トップページ > キャンプ > キャンプ日記 > 2018年キャンプ日記

雨のソロキャンプ

歌才オートキャンプ場ル・ピック(7月2日~3日)

気温は23度くらいでそれ程高くはない。
しかし、楓沢の中の蒸し暑さは半端なかった。

楓沢

かみさんは付いて来なかったけれど、もしも一緒だったとしたら一くさり文句を言われていたことだろう。
単独行の良いところは、どんなに厳しい条件でも自分が我慢すればそれで済むことである。
蒸し暑さに耐えながら、苔に覆われた回廊の中を奥へと進んでいく。

本州の梅雨のような気候が続く最近の北海道。
蝦夷梅雨と言う現象もあるが、これはオホーツク海高気圧の影響によるもので気温は低い。
しかし、最近の悪天候は梅雨前線が北上してきたものなので、構造的には本州の梅雨と全く同じで、蒸し暑いのである。

楓沢


10日間予報を見ても全てが雨マーク。
とてもキャンプへ行けそうな天気ではないが、これでへこたれていたら何もできないままに時が過ぎてしまう。
こんな天気だからこそ出来ることだってあるかも知れない。

楓沢

そこで最初に思いついたのが「雨が続けば苔も生き生きとしているに違いない」ということだった。
そうして、去年の秋に初めて歩いた支笏湖の楓沢へとやって来たのである。
でも、苔の様子は秋に見た時と大して変わりはなかった。

たっぷりと水を含んだ苔から水滴がしたたり落ちる。
雨で苔が生き生きとするそんなイメージは、私が屋久島で見たものなのである。
ところが、ここの岩壁を覆っている苔の種類は屋久島とは全然違っているようで、そんな感じになりそうにはない。

それでも、ここの風景が美しいことに変わりはない。
雨が続いて生き生きしているのは、岩壁に育つ植物や頭上を覆う木々の方かもしれない。

クマ避けの鈴を持って来ていなかったので、時々大声を上げながら先へと進んでいく。
1キロほど進みと苔の回廊が行止りとなる。
そこから苔むした岩を乗り越え、大きな洞窟に到着。
丁度良い区切りなので、ここから引き返すことにした。

楓沢


一応は三脚も持って来ていたので、帰り道は三脚を使って撮影してみる。
私は写真にはあまり詳しくなく、手持ちでも十分に写せる状況で三脚を使う意味が良く分かっていない。
何となく一丁前のカメラマンになった気分がするだけの話しである。

エゾライチョウ

目の前の倒木にハトくらいの大きさの鳥がとまっていた。
他にも数羽いるみたいで、まだ上手く飛べないのか、私が近づくとバタバタと羽ばたきながら逃げていく。
この時撮った写真を拡大してみると、どうやらエゾライチョウだったようだ。
初めて見る鳥である。

林道を走っていると時々似たような鳥を見かけるけれど、山の中にいるハトだから、私はそれを勝手にヤマバトと呼んでいた。
でも図鑑で調べると、ヤマバト何て鳥はいなくて、もしかしたらそれがエゾライチョウだったのかもしれない。

車まで戻り、次に目指すのは黒松内のオートキャンプ場ルピックである。
雨の日でなければできないことの二つ目、それはブナの樹幹流を見ることだった。
雨の降っている時にブナ林を歩いて樹幹流を見ることは、以前からずーっと考えていたことでもある。
そうなると、泊まるキャンプ場はおのずからルピックしかなくなるのだ。



歌才オートキャンプ場ル・ピック

もう一つ、これが一番の目的でもあったのだが、先日の糠平キャンプの際に樹液でベトベトになったテントを雨で洗い流すこと。
おかげで、ソロキャンプならば小さなテントで済むところを、わざわざ大きなテントを張ることになる。

キャンプ場に到着し、受付で指定されたサイトにそのままテントを張る。
何時もならば、先に場内を見てから自分でサイトを決めるのだけれど、今日はテントを洗うのが目的なので、サイトは何処でも良かったのだ。

ソレアードを一人で張るのは初めてだったけれど、工夫すれば何とかなるものである。
ここに泊まるのは20年ぶり。
各サイトに炊事場があるので、雨の中のキャンプでも快適に過ごせる。
こんな高規格キャンプ場に一人で泊まるのは、何か勿体ない気もしたが、今回だけはしょうがないのだ。

しかし、肝心の雨が降る気配がない。
天気予報では、今日の午後から明日にかけてずーっと雨が降ることになっていた。
テント設営時に雨が降っていないのは助かったけれど、大きな雨雲は黒松内をギリギリでかすめて通り過ぎつつある。

