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夏は河原で歴舟キャンプ

歴舟川の川原(8月14日〜15日)

せっかくのお盆休み、比較的空いていそうな道北方面でキャンプすることも考えてみた。
空いているとは言っても、何処も夏休みのキャンパーで賑わっていることは確かであり、しかもこの時期ならば暑くて吸血虫が多いのも確実。若い頃ならば、そんなことも気にせずに、夏の道北の空気を吸ってみたいとの気持ちだけで道北キャンプへ出かけたはずである。
しかし、歳をとってくると、もっと快適なキャンプができることが分かっていながら、敢えて辛いキャンプをしようとは思わなくなるのである。

その快適なキャンプが歴舟川での河原キャンプである。
毎年1度は出かけ、しかも今年はちょうど一ヶ月前にもそこでキャンプをしたばかり。
普通ならばもう十分ってところなのだが、去年も、一ヶ月前も天気に恵まれないキャンプだったので、このままでは引き下がれないとの気持ちもあった。
そうして性懲りもなく、再び歴舟川へと向かうこととなったのである。

前日はカヌークラブのメンバーと鵡川を下り、そのまま十勝の実家に泊ったので、時間に余裕を持って歴舟川へ向かうことができる。
ただ、私の母親が気を使って、おにぎりや果物におやつまで持たされたのには参ってしまう。
十勝の風景60近いおやじが、母親から持たされたおやつを持って川原キャンプへ出かけるのである。
いくつになっても息子に変わりはないので、ありがたくいただいて、カヌーに積んでいくことにした。

秋を思わせる澄んだ青空には、十勝の風景が良く似合う。
しかし、そんな青空を見ていても素直には喜べなかった。
今日明日の天気予報は曇り時々晴れで、晴れるのは午前中だけとなっているのだ。

午前9時前にカムイコタンキャンプ場に到着して、カヌーとキャンプ道具を降ろす。
そして、10時に歴舟川の河口に迎えに来てもらえるようにタクシーの予約を入れる。
大樹町にはタクシー会社が2社あって、今回頼んだのは大樹ハイヤーである。
前回の川原キャンプで大樹ハイヤーのタクシーが、河口へ通じる藪に覆われた道をものともせずに入っていくのを見ていたので、今回は最初からそこに決めていたのである。
それなので、待ち合わせの場所を決めるのも簡単に済んだ。

つい先日、北海道の近くまでやってきた台風11号の大雨で、歴舟川は大増水していた。
それから3日過ぎていたので、川も元に戻っているだろうと考えていたが、甘かった。
川の水は灰色に濁ったままで、水もまだ多い。キャンプ道具を積んでの川下りにはちょっと辛そうだ。

泥で埋まった河原への降り口藪の中の道を抜けて河原へ降りようとしたところ、その部分に泥が分厚く積っていた。
増水の際に溜まったものだろう。
本格的オフロード車ならば何とか通れそうだが、ここでスタックしても大変なので、車はその手前に停めておくことにした。
そして藪の中の道を歩いて戻るが、増水時にはこの道も冠水していたようである。

我が家の川原キャンプの時は、何時も事前に河口に車を回すようにしている。
当然、増水しても安全だと思われる場所に車を停めるのだけれど、この様子を見てしまうと、河口まで下って来てからタクシーを呼んで、スタート地点に戻るのが良さそうに思えてくる。
まあ、そんな大増水が予想される時は、そもそも川原キャンプなどはしないのである。

青空の下で見る「他人の木」は、美瑛の丘で有名になっている様々な木にも劣らないくらいに、素晴らしい風景を作っていた。
この「他人の木」がもっと有名になってくれれば、タクシーを呼ぶ時も簡単なのになと考えていると、予約していたタクシーがやってきた。

 
歴舟川河口の他人の木
歴舟川河口近くの他人の木

「いや〜、ここまで来るのは今年2回目だよ。前回は何処で待っているか分からずに、凄い藪の中を走らされて大変だった。」
その時、直ぐ後ろにくっついて藪の中に入っていった車の主が私達だったことは、敢えて黙っておいた。
これが今年2回目だとすると、やっぱり、歴舟川の河口までタクシーを呼ぶような客なんて、殆どいないのが本当のところなのだろう。

キャンプ場前から歴舟川に漕ぎ出すそうして午前10時半、キャンプ場前の川原から歴舟川に漕ぎ出した。
キャンプ場は賑わっていたけれど、カヌーを持ってきていそうなキャンパーは誰もいなかった。
お盆休みはやっぱり家族サービスに徹するファミリーが多いのだろう。

