれど、もう少し遅ければこの場所さえ埋まっていたかもしれない。
快適なサイトだけれど、朱鞠内でのキャンプとしては少々不満だ
食後は場内をグルリと一周りしてみる。
第2サイトの混み具合は、夏休み中のハイシーズンと大して変わりがない気がする。
北海道は緊急事態宣言が発令中で、多くのキャンプ場がクローズしているし、そこに最近のキャンプブームがプラスされての混雑なのだろう。
森の中ではヤマブドウやオオカメノキが一足早く色づき始めている。
既に真っ赤に染まっているのはツリバナだろうか。
さすがに道北の秋の訪れは早いようだ。
葉も実も色付くオオカメノキ
到着時から少し風が吹いていたが、その風も少し弱まって湖面も次第に凪いできたので、一漕ぎすることにした。
朱鞠内湖でカヌーなどに乗る時は、利用届に氏名、出航時刻・帰着予定時刻、携帯電話番号を記入しなければならない。
ここに泊まるのは3年ぶりになるけれど、その間に色々なルールが定められたようだ。
サイトの前でカヌーに乗る
驚いたのはSUPに乗れる期間は7~8月の間だけで、乗れる区域も管理等から目視できる範囲内に定められていることだった。
十分なスキルと装備があれば、カナディアンやカヤックよりも安全性が高いと思うのだが、現実はゴムボート感覚で乗っている人が沢山いるので、こんなルールになってしまったのだろう。
管理者側も、まだまだSUPに対する認識が足りないようだ。
今日の分の利用届は書いていないけれど、キャンプ場の前でチョロチョロするくらいならば問題ないだろう。
対岸に上陸して朽ちた切り株の風景を楽しむ。
キャンプ場の対岸に上陸
初めて朱鞠内湖でカヌーに乗ったのは、もう30年近く昔の話である。
その当時と比べると、切り株も明らかに風化が進んでいて、踏み付けたらボロボロと崩れてきそうだ。
切り株も風化が進んできている
今日の夕食は、バーベキュー。
我が家の家庭菜園で大量に収穫したナスビやピーマンを少しでも消費しようと、かみさんが提案してきたのである。
そして、食事を終えると焚き火タイム。
我が家のサイトは既に日も当たらなくなっているけれど、湖はまだ西日が当たっていて、ほんのりと赤く染まっている。
湖畔のサイトならば、そんな様子を眺めながら焚き火を楽しめるのだけれど、それが残念である。
湖畔のサイトが羨ましい
キャンパーは若者が多い。
そのキャンプの様子は、テレビやYoutubeでやっているスタイルの完全な真似に見えてしまう。
隣のソロの男性は、小さな焚き火台に乗せるために、管理棟で買ってきた薪を更に小さく割ろうとしている。
薪を割るのも、手斧などは使わずにナイフで割るのが流行りのようだ。
硬い薪は簡単には割れないので、コンコンとナイフを何度も叩かなければならない。
場内のアチラコチラからコンコン、コンコンと音が聞こえてくる。
焚き火の時間
まあ、真似をするのは別に悪いことではない。
真似しているうちに次第に自分のキャンプスタイルが出来上がってくるのである。
そうなる前にキャンプに飽きてもらって、今の異常なキャンプブームが早く治まってくれないかと、年寄キャンパーは思ってしまうのだ。
翌朝、5時前に起きると、湖は朝霧に包まれていた。
期待通りの風景である。
朝のコーヒーは、朝霧の中から昇ってくる朝日を眺めながら湖上で味わうつもりでいたのだ。
朝霧に包まれる湖
湖面からはまるで湯気のように、もくもくと水蒸気が立ち昇っている。
湖の中に手を入れてみると、まるでお湯のように温かい。
気温もかなり下がっているので、けあらしが発生しているのだ。
湖面からは湯気のように水蒸気が立ち昇る
落としたコーヒーをポットに入れて、静まり返った湖に漕ぎ出す。
そして期待していたとおりに、朝靄の中に太陽の姿が現れた。
この風景は過去にも何度か見ているけれど、今回も朱鞠内湖は期待を裏切らなかった。
湖上から見る朝日は格別だ
朝日に照らされる切り株達
サイトにも朝の光が届いていた。
しかし、光があたっているのは湖畔のサイトだけ。
我が家のサイトには樹木に遮られてその光は届いてこないのである。
朝の光が湖岸を照らす
朝食を済ませて、管理棟の隣りにあるさわやかトイレまで朝の散歩。
ちょっと遠いけれど、そこまで行けばウォッシュレットトイレがあるのだ。
