北海道キャンプ場見聞録
歴舟川で避暑キャンプ
歴舟川の河原(8月5日~6日)
大樹町市街地の大樹橋の下にカヌーとキャンプ道具を降ろし、車を河口へと回す。
そしてそこからタクシーを呼び、待ち合わせ場所は例年と同じ「歴舟川河口近くのサケマス孵化場跡」。
最初に電話を掛けた大樹ハイヤーは廃業してしまったようで電話が繋がらず、もう一社の雅交通に電話をかける。
15分くらいで来てくれたけれど、タクシー会社が一社だけになった影響なのか、私たちが乗車している間にも何本も予約の電話が入り忙しそうである。
私達単独の川下りではタクシーが欠かせないので、雅交通さんには頑張って営業を続けてもらいたいものである。
サケマス孵化場跡でタクシーを待つ
大樹橋までタクシー料金は3750円。
これで二日間の川旅を楽しめるのだから、高い金額ではない。
カヌーにキャンプ道具を積み込み、午前11時半大樹橋の下からカヌーに乗りこむ。
ポケットキャニオンでの川旅はこれが初めてだけれど、全長が短くなっても積載量は十分。
その気になればもっと沢山の荷物を積み込めそうだ。
大樹橋の下から川下りスタート
スターとして直ぐに現れる大樹橋下流の瀬も問題なく下れた。
ここは、本流の場所が何度も変わっていたけれど、最近はほぼ安定して同じところを流れている。
おかげで以前より下りやすくなってきた気がする。
水量はかなり少なめだ。
尾田観測所の水位は、去年の川旅の時よりも20センチ以上多かったので、楽に下れるだろうと思っていたが、実際はその逆で時々座礁する位である。
観測所の水位も、歴舟川の様に川底の高さが変化する川では、古い記録はあまり参考にならないようだ。
大樹橋下流の瀬
一週間の水位の変化を見ても、雨が全く降ってない割には水位が全然下がっていなかった。
随分安定しているなと思っていたけれど、これがほぼ最低水位で、これ以上下がりようが無かったのかもしれない。
ふるさと大橋を通過し、幾つかの瀬を越えた先にテトラの瀬が現れる。
キャンプ道具を沢山積み込んだ状態では、あまり下りたくない瀬である。
当然、直前で上陸して下見をする。
かみさんは弱気になっていたけれど、しっかりと操船さえできれば難しい瀬ではない。
それに何と言っても、キャンプ道具満載の重たいカヌーをポーテージする気にはなれないのだ。
テトラの瀬を下る
嫌なのは、一番最後に流れの真ん中でちょこっとだけ頭を出しているテトラだったけれど、これも何とかかわせて無事にクリア。
後で、去年ここを下った時の動画を見てみると、テトラの場所が随分変わっていることに驚かされた。
しかし、本当の難所はその先で待ち構えていた。
まずは浅瀬で座礁し、舟から降りて歩いて行くと、川底に岩盤が露出している瀬が前方に広がっていた。
特に下見を必要とするような瀬でもなさそうなので、流れの中央から再び舟に乗り込む。
後は流れを見ながら臨機応変に対応するだけだ。
ここで座礁して後ろ向きになってしまった
瀬の最後の方が、ちょっとした落ち込みの複雑な流れになっているのが確認できた。
その中で下るルートを見極めて、そこに向かおうとした時にカヌーが座礁してしまう。
川底が岩盤になっているところでは、浅い所を見極めるのが難しい。
カヌーがクルリと後ろ向きになってしまった。
そこで無理をすれば引っ掛かった岩から脱出できそうだけれど、そうすると後ろ向きのまま落ち込みに吸い込まれることになる。
途中に岩も見えていて、最悪の場合、沈も考えられる。
結局、そこでカヌーから降り、岩盤の上をカヌーを引っ張って何とか岸まで辿り着いけた。
ヒヤリとさせられた瀬
難所をクリアして、後は今日の野営地を探すだけである。
2か所くらい上陸してみたけれど今一つ気に入らない。
河原キャンプでの一番の条件は、下地が小砂利か砂で、快適にテントを張れることである。
それに加えて、川から近いとか流木が沢山拾えるとか、細かな条件は色々とある。
キャンプ地に上陸
何時ものことながら、このままじゃキャンプ難民になってしまうのではないかと不安になってくる。
しかし、次に上陸した河原で良い場所が見つかった。
川から上がった直ぐの場所にテントを張れるし、去年河原の流木が大々的に撤去された筈なのに、ここには流木の山がそこら中に残されている。
かみさんがトイレのために隠れられる場所もテン場から近い。
唯一の不満は、魚の釣れそうなポイントが近くに無いことくらいである。
過去の歴舟河原キャンプの中でも、これだけ良い条件の場所にテントを張れたことは滅多に無い。