この雨雲はかなり発達していて、既に警報が出されている地域もあり、この後旭川方面で大きな被害を出すこととなったのである。
雨を狙ってキャンプに来たのに、その雨雲に逃げられてしまうとは何とも皮肉である。

歌才オートキャンプ場ル・ピック


汗を流そうと出かけた近くの黒松内温泉は、大規模改修工事のため長期休業中。
諦めて寿都温泉に行こうとしたが、こちらは月曜日で休業中。
最終的に、そこから16キロ離れた二股らぢうむ温泉で、楓沢を歩いた汗を流すことができた。

キャンプ場に戻ってくると午後4時半を過ぎていた。
ここでようやく冷えたビールを口にできる。


今日の夕食

この後は、夕食が出てくるまでダラダラと時間を過ごすのが何時ものキャンプのパターン。
しかし今日は、当然のことながら自分で夕食を作らなければならない。

今回は、かみさんに振られてソロキャンプとなったので、何を作ろうかと色々と考えていた。
私にとってそれもソロキャンプの楽しみなのだけれど、そんな楽しみは「豚丼にしたら」とのかみさん一言であっさりと奪われてしまった。

材料も全てかみさんに揃えられる。
これでは何時まで経っても独り立ちできないのである。

ここのキャンプ場では、各サイトに焚火スペースも設けられている。
焚火台と薪は車に積んであったけれど、夜中から雨が降ると後片付けも面倒なので、焚火は諦めることにした。
と言うか、蒸し暑さは相変わらずで、とても火に近づく気分ではないのだ。

歌才オートキャンプ場ル・ピック


ソロキャンプなので、後は本でも読んで静かに過ごそうと思っていたが、今の時代はスマホがある。
フェイスブックでメッセージのやり取りをしているだけで時間が過ぎてしまう。
一人でも退屈しないで過ごせるのか、せっかくの一人の時間が奪われてしまうのか。
そのどちらなのかは、分からない。

歌才オートキャンプ場ル・ピック

何時ものキャンプでは、かみさんと二人でワイン1本空けるのがノルマとなる。
しかし、今日の私は缶ビール2本で何時でも寝られる状態になっていた。
誰に気兼ねすることもなく、眠たくなったのでテントに潜り込んだ。

午前3時前に目が覚める。
日本対ベルギー戦のキックオフの時間である。
キャンプ場に無料Wi-Fiがあれば最初から見たかったけれど、うつらうつらしながら時々途中経過を見るだけ。

目が覚めて経過を見ると日本が2-1で勝っていた。
それですぐにライブ中継に切り替えたところ、立て続けにゴールを決められ逆転負け。
家にいて、最初から試合を見ているよりもショックは少なかったかもしれない。

夜中に降っていた雨も上がって、テントが良い感じに濡れていた。
朝のコーヒーを飲んでから、雑巾でテントの水滴をふき取る。
期待していた通りにテントのベトベトも解消されていた。

歌才オートキャンプ場ル・ピック

朝食を食べている間に再び雨が降り始めたが、もう一度拭けば完璧だろうと、それも気にならない。
雨が止んだので水滴をふき取っていたら、再び雨が降り始める。
雨雲レーダーを確認すると、この後も小さな雨雲が連続で流れてくるようで撤収のタイミングが難しい。

テントを乾かすのは無理だけれど、びしょ濡れのままのテントをそのまま車に積み込むのはできれば避けたい。
次に雨が止んだタイミングで大急ぎで水滴をふき取り、そのままフライを外す。
そこで突然の様に強い雨が降り始めたけれど、ギリギリのタイミングで片付け完了。
残ったペグやポールは、次の雨の止み間を待って片付けた。



今日はこのまま帰ろうかとも思ったが、雨も止んだのでブナ林を歩くことにする。
樹幹流のことは、もう全く考えていなかった。
期待通りの雨が降っていたとしても、この蒸し暑さの中で雨具を着て歩く気には到底なれないのである。

歌才ブナ林
歌才川を渡るとその先がブナ林だ

雨が上がった後なので、昨日の楓沢を歩いた時よりも湿度が高い。
かみさんが一緒だったら歩くのを躊躇ったと思うが、例によって一人ならばどうにでもなる。
長靴を履いてブナの森へと入っていく。

