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世界遺産を歩く白神キャンプ

アクアグリーンビレッジANMON(10月20日〜21日)

 JRの駅で偶然に見かけた青森往復きっぷの情報。これが今回の旅の始まりだった。
 以前から歩いてみたいと考えていた白神山地と、このお得な切符が直ぐに結びつき、具体的な旅程の検討に入る。
急行はまなすに乗り込む 札幌市内から青森・弘前への往復きっぷが19,500円、
 これで急行「はまなす」のB寝台が利用できるという。これを利用しない手はない。
 そうして、水曜日の仕事を終え、自宅で夕食を食べ、札幌駅22時00分発の夜行列車へと乗り込んだ。
 寝台列車を利用するのは高校生の修学旅行以来だろうか。
 その頃は多分3段寝台だったと思うけれど、現在は2段寝台。
 それでも、大型ザックを持って中に入ると、その狭さに困惑してしまう。
 足元の方にザックを立て、ザックと壁との間のわずかな隙間に足先を入れて、かろうじて体を伸ばして寝ることができた。
狭いB寝台 揺れる度に目が覚めて、連続してぐっすりと眠れたのは1時間程度。
 これじゃあ、かみさんは一睡もできなかったのでは?と思ったら、意外と良く寝られた様だ。
 何時も小さなテントで寝ているので、狭い場所の方が落ち着くらしい。

 青森駅に5時40分に到着。
 往復切符で弘前まで行く予定だけれど、駅前の海鮮市場内の食堂で朝食を食べるために途中下車する。
 ここで初めて、この切符では途中下車できないことに気が付いたけれど、青森弘前間の乗車料金なら大したこともないので、その分は諦めるしかない。
 目指す市場はファッションビルの様なアウガの地下にある。
海鮮市場の様子 本当にこんな場所に市場があるんだろうか?と思いながら階段を下りていくと、そこには何処でも見かけるような市場風景が広がっていた。
 ただ、時間が早いせいか買い物客の姿はほとんど見られない。
 街のど真ん中の市場なので、昼間の時間帯の方が賑わうのだろう。
 場内の市場食堂で刺身定食などを食べたけれど、さすがにネタは新鮮だった。
 我が家が道外へ旅行に出た時は、市場を見つけると必ず中に入ってしまう。
 その地方のことを知るためには、市場の中を歩くのが一番手っ取り早いのである。
 この市場で見た生マグロの値段の安さにはたまげてしまった。これだけ流通手段が発達していても、産地に近い方がやっぱり値段は安いのだと感心してしまう。

車窓から見える岩木山 その後は普通列車で弘前まで行き、そこからバスに乗っていよいよ白神山地へと向かう。
 バスの窓から見える岩木山の姿が次第に大きくなってくる。
 北海道の羊蹄山が蝦夷富士ならばこちらは津軽富士。
 似たような山の風景に何となく親しみを感じる。
 今日の宿泊予定地であるアクアグリーンビレッジANMONを過ぎると、道は細い砂利道となる。
 回りの山々は今が紅葉の盛り。
 澄み渡った秋空の下にその紅葉が映えて、息を飲むような美しさだ。
 11時過ぎに津軽峠に到着。
 ここから高倉森自然観察歩道を歩いて、アクアグリーンビレッジANMONのキャンプ場に向かうことになる。
 最初にキャンプ場にテントを張ってしまってから、1本後のバスで津軽峠までやってくることも考えたけれど、バスの便数が少ないので、それでは歩き始めるのが午後1時半を過ぎてしまう。
 高倉森自然観察歩道の延長は5.6キロ、コースタイムは3時間半から4時間とされているので、それではキャンプ場到着時には暗くなってしまう恐れがある。
マザーツリーまでの遊歩道 津軽峠からANMONへ向かう場合は途中からは殆ど下り坂となるので、実際には3時間もかからない気がするけれど、初めて歩く山道でリスクを冒すわけにはいかない。
 重たいザックを背負ったまま歩くのは辛いけれど、この間の大雪縦走のことを考えれば、楽なものだ。
 この津軽峠でバスを降りるほとんどの人の目的はブナの巨木「マザーツリー」を見ることである。
 そこまでの散策道は、細いけれど一応舗装もされているので、車いすの団体の方も見にきていた。
 マザーツリーは樹齢400年と言われる太くて立派なブナの巨木だったけれど、デッキの上からしか近付くことができず、観光地化されたその姿には大して感動は覚えなかった。

