北海道キャンプ場見聞録
青いケシを見たくて
幌延ふるさとの森森林公園キャンプ場(7月15日~16日)
ダウンザテッシの閉会式を終え、河川敷の駐車場から出た車の殆どは国道40号を左折し南へと向かう。
私達だけが国道を右折し北へ向かった。
目指すのは幌延町。
ダウンザテッシを終えた後はテントを張る気力も無くなっているだろうと考え、周辺で安く泊まれるバンガローを探して見つけたのが幌延町のふるさとの森森林公園キャンプ場なのだ。
1棟1930円。
他にも遠別町の富士見ヶ丘公園のケビンも1棟2000円と格安だったけれど、幌延町の青いケシも見たかったのでそちらに決めたのである。
民家の見えるキャンプ場
管理人のいないキャンプ場なので、幌延町生涯学習センターでバンガローの鍵を借りてからキャンプ場へ向かう。
北海道も既に観光シーズンに入っているようで、平日にも関わらず4組のキャンパーがテントを張っていた。
ライダーに、チャリダーに、車が2台。
夫婦が1組の他は男性のソロキャンパーである。
豊富温泉ふれあいセンターで風呂に入る
このキャンプ場は、バンガロー以外は無料で利用できる。
天気も良くて、濡れたままのテントを張って乾かしたかったが、直ぐに風呂に入りたいのでバンガローに荷物を降ろして直ぐに出かける。
近くの老人福祉センターで風呂に入れるけれど、運悪く休館日だったので、豊富温泉まで足を延ばす。
入ったのはふれあいセンターのお風呂。
やっぱり、公衆浴場よりも温泉でゆったりした方が気持ちが良い。
そしてキャンプ場まで帰ってきて、ここでようやく二日間かけて天塩川57キロ下りきったことを祝ってビールで乾杯。
天気が良いので、バンガローのテラスに出てビールを飲む。
このテラスが中途半端な広さで、二人で椅子を並べて座るだけで精一杯。
まあ、ロフト付きの6人用バンガローが低料金で利用できるのだから、あまり贅沢は言えない。
テラスがもう少し広ければ良いのだけど
サイトからは、道路を挟んだ目の前に民家が見える。
昔の私ならば、こんなキャンプ場には絶対泊まらなかったと思う。
しかし、今の我が家にとってはキャンプは宿泊の手段でしかなくなっているので、民家が隣にあってもそれ程気にならない。
交通量の多い道路に隣接するよりも、民家に隣接していれば夜は確実に静かになるし、その方が良いことだってあるのだ。
逆にキャンプ場に隣接している住人にとっては、得体の知れない人間が毎日やって来るのだから、物騒な気がするかもしれない。
それでも、こんな場所をキャンプ場として開放してくれている幌延町には感謝したい。
民家が見えるキャンプ場にも抵抗なく泊まれるようになった
私は以前から、道内の各市町村に最低一か所はキャンプ場があるべきだと思っている。
泊まる場所も無く素通りしてしまう様な町が、旅人の記憶に残ることは無い。
もしもこのキャンプ場が無ければ、幌延町と言えばトナカイ牧場が思い浮かぶ程度の町でしかなくなるだろう。
ダウンザテッシを肴にビールが進み、最後に500mlの缶チューハイを呑み始めたかみさんに付き合うこともできず、川下りの疲れもあって早々に眠りに付いた。
バンガローの内部は広く、ロフトまである
翌朝はまた曇り空。
全道的に天気に恵まれなかった三連休の中で、昨日の青空は本当にラッキーだったのかもしれない。
近くの家から出てきたおばさんが、公園のトイレで用を足して、家へと帰っていった。
意外と地元の人にも、このキャンプ場は役立っているようだ。
このキャンプ場は去年リニューアルされ、炊事場もトイレも新しくなり芝生も綺麗になっている。
民家が目の前に見えても、背後には森が迫り、なかなか快適なキャンプ場である。
整備されてより使いやすくなったキャンプ場
そんな場内の風景を眺めながら狭いテラスで朝食を済ませて、撤収開始。
散策路の入り口があったので、最後にそこを歩いてみる。
ロフトから見下ろしたバンガロー内部
キャンプ場は新しくなったけれど、散策路の方は全く手がかけられなかったようで階段も、手すりもほとんど朽ち果てていた。
そこを登りきった場所には、幌延町の街並みを一望できる展望台があった。
この展望台も真新しく、キャンプ場と同時に整備されたのかもしれない。
そこから眺める幌延の街並みは、広大なサロベツ原野を背景にこじんまりとまとまり、良い感じの町である。
展望台から眺める幌延の町
キャンプ場を後にして最初に向かったのはトナカイ観光牧場のノースガーデン。
ここの青いケシが目的で、幌延に泊まったようなものなのである。
観光牧場の方は午前9時オープン。
今は午前8時だけれど、ノースガーデンの方は時間に関係なく自由に出入りできる。
ノースガーデンンの後ろに見えるのは深地層研究センターの展望塔など
残念ながら青いケシの花は既に最盛期を過ぎたようで、僅かに花が残っているだけ。
それでも花が見られただけラッキーだった。
