北海道キャンプ場見聞録
コロナのおかげで川原キャンプ
歴舟川の川原(8月31日~9月1日)
前回の歴舟川の川旅から、ほぼ2ヶ月。
緊急事態宣言の発令によりキャンプ場がクローズし、予定していた然別湖キャンプができなくなり、その代わりとして再び歴舟川へとやってきた。
川原キャンプならば感染確率は限りなくゼロに近いのだけれど、車の回送で利用したタクシーの運転手さんがやたらに話しかけてくるので、それだけが少々困るくらいだ。
河口から大樹町市街地までのタクシー料金は、これまでは4千円でお釣りがきたはずだけれど、今回は4千3百円もかかってしまった。
大樹橋の下からスタート
天気は快晴、気温は25度、川の水位は前回よりも20センチ程増えて、これ以上は望めないくらいの川下り日和だ。
大樹橋の下からカヌーを出す。
前回は、ふるさと大橋を過ぎたところで右岸から左岸側に流れが変わっていたが、今回本流は橋の手前から左岸へと流れていた。
8月始めにこの付近では100ミリを越す大雨が降って、大樹橋の水位観測所では1m位増水していたので、その時に流れが変わったのだろう。
この先でも何箇所か流れが変わっている場所があり、本当に下る度に様子が変わる川である。
ふるさと大橋上流部で右岸から左岸へと流れが切り替わる部分の瀬
前回下った時は、記録的な少雨が続き歴舟川も全体に藻が発生して、清流のイメージとは程遠い川になっていた。
それがこの増水のおかげで完全にリセットされたようで、元の清流に戻っていたのは嬉しかった。
歴舟川の一番の魅力は、やっぱり水の透明度なのである。
元の姿を取り戻した清流
瀬の波もかなり大きくなっていた。
去年はもっと水が多くて濁流となっている時に下っていたが、そんな時は大きな波を避けられるチキンルートを下ることができる。
今回は、どうしても波の高くなっている場所に入ってしまうので、瀬を越える度にカヌーの中に水が入ってしまう。
写真では分かりづらいけれど、かなり大きな波が立っている
途中で上陸した川原で、コンビニ弁当の昼食。
川原で食べれば何でも美味く感じる。
高級レストランで食べる冷やし中華って気分
前回の野営地を通り過ぎる。
ショウドウツバメが営巣していた土の壁に巣穴はもう見当たらない。
テントを張った川原も特に魅力的なものには見えなかった。
今回の野営地を決めるのに、日高山脈に沈む夕日が見られる川原を選ぼうと考えていた。
前回も去年も、河畔林の中に沈んでいく夕日しか見られていないのだ。
過去の川原キャンプで何度かそんな夕日を楽しめていたが、2011年の川原キャンプが歴舟川を赤く染めながら日高山脈に沈んでいく夕日のベストロケーションだった気がする。
毎年の野営地は全て記録しているのだけれど、川の流れが毎年変るので、同じ場所にテントを張ろうと思ってもそれは殆ど不可能なのである。
この河原、ロケーション的には最高だったけれど焚き火用の流木が全く無い
3箇所目に上陸した川原で良い場所が見つかった。
山のロケーションも良く、テントを張るのに適した小砂利の平らな場所もある。
周りで流木も十分に集められる。
難点は、川からその場所まで少し距離があること。
まあ、快適なキャンプのためには荷物運びに苦労することなど気にしない。
そうして今回の野営地が決定した。
そこに有った太くて長い流木が色々と役に立ちそうだ。
その流木の両端にそれぞれのテントを設営。
もう少し二つのテントが近付いていた方が写真を撮りやすいのだけれど、それはしょうがない。
自分が一番良いと思った場所にテントを張るのが、私たちのやり方なのである。
それぞれの好きな場所にテントを設営
流木を拾い集めてからビールを開ける。
この日の大樹町の最高気温は26度。
陽射しを遮るものが何もない川原キャンプでは、それくらいでもかなり暑く感じる。