キャンプ場前の河原はかなり水没していて、それで水の多さが分かる。
水が増えている分、瀬の波も大きくなる。
前日は増水した鵡川を下って大変な目に遭っていたので、少しくらいの大波でうろたえることは無い。
それでも、キャンプ道具を満載しているので、瀬の中を下る時は、ひたすらチキンルートに逃げてしまう。
瀬の波は大きくなっていても、水が増えた分だけ川幅も広がっているので、瀬の横にチキンルートができているのである。

湧き水の染み出る土壁最初の土壁ではそこらじゅうから湧水が噴き出し、滝のようになって土壁を濡らしていた。
台風の大雨で、土壌がたっぷりと水分を含んでいるのだろう。
歴舟川での普通の増水ならば、3日も経つと川は元の姿を取り戻すのだが、200ミリ近い大雨が降ると川の水位は簡単には減らないようだ。

三つ目の土壁を過ぎたところの川原で昼食にする。
ここの瀬もかなり波が高く、護岸の蛇籠に流木が沢山張り付いているのが見えたので、下見をしてチキンルートがあるのを確認してから、そこを下る。
この付近の川原もテントを張るには、なかなか良い場所だった。
最近は大樹町市街地より下流でキャンプをすることが多くなっていたが、上流側でキャンプするならここしかないと言えそうな川原である。
ただ、河口まで下る予定なのにここでキャンプをしていると翌日の行程が長くなりすぎるので、昼食を終えてそのまま下り続ける。


歴舟川の瀬   昼食
瀬の波は高い   この上がキャンプ適地だった

歴舟川どんぐりの瀬その後も波の高い瀬がいくつも現れる。
その度に、分流に逃げて浅瀬でカヌーを引きずったり、下見をしてチキンルートを下ったりと、安全第一で川を下っていく。
これがキャンプ道具を積んだ川旅でなければ、積極的に瀬のど真ん中を下って行くところである。

私がカヌークラブに入ったのは、ホワイトウォーターを下ることが目的ではなく、今回の様に単独の時でも安全に川を下るためのスキルを身につけることが一番の目的だった。
そのおかげで、今回の様なコンディションの時でもある程度余裕を持って下ることができるのである。
そうでなければ、台風の大雨による増水で川の様子がすっかりと変わってしまっている中、単独では怖くて下ってられない。

ふるさと大橋手前の瀬それにしても、台風の爪跡がそこらじゅうに残っていた。
一般的に言って、河畔林が茂っている場所は水も付きづらい筈だが、今回はかなりの河畔林が林床部まで水の上がった跡が残っていた。

一か月前にショウドウツバメの巣穴があった土手も、一部が削り取られて巣穴もなくなっていた。
野生の知恵で、絶対に水の付かない場所に巣穴を作るのだろうと思っていたが、土手そのものが崩れることまでは野生の知恵も及ばなかったのかもしれない。

今回のキャンプ地は、事前にある程度目星を付けてあった。
それは、一カ月前に下った時に最初に上陸した河原である。
その時は、他にもまだ良い場所があるだろうと思ってそこを通り過ぎたのだが、結果的にそこより良い川原は見つからなかったのである。

倒木の絡んだ瀬今回こそはその川原にテントを張るぞと心に決めていたのに、知らない間にその場所を通り過ぎてしまった。
一カ月前の事なので、そこまで来れば気が付くだろうとGPSにも登録してこなかったのだ。

しかし、三日前の大増水によって川の様子ががらりと変わってしまい、一か月前の記憶など何の役にも立たなくなっていた。
キャンプ場から大樹町市街地の間は本流の流れもほぼ定まっているが、町から下流は広い川原の中を好き勝手に川が流れている感じで、毎年下る度にその様子が変わっている。

一か月前と同じく、再びキャンプ難民になってしまいそうだった。
適当な川原が見つからないまま「このまま歴舟大橋を過ぎてしまったらどうしよう」と心配になってきたころ、ちょうど良い川原が見つかった。
フェリーグライドでここを渡ったしかし、その川原の奥の方まで歩いていくと、その先にも川が流れていた。
大き過ぎて気が付かなかったけれど、そこは川の中州だったのである。
いくら安全だと分かっていても、中州にテントを張るわけにはいかない。

