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南の島でテント泊

屋久島ジェリーズキャンプ場(4月15日〜16日)

雪の札幌を出発札幌の自宅を出る時には季節外れの雪が激しく降っていた。
でも、これから暖かい南の島へ行くのだと思えば、心は晴れやかである。
去年に引き続き、小岩ツーリストのツアーを利用した、2泊6日の屋久島ツアーへの出発である。

今年は、希望した安いホテルが満室だったことと、飛行機を早い便に変更したことで、去年のツアー料金よりも一万円ほど高くなってしまった。
高くなったついでに、新千歳空港の駐車場も去年の遠くて未舗装の駐車場から、空港に一番近いアスファルト舗装の駐車場に変えて、こちらも1泊230円のアップ。
まあ、財布の管理はかみさんに任せっぱなしなので、私はどうやって休みを取るかに全力を尽くすのみである。
年度が変わったばかりの時期に、まとまった休みを取得するのは、これでなかなか勇気を必要とする行為なのである。

鹿児島開聞岳・・・、の写真飛行機は羽田と鹿児島で乗り継ぎ。
新千歳発の便を早くしたおかげで、鹿児島の乗り継ぎに2時間の余裕ができた。
その僅かな時間を利用して空港のターミナルビルの外に出て、我が家にとって初めての九州上陸を果たしたのである。

ほぼ定刻の15時20分に屋久島空港に到着。
自宅を出てから10時間もかからずに、吹雪模様の札幌から南国の風が吹き抜ける屋久島へ来れるのだからありがたい話だ。
バスで安房の街へ移動。
まずはアウトドアショップでガスカートリッジを購入。次は縦走用のビールとワインを買うために酒屋を探す。
その酒屋がなかなか見つからず、道ですれ違った人に聞いて地元の人しか利用しない様な裏通りの酒屋に入る。
この日の宿泊は、去年の最終日にも利用したホテル屋久島山荘。
安房川の風景年季の入ったホテルだが、超軟水の風呂が快適である。洗い場にゴキブリが這い回っていても大して気にならない。
何と言っても、安房川とその向こうの山の風景が素晴らしいのだ。

観光案内所に登山届けを出しがてら、安房川沿いを散歩。
庭先で花を咲かせるハイビスカス、河岸にもやわれた舟、護岸に並べられたカヌー、遠くに霞む山々。
はるばると屋久島までやって来た実感が湧いてくる。

翌日からは2泊3日で屋久島を縦走。
そして山を下りてきてからは、屋久島での初のキャンプをすることに決めていた。
屋久島には3000円程度で泊まれる素泊まり民宿が沢山あるのだが、屋久島の地でテント泊をするのは私にとって大きな魅力なのである。

2泊3日の縦走を終えて縦走最終日、高低差1600m、距離にして15キロを歩いて、何とか予定していたバスの時刻に間に合うように下りてこられた。
午後3時15分大川の滝始発のバスに乗り込んだのは私たち夫婦だけ。
バスは間もなく栗生の青少年旅行村前キャンプ場のバス停を通過。
花山歩道を降りてきて、このバスに乗れなかった場合、次のバスは午後5時45分になってしまう。
そうなったら、バスに乗らずに更に3キロ歩いて、このキャンプ場に泊まることも考えていた。
施設も整っていて、屋久島初キャンプの場所としては一番適当な場所である。

しかし私がこの日のキャンプ地に決めていたのは、ネットでたまたま見つけた尾之間にあるジェリーズキャンプ場である。
そちらの方が温泉や商店にも近そうだったのと、一番大きな理由は、せっかくの屋久島キャンプなのでどこにでもありそうな普通のキャンプ場に泊まっても面白くないと言うことだった。
その点では、ジェリーズキャンプ場は検索していても、そこのオーナーらしき人のブログがヒットするだけで、詳しい内容は全く分からない。
サイトが写っている写真では、モッチョム岳が真正面に見えていて、ロケーションは良さそうだ。
何となく面白そうかも。そんな気がして、ここを選んだのである。

