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君はこの寂しさに耐えられるか

歴舟川の川原(8月12日〜13日)

特に出かける予定も無かった今年の夏休み。
それが、今年はペルセウス座流星群を観測するのに好条件と聞いて、急遽これを目的としたキャンプの計画を立てることにした。
計画とは言っても、お盆休みのこの時期ではキャンプ場は何処も大混雑で、ゆっくりと流れ星を楽しめるような場所は川原しかない。
最近は、ほぼ毎年の様に出かけている歴舟川の川原キャンプ。
去年は、群馬から北海道に遊びに来ていたKevipaさん、ミエさんと一緒にこの川原キャンプを楽しんでいた。
今年もまた一緒にとの話もあったが、愛犬ルークの体調が悪くて川原キャンプは見送りになっていた。
その見送りになった計画が再浮上してきたのである。

ペルセウス座流星群がピークを迎えるのは13日火曜日の明け方近く。
今年はお盆が週の真ん中になるため、当初は週の後半の方で休みを取って実家に帰省することにしていた。
その予定を急遽変更して、月曜日から2日間の休みを取って、歴舟川の川原キャンプに出かけることにする。
勿論、川下りとのセットである。

週間天気予報では当日の空模様もまずまずで、これならば流星群も何とか見られそうである。。
ところが、日が経つにつれて天気予報が悪い方に変わり始めた。
そして、札幌を出発する月曜日、天気予報は最悪。晴れ間が広がるのは道南方面だけ。他は全道的に曇り時々雨の予報である。
中札内の道の駅で今更川下りを止めて道南にいく気にもなれず、流星群は諦めて川旅キャンプだけでも楽しむことにする。
幸い、雨雲レーダーを見ても十勝南部では雨にあたらずに済みそうだった。

そうして札幌を出発し、トウモロコシを仕入れるため中札内の道の駅に立ち寄る。
そこで改めて雨雲レーダーを確認し、愕然となった。
何時の間にか、発達した巨大な雨雲が日高山脈にかかりつつあったのである。
この段階で、川を下ってのキャンプは諦めるしかなかった。
ちょっとした雨で直ぐに増水する歴舟川の川原で、発達した雨雲が近づいている状況でテントを張るような無謀な行為はできない。

「このまま雨の中、ドライブしながら札幌まで帰るしかないのか。」
途方に暮れながらも、焚き火で焼いて食べるためのトウモロコシを購入。
考えていることと行動が全く一致していない。

とりあえずはカムイコタンのキャンプ場まで行ってみることにした。
お盆休みに入っているはずなのに、キャンプ場は閑散としていた。元々が利用者の少ないキャンプ場で、おまけにこの天気なので、無理もない。
「川原に拘らず、普通にキャンプ場に泊まっても良いのでは?」
そんな考えも浮かんでくるが、今回は川原キャンプの装備しか持ってきていなかった。
イスもテーブルも無く、焚き火もできず、雨の中でテントに寝るだけのキャンプには、さすがの私も何の魅力も感じない。
環境がそれしか許さない様な状況ならば、テントの中で山食を食べながら一晩を過ごすキャンプも楽しいものである。
しかし、たとえ同じ行為であっても、それを整備されたキャンプ場でするのでは、話が全く違ってくるのである。

「こうなったら、意地でも川原でキャンプをしてやる!」
川原ならば、イスやテーブルが無くても全く気にならない。
車で乗り付けられる川原ならば、急な増水でも逃げ場はあるだろう。
そう考えて、思い浮かぶ川原を調査して回ることにした。

泥だらけのエクストレイルしかし、この季節、川原へ通じる様な道はイタドリなどが繁茂し、おまけに雨の後で路面状態が非常に悪くなっている場所もある。
購入後最初の車検を終えたばかりのエクストレイルで、そんな道に突っ込んでいくのは相当の勇気を必要とする。
半べそをかきながら、イタドリに覆われた道なき道を突き進む。