既に昼を過ぎていたので、まずは陽射しを遮るためにタープだけ張って、その下で昼食のカップラーメンを食べる。
理想的な河原キャンプサイトである
腹ごしらえが終わったところで、テントを設営し、焚き火用の流木を拾い集める。
去年の河原キャンプの時は気温が30度超え。
河原はまるで灼熱地獄のようで、夕方になるまでテントを張る気になれなかった。
今日の気温は25度程度。
これならば、何とか耐えられる範囲である。
流木を拾い集める
それでも、一通りの設営を完了した後は、ビールを片手に川の中に入ってクールダウンしなければならない。
川に入ってビールを飲む。
河原キャンプでの至福の一時である。
川の中で飲むビールは最高に旨い
流れの中に浮かぶと最高に気持ちが良い
太陽の陽射して火照った体を水に沈める瞬間だけは心臓が止まりそうになるけれど、一度入ってしまえばまるで温泉に浸かっているような心地よさだ。
川の流れのおかげで、まるでジャグジーバスに入っている気分になれる。
この後も暑くなるたびに川に入って体を冷やす。
川岸には小魚たちが群れていた。
模様が無いのでウグイの赤ちゃんなのだろうか。
歴舟川でこんなに沢山の小魚を見るのは初めてだ
かみさんが釣りをしたいというので竿の準備をする。
近くに淵になっている場所も無く、ニジマス用の浮き釣り仕掛けでは全く釣れる気がしない。
かみさんも直ぐに諦めてくれた。
夕食はビビンバ。
最近は我が家のキャンプ料理の定番となっている。
夕食も終え陽も傾きそろそろ焚火の時間だ
次第に日が傾いてきたので焚火を始める。
夏の河原キャンプで残念なのは、暑くてせっかくの焚火に近づく気になれないことだ。
遠くからその炎を眺めるだけである。
暑くて焚火には近づきたくない
今回の野営地では釣りのポイントが無いことの他に、夕日が河畔林の中に沈んでいくことも欠点だった。
もう少し下流の方まで行けば、歴舟川の川面を赤く染めながら、その源流となる日高山脈に夕日が沈む様子を楽しめるのだ。
それを知っているので、この日の夕日の風景に物足りなさを感じてしまう。
それでも美しい夕日であることに変わりはなかった。
巨大な流木の上でサンセットショーを楽しむ
夕焼けの空が川面を赤く染める
サンセットショーを楽しんだ後の楽しみは焚火だけである。
我が家の河原キャンプでは、メインの大焚き火の他に、かみさんが料理用に使う小焚火も用意される。
私が大焚き火の前でビールを飲んでいる間に、かみさんが小焚火で酒の肴を作ってくれる。
かみさんはこうやって料理を作るのが大好きみたいだ
鶏もも肉の香草焼きに焚火の中で焼いたタマネギが添えられる。
もう一品、トマトにツナとチーズを詰め、アルミホイルで包んで焚火で焼き上げたもの。
無茶苦茶美味しい。
霧が広がり三日月を霞ませる
次第に海の方から霧が広がってきて、美しい三日月を霞ませてしまう。
やがて星も完全に見えなくなるくらいに、辺りは霧に覆われてしまった。
川の水音を直ぐ耳元で聞きながら眠りに付く。
かみさんの「星が綺麗よ」との声で目を覚ました。
強烈な眠気と戦いながらテントの外に出てみると満天の星空が広がっていた。
起こしてくれたかみさんに感謝する。
夜中には霧も晴れて美しい星空が広がった
翌朝も快晴。
河畔林の中から朝日が昇ってきた。
河原で眺める朝日
焚き火の前で朝のコーヒーを楽しんでいると、海の方から霧が広がってきた。
海が近いと、何かの拍子で海霧が内陸まで流れ込んでくるようだ。
最初は朝の光が眩しかったのに次第に霧が広がってきた
河原を散歩していると砂の部分にはいろいろな動物たちの足跡が見られる。
その中に大型の鳥のものと思われる足跡があった。
こんな足跡を付けるのはタンチョウ以外に考えられない。
この河原をタンチョウが歩いていたと思うと嬉しくなってくる。
海の方から霧が押し寄せて来る
砂の上に残されたタンチョウの足跡
再び霧が晴れて、午前7時半野営地の河原を後にした。
後で調べてみると、大樹町市街地から下流で過去に野営した中では、今回の野営地が市街地に一番近かった。
去年の野営地はそこから500m程下流の河原だったけれど、河原の様子はすっかり変わっていて、そこが何処だったかも思い出せないままに通り過ぎる。
途中の河原で、長さ1mくらいの細長い石が立っているのを見つけた。
誰かがいたずらで立てたのだろうと思って近づいてみたが、人間が手を加えたような様子は確認できない。
もしも自然にそうなったのだとしたら、何とも不思議な石である。
河原に不思議な物体を発見
誰かが立てたのだろうか?
