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3度目は青空天売キャンプ

ロンババの浜キャンプ場(6月30日〜7月1日)

今年はまとまった休暇がなかなか取れず、土日の休みだけで出かけられる計画を考えなければならない。
そこで思いついたのが天売島だった。離島に渡ることになるけれど、札幌からならば無理なく1泊2日の日程で出かけられる。
天売島へは一昨年とその前の年の2年連続で渡っていたが、いずれも天気に恵まれず、天気の良い時の再訪を期していたのである。
高速船さんらいなぁに乗り込むフェリー代をかけて行くのだから、少しでも天気に不安があれば別の場所を探すつもりでいた。
幸い、週末の天気予報は次第に良い方向に変わってきて、予定通りに土曜日の朝4時過ぎに札幌の自宅を出発した。

日本海オロロンラインを順調に北上して、6時半過ぎには羽幌に到着。
サンセットビーチを見下ろす駐車場でコンビニ弁当の朝食食べてから、はぼろバラ園で時間をつぶし、羽幌港を8時に出る高速船「さんらいなぁ」に乗り込む。
この30分後に普通のフェリーも出て、そちらの2等船室を利用すれば料金はかなり安くなる。
過去の2回はいずれもフェリーに乗っていたけれど、今回は1泊しかできないので、島に滞在する時間はとても貴重なものになる。
天売港への到着時間は1時間しか違わないが、その1時間をお金を払って買うことにしたのである。

キャンプ場への案内看板海は穏やかで船も揺れず、定刻に天売港へ到着。フェリーから降り立った乗客は10名もいなかった。
そのままロンババの浜キャンプ場へ歩いていく。
キャンプ場へ続く砂利道の入り口には「ロンババの浜キャンプ場」と書かれたプラスチックの浮き球が置かれていた。
それでも今までの看板と比べると随分立派になったような気がする。

キャンプ場とは言っても、テントを張れる場所は僅かしかない。
ここの一等地ともいえる場所は、個人的には、陸に上げられた磯舟の前あたりだと思う。
既にそこには、長期滞在風のソロテントが一つ張られていた。
他にテントが張れそうな場所は、トイレの前にはスペースがあるけれど、そこを除けば海側の僅かな空き地だけ。

磯舟の前のサイト2年前と同じく、今回も海側の場所にテントを張ることにした。
気温が高く、小さなテントを張っただけで汗をかいてしまう。陽射しも強いので、テントの中にはちょっとの間でも入る気にはなれない。
半袖Tシャツとショートパンツに着替える。
夏には殆どキャンプをしない我が家なので、キャンプの時にこんな姿になるのは本当に久しぶりの様な気がする。

そこへまた一人のキャンパーがやってきて、磯舟の前にテントを張った。
東京からきた彼は、一週間ほど天売島と焼尻島で民宿に泊まったりキャンプをしたりして過ごしているらしい。

フットパスへの入口午前中は、「花鳥の小路」と名付けられた島内のフットパスを巡ることにする。
これまでは島の外周しか歩いていなかったので、ここは初めて歩くことになる。
天売島は野鳥や海鳥の観察場所として知られていて、このフットパスでも多くの種類の野鳥に出会えるらしい。
ただ、焼尻島の自然林と違って、こちらの森は大部分が植林されたものなので、少し風情に欠けている。

5月が一番、野鳥の種類が多いようだが、今でも色々な鳴き声が森の中から聞こえてくる。
しかし、野鳥の知識がそれ程あるわけでもなく、双眼鏡なども持ってきていないので、鳥の名前はさっぱり分からない。

ひねくれたカラマツ興味を惹かれたのはカラマツの姿である。
普通のカラマツは1本の主幹が真っ直ぐに伸びるものだけれど、ここのカラマツは途中から2本に分かれ、更に上に向かうにしたがって更に枝分かれし、おまけに曲がりくねって伸びている。
焼尻島のオンコのように、この島の気象条件の厳しさが作り出した姿なのだろうか。

突然かみさんが、悲鳴を上げて逃げ出した。
散策路の上を這う一匹のヘビ。
焼尻島にはヘビがいないけれど、天売島にはマムシが多いらしい。
それを知っているかみさんは、フットパスの中でも、絶対に私の前に出ようとしない。
「写真を撮るから先に歩いてみて」と言っても、撮り終えたら直ぐに私の後ろに戻ってしまう。
今、私の前を這っているヘビには特徴的な模様もなく、マムシではないようだ。
しかし、かみさんは「絶対にそれはマムシよ!普通のヘビよりずんぐりしているじゃない!」
直ぐに逃げ出したくせして、しっかり観察しているらしい。ヘビ嫌いなのに、必死になってヘビを探しながら歩いているのだから困ったものである。

蔵のような建物山を下りて集落へと出てきた。
島の外周道路を歩くのは3度目になるので、見覚えのある建物も多い。
通り沿いの一軒一軒の家からは、それぞれの島の暮らしが感じられる。
神社やお寺に寄り道しながら、ブラブラと島歩きを楽しむ。