その結果、あまりにも車が酷い状態になっていたので、大樹町市街地で洗車場に駆け込んだ。
泥を洗い落とした後、恐る恐る塗装面を調べてみたが、それ程ひどい傷は付いていなくてホッとする。
昼は大樹町郊外の赤門でラーメンを食べ、再び川原の調査を開始した。

西から流れてきていた雨雲は、日高山脈がブロックしてくれているようで、雨もポツポツと落ちてくる程度である。
川原の調査これくらいの雨ならば、川原の流木も芯までは濡れないので、焚き火は楽しめそうだ。
川原の調査をするうえで、焚き火用の流木を確保できるかどうかは重要なチェックポイントである。

こうして探してみると、車で近くまでアクセスできるような川原は結構あるものだ。
今回発見した以外にも、そんな川原はまだまだありそうだったが、河畔林の中に続く道は何処も同じような状態である。
これ以上エクストレイルを傷つけるのも忍びなく、全ての場所は回りきれていない。

そうして最後に歴舟川の河口へと向かう。
この河口へ出る道も、イタドリや柳が茂って、酷い状態になっていた。
一昨年は、タクシーがこの道をで入ってきてくれたことが、今となっては信じられない。
河口への道年々状況は悪くなってきているようだ。

そうして藪の中を抜けて、河口部の広々とした川原へと出てきた。
テントを張るのならばやっぱり、車で直接乗り入れられる川原が良い。
流木もいくらでも転がっている。
条件としてはここが一番良かった。

しかし、雨は降っていないものの灰色の雲が低く垂れこめ、腹に響くような太平洋の波音。
そんな場所にじっと立ち尽くしていると、寂寞感に囚われる。
普通の感覚の人間ならば、ここにテントを張ろうなんて気持ちには絶対になれない。

荒涼たる河口の風景 「君はこの究極の寂しさに耐えられるのか」
私が心の中で自問自答している最中に、かみさんは一人でサッサとテントを張る場所を探し始めていた。
かみさんが普通の感覚の持ち主でないことだけは確かである。

それでも、この広い河原の中からかみさんが選んだ場所は、カワラナデシコが群落となって咲いている近く。
モノトーンの風景の中で、そこだけが温もりを感じられる場所だった。
そこに、黄色と橙色のテントを張ると、更に温もりが増した気がした。
後はそこで火を燃やせば完璧である。

 
カワラナデシコの花が唯一の彩りだった

我が家のテント   焚き火スペース
テントを張ると落ち着ける   目の前には荒涼たる風景が広がる

テントの前にKevipa風かまどを作る。
去年の夏、Kevipaさん、ミエさんと一緒に歴舟の川原でキャンプをした時に、かみさんはKevipaさんの焚き火スタイルがすっかり気に入ったようだ。
それで今回は、直ぐにそれを真似して、川原を少し掘り下げ、その周りに小さめの丸石を並べる。

焚き火開始次はイス代わりの流木と、テーブル代わりの平たい石を集めてくる。
キャンプ場と違って、川原では何も装備が無くても、簡単に快適な生活スペースが作れてしまうのだ。

その後は焚き火用の流木集め。
流木は無尽蔵に有る様に見えて、実はその殆どが、上流から運ばれてきたばかりの生木ばかりである。
ちょっと苦労したけれど、それでも一晩に燃やすには十分な量の流木が集まった。

全ての準備が整ったところで、焚き火に点火し、ビールをあける。
普通のキャンプ場ではこの楽しみは絶対に味わえない。
やっぱり川原キャンプは最高である。

ピカピカの新品ケトルを焚き火の上に乗せるKevipa風かまどの管理はかみさん。
この時のために買った、まだピカピカのケトル。
それを焚き火の上に乗せるのには、さすがにかみさんも躊躇したようだ。
しかし、こうやって焚き火の上で煮炊きをするのはかみさんの憧れでもあったので、覚悟を決めてケトルを乗せた。
ついでに、中札内で買ってきたトウモロコシも一緒に焼いてもらう。

