北海道キャンプ場見聞録
ツバメに見守られ川原キャンプ
歴舟川の川原(7月3日~4日)
去年の歴舟川の川旅で、現地に来ていながら体調不良により参加できなかったBさん。
今年こそはと張り切っているBさんの都合に合わせて日程もこの日に決めたのだけれど、直前になってまたしてもBさんは体調不良に見舞われてしまった。
他に都合の悪い人も多くて、今回の川旅参加者はNモトさんだけになってしまった。
高速道路を十勝清水ICで降りて、そこからはジャガイモの花を楽しみながら裏道を走っていく。
花の最盛期にはまだ少し早い感じだが、それでも満開となっているジャガイモ畑もある。
十勝の畑の風景は四季ぞれぞれの美しさがあるけれど、やっぱり今の季節が一番美しい気がする。
ジャガイモの花が美しい十勝の農村風景
到着時はまだ雲が多かったけれど、車を河口に回してスタート地点の大樹橋まで戻ってくる頃には青空が広がっていた。
昨日は、参加できなくなったBさんに「週末は天気がパッとしないみたいだから、ゆっくり静養してね」と慰めていたのに、そのBさんに申し訳ないような好天である。
良い天気になった!
十勝では暫くの間まとまった雨が降っていないので、川の水量はほぼ最低水位と言っても良さそうな状況だ。
それでも、カヌーの底を擦りながら何とか下れるレベルである。
最初の岩盤の瀬も問題なく下ることができた
65リットルの防水バッグを新たに購入したNモトさんは、それをSUPにくくりつけて下っている。
乗っているのは川旅用の浮力の大きいSUPだけれど、ただでさえ操作性の悪い大型SUPに大きな荷物を乗せてのダウンリバーだ。
それでも瀬をものともせずに下っているのは流石である。
先週の空知川では、この川旅に備えて重さ10キロの石をSUPに乗せ下る練習をしていた。
そこまでやるのは、多分彼女くらいしかいないだろう。
大きくて重たい荷物も苦にせずに瀬を下る
ふるさと大橋の下流にあったテトラの絡んだ瀬は、そのテトラが全て無くなって、普通の瀬に変わっていた。
その先の岩盤がむき出しになった瀬も、流れが変わって問題なく下れる。
テトラが無くなって楽しく下れる瀬に変わっていた
とりあえずの難所が無くなっていたので、気持ちも楽になって川原で昼食を食べる。
つがいのタンチョウが、私達を出迎えてくれるかのように頭の上を横切っていった。
歴舟川ではすっかりお馴染みになったタンチョウ
そこから更に下っていくと、ショウドウツバメが営巣している土壁があった。
その下の川の深みには沢山の魚が群れているのが見える。
そして、土壁の対岸に広がる川原は、テントが張りやすい小砂利になっていて、手頃な大きさの流木も沢山も転がっていた。
「ここ良いんじゃない?」
午後1時15分、今回の野営地となる川原は迷うことなくあっさりと決まったのである。
野営地に上陸
川の水面からの高さが足りないのが少々気になるが、今日の天気ならば川が突然増水するリスクは殆どないだろう。
それ以外で残念なのは、夕日が沈む方向に河畔林が茂っているので、川面を赤く染めながら遠くの日高山脈に沈んでいく夕日を見られないことくらいである。
テントを張りやすい小砂利の川原
Nモトさんは、少し小高くなった場所にツェルトを設営。
去年は自分のSUPの上にツェルトを張っていたけれど、今回は大型防水バッグのおかげでマットも持ってこられたようだ。
小高くなった川原は樹木が茂ってきている
その一段高くなった広大な川原には、ここ数年は水が上がってきていないようだ。
柳などが茂って藪化しつつある。
女性陣が身を隠してトイレを済ませるには丁度良い川原だけれど、このままでは後数年で人も入れないような藪になってしまうのは間違いない。
でも、一度大雨が降れば、この河原も再びリセットされるのだろう。
2018年頃に撮影されたGoogleマップの航空写真では、広大な川原に樹木は全く生えていない
流木を拾い集め、ビールで乾杯し、一息付いたところでカヌーで対岸に渡って竿を出す。
Nモトさんも、しっかりと自分の竿を持ってきていた。
目の前を大きな魚の群れが泳いでいるのが見えているのに、見える魚は釣れないものである。
ショウドウツバメが営巣している崖の前で釣りを楽しむ
やっと釣れたのはウグイ。
やっぱり、こんなところでニジマスが群れているわけは無いのだ。
ウグイでも釣れたら嬉しい
去年の川原キャンプではローストビーフにチャレンジしたけれど、今回は焚き火で燻す炙りベーコンを作ってみることに。
作ると言っても、焚き火の前にベーコンを吊るすだけなのだけれど、問題はどうやってベーコンを吊るすか。
柳の幼木を1本切り出して、それを流木を使った支柱の上に渡して、そこにベーコンを乗せる。
後は焚き火からの距離だけれど、焚き火の炎を強いので、少々離れていても十分に炙ることができる。