これだけ混んでいる時に各サイトのトイレはあまり使いたくない。
朝霧の中に浮かぶ思案島
次第に朝霧が晴れてきた。
湖は全体がベタ凪となって、そこに上空の空が映り込む。
これも期待していた風景。
朱鞠内湖は本当に裏切らない。
湖上散歩へと繰り出す。
真っ青な空よりも、適度に白い雲が浮かんでいる空の方が、湖面に写り込んだ時の様子が美しい気がする。
そんな湖面でカヌーに乗っていると、まるで空を飛んでいるような気分になれる。
まるで空の上に浮かんでいるみたいな錯覚にとらわれる
朱鞠内湖で長距離を漕ぐ時は、思案島や北大島を目指すことが多いのだけれど、今回は東側の岬を巡ることにした。
岬と岬の間は奥深い入り江になっている。
その奥まで入ってみたいが、往復するだけで3キロくらいになるので、それは止めておく。
とりあえずは、見えている一番遠い岬までやってきた。
岬の先まで進んでみたけれど、その先は目的地にするのも嫌になるくらいに、湖はさらに広がっていたので、今回はここで一旦上陸することにした。
後で調べてみると、この岬から先はカヌー等航行不可区域となっていたようだ。
ここに上陸することに
岬の周辺は浅瀬が広がっている。
朱鞠内湖の水はそんなに澄んでいるイメージは無いけれど、こんな浅瀬に来ると、沈んでいる切り株等がはっきりと見えて、意外と綺麗な水であることに気が付く。
切り株は一つ一つが面白い形をしていて、見ていても飽きることがない。
朱鞠内湖では何度か珪化木を拾ったことがあるので、上陸する度に石を探すのだけれど、最近はなかなか見つけられない。
意外と透明度の高い朱鞠内湖の水
岬探検を終えた後はサイトまで戻ろうかと思ったが、ベタ凪の湖面はまだそのままだ。
このまま帰るのも勿体ないので、思案島にも寄り道していくことにした。
思案島の更に先には、私が朱鞠内湖のシンボルツリーだと勝手に決めている二股の木が水面から立ち上がっている。
3年前にその木の近くまで行った時は、かなり風化が進み枝の一部が折れてしまっていた。
もしかしたら、もう倒れてしまったかもしれないと心配していたが、以前と同じ姿で立っているのを思案島から確認できて嬉しかった。
湖面にさざ波が立ち始めたので、ようやくサイトへと戻る決断ができた。
朱鞠内湖のシンボルツリーが遠くに見えていた
この日の昼食は幌加内の八右衛門で蕎麦を食べることする。
11時半の開店前に現地に到着したら、店の前に既にお客さんが並んでいたのでビックリした。
すっかり人気店となったようだ。
暫く待たされたけれど、でてきた蕎麦は本当に美味しかった。
開店前に既に人が並んでいる八右衛門
その後はせいわ温泉ルオントで風呂に入ろうと思ったら、まさかの定休日。
時間はたっぷりとあるので、しょうがなく士別市の日向温泉に向かったら、そこもまさかの定休日。
温泉は諦めて、キャンプ場のシャワーで済ませることにする。
今回のキャンプでは家から薪を持参していたけれど、何時もならば場内で枯れ枝等を十分に集めることができる。
しかし、最近のキャンプブームに焚き火ブーム、場内の枝も拾い尽くされた観があって、あまり落ちていない。
おまけに、数日前にかなり雨も降ったようで、たまに有ったとしても湿ったものばかり。
それでも、誰かが燃やすのを諦めて林の中に捨てていった様な太い薪等をゲットして、昨日から焚き火台の下に置いて乾かしておいたものがあった。
それにプラスして、昨日燃やし残した薪と、新たに管理棟で一束購入した薪があるので、量は十分。
シャワーから戻った後は直ぐに焚き火を始める。
サイトに戻って直ぐに焚き火を始める
ビールのつまみは、浮いた温泉代で買った「サクッと!ぽろっとワカサギ」。
朱鞠内湖で売られている「サクッと!ワカサギ」はなかなか美味しいのだけれど、今はワカサギ漁シーズンではないので売られていない。
たまたまレークハウス朱鞠内の売店で、このアウトレット版である同品が売られていたので、それをゲット。
多分、「サクッと!ワカサギ」を作っている最中に発生する不良品をまとめたものだと思われるが、味に変りはないので、私たちにはこれで十分である。
シャワー代とおつまみ代で、温泉料金二人分とほぼ同じ