なるべく汗をかかないようにゆっくりと歩くが、何もしなくても汗をかくような蒸し暑さである。
次第に汗が噴き出してくる。

それでも、雨に濡れたブナ林は、しっとりと美しい。
ブナ林だけではなく、遊歩道を覆い隠すように茂っている草たちも、雨でしっとりと濡れていた。
場所によっては、それをかき分けながら歩かなければならず、履いているパンツもずぶ濡れになる。

歌才ブナ林


吸血虫は少なかったけれど、クモの糸が時々顔に絡みついてイラっとさせられる。
クマ避け鈴の代わりに「クッソ~、暑い~、もう嫌だ~」と叫びながら歩いていく。

歌才ブナ林

ブナ林の中の遊歩道は、周遊する道ではなく最後に行き止まりとなり、そこを引き返してくることになる。
問題は、そこをどこまで歩くかである。
ブナ林の様子は十分に見られたので、何処で引き返しても良かった。
道が草で塞がれているようなところがある度に「もうここで止めよう」と思ってしまう。

前回ここを歩いたのは確か20年前で、その時も途中で引き返した気がする。
もしも今ここで引き返したとしたら、私が死ぬまでにここのブナ林を終点まで歩く機会はもう無いだろう。
「終点まで後30分」と書かれた看板を見つけて、最後まで歩く決心を固めた。

歌才ブナ林


「そこまで歩けば何かご褒美が待っているかも知れない」
そう思って歩いていると、全く唐突に「歌才ブナ林終点」の看板が現れた。
そこに何が在るわけでもない。

歌才ブナ林
終点看板の真後ろにコシアブラの木が!

拍子抜けしていると、その看板の直ぐ後ろに私へのご褒美が立っているのを見つけたのである。
それは「コシアブラ」の樹名板を下げた1本の木だった。

先月の朱鞠内湖キャンプで、美味しい山菜でもあるコシアブラの木を生まれた初めて見分けられるようになった。
しかしそれは高さ1m程度の小さな幼木ばかりで、「一体、コシアブラの成木はどんな姿なのだろう」とずーっと思っていたのである。
まさかこんなところでコシアブラの成木を目にするとは思ってもいなかった。

帰り道は汗をかくのも構わずに急ぎ足で歩いていく。
勿論、「クッソ~、暑い~、もう嫌だ~」と叫びながらである。
行きに1時間かかったところを40分で駐車場まで戻ってきた。

歌才自然の家
レストランの表示は何処にもない

昼食は、食べログで調べて「レストランきりか」に行くことにする。
Googleマップに指示されたとおりに走ってくると、再びキャンプ場の近くへと戻ってきた。
そして何もないところで突然「目的地に到着しました」と言われる。
あれ?と思いながらその道をさらに進んでいくと、歌才自然の家に到着。

ここがそうなのかと思ったが、レストランの看板は何処にも出ていない。
恐る恐る中に入って受付の人に聞いて、初めてこの施設の中にレストランがあることを知ったのである。

私はイカ墨ラーメンサラダを食べたけれど、他のメニューもなかなか美味しそうだった。
ここは穴場のお食事処かもしれない。

歌才自然の家
レストランきりかのイカ墨ラーメンサラダ

満足して施設を出る時、建物の中にお風呂があったものだから受付のお兄さんに「ここは入浴だけでもできるのですか?」と聞いてみた。
すると、帰ってきた言葉に驚かされた。
「はいできます、食事したお客様は無料で入ることもできます」
「え、え~っ、そうなの!」
汗で下着までびしょ濡れになって、どこかで温泉に入ってから帰ろうと考えていたところだ。
ここのお風呂は温泉ではないけれど、ただで入れるのなら全く不満はない。
一刻でも早く、風呂に入ってすっきりとしたかったのだ。

ホームページを見ても、食事をしたら無料で風呂に入れるなんて何処にも書いていなかった。
そんなことを知っている人は誰もいないだろう。
何はともあれ、歌才自然の家はとても良いところだったのである。

再び雨が降り始めていた。
帰りは、雷電海岸を走るルートを選択。
雨の中で退屈なドライブになると思ったけれど、雷電海岸の勇壮な岩壁に雲がかかり、何時もとは一味違う美しい風景を楽しめた。
毛無峠の展望台からは小樽の街が雲海に沈む、レアな風景にもであった。

雷電海岸
雷電海岸の岩壁を流れ落ちる一筋の滝


毛無峠展望台
毛無峠展望台から眺める雲海


雨が続いても、雨の日には雨の日なりの楽しみ方がある。
改めてそのことを知らされた今回のキャンプだったのである。



ページトップへ