その奥に流れていた川の対岸に良い川原が見えていた。
どうやら、途中で分流の選択を間違えたようである。
いまさら引き返すこともできないが、どうしてもその川原に上陸してみたかった。
少し下流側で二つの分流が合流していたが、そこから目的の川原まで漕ぎ上がるには流れが速すぎる。
そこで考えたのが、中州側からカヌーをロープで引っ張って上流まで戻り、そこからフェリーグライドで対岸に渡る作戦だ。
大変だけれど、これ以上下っても良い川原が見つかる補償は無く、少しくらい苦労してでも良いから対岸に渡ることに決める。

流木の物干しそして、苦労は報われた。
川からの高さも十分で、適度に流木が転がり、緊急時に逃げ込める樹林地にも近く、川の上流方向が開けていて日高山脈が見通せる。
これだけの条件が揃っていれば全く不満は無い。
テントを張れそうな平らな場所も見つかった。
たまたまその場所が、大きな流木の直ぐ隣だったのはご愛嬌である。

葉もまだ付いたままで、3日前に流れてきたばかりの流木なのだろう。
ちょうど良い物干し場として利用させてもらうことにする。

焚き火用の流木も直ぐに集まった。
メインの焚き火用の太くて長い流木、調理用の小さくて良く乾いた流木。
二つに分けて積み上げる。

流木はいくらでも拾える午後からは雲が広がってくるだろうと覚悟していたが、逆に青空の方が広がってきた。
今年になってから、天気予報には散々裏切られ続けてきたが、ここにきて遂に良い方に天気予報が外れてくれたのである。
今の時期、河原でまともに太陽に照りつけられると焼け焦げてしまうところだが、気温がそれ程高くないので、太陽の日射しを浴びるのが心地良く感じられる。
当然、ビールも美味い。

残念なのが、前回に続いて近くに魚の釣れそうなポイントが無かったことである。
数年前の川原キャンプでは、素人の私達でも簡単に大型のニジマスを釣り上げることができ、それ以来釣りも歴舟キャンプの楽しみの一つになっていた。
でも現実はそう甘くは無く、手の平にも満たないくらいの小さなウグイとヤマメがそれぞれ1匹釣れただけで終わってしまった。


今回のキャンプ地
予想外の青空が広がった

大焚き火   小焚き火
大焚き火はインディアン式?   かみさん専用の小焚き火

夕日に輝く歴舟川太陽はちょうど、川の上流に見えている日高山脈へと沈んでいく。
太陽の沈む方向まで考えてキャンプ地を選んだわけではないので、これは嬉しかった。
蛇行する歴舟川の水面が、夕日をうけて輝いている。

夕食を済ませた後は、焚き火の炎と夕日のコラボレーションを楽しむ。
日が沈んでからも、残照が西の空に浮かぶ雲を真っ赤に染め上げ、その色が褪せてくるまで空を眺めて過ごした。

次第に薄い雲が広がってきて、さすがに星空までは楽しめそうにない。
と諦めていたが、焚き火の炎から目をそらして空を仰ぎ見ると、いつの間にかそこには素晴らしい星空が輝いていた。
その後も、薄い雲が広がっては消えを繰り返す。
その中で、どうしても消えない雲があった。
完全に雲が消え去った時、それが天の川だったことにようやく気が付いた。

その星空の中を長く尾を引く流れ星が横切った。
一緒に流木の上に寝転がっていたかみさんは、別の方向を見ていて、その流れ星に気が付かなかったようである。

満天の星と焚き火の明かり夜露のために、河原の石も濡れてきていた。
焚き火の周囲の石だけは、完全に乾いたままだ
着ている服も、背中は湿っぽいのに、焚き火の側は乾いている。

焚き火から離れると、だだっ広い川原の中で、その炎だけが暗闇の中に小さく揺れていた。
こんなキャンプを経験してしまうと、普通のキャンプからはますます足が遠ざかってしまいそうで、それが心配になってくる。

遠くに花火の音が聞こえる。
今日は8月14日。人里は多くの人で賑わっている頃である。
後ろの河畔林の中に光が見えていた。
その林の向こうには十八夜の居待月が昇ってきているのだろう。
満月を過ぎると月の出も次第に遅くなり、十八夜の頃では月の出を座って待つので、居待月と呼ぶらしい。
自然の中に身を置いていると、月にそんな名前を付けた昔の人の感覚を素直に受け入れることができる。
昨日の鵡川で大波を相手に奮闘した疲れも出て、居待月が林の上まで登ってくるのも待てずにテントの中に潜り込んだ。