今日も相変わらずキャンパーは多くて、湖畔のサイトも全て埋まっているが、昨日よりは随分落ち着いた雰囲気だ。
火・水曜休みの人が多いのだろうか。
湖がまた凪いできたので、カヌーを出す。
鏡の湖面の写真を撮ろうとしていると、何時の間にかさざ波が立っていたりする。
ほんの僅かな風が吹くだけでこうなるのに、今日の午前中は本当に条件が良かったのだろう。
雲も少なくなって、夜には星空が楽しめそうだ
夕食は小さなお釜で炊く炊き込みご飯。
かみさんが気に入って買ったお釜なので、炊飯はかみさんの担当。
しかし、何故か固形燃料一個では炊き上がらず、固形燃料を追加している間に焦がしてしまったようだ。
私のメスティンで炊いた方が良かったのに、と心の中で思いながら、少々焦げ臭い炊き込みご飯を頂いたのである。
この日はISSが半月の直ぐ近くを通過するはずなので、カメラを構えて準備をする。
しかし月の高度が低くて、樹木の間にかろうじて月が見えているだけ。
やっと現れたISSは月の明るさに圧倒されて、期待していたような明るさではなく、まともな写真は撮れなかった。
ISSはこの月の下を通過していった
それでも今夜は雲が広がっていないので、星が良く見えていた。
月が沈めば、もっと美しい星空が広がりそうだ。
昨日は午前3時頃にトイレに起きたかみさんが、星が凄かったと感動していたので、私も今夜は夜中に起きてみるつもりでいた。
そして良い具合に12時過ぎに目が覚めたので、そのままテントの外に出てみる。
頭上を見上げると木々の間に天の川がくっきりと見えていた。
木々の間から見える天の川
そのまま湖畔まで降りてみると、べた凪ぎの湖面に星が映りこんでいた。
然別湖やオンネトーで、湖面に映る星に感動したことはあるけれど、朱鞠内湖ではこれが初めての体験である。
かみさんも起きて来て、一緒にその星空を楽しむ。
朱鞠内湖で湖面に映る星を見たのは初めてかも
東の空にはオリオン座も昇ってきていた。
春に見て以来のオリオン座である。
星空撮影のために、明るい広角レンズを持ってきていたけれど、カメラの感度を上げ過ぎたのは失敗だったようだ。
星が沢山写りすぎて、どれがオリオン座なのか分からない写真になってしまったのだ。
星景写真はなかなか難しいのである。
実際にはオリオン座がハッキリと見えていたのだけれど
翌朝は前日よりも濃いガスに包まれていた。
気温も低く、湖上で朝のコーヒーを飲むよう雰囲気ではなく、今日は焚き火の前で朝のコーヒーを味わう。
アメダスの気温を見ると、朱鞠内の気温は0.5度。
普通ならば霜が降りてもおかしくはない気温だけれど、それ程寒くは感じない。
体感気温は4度くらいだろうか。
多分、湖の水温が高いので、キャンプ場付近の気温も高めなのだろう。
昨日の朝より霧が濃かった
少し霧が晴れてきそうな様子もあったので湖に漕ぎ出してみる。
昨日に続いて湖上からの朝日を楽しめるかと思っていたら、霧は逆に濃くなるばかり。
キャンプ場の対岸の岬を回り込んだところで、これは駄目だと思って引き返すことにする。
しかし、更に霧が濃くなって途中で完全にホワイトアウト状態になってしまう。
自分たちがどちらに向かって漕いでいるのか、方向感覚も失う。
もしかしたら、全然違う方向に向かって漕いでいるかもしれないと不安になってくる。
真っ白な中に湖岸に張られたテントがぼんやりと見えてきた時は、本当にホッとした。
テントが見えた時はホッとした
その霧は場内まで流れ込んできた。
朝食を済ませて、今日もさわやかトイレまで朝の散歩に出かける。
霧に包まれた朱鞠内の森も良い雰囲気だ。
遠いトイレまで歩くのも楽しい
午前9時近くになってようやく霧も晴れてきた。
カヌーにもたっぷりと乗ったし、このまま帰るつもりでゆっくりと撤収作業を進める。
しかし、霧が晴れてべた凪ぎの湖面が目の前に広がると、やっぱり我慢はできなかった。
テントが完全に乾くまで、最後の一漕ぎを楽しむことにする。
最後まで楽しめた朱鞠内湖だった
弁天島に上陸し、最後に朱鞠内湖の風景を楽しむ。
以前は毎年訪れていた朱鞠内湖のキャンプ場だけれど、最近はその間隔も空くことが多くなっていた。
それでも、訪れるたびに裏切ることなく美しい風景を見せてくれる朱鞠内湖は、我が家一番のお気に入りフィールドなのである。