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鏡の支笏湖キャンプ

モラップキャンプ場(5月10日〜11日)

カヌークラブの新企画として計画されたカヌーの練習会。
土曜日は支笏湖での静水練習、そして日曜日は千歳川で流水での練習という企画。
今年度のクラブ役員改選で、新たに企画委員となったN島先輩が考え出した企画なので、参加しないわけにはいかない。
一般参加者も募って、そのままクラブに入ってもらおうとの狙いもあるようだが、今までのパターンからいってもそれは絵に描いた餅。
森の中で山菜を探す結局は何時ものメンバーしか集まらず、昼間からビールを飲んでダラダラと過ごすことになるのは目に見えている。

それでも週末は天気がよさそうなので、久しぶりのモラップでのキャンプも楽しみに、早めに自宅を出て支笏湖へと向かう。
千歳市内は桜が満開。
支笏湖公園線周辺に広がる森も、淡い緑に染まり始めていた。

そんな中、山菜目当ての車がそこらじゅうに停まっている。
時間もまだ早かったので、我が家も少し森の中に入ってみようと思ったが、その車の多さを見ていると嫌になってくる。
森の中へと続く各林道入口のゲートは全て締まっていて、その前にはビッシリと車が停まっている。
一か所だけゲートの無い林道があったので、そこに車を乗り入れてみた。
エンレイソウ本格的に山菜を探すつもりはなかったので、国道から入った直ぐのところに車を停め、そこから森の中に入る。
林床ではエンレイソウやナニワズが花を咲かせ、頭上からは野鳥のさえずりがシャワーのように降ってくる。
山菜など採らなくても、歩いているだけで心地よい。

そんな森の中で老夫婦がかがみこんで、ビニール袋一杯に何かを採っていた。
多分アズキナだろう。
私達も探してみたが、直ぐに両手で持ちきれないくらいのアズキナを収穫できた。
それだけ採れれば十分なので、満足してキャンプ場へと向かった。

 
ナニワズ   アズキナ
ナニワズ   アズキナのブーケ?

10時過ぎにキャンプ場に到着。
GWの翌週ということもあるのか、場内にテントの姿は見えない。
管理等で受付をすると、我が家が本日3組目のキャンパーだった。
駐車場を奥まで進むとカナディアンを積んだ車が2台停まっていたが、今日の練習会とは関係ないキャンパーのようである。
早速、クラブのタープと自分たちのテントを設営。
真っ青な湖、真正面に見える恵庭岳、そして青い空に浮かぶ白い雲。
無駄なものを省いた、とてもシンプルな風景である。
ここのキャンプ場で感じる心地良さは、そんな風景に起因するのかもしれない。

間もなくしてN島先輩が到着。
N島さんは早速、カナディアンを持ってきている隣のファミリーキャンパーに声をかけていた。
N島さんは何時もこうやって、カヌーに乗っている人がいれば声をかけてカヌークラブへの入会を勧めているらしい。

クラブへの入会理由は、知人から誘われたり、自分から申し込んだりと色々あるが、単独で遊んでいる時に声をかけられて入会したというケースも、現メンバーの中でも結構あるのだ。
小さな女の子二人を連れたファミリーなので、さすがに中島さんの勧誘には乗ってくれなかったようだが、ファミリーのお父さんは私のホームページを見てくれているとのことである。
この様なキャンプ場に来ると、私のホームページを見てくれている方がいる確率はとても高く、あまりおかしなマネはできない。

湖畔のサイト次第に他のメンバーも集まってきた。
今回のゲスト参加者は3名で、I山さんが連れてきた仕事関係の若者が2名。
二人ともカヌーは全くの未経験だけれど、興味があったので参加したとのこと。
カヌーに興味がある人は沢山いそうだが、普通の人がカヌーを体験できる機会は本当に少ないのである。

その若者二人は全く対照的なタイプだった。
一人は青白い顔をした文学青年風。もう一人はがっちりとした体格の、見るからに体育会系の男子。
それもそのはずで、アメフトで全国大会2位になった経験を持っているとのことで、驚いてしまう。
かみさんのライフジャケットを貸したところ、胸板が厚過ぎてファスナーが閉められない。
カヤックは、お尻と太ももが太すぎて乗ることができない。
カナディアンに乗る対照的な二人そんな規格外れの若者だったが、何とか合うものを探して、カナディアンやカヤックの体験をしてもらった。
ヘルメットは本人がアメフト用のものを持っていたので、それをとりあえず被せたところ、なかなか新鮮な画になって笑ってしまった。

もう一名は、やや年輩のI川さん。若者二人と一緒に挨拶していたので、I山さんの知り合いかと思っていたが、クラブのホームページを見て参加してきたとのこと。
オープン参加とは告知していたけど、全く知り合いのいないところに一人で参加するのは、なかなか勇気を必要とする行為である。
でも、I川さんも私のホームページを見てくれていて、クラブの大体の様子は知っていたらしい。

カナディアンの特訓I川さんはカナディアンを持ってきて、今までは全くの自己流で漕いでいたので、正しい漕ぎ方を覚えたいとのこと。
私に教えてほしいと言われたけれど、私も全くの自己流でやってきたので、人に教えるような技術は持ち合わせていない。

既に湖にカヌーを浮かべて黙々と練習を続けているN島さんにコーチをお願いした。
さすがに、これからアウトドアガイドの試験を受けようとしているだけあって、教え方も上手である。
ただ、今日は風が強くて波も高く、その中でカナディアンを漕ぐのは私でも辛いくらいだ。
びっしりとレッスンを受けたI川さんは、相当疲れたに違いない。

