北海道キャンプ場見聞録
囲炉裏で暖を取る屯田兵屋
旭川モンゴル村キャンプ場(5月3日~4日)
黒岳を滑った次は旭岳に向かい、今度は中岳温泉にテントを張って周辺の山を滑る。
これが、カヌークラブバックカントリー部会のメンバーの間で計画された今年のゴールデンウィーク3日間の過ごし方である。
黒岳から旭岳に向かう途中、何処かのバンガローで1泊しよう。
しかし、ゴールデンウィーク期間でそんなバンガローに空きがある訳がない。
もっとも、際物キャンプ場とも言える上川ファミリーオートキャンプ村だけは、いくらでも空きがあるみたいだった。
ゲルが並ぶモンゴル村場内
もっと良い場所がないかと探してみて、見つけたのが旭川モンゴル村である。
こちらは上川ファミリーの更に上を行く、際物キャンプ場の臭いがプンプンしている。
ホームページを見ても、ここは一体何なの?と面食らってしまう。
一応は、モンゴルのゲルに宿泊できるのを売りにしているみたいだ。
でも、際物大好きな私なので、メンバーの了解を得てから予約の電話を入れる。
電話に出たのはオヤジさん。電話の向こうでは奥さんとああだこうだと言い合ってる。
「大丈夫かな?このオヤジさん」と思っていると、そのおじいちゃんが突然「楽天は見たのかい?」と聞いてきた。
「えっ?ええ~っ!ここって楽天トラベルから予約できるの?」
軽いカルチャーショックを覚えた。
暫くしてから、「うーん、残念ながらゲルは全部埋まっちゃってるね~。でも、屯田兵屋があって、そこで良いなら5千円で泊まれるよ」とのこと。
「そ、それだ~!」
この屯田兵屋に宿泊
ホームページには「とんでん兵屋宿泊体験者募集中!」と書かれていた。
私は、ゲルよりもそちらの方に魅力を感じていたのだ。
キトウシ森林公園家族旅行村の「ふる里生活体験の家」のように、古民家に泊まるのはなかなか面白い。
それがここでは、古民家どころか、屯田兵屋に泊まれるのである。
そんな機会は滅多にない。
早速それをお願いしたら、「それじゃあFAX入れてね」と言われる。
「あの~、家にはFAX無いんですけど」
「コンビニとかへ行ったら、FAXあるんじゃないの」
しょうがないのでクラブのメンバーに連絡して、FAXしてもらった。
そのメンバーも後でオヤジさんと電話で話をしたみたいだが、なかなか面白いオヤジさんである。
そうして、黒岳を滑り終わった後、皆で黒岳の湯で汗を流してから、モンゴル村へと向かった。
途中、皆で当麻町のスーパーで買い出しをする。
その後、宿泊する予定の無かったT津さんを無理矢理誘ったので、近くのホームセンターに毛布を買いに行く。
中には昔の農機具や生活道具が展示されている
ところがそのホームセンターには毛布が売っていなくて、代わりに売られていたのが寝具6点セットが6千円。
T津さんはそれでも良いかなと言っていたが、モンゴル村に電話してみると5百円でシュラフを借りられることが分かり、寝具6点セットは買わずに済んだ。
旭川モンゴル村は、旭山動物園にも近い旭川市近郊の小高い丘の上にあった。
私達が着いた時、管理人のおじさんはトラクターで作業中だった。
電話のイメージ通りの、農家のオヤジさんって感じである。
屯田兵屋は2棟あって、1棟は中に流しもあって外観もそれなり。
プラス千円でそこに泊まれるとのことだったが、囲炉裏が付いているのはもう1棟の方。
私はその囲炉裏に魅力を感じていたので、そちらを選択。
囲炉裏の奥が宿泊スペース
おじさんが案内してくれたが、なかなか凄い所だった。
屯田兵屋と言うより、農家の納屋と言った方が正しそうだ。
内部には昔の農機具が展示されていて、残り半分が宿泊スペースになっている。
宿泊スペースの壁には様々な掛け軸がずらりと下げられていた。
他にもオグリキャップのぬいぐるみにギターなど、何処かの農家から貰い受けたものをそのまま全部飾ってみましたって感じの内部である。
各自の荷物を運び込む。
掛け軸をかけるフックは、山スキーで使った濡れたシールを干すのにちょうど良い。
私は早速囲炉裏用の炭を熾す。
そして囲炉裏を囲んで皆で乾杯。
シシャモじゃ気分が出ない
私はこのために買ってきた竹串に魚を刺して、炭火の周りに並べる。
本当は鮎か岩魚が良いのだけれど、手に入らないのでシシャモで間に合わす。
焚き火用五徳で焼肉もできる。
屋根から煙が抜ける構造なので、室内も煙らない。
と言うか、屋根から抜けなくても、壁が隙間だらけなので、何処からでも煙は抜けていくのだ。
本当は囲炉裏の上に鉄鍋でもぶら下げて、きりたんぽ鍋とかもやりたかったけれど、持ってきたダッチオーブンをそこに吊すには強度的に心配なので諦める。
囲炉裏の火は、暖房用としても優れているようだ。
その周りはほんのりと暖かい。
囲炉裏を囲んで楽しい宴会
ただ、隙間だらけの家なので、気温が下がった時は辛いかもしれない。
外のトイレから戻って来た人が、壁の隙間から明かりが漏れてプラネタリウムみたいだと言っていた。
憧れの囲炉裏料理ができて悦に入っているのは私だけみたいで、他のメンバーはそうでもないみたいだ。
「こんなところに泊まるのに5千円は高すぎる」とか、「もう2度とここには泊まらない」とか、評価は良くない。
しかし、四国遍路でもっと酷い無料宿泊所や野宿を経験してきた身からすれば、これでも立派すぎるくらいに思えてしまう。
何と言っても旭川市認定の教養文化施設でもある北海道開拓時代の屯田兵屋に泊まって、その中の囲炉裏で火も使えるのである。
こんな経験ができるのはここくらいしかないだろう。
翌朝、壁の隙間から漏れてくる太陽の光で目を覚ます。
屯田兵屋の朝
場内にある工事用の足場パイプで組み立てた展望台に上ってみる。
丘の向こうから朝日が昇ってきていた。
場内には他にも五右衛門風呂や巨大石窯もある。
ゲルに泊まっていた家族は、焚き火コーナーで盛大な焚き火を楽しんでいたようだ。
板壁の感じがたまらない
板壁は隙間だらけ
平成23年にここを開設した時は、モンゴル村なので横綱白鵬や旭天鵬も出席してオープン式をやったらしい。
5月からはデンプン団子などを出す「いにしえ喫茶」や本格石窯で焼く「石窯ピッツアの店」もオープンするのだとか。
モンゴル村内で蕎麦店を経営するオーナーも募集していた。
何が何だか良く分からないところだが、普通のキャンプ場に飽きたような人にはお勧めできるかもしれない。
皆で雪中キャンプ装備一式を背負い、屯田兵屋の前で記念撮影をしてから、旭岳に向かって出発したのである。