やがて、吊るしたベーコンから油が滴り落ち始めた。
良い感じでベーコンが炙られる
この日は偶然にもモモ7号機の打ち上げの日になっていた。
当初の打ち上げ時間はお昼頃の予定だったけれど、上空の気象条件により延長されて午後5時45分の打ち上げとなる。
打ち上げ場所はここから直線距離で12キロ程。
上空には完璧な青空が広がり、もしかしたらその姿を見られるかも知れない。
ロケット打ち上げの瞬間を待つ
インターネットの生中継を見ていると、打ち上げまでまだ1分以上あるのに、遠くからゴーッと音が聞こえてきた。
「あれ?スマホの画面にまだ変化は無いのに?」
どうやらインターネットの生中継には時差があるようだ。
上空を見上げると、蚊取り線香から上がる煙のような白い筋が真っ青なキャンバスに描かれていた。
期待していた光景とは少し違っていたけれど、川原キャンプ中に打ち上げの様子をこの目で見られるとは感動である。
ロケット打ち上げは成功したようだ
炙りベーコンは、炙り時間が長過ぎて少しカリカリになってしまったが程よく燻製されてまずまずの出来である。
これならば、もう少し厚切りのベーコンを使った方が良かったかも知れない。
良い感じに仕上がった炙りベーコン
次第に日が傾いてきた。
河畔林の中に沈む夕日はやっぱり見栄えがしない。
日の入りの時間が近づく
夕焼けにもならなかったけれど、大樹町のこの日の天気予報は一日中曇りの予報。
夕日を見られただけでも御の字である。
もう少し空が染まって欲しかった
かみさんがチーズフォンデュを作ってくれる。
これにはやっぱりワインが良く合う。
ワインが無くなると、Nモトさんが自分で漬けた梅酒を出してきた。
ストレートで飲むと少しきつすぎるが、水で割るとマイルドになってなかなか美味しい。
チーズフォンデュにワインと焚き火
空には薄雲が広がっているようで、明るい星の姿しか確認できない。
ここで満天の星空が広がったりしたら、それはさすがに出来すぎである。
真っ暗な川原で豪快な焚き火ができるだけで幸せというものだ。
気持ちよく酔いも回ってテントへと潜り込んだ。
暗闇の中に焚き火の炎だけが揺らめく
寝る時間が何時もより遅くなっても、目が覚めるのは何時もと同じ午前4時頃。
もう少し眠ろうと努力したけれど、それが無駄な努力であることを知って、起き出すことにする。
辺りは濃い霧に包まれていた。
少し離れたところに、流木が絡んで如何にも魚が潜んでいそうなポイントを見つけて竿を出してみる。
山女魚が1匹釣れたけれど、あまりにも小さ過ぎて、かみさんに「料理して」とも言えずに、そのまま焚き火で荼毘に付すことにする。
朝食はNモトさんがフレンチトーストを作ってくれた。
我が家ではフレンチトーストを食べる習慣がないのだけれど、シナモンが効いて甘くて柔らかいフレンチトーストは、二日酔いで食欲のない朝でも美味しく食べられそうだ。
焚き火の不安定な火力でフレンチトーストを焼くのに苦労していた
朝はツバメ達の活動も活発だ。
雛に餌を与えているのか、頻繁に巣穴を出入りしている。(動画はこちら)
テントを張っている川原の目の前にショウドウツバメの巣穴があり、周辺をツバメが飛び交う。
こんなキャンプもなかなか経験できるものではない。
ただ、私とかみさんのテントには、ツバメの落とし物が付いていたのが、ちょっと残念だった。
ツバメ達も朝は忙しそうだ
近くの水たまりにはタンチョウとシカの足跡が残っていた。
もしかしたら、私達の知らない間に直ぐ近くまで来ていたのかも知れない。
知らない間にシカやタンチョウが来ていたのかも知れない
ゆっくりと片付けを始める。
拾い集めた流木はすべて燃やしたけれど、直ぐ近くにはまだ沢山の流木が転がっている。
私達が川原でキャンプをすれば、周辺の流木は綺麗に片付けられるのだけれど、これはちょっと不本意だった。
女性をゲストに迎え、少々お上品な焚き火になってしまったのかも知れない。
拾い集めた流木だけは燃やし尽くせたけれど左側の砂地にはまだ流木が沢山残っている
午前8時45分、野営地を後にして河口を目指し下り始める。
空はどんよりと曇ったままだ。
去年下った時と川の様子が大きく変わっていて、テントを張った場所にも気が付かないままに通り過ぎてしまったようだ。
大増水していなくても流れが変わるのは歴舟川では珍しいことでは無い。
このおかげで、毎年新鮮な気持ちで川下りを楽しめるのである。
ここを本流が流れていたことも有ったのだろう
この日はオジロワシの姿を何度も目にした。
歴舟川では、タンチョウの姿を見るのは普通だけれど、オジロワシはあまり見かけない気がする。
それが今回は、川原の流木にとまっている姿を3回も見かけて、そのうちの1回は夫婦なのか2羽でとまっていた。