魚の釣れそうな淵が有ったので、上陸して竿を出してみる。
しかし、竿はピクリともしない。
水が透明で、深い淵の底までくっきりと見えている。
そこに魚の姿は確認できず、これでは釣れるわけが無いだろうと、再び下り始める。
ここは何か釣れそうな気がしたけれど魚影は見えず
去年下った時に、分流していてどちらを下るかで悩まされた場所は、今は1本の本流だけになっていた。
この一年の間に歴舟川が大増水する様な大雨は降っていないはずなのに、本当に毎年姿を変えるのが歴舟川なのだと改めて思い知らされた。
工事現場から手を振ってくれた
歴舟橋では橋脚の工事が行われていた。
その横を通り過ぎる時、現場の人が笑顔で手を振ってくれた。
大樹町から下流の歴舟川を下る人は少なく、カヌーを見るのも珍しいのかもしれない。
夫婦二人だけでカナディアンで下っている私たちは、彼らの目にはどんな風に映っていたのだろう。
河口まであと3キロくらいの場所で、流れが三つに分かれている場所があった。
真ん中と左の分流は水が少なく、カヌーから降りなければ下れそうにない。
右の分流ならばそのまま下れそうだが、右岸の河畔林の際を流れているので、その先に何が有るか分からない。
倒木の山を乗り越えて様子を見に行くと、倒木で塞がれている場所が確認できるだけで2か所あった。
これでは危なくて下っていられないので、左の分流を下ることにする。
それが多分、今までも下っていた流れのはずである。
しかし、そこから先、水が少なく何度も歩かされることになる。
そして、その水の少ない流れが更に分流しているのを見ると、泣きたくなってしまう。
川底の石が藻でヌルヌルしているので、カヌーを引っ張りながら歩くのも大変である。
何度もカヌーを引っ張りながら歩くこととなった
これならば、倒木をポーテージしながらでも右岸側の流れを下った方が良かったのではないかと後悔する。
この辺りでは川幅が思いっきり広がっているので、一度離れてしまった右岸側の流れとは簡単に合流できそうもない。
結局、沢山の分流が一つにまとまったのは河口直前だったのである。
河口の手前は大きなプールになっている
車を停めてあった近くに荷物を降ろして、身軽になって河口を目指す。
歴舟川の河口付近は、海側に砂丘の様に砂が積み上がり、大きなプールになっている。
その砂丘の小さな切れ目から海に向かって水が流れ出るのだけれど、今回は砂丘の向こうに更に小さな砂丘ができていて、二つの砂丘の間を歴舟川は横に数百メートル流れて、ようやく海へと流れ出ていた。
海に出て川下りを終えるのはやっぱり最高だ
川の流れよりも太平洋の波の力の方が大きいので、こんな形になっているのだろう。
歴舟川が大増水した時、この河口がどんな様子になっているのか、一度見てみたいものである。
こうして私たちの二日間の川旅は終わりを告げた。
再びカヌーに乗って大きなプールを横切り、車で入ってこられる場所までカヌーを運ぶ。
そして晩成温泉で汗を流し、そこのこむぎ食堂で腹を満たして、相変わらず真夏日が続いている札幌へと戻ったのである。
川下りの動画(2019年歴舟川注意ポイント)
6月5日12:00 歴舟川水位
尾田観測所:102.22m
本町観測所: 61.48m