それでも30度を超えるような日の川原キャンプと比べたら快適だ。
川がもう少し近くを流れていれば最高だった
かみさんが釣りをしたっているが、近くに良いポイントはない。
少し歩いたところに何となくつれそうな場所があった。
川底まではっきりと見えていて、そこに魚の姿はない。
それでも、せっかく用意をしてきたので竿を出してみることにした。
ちょっと深さが足りないか
結局、釣れたのはワカサギサイズのウグイが、私とかみさん一匹ずつだった。
私たちの釣りはキャンプのおまけ程度のものだけど、どうも最近は大物から見放されているようだ。
全く釣れないよりはマシか
少し涼しくなってきたので焚き火を始める。
到底燃やしきれないような大量の流木があるので、直ぐに始めても良かったのだけれど、ただでさえ暑いのにそこでわざわざ焚き火の熱を加える気にはなれない。
燃やす流木はいくらでもある
丹頂のような鳴き声が聞こえたかなと思ったら、後ろの林の向こうから2羽の丹頂が飛び立ってきて、私たちからは遠く離れた川の方に降りていった。
歴舟の川旅では毎回確実に丹頂の姿を見られるけれど、今回はこの時だけに終わって、写真を撮ることもできなかった。
アルコールの回りも早い気がする
夕暮れが迫ってきたけれど、日高山脈にかかっている雲がなかなか取れない。
これでは河畔林に沈む夕日と大して変りはない。
せめてその雲を赤く染める夕焼けになってくれれば良かったのだけれど、劇的な変化は起こらないままに太陽は雲の中に隠れてしまった。
日高山脈に雲がかかってしまった
今日の夕食はパエリア。
私は前回に続いて、焚き火を利用した炙りベーコンにチャレンジ。
今回は生ベーコンを使ってみたのだけれど、これは大失敗。
焚き火で炙った生ベーコンは、やたら固くなって、しかもしょっぱい。
生ベーコンはそのまま食べたほうが良いみたいだ。
これだけのベーコンを炙るのに仕掛けが大きすぎるか
日が沈んだ後の西の空では金星が明るく輝いていた。
そして東の空には金星以上に明るい木星が浮かんでいた。
川の上に赤く輝く星は何だろうとスマホのアプリで調べてみると、さそり座のアンタレスだった。
日没後の空には金星が浮かんでいた
ビールを全て飲み干してワインに切り替える。
太い流木が良い背もたれになってくれる。
この状態でアルコールを飲み続ければ完全な駄目人間になってしまいそうだ。
反対側の空には木星が、もう一つの明るい星は土星だ
暗くなるにしたがって天の川もくっきりと浮かび上がってきた。
素晴らしい星空である。
かみさんだけが何個も流れ星を見つけるのは何時ものことだ。
天の川がくっきりと見える
今年はペルセウス流星群が観測しやすい年だったので、それを撮影するために中古の明るい広角レンズを買っていた。
しかし、流星群の当日は天気が悪くて撮影はできず。
そのレンズを今回の川旅に持ってきていたので、それで初めて星空を撮影してみた。
流れ星も写っていた
何時も使っているズームレンズで撮った画像と比べてみると、写っている星の数が全然違う。
もう一ランク明るいレンズにすればもっと素晴らしい星景写真を撮れるのだろうけど、レンズの値段は一気に跳ね上がる。
私が使うにはこれくらいのレンズで十分だろう。
大樹の街の明かりもぼんやりと見えている
そんな星空をたっぷりと楽しんでテントにもぐりこむ。
翌朝は午前4時半に目が覚めた。
テントの外を覗くと雲が赤く染まっていたので、慌てて起きだす。
朝焼けの空
私が写真を撮っている間に、かみさんが焚き火に火をつける。
我が家の川原キャンプでは、メインの焚き火の他に、かみさんが調理用の小焚き火を別に管理する。
調理用といっても料理の殆どはガスコンロを使っているので、小焚き火の主な役割はお湯を沸かすことくらいだ。