焚き火と夕日
最高に贅沢な時間を過ごす

夕食中   焚き火
夕日に照らされながらの夕食   焚き火燃やし放題

歴舟川の日の出かみさんの「朝日が昇ってきたわよ」との声で起こされる。
まだ寝ぼけていたので、かみさんにカメラを渡して写真だけ撮ってもらった。
さすがに今日は曇っているだろうと思って、朝日のことなど全く期待していなかったのである。

天気予報では今日も曇り時々晴れで、午前中を中心に晴れ間が広がるらしい。
天気予報を見たついでに雨雲レーダーも確認して、ビックリした。
青森付近に大きな雨雲があって、数時間後にはそれがこの辺りまで広がってきそうな気配なのだ。
天気予報も昨日は良い方に外れてくれたが、今日は悪い方に外れそうだ。
本当に当てにならない天気予報である。

日当たりにテントを移動実は、天気さえ良ければ川原で2泊する計画もあり、食糧やビールなどはもう1泊分持ってきていた。
しかし、明日の天気は完全に曇りの予報で、昨日の時点で2泊キャンプは諦めていたのだ。
それもあったので、雨雲が近付いているのが分かっても撤収を急ぐ気にもならず、のんびりと川原の時間を楽しむ。

川の水位は少しだけ下がっていたが、濁りはそれ程取れていない。
大増水の影響は簡単には消えない事を改めて思い知らされる。
ただ、濁っているとは言っても、それは歴舟川本来の透明度が無いと言う事だけであって、その水で顔を洗うのが気持ち良いくらいの十分な清流である。

荷物を片付け終える頃、大量に集めた流木もほぼ燃え尽きていた。
すっかり雲に覆われた空の下、歴舟川河口を目指して再びカヌーで漕ぎ出した。

一ヶ月前にキャンプした河原は無くなっていた一カ月前にキャンプをした河原に上陸してみる。
そこの川原は跡形もなく消え去っていた。
近くにあった河畔林も水に洗われたようで、豊かに葉を茂らせていた林も、その向こうが透けて見えるくらいの姿に変わってしまっていた。
改めて増水の凄まじさを実感する。

落差があって大きな波の立つ瀬のチキンルートを恐々と下っていくと、その先で猛烈な勢いで水が逆流していた。
慌ててそれをかわすと、今度は瀬の最後の部分で川全体がボイルし、しかもその先が見えないくらいに水が大きく盛り上がっていた。
「うわっ、何だこれは!」
ここで慌てるとバランスを崩すので、出来るだけ余計な動きはせずにその水の山を乗り越える。
多分、その中に流木が何かが隠れているのだろう。
歴舟川は侮れない川である。


薄くなった河畔林   流れの中に横たわる流木
根元を洗われ薄くなった河畔林   あちらこちらに流木が転がっている

途中からポツリポツリと降り始めた雨も、本格的な雨にならないうちにゴールできそうだ。
やがて、何時ものように太平洋の波音が響いてきて、旅の終わりに近付いていることを知る。

ここから先は歩くことに今回は河原まで車を入れられないので、車の近くの中州にカヌーを置いて、後は行けるところまで歩くことにした。
何時もならば歴舟川と太平洋との間には大きな砂丘が出来ていて、旅の最後にはそこをよじ登って太平洋の姿を目にすることになる。
ところが今は、その砂丘が消えてなくなり、太平洋の姿が真正面に見えていた。
ただ、本物の河口はそこからもっと広尾側に寄ったところにあり、そこから歴舟川の水が海へと流れ出している。
増水時には多分、歴舟川の濁流が砂丘を押し流し、そのまま真っすぐに海に向かって流れ出ていたのだろう。
その様子を想像しただけで足がすくみそうになる。

海が荒れると、今度は太平洋の大波が歴舟川が流し出した土砂を海岸に押し戻し、そこに大きな砂丘を築くことになる。
この場所でそのサイクルが何度となく繰り返されてきたことに思いを馳せると、大自然の力強さに改めて感動させられるのだ。

こうして我が家の短い夏休みは終わりを告げた。
歴舟川の河原キャンプ、何度来ても飽きることは無いのである。

歴舟キャンプのアルバム 


歴舟河口で魔女ジャンプ
旅の最後に最近流行の魔女ジャンプ!

歴舟川水位
2014年8月14日12:00 尾田観測所 102.42m、 本町観測所 62.13m
2014年8月15日08:00 尾田観測所 102.38m、 本町観測所 62.02m


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