栗生の次のバス停から外人の男女が乗り込んできた。さすが世界遺産の島だと、変なところに感心してしまう。

彼らは尾之間温泉のバス停で降りていった。
私達の降りるバス停は二又川。分かっているのはそのバス停の名前だけである。
一番不安だったのは、ジェリーズキャンプ場の場所が分からないことだった。ダウンロードした尾之間の地図にも、そのバス停は載っていないのである。
キャンプ場案内板何となく市街地からそう離れてはいないだろうと思っていたが、確かな根拠はない。
もうほとんど歩けないくらいに疲れ切っているのに、街から遠いキャンプ場だったらちょっと悲惨である。

「はい、ここですよ」と運転手さんがバスを停めてくれたのは、幸いなことに、街を少し通り過ぎただけの場所だった。
バス停の向かいの土地にはキャンピングトレーラーが1台停まっていたが、キャンプ場らしき場所は見当たらない。
キャンプ場に電話をかけると、札幌からかけた時と同じおじさんが電話に出てきた。このおじさんはなまりがきつくて、電話で意思疎通するのがなかなか難しいのである。
それでも何とか、キャンプ場までの道は教えてもらえた。

バス停から二又川を渡った先に手製の看板があり、そこから海に向かって細い道を300mほど降りていくとネットで見たことのある建物が現れた。
建物の中に人の気配は無い。
少しすると畑の方から一人の男性が歩いてきた。
そこでようやくなまりの強いおじさんの正体が分かったのである。
ジェリーズキャンプ場日本人じゃなかったのだ。日本語もそれほど達者ではないので、これじゃあ電話のやり取りで苦労するはずである。
でも、直接会って話していれば、日常会話に不自由はしない。
バス停の前のトレーラーハウスに泊まっている人がいて、夜にはその人と焚き火をするらしい。

一緒に焚き火をするのも楽しそうだが、何せこちらは縦走を終えたばかりで疲労の極致に達している様な状態なので、焚き火スペースから離れた奥の方のサイトにテントを張ることにした。
ネットで見ていた通り、モッチョム岳の眺めが素晴らしいサイトだった。
近くに生えている植物も如何にも南国風である。

そして気温も南国だった。
25度くらいはありそうだ。今朝まで山小屋で震えていたことが信じられない様な暑さだった。
宮之浦岳の登山道には雪さえ残っていた。亜寒帯から亜熱帯までの環境が一つの島に同居しているとの話は、まさしくその通りなのである。
堪らずに半袖半ズボンスタイルになる。

 
我が家のテント
モッチョム岳も眺められ、なかなか快適なサイトである

テントの設営を終えたら、まずは温泉である。
日帰り入浴のできるJRホテル屋久島までは徒歩15分とのことなので、ホッとした。
何とか散歩気分で歩くことのできるギリギリの距離である。
入浴料金は一人千円と高いけれど、タオルとバスタオルを貸してくれるので、私達の様なキャンパーにとっては嬉しいサービスである。
JRホテル屋久島からの風景ホテルは小高い場所に建っていて、ここから見るモッチョム岳の姿も迫力がある。

同じバスに乗っていた外人男女もここに風呂に入りに来ていた。
日本語がほとんど話せないようで、券売機で入浴券を買うのにも一苦労している。
熊野古道の時もそんな外国人と同宿だったが、日本語が全く話せないのに平気で日本国内を旅している彼らには本当に感心してしまう。
温泉は超軟水とアルカリ泉を合わせたような、お肌ヌルヌルのとっても良いお湯だった。

夕食は、当初予定していた店がキャンプ場から遠そうなので、スーパーで弁当を買ってキャンプ場で食べることにする。
ところが街の中のAコープにはお惣菜があるだけで弁当は売ってなかった。
スマホで検索すると少し歩いた場所に食事できる店があったので、頑張ってそこまで歩くことにする。
食堂の窓からもモッチョム岳が見える屋久島らしいメニューがあるわけでもなく、ごく普通の食堂だったけれど、値段も安く、山から下りた後は普通の食事ができるだけで嬉しいのだ。
店のカウンターでは、日焼けしたちょい悪オヤジ風のおじいちゃん達が集まってお酒を飲んでいるのも良い風景である。