それに、青いケシだけではなく他の花も結構楽しめた。
幻の青いケシ
花の名前は不明
青いケシ以外の花も楽しめる
次に向かったのはパンケ沼。
今日はオロロンラインを南下して札幌へと戻るつもりなので、日本海に出る前にこの辺りに寄り道することにしたのだ。
我が家がパンケ沼を訪れるのは、多分初めてかもしれない。
2006年にサロベツ川を遡ってパンケ沼まで行ってみようとチャレンジしたことがあったけれど、その時は増水して流れの早いサロベツ川を遡るのに疲れ果て、途中で引き返している。
木道の痛みは激しく、湿原も笹が侵入してきている
パンケ沼園地として東屋や木道が整備されている。
しかし、この木道がボロボロになっていて、補修はしてあるけれど湖畔の展望デッキへの木道は崩れ落ちて通れなくなっていた。
そこから北側へ続く遊歩道を一回りしてみる。
もう一か所、湖畔に出られる場所があったが、空にはどんよりとした雲が垂れ込め、その空の色を映し込んだ湖面は風で波立ち、殺伐とした風景が広がっているだけだった。
湿原の中を一回りしている木道の周辺は乾燥化のためか笹が蔓延り、わずかにノハナショウブが咲いているだけ。
駐車場の南側に木道があって、そちらの方はタチギボウシやワタスゲの花も見られ、距離は短いけれどこちらの方が楽しめた。
暗い風景のパンケ沼
次は、そこから程近い幌延ビジターセンターに向かう。
道路を挟んだ向かい側に立派な展望台が有ったので、そこに登ってみる。
幌延ビジターセンター近くの展望台
「ここって登ったことあったっけ?」
幌延ビジターセンターには来たことがあったような気がするけれど、この展望台はあまり記憶がない。
昨日の出来事さえ思い出せなくなっている私達夫婦なので、何年も前のことなどとうに忘れている。
例え登った事があったにせよ、展望台からの風景はとても素晴らしく感動するものだった。
昔のことを忘れていると、毎回新しい感動があるので、物忘れも悪いことばかりではないのである。
この数日後、NHKBSの「日本縦断こころ旅」で火野正平がこの展望台を訪れているシーンが映っていたのは嬉しかった。
展望台から見た牧草ロールの風景
展望台からの眺め
天気は私達の方が良かったみたいだ
この後、ビジターセンターから長沼までの遊歩道を歩いて見る。
こちらの木道は最近整備されたばかりらしく、パンケ沼のボロボロの木道と比べると随分と立派である。
ここからパンケ沼まで続く木道もあるのだけれど、そちらの方は老朽化のため通行止めとなっていた。
長沼までの木道周辺は花も多い
こちらの湿原は笹の侵入も少なく、花も沢山咲いていて、それを眺めながら木道を歩くのが楽しい。
長沼ではコウホネが可愛らしい花を咲かせ、水面に広がるジュンサイの葉も美しかった。
コウホネとタチギボウシ
湿原の中にできた深い穴「ヤチナマコ」を、竿を入れてその深さを体験できる場所もあり、なかなか面白い。
ヤチナマコの深さは3mくらいあるらしい
後で自分のホームページを調べていて、2010年にここの木道を歩いていたことを知ったのである。
その時には展望台には登っていなかった。
こんな展望台を見れば登らないわけがないと思うので、もしかしたらその後に建てられた展望台なのかもしれない。
長沼の水面を埋めるジュンサイの葉
そして、その時に幌延町のふるさとの森森林公園にも立ち寄っていたのだ。
キャンプ日記を読むと「目の前に民家があって最も利用する気にならないタイプのキャンプ場」と書いてあった。
そして幌延町の市街地を見下ろす展望台は、野外卓が置かれているだけの質素な施設で、私たちはそこでコンビニ弁当を食べていたのである。
本当に、9年前の記憶が全くないことに、我ながら呆れてしまった。
茶色く立ち枯れたエゾニュウ
あまり読まれていないようなホームページのキャンプ日記を20年以上も書き続けているのは、自分の記憶を補助するためでもあるのだ。
オロロンラインを南下する。
途中で海岸に降りてみるが、エゾカンゾウやエゾスカシユリなどの花は既に見られず、雨が少ないからなのかエゾニュウも茶色く立ち枯れている。
ツリガネニンジンやクサフジの花が僅かに咲いているだけだった。
天塩町までやってきて、川口遺跡風景林の看板を見つけて寄り道する。
国道沿いにあるけれど、立ち寄るのはこれが初めてである。。
森の中に竪穴式住居が復元されていて、こんなところにこんなものがあったのだと驚かされる。
森の中を抜けると天塩川の川岸に出てきた。
一年前は青空の下、利尻富士を眺めながらここを下っていたことを思い出す。
生憎今日は利尻富士も雲に隠れているけれど、ダウンザテッシに絡めてやって来た今回の道北の旅を締めくくるには、ここはうってつけの場所だった。
旅の最後に天塩川に別れを告げる
天塩川に別れを告げた後は、羽幌町のおろろん食堂で甘えび定食を食べ、はぼろバラ園の花を楽しみ、一路札幌を目指してオロロンラインを南下したのである。