私はその隣で、いつも通りの焚き火を楽しむ。
川原で拾う流木は、1本が2mも3mもありそうなものばかりなので、その末端が焚き火の中央にくるように組み合わせて、燃えるにしたがってそれを中央に寄せていく方法で燃やしていく。
焚き火の上に流木を組み、そこから鍋を吊るすのもアウトドア関係の本に出てきそうなパターンだが、そこまで凝るつもりは毛頭ない。


金麦とカワラナデシコ   かまどの管理
仲の良さそうな金麦とカワラナデシコ   かまどの管理はかみさんの仕事

焚き火の周りだけ乾いている夕食はレトルトカレー。
川原キャンプでも、料理にはもう少し凝りたいところだが、料理に手間をかけないのは我が家のキャンプスタイルなのである。
と言うか、スタイルではなくて、ただ面倒くさいだけの話かもしれない。

細かな霧雨が降り始めた。
焚き火の熱で、その周りだけが乾いている。
そこに雨具を着ていれば、霧雨なんか全く気にならない。
焚き火の前で横になって眠りたくなるくらいだ。

周りは完全な闇に包まれていた。
この日、川原でこうして焚き火をしている人間なんて、十勝の中でも私たちくらいなものだろう。
そう考えると、目の前で燃えている炎がとても頼もしく思えてくる。


焚き火風景   焚き火風景
良い焚き火だ   このまま横になりたくなる

焚き火風景
闇の中では焚き火の炎が心強い

そうして9時過ぎには就寝。
真夜中に目が覚めて、もしかしたらと思いながらテントの外をのぞいてみたが、相変わらず霧雨が降り続行けていた。
ちょっと胸が悪かったので、そのまま外に出る。
キャンプで食べたものを全部吐いてしまった。
それで少し楽になって、もう一度眠ったけれど、明け方近くになって今度は腹具合も悪くなってきた。
テントから出ると、霧雨は殆ど止んでいたけれど、相変わらず空は曇ったままだ。
それでも、広尾や大樹の市街地方向の空はほんのりと明るくなり、海上でも漁火が一つだけ輝いていた。
朝も近づき、辺りも微かに明るくなりつつある。
そんな中、小さなスコップを抱え、首からトイレットペーパーをぶら下げ、広い河原をトボトボと歩いていく。
そうしてスコップで穴を掘り、その上にしゃがみ込む。

天気が良ければ、今頃は川原の上に寝転がって満天の星空の中を横切る流れ星を眺めていたはずだ。
今の自分が置かれている状況とのあまりもの違いに呆然自失となる。

トイレットペーパーを燃やし、穴を埋め戻してテントへと戻る。
その途中で胃液を吐いた。

かみさんは「昼にラーメン食べて、その後にトウモロコシ1本食べて、その後にレトルトカレーだから、お腹がびっくりしたんじゃない?」と言う。
胃袋が頑丈な方ではないけれど、さすがにその程度でお腹を壊すことはないだろう。

「3日も連続で早起きして川を下ったりしていたから、疲れもあったんじゃない?」
早起きは何時ものことだし、この程度で遊び疲れるようではちょっと情けない。

朝の焚き火一眠りしても状態は回復せず。
この日は歴舟川を1本下ってから札幌へ帰るつもりでいたが、朝飯も食べられずにテントを撤収し、そのまま真っ直ぐに札幌へ帰ることとなった。
やっとの思いで札幌まで帰り着き、そのまま2日間寝込むこととなる。
結局は夏風邪が原因だったようだ。

最後は残念な結果になってしまったが、何もしないで札幌まで帰ってくるよりは充実した夏休みを過ごすことができた。
ただ、このままでは口惜しいので、秋晴れの時にでももう一度リベンジしたいものである。



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