高速船が焼尻港に立ち寄った時、港で見かけたおじさんとすれ違って挨拶をする。
キャンプ道具らしきものをキャリーに乗せて歩いていたので記憶に残っていたのだ。
1本後のフェリーに乗ってきたらしい。
お寺では、子どもを3人連れたファミリーとすれ違って、また挨拶をする。
お互いが観光客であることは直ぐに分かるのである。

 
天売島のお寺   天売島の厳島神社
お寺のお地蔵さんに手を合わせる   焼尻島にもある厳島神社

炭火海鮮 番屋食事は、キャンプ場近くの炭火海鮮「番屋」で食べることにする。
先程すれ違ったファミリーも来ていた。
今夜と明日の朝はフリーズドライの山食しか食べられないので、昼食くらいは豪勢に食べたいところだ。
と言いつつも、生ビール1杯と海鮮丼を頼んだだけで、あまり豪勢とは言えないかもしれない。

暑い中を歩いてきた後の生ビールが最高に美味しいのは当然だが、この海鮮丼も値段も安くてネタも新鮮で、観光客相手の食堂とは思えない様なレベルである。

港のお土産屋でビールを買って、キャンプ場へと戻ってくると、そこは大賑わいだった。
キャンパーではなく海水浴客で、である。
本来この場所は、キャンプ場というよりも海水浴場だったことを思い出した。

ビールを買ってキャンプ場へ戻る2年前にここに泊まった時は、寒い日で、こんな海水浴場を誰が利用するんだろうと思ったものだが、今日はその役目を十分に発揮しているようだ。
先程の親子も、近くに泊まっているらしく、海に入って遊んでいた。
今日は多分、天売島でも年に何日かあるか無いかの海水浴日和なのだろう。
私も海の中で泳ぎたかったが、さすがに水はまだ冷たく、足まで入るだけで十分だった。

再びビールを飲みながら、まったりと時間を過ごす。
今回の最大の目的はウトウの帰巣シーンを見ることである。
2年前は霧と風で大変だったけれど、今日は天気も良く、60万羽ものウトウが、雛に与えるための小魚を口ばし一杯に咥えて一斉に戻ってくる壮大なシーンをたっぷりと楽しめそうだ。
そのウトウを見るためのバスも出ているが、私たちは島一周も兼ねてそこまで歩いていくことにしていた。
夕食もその途中で食べるのである。


ロンババの浜海水浴場
もうすっかり夏の風景だ

天売の海に乾杯   裸になって泳ぎたいくらい
天売の夏に乾杯って感じ   裸になって泳ぐほど若くはないので

ウトウが一斉に巣に戻ってくるのは陽が沈みかける頃。それにはまだかなり早すぎるけれど、ゆっくりと島歩きを楽しむことにして、午後3時にキャンプ場を出発した。
観音崎展望台坂道を登っていくと、午前中にすれ違ったおじさんと再びすれ違う。
天売島の外周をぐるりと一周すると約10キロ。
長距離を歩き慣れていない人には少し辛い距離だが、島を楽しむためには是非歩いてみたいところだ。

最初に立ち寄ったのは観音崎展望台。
ここはウミネコの一大繁殖地でもあり、展望台に近づくにしたがってウミネコの鳴き声が賑やかになってくる。
2年前にここを訪れた時は朝の時間帯だったので、沢山のウミネコが断崖絶壁の風景の中を群れをなして飛び回る様子に感動したのだが、今回は時間が遅かったので、その数はかなり少なかった。
ここも夕方になれば、巣に帰ってくるウミネコの大乱舞が見られるらしいので、それも一度見てみたいものである。


海の宇宙館   何も無い道
海の宇宙館と炭火海鮮番屋、焼尻島も   何も無い殺風景なこの道が好きだ


歩くのが楽しい道6月初めに訪れた時はハクサンチドリが結構咲いていたが、今回はその姿は全く見られなかった。
海鳥観察舎が近づくと、お馴染みのエゾカンゾウの花が目立ち始めた。
北海道の初夏を感じさせる花として、個人的にはエゾカンゾウが一番最初に挙げられる。
今年はこれまで遠出する機会も少なく、エゾカンゾウの花を見ないままに終わってしまうのかと諦めていたが、ようやくその姿を見ることができた。

海鳥観察舎に到着。
断崖絶壁の続く勇壮な風景を楽しむ。
天気は良いのだけれど、霞がかかって遠くの風景がボケているのが残念だった。
それでも、海に浮かぶ利尻島の姿がぼんやりとだが確認できる。
我が家にとって最後に残された離島である。そこの山に登るのは何時のことになるのだろう。

海鳥観察舎からの展望時間も遅いので、もう誰も来ないだろうと思って観察舎の中で夕食の準備を始めると、ツアー客らしき一団がやってきてしまった。
歩いてここまで来る人はいなくなっても、考えてみれば車に乗ってくる人もいるのである。
こんな場所で夕食を作っているのを見られて、何となく気恥ずかしくなってしまう。