食事を終え、街中まで戻ってビールを仕入れて、キャンプ場へと戻る。
その途中で美味しそうな居酒屋を見つけ、ここに入っていればこんなに歩かなくても済んだのにと後悔する。
結局、風呂から出てキャンプ場まで更に2キロも歩いたことになる。

テントに戻って早速ビールを開ける。 既に辺りは暗くなってきているが、気温はまだ25度近い。
テントの周りでは虫の鳴き声が賑やかである。北海道の秋のキャンプと同じような状態だ。それに混じってカエルの鳴き声や野鳥のさえずり。
南の島のキャンプはとても快適である。

テントへ戻ってただ、二人用テントで縦走装備の二人が生活するのはとても窮屈なのである。
不快な虫もいないので、テントの前に敷いたシートの上でビールを飲む。
空には月が浮かび、暖かい風が吹き抜けていく。
ツアーでホテルの指定さえなければ、ずーっとキャンプ暮らしをしたいところである。

このキャンプ場のオーナーはドイツ人で、世界中を旅している間にここが気に入って住み着いたらしい。
電話は引いているけれど、電気の方は水力、風力、太陽光と全てを利用しながら、最低限の電気で生活している。
もっとも風力発電の方は、既に壊れている様に見えた。

彼は、私達が北海道から来ているのを知ると、とても喜んでくれた。養蜂もやっていて、夏の間は毎年北海道に来ているそうである。
奥さんは日本人だが、この日は留守だったようで会うことができなかった。

夜寝る前にトイレに来ると、管理人さんは二人連れ外国人と一緒に焚き火で料理を作っているところだった。
今日は疲れたのでもう寝ますと彼に話していた時、その二人がバスと温泉で会ったばかりの男女であることに気が付く。
彼らが日本語を話せるか、私たちが英語を話せたら、もっとコミュニケーションがとれたのに、それがちょっと残念だった。

キャンプ場の朝夜も暑くて、シュラフのファスナーは開けたままで朝を迎えた。
朝日が一足早く、モッチョム岳の山頂を照らし始める。
そして、直ぐにその光はテントまで降りてきた。

キャンプ場の中を一回りするだけで、沢山の花を見ることができる。
かみさんの大好きなレンゲの花も咲いていた。
養蜂箱の前では蜜蜂達が活動を始めていた。
管理人さんの話では、今日あたり最初の蜜がとれそうだとのこと。
南国の花から集められた蜂蜜をお土産にしたかったけれど、残念ながら少し時期が早すぎた。
もう少ししたら、ここで採れた蜂蜜がぽんたん館にも並ぶらしい。


ハイビスカス   レンゲ
色鮮やかなハイビスカス   かみさんの大好きなレンゲの花

9時にレンタカー会社の人が車を持ってきてくれた。
安房と宮之浦の間では無料でレンタカーを配送してくれるけれど、尾之間では配送料が2千円かかる。
重たい荷物を背負って安房までバスで出かけることを考えれば、2千円かかっても車を配送してもらった方が絶対に楽である。
車はトラックに積んで持ってくるため、このキャンプ場までは来ることができず、トラックはJRホテル前の駐車場に停めて、車だけ持ってきていた。
キャンプ場オーナーと一緒に担当のお兄さんはこの後歩いてホテルまで戻らなくてはならない。
気の毒だから送っていくと言っても「いや、これが仕事ですから」と拒否する彼がとても爽やかだった。

キャンプ場のオーナーさんに別れを告げてキャンプ場を後にする。
今日はこのレンタカーで島内一周ドライブである。
まずはぽんたん館に寄って、屋久島名物のぽんかんを買う。このぽんかんは、皮は少し剥きづらいけど、味はデコポンと同じでとても美味しい。