虐め?ガンちゃんは、T津さんからロールの手ほどきを受けている。
普通にロールが出来ているようにも見えるが、T津さんから見るとまだまだ欠点があるようだ。
その指導風景は、ライフジャケットを鷲づかみにして、無理やり水の中に押し込んで、まるで映画の暴力シーンのようである。

私もY田さんが持ってきたシーカヤックや、N島さんのOC-1にも乗せてもらう。
このOC-1が安定性の無い舟で、何度もひっくりかえっては、皆の笑い物にされてしまった。
その舟を青白い顔の文学青年君が簡単に乗りこなしていたのを見たときには、完全に自信を喪失した。


OC−1で沈   シーカヤック体験
安定の悪いOC-1   シーカヤックが欲しいな〜

そろそろ宴会開始こんな感じで皆でカヌーを楽しみ、タープに戻って渇いた喉を潤す。
隣ではガンちゃんが肉を焼き始める。
時間はまだ早いけれど、こうなるともうそのまま宴会モードへ突入となる。

日帰りで帰ってしまう人が多く、このままキャンプ場に泊るのは、私達の他にN島先輩、Y須賀先輩、Y田さん、そしてガンちゃんだけである。
アルコールが回るにつれて、日も傾いていく。

この時期、夕日は恵庭岳のすぐ隣に沈んでいく。
それを見て、N島さんとガンちゃんが二人で湖に漕ぎだした。
一番、酔いの回っていそうな二人だけれど、カヌーに乗れば少しは酔いも覚めるかもしれない。
夕日が支笏湖の湖面に光の道をつくる。
ガンちゃんの感動の叫びが湖に響き渡った。

途中からN野さんがやってきて、一旦家に帰っていたI山さんもキャンプ道具を持って舞い戻ってきた。
焚き火を囲んで、楽しく夜は更けて、11時ころには就寝。


恵庭岳に沈む夕日
恵庭岳に日が沈む

夕暮れ   焚き火を囲んで
月も昇った   焚き火を囲んでの語らい

ふたご座と恵庭岳
恵庭岳の上で輝くふたご座と木星

翌朝はかみさんの声で起こされた。
何事かと思ってテントから顔を出すと、真正面に見えている恵庭岳が、朝日を浴びて赤く染まっていた。
その赤く染まった恵庭岳が、まるで鏡に映るかのように湖面にその姿を落としている。
慌ててテントから飛び出して、その様子をカメラで撮影した。


鏡の支笏湖
テントから外を見るとこの風景が目に飛び込んできた

大急ぎで顔を洗ってカヌーに乗り込もうとしたら、カヌーのシートが真っ白な霜に覆われていた。
今日の日中は25度くらいまで気温が上がる予報なのに、これには驚かされた。

鏡の支笏湖恵庭岳は朝日に照らされていても、キャンプ場は背後の山に邪魔されて朝日はまだあたっていない。
その朝日の恩恵を受けるためには、湖のかなり沖まで漕ぎ出さなければならなかった。
そしてようやく、暖かな日差しの中に入り込んだ。

自分たちのカヌーが立てた波が静まるのを待つ。
その波が治まると、湖全体が巨大な一枚鏡となった。
その鏡の中に、支笏湖の外輪山と真っ青な空、そして朝の太陽が全て映り込んでいる。
ただただ息を呑むしかない光景が、カヌーの回り360度に広がる。
特に、朝日に照らされた樽前山と風不死岳は、湖に映った姿の方がより美しく見える。


鏡の支笏湖
支笏湖が巨大な鏡になった

そんな風景の中にしばらく身を置いた後、サイトへと漕ぎ戻る。
私達と入れ替わるようにN島さんが湖へ漕ぎ出していった。

風不死岳たき火に火を付け、朝のコーヒーを飲んでいると、他のメンバーも起きだしてくる。
支笏湖でこのような鏡の湖面が見られるのは日の出前後の一時だけで、大抵は暫くするとさざ波が立ち始めるものである。
それが今日は、何時まで経っても静かな湖面が保たれていた。

皆が朝食を食べ終える頃になって、N島さんがようやく戻ってきた。
2時間近くはカヌーに乗っていたことになる。
これくらいでなければ、カヌーは上達しないのだと、改めて思い知らされる。

私達が次の流水練習のためにテントなどを片づけていると、日帰りキャンパーが次々とやってくる。
ファルトボートを持ってくる人が多い。
隣のファミリーが、娘さん二人を真ん中に乗せて、岸沿いにカナディアンを漕いでいた。
湖岸の風景そんな様子をO橋さんと眺めながら「これこそが正しいファミリーカヌーの姿だよね。こんな幸せそうな家族を川に誘ってはいけないね」と話をした。

O橋さんの家族も娘さんが二人で、目の前を通り過ぎて行ったファミリーと同じ年頃の時、娘さん二人をカナディアンの真ん中に乗せて、クラブの例会で川を下ったことがある。
その時の、カヌーが岩に張り付き、奥さんや娘さんが次々とカヌーから流れ出てくるという悲惨な光景は、今でも私の目にくっきりと焼き付いている。
この時O橋さんは、「こんな危険な遊びに家族を巻き込んではいけない」と強く思ったそうである。

荷物を全て片付けてキャンプ場を後にする時、ファミリーカヌーのお父さんに「川下りも楽しいですよ」と悪の囁きを残して、千歳川へと向かったのである。


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