陽もかなり西に傾いてきたので、海鳥観察舎を出て、ウトウの生息地である島の西端、赤岩展望台まで移動する。
午後6時過ぎでは、まだ観光客の姿もなく、勿論ウトウの姿も見えない。
次第に色を濃くする夕日や、ウミネコ達の姿を眺めながら時間を過ごす。
何となくウミネコ達が騒がしくなってきたような気がした。ウトウが餌をくわえて戻ってくる時間を知っていて、臨戦態勢を整えてでもいるのだろうか。


夕日を背景に群れ飛ぶウミネコ
夕日を背景に群れ飛ぶウミネコ達

ウトウを待ち受けるウミネコ6時半を過ぎる頃からポツリポツリとウトウが戻って来始めた。
沢山のウミネコやオオセグロカモメが待ち構えている中に、1匹で飛び込んでいくのは、相当の覚悟が必要だろう。
イタドリが茂っている中に巣穴を持っているウトウならばまだ良いけれど、何も生えていない更地に巣穴がある奴は大変である。
着地と同時に巣穴に飛び込まないと、あっという間に周りを取り囲まれて、雛のために運んできた餌を全て横取りされてしまうのだ。

7時を過ぎるとウトウの数が急に増え始めた。
南の空から次から次へと湧き出るようにウトウが姿を現し、自分の巣穴を目指して一目散に飛び込んでいく。それを追い回すウミネコ達。辺りが騒然としてきた。
それを待っていたかのように、ウトウウォッチングツアーのバスが到着して、観光客がぞろぞろと降りてくる。
週末なのでバスも2台でやってきていた。
次々と帰巣するウトウ歩いている時に2度もすれ違ったおじさん、子どもを3人連れたファミリー、東京からのソロキャンパー、海鳥観察舎で合ったツアーガイドのお姉さん。
島に来てから知り合ったばかりの人達も、全員がそのバスに乗っていた。

目の前で繰り広げられる壮大なスペクタクルに歓声があがる。
同じウトウでも、素早く自分の巣穴に飛び込む奴とか、巣穴の場所が分からなくてウロウロしているうちに口ばしに咥えた小魚を全部取られてしまう奴とかがいて、人間世界と大して変わらないようだ。
私たちはたまたま今日の様子だけを見ているのだが、ウトウの子育てが終わるまで、この状況が毎晩続いているのである。
鳥達ってなんて健気なんだろうって思わずにはいられない。

ウトウ60万羽のウトウの帰巣はまだ延々と続いていたが、私たちは歩いて帰らなければならないので、少し早めにそこを後にした。
しばらくは、ウトウが頭を掠めるように飛んでいたが、直ぐにその姿も無くなり、元の静けさが戻ってきた。
こんなところにひっそりと巣穴を作れば平和な暮らしができるのに、どうしてウトウは集団の中に身を置きたがるのだろうって考えてしまう。

長い下り坂を小走りで下っていく。
カメラとか、余計な荷物が無ければ走って帰った方が楽かもしれない。
カエルの鳴き声があちらこちらから聞こえてくる。
1時間かけて、キャンプ場へと戻ってきた。いつの間にかテントが2張り増えていた。
ちょっと悔しかったのは、海の中で冷やしておいたはずのビールが、潮が引いたために岩の上に転がっていて、生温くなっていたことである。
今朝目覚めてからの長い一日が終わり、テントへ潜り込んだ。

天売島の朝日翌朝、テントの中から外を覗くと、水平線に低く広がる雲をピンクに染めて太陽が昇ってくるところだった。
今日も良い天気になりそうである。

のんびりと朝のコーヒーを味わい、海を眺めて何もしない時間を過ごす。
3度目にしてようやく、島の時間に体を合わせることができた気がする。

港をぶらりと散歩してテントに戻ってくると、隣のテント二張りはいつの間にか無くなっていた。
結局、それらのテントの住人とは一度も話す機会が無く、直ぐ隣に張られていたテントの住人はその姿さえ見ずに終わってしまった。
小さな島の中で、何度も繰り返して顔を合わせる人もいれば、隣にテントを張ってもすれ違うだけで終わってしまう人もいる。
これが旅の面白さなのだろう。

ザックに荷物を詰めてキャンプ場を後にする時、東京からの男性は何処かに出かけていたので、長期キャンプの男性に挨拶してフェリー乗り場に向かった。
一番で出港する高速船に乗り込んでからフェリー乗り場に目をやると、子供3人連れのファミリーとキャンプ道具をキャリーに積んだおじさんの姿を見つける。
島の旅は本当に面白いのだ。

天売島キャンプの写真へ 


キャンプ場の様子   島にお別れ
隣の二張りの住人とはすれ違いで終わる   これで島にお別れ


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