千尋の滝など有名どころの観光地は去年見ていたので、北海道でのドライブ時と同じく、面白そうな場所を見つけては寄り道しながら車を走らせる。

その中でも屋久島フルーツガーデンは最初は500円の料金に入場をためらったけれど、おじさんが園内植物のガイドをしてくれて最後にはフルーツの試食もあり、これで500円の料金はとっても安く感じた。


屋久島フルーツガーデンで   中間ガジュマル
フルーツガーデンで記念撮影   中間ガジュマルは迫力満点

サンゴの海岸栗生の海岸も感動だった。
それまでは、砂浜の海岸で小さなサンゴのかけらを見つけては大喜びしていたのに、ここには浜全体がサンゴの死がいで埋まっている場所があったのだ。
札幌の熱帯魚ショップで一個いくらで売られている様なサンゴが拾い放題。
とは言っても、それをザックに入れて担いで帰らなければならないことを考えると、そんなに沢山も拾ってられない。
何となく後ろ髪をひかれる気分でその海岸を後にした。

昼食に立ち寄った栗生の手打ちそば松竹も、美味しい店だった。

西部林道のヤクザルそして西部林道での最大の楽しみは、かみさん憧れのヤクザルとの対面。
今回の縦走中にチラッとだけ見ていたけれど、ほんの一瞬だけだった。
西部林道ではヤクザルに会える確率が高いと聞いていたけれど「本当にいるのかな〜」と半信半疑で車を走らせる。

そうしたら本当にいたのである。
車が近づくことなどお構いなしに、あちらこちらで道路に寝そべったりノミ取りをしたりしているのだ。
何だか、野生のサルを見ている気がしない。
ヤクジカを直ぐに見飽きるようになったのと同じく、これではヤクザルも直ぐに見飽きてしまいそうだ。

横河渓谷の景観に圧倒され、次はウミガメの産卵地として有名ないなか浜までやってきた。
駐車場には大型観光バスが停まり、沢山の観光客が砂浜を歩き回っている。
いなか浜観光客にとっては、ウミガメがいなければここはただの砂浜にしか見えないだろう。
私達は足跡だらけの砂浜からなるべく遠ざかって、まっ平らな砂浜の上に腰を下ろす。
屋久島の砂浜は、細かい粒状になった花崗岩からできているので、そこに直接座っても砂まみれになる心配もない。
薄茶色の砂浜に真っ白な波が打ち寄せては引いていく様子を眺めながらタンカンを食べる。

その後は、甲子園球児の様に砂浜の砂をかき集めて袋に詰める。
今回の旅行ではこのいなか浜の砂を持ち帰るのも大きな目的の一つなのである。


横河渓谷のプール   いなか浜の美しい砂浜
横河渓谷の美しいプール   いなか浜の美しい砂浜

志戸子ガジュマル園いなか浜を後にして、最後に志戸子ガジュマル園に立ち寄る。
気根なのか幹なのか、訳が分からないくらいに複雑に絡み合った樹木。
ガジュマルとかアコウとかがあるらしいが、その区別がつかない。
1人200円のお金をとられるだけあって、その分の見応えは十分にあった。

そうして島を一周して、最後の宿泊は安房の屋久島グリーンホテル。
料金が高いだけあって接客はていねい過ぎるくらいである。
ただ、お風呂は塩素臭が強いただの風呂で、食事の内容もそれほど際立ったものではなく、これならば風呂の洗い場をゴキブリが這い回っている屋久島山荘の方が我が家の好みに合っていそうだ。

最後の朝は雨模様その日の夜から降り出した雨は、翌朝になっても降り続いていた。
空港へと向かうタクシーの車中で、運転手さんが「屋久島では久しぶりの雨だけれど、これまで乾燥が続いていたのでまだまだ降り足りない。でも、今日山に入っている人は、苔が生き生きとしてくるのでラッキーですね」と話してくれた。
去年、雨に散々苦しめられた私達には、今日の雨の中を歩いている人達がそんなにラッキーだとはどうしても思えなかった。
それよりも、雨が少し小降りになって、鹿児島行飛行機が無事に屋久島空港を飛び立ってくれたことの方がラッキーだったのである。


屋久島キャンプの写真へ 



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