2羽が並んで流木にとまっている姿を写そうとしたけれど飛び立ってしまった
水は少ないけれど、何とか座礁することもなく下れていた。
川幅が思いっきり広がって、本流が何処に向かっているのかも分からなくなるような時もある。
そんな中で下るルートを探すのも、この区間を下る時の楽しみでもある。
Nモトさんが前に出て、テトラの障害物の中を上手くすり抜けて下っていく。
その姿を確認して私達もその後を下ったが、結構危ない場所でひやりとさせられた。
ここのテトラは結構いやらしかった
川を完全に塞ぐような倒木が現れて、私達はポーテージしようかと迷っていると、Nモトさんが私達を追い越してその倒木に向かって下っていった。
「まじかよ!」と思いながら見ていると、その倒木の寸前で横に向かって上手に倒木をかわしてしまう。
その後はSUPから降りて、私達が倒木に突っ込まないように、倒木の前に立ってルートを指示してくれる。
最近は私達が参加できないようなレベルの川も積極的に下っていて、スキル的にはもう私達の上をいっているNモトさんなのである。
倒木の前で誘導してくれるNモトさん
歴舟橋の直前に、川を塞ぐようにテトラが並べられている場所があった。
右端にギリギリで通り抜けられるスペースはあったけれど、ここは無理をしないでポーテージする。
まるでカヌーを罠にかけるために作ったようなもので、何を目的とした水制工なのか理解できない。
歴舟橋の手前で流れを塞ぐテトラの列
去年まで、歴舟橋の右岸側を本流が流れていたけれど、今回は橋の中央付近に変わっていた。
2年前くらいから橋の補修工事が行われていて、多分この流れも人為的に変えられた気がする。
右岸側は結構嫌らしいポイントだったので、この本流の切替はありがたかった。
歴舟橋は通過しやすくなった
歴舟橋から下流は分流が増えてくる。
下る分流の選択を間違えて苦労したこともあるので、それを心配していた。
しかし、意外と分流が少なく、順調に下っていく。
分流に迷い込むこともなく楽しく下れる
流木の大きな山も目立つようになってくる。
歴舟川での川原キャンプは過去に10回以上はやっているけれど、歴舟橋から下流にテントを張ったのは7年前の一度だけ。
今ならここで、かなりワイルドなキャンプを楽しめそうな気がする。
流木の山が目立ってくる
歴舟河口独特の、腹に響くような波の音が遠くから聞こえてきた。
最後の瀬を下ると河口部の大きなプールに出てくる。
海とこのプールの間は、太平洋の波で積み上げられた小砂利や砂の山で遮られているのだが、その何処に河口があるのか全く見当がつかない。
何処が河口なのか見当がつかない
これだけ川の水量が少ないと、もしかしたら河口も無くなっているかも知れない。
そんなことも考えたけれど、さすがに河口が消えることは無い。
砂の山に切れ目があって、そこから海と並行するように細い水路がてきていた。
そしてその先で、歴舟川は太平洋へと注いでいるのである。
河口へ続く水路に入った
しかし、ここまで下ってきた川の様子と比較すると、その河口部の流れはあまりにもか細かった。
恐らく、大部分の水は小砂利の山から染み出すように太平洋へと流れ出しているのだろう。
これならば、河口が無くなることも有り得るかも知れない。
ここでは、太平洋の波と歴舟川の水流とのせめぎ合いが延々と続けられているのである。
加工と言うにはあまりにも細やかな流れだ
上空には青空も覗いてきていた。
太平洋の大波を眺めながら、Nモトさんが作ってくれたウィンナーと焼きリンゴのお弁当、そして朝の焚き火で焼いた焼き芋を皆で食べる。
最高に快適な川旅の締めくくりである。
楽しい川旅だった
再びカヌーに乗って、車を停めてある場所まで戻る。
プールの中には、上流から流されてきた泡が大量に浮かんでいた。
今回の歴舟川は渇水が続いていたことの影響なのか、川全体に藻が繁茂していて、清流のイメージが失われていた。
こんな歴舟川を見るのは初めてである。
一度でも増水すれば、これらの藻も綺麗に洗い流されるのだろうが、他に被害が出ないような大雨がそろそろ降って欲しいところである。
水は澄んでいたけれど、藻が大発生して泡も浮かぶ歴舟川には清流のイメージはなかった
去年までは河口の近くまで車で入ってこられたけれど、今はもう無理。
それでも、駐車場所の近くまで小さな分流があったので、その中をカヌーを引っ張りながら歩いていけたのは助かった。
そして、皆の装備を愛車のエクストレイルに積み込む。
11年間で21万キロ以上走ったこの車も、もう少しで次の車と入れ替えとなる。
最後にその姿をカメラに収めて、歴舟川にお別れを告げた。
11年間お世話になったエクストレイル
歴舟川本町観測所水位:61.30m