朝の焚き火
でも常にそこでお湯が沸いているということはなかなか便利なものである。
そのお湯で朝のコーヒーを味わう。
昨日焼き芋を焼くのを忘れていたので、朝の焚き火で芋を焼いて、それを河口で食べることにする。
朝食の準備をするかみさん
朝食を済ませてぼちぼちと撤収を始める。
日差しが強いのでシュラフも乾かせるし、夜露で濡れたテントも直ぐに乾いてしまう。
周りは小砂利の川原なのでテントや荷物が汚れないのも快適である。
そして、長い流木が片付け時にも大いに役立ってくれた。
荷物を全て流木の上に並べて、それから別々の防水バッグに収納していくのだ。
撤収時にはこの流木が役に立ってくれた
毎年1度はやっている川原キャンプだけれど、普段のキャンプと違って何処に何を入れたかを直ぐに忘れてしまう。
自分なりにルールを決めてパッキングしているつもりだけれど、いざ何かを探そうとすると、なかなか見つからずに全ての防水バッグの中身を引っ張り出す羽目になってしまう。
二日目の川下りスタート
そうして、午前8時10分、全ての荷物をカヌーに積み込み、河口を目指して川を下り始める。
前回は分流も少なく、何も迷わずに本流を下っていけたけれど、今回は分流が多くなっていた。
逆光で川面がキラキラと光り、隠れ岩や浅瀬の判断がしづらい。
その状態で進むべき分流を選択するのはなかなか面倒だ。
朝は逆光になるので川の様子を確認しづらい
それでも大きな失敗はしないで、何とか下れていた。
これで水量がもう少し減ったら、かなり苦労しそうな気がする。
下りながら、キャンプできそうな川原を見つけるたびに上陸して確認する。
テントを張ることはできても、私が求める全ての条件を満たす川原は滅多にないものだ。
そんな中で今回の野営地はベストな選択だったと自己満足するのだった。
この辺りも良い感じの野営地だが川の護岸が少し目障りだ
川の流れが変わってくれたおかげで、前回のいくつかの難所は通らずに済んだ。
ただ、歴舟橋の下を通過するところで、本流が橋脚にまともにぶつかるようになっていた。
余裕を持って避けられたけれど、その橋脚に流木が絡まればちょっと嫌らしいことになりそうだ。
現在は橋の工事で流れを無理やり変えているけれど、来年になればここの様子も大きく変りそうだ。
歴舟橋の下を通過する時は要注意だ
前方に海が見えてきた
この時点で河口までの距離はまだ2キロもある。
後で調べてみると、ここでの海との標高差はおよそ10mだった。
この数字から、河口まで瀬が続く歴舟川なのが良く分かる。
2キロ手前から海が見える
何時もならば河口部には大きなプールができていて、その一部から海へと流れ出るのが普通である。
ところが今回はプールに入ることなく、そのまま海へと流れ出る感じになっていた。
これが本来の河口の姿と言えそうだ。
午前9時40分、河口到着。
太平洋の波は比較的穏やかだったが、それでも何時ものように波の音が腹に響いてくる。
歴舟川の河口に到着
遠くには長く連なる日高山脈の姿が見えていた。
天気も良くて最高の川旅の締めくくりである。
海を眺めながら焼き芋を頬張る。
その辺りに転がっている形の良い流木を今回のお土産にする。
歴舟川河口部の風景
河口の様子が変わったおかげで、そこから車を停めている場所まで戻るのに少し苦労した。
結構な流れのある川の中をカヌーを引っ張りながら、400mの距離を歩かなければならなかったのだ。
家に帰ってから今回の野営地を地図にプロットしてみたところ、去年の9月にテントを張った場所とほとんど同じだったことに気が付く。
場所が同じでも、その時の写真を見てみると、様子が全然変わっている。
これだから毎年新鮮な気持ちで歴舟川キャンプを楽しめるのだろう。