 
マザーツリー   マザーツリー
観察デッキがある   マザーツリーを見上げる

 写真を数枚写しただけでさっさとその場を後にし、いよいよ本来の目的である高倉森自然観察歩道へと足を踏み入れる。
 直ぐに観光客の姿は見えなくなり、その先には白神山地の素のままの姿が待っている。
 世界遺産に指定されている白神山地はコアエリア(核心地域)とバッファゾーン(緩衝地帯)に分かれている。そうして、高倉森自然観察歩道はそのバッファゾーンの外側の境界線に沿うように続いている。
 つまり、これから歩く場所は、世界遺産に指定される理由となった「原生状態が保たれているブナ天然林」ではないということだ。
ブナ林の木漏れ日 でも、私にとってそんなことは関係なかった。
 黄色く色づいたブナの葉が頭上を覆い、そこから漏れ出る太陽の光がブナの森を照らし出す。
 その木漏れ日が、白っぽいブナの樹肌に陰影模様を描く。
 鳥達のさえずりの他には、私たちが落ち葉を踏みしめる音だけしか聞こえてこない。
 こんな場所を歩けるだけで幸せな気持ちになれるのだ。
 北海道にも賀老高原や歌才のブナ林があるけれど、やっぱり1本1本の樹木の太さが違っている。
 そしてやっぱり一番大きな違いは、そのスケールだ。
 展望の開ける場所から眺められる茶色く色づいた山々は全てブナに覆われているのだろう。
岩木山が見える ちょっと残念なのは、散策道の周りには背の高い笹が茂っていて、せっかくのブナ林や周辺の山々の展望がそれで遮られてしまうことだ。
 所々に刈り取られた笹が残っていたけれど、それは散策道に被さるような笹だけを刈ったものである。
 おそらく、世界遺産の指定地域からは外れていても、植物の伐採は必要最小限のものにとどめているだろう。
 何か所か、岩木山の展望の素晴らしい場所があったけれど、笹が邪魔で背伸びしながら撮影するような有様である。
 勿論、ベンチ等の休憩施設も無く、人工物は500mおきに立てられた距離表示の看板だけである。
 既に12時を過ぎているので、適当な場所があればそこで昼食にしたかったのに、幅の狭い散策道がずーっと続いているだけで、そんな場所は見つからない。


木漏れ日のブナ林
ブナの森の木漏れ日

巨木との出会い アップダウンを繰り返しながら尾根上に付けられた道を歩いていくと、突然目の前にブナの巨木が現れた。
 大地にしっかりと根を張ったその姿はマザーツリーよりも立派で、太さも上回っている。
 そんな巨木が名前も付けられずに、散策道の真ん中に立ち塞がっているのだ。
 私たちは勝手にそのブナの巨木をグランドファザーツリーと名付けた。
 地上に持ち上がった根張りが椅子代わりになりそうなので、そのブナの木にお願いしてここで休ませてもらうことにする。
 歩き始めてからおよそ1時間40分が経過していた。
 食事を終えて再び歩き始めると、間もなくして小さな展望広場風の場所に出てきた。
 崖際まで笹が刈られているので岩木山などの姿を一望できる。でも、そこから見渡せる山々は白神山地のコアエリアとは反対側になるのがちょっと残念だった。

 そこから先、道は突然急な下り坂となり、横に張られているロープを頼りに下りることになる。笹も茂っているので、そのロープが無ければどこに道があるかも分からない様な状態である。
 しかもその道は、細い痩せ尾根の上に付けられているので、一歩間違えればそのまま崖下に転落しそうである。笹が茂っているので転落の恐怖は和らげられるけれど、もしも笹が生えていなければ、恐怖で足がすくんでしまうことは間違いない。
美しいブナ林も目に入らなくなってきた 何とか痩せ尾根地帯は通り過ぎたけれど、急な下り坂はまだ延々と続いている。
 ザックの重みが自分の体重と合わさって、一歩一歩踏み出す足にかかってくる。
3か月前の大雪山縦走時の黒岳からの最後の下りを思い出した。重たいザックを背負っての下りは本当に辛い。
 回りには相変わらず美しいブナ林が広がっているのに、それを楽しむ余裕も無くなってきた。

 途中で突然、道が笹薮の中に消え失せていた。
 焦って周りを見渡すと、下の方の斜面に何となく道らしきものが見えていた。
 落ち葉が積もっているので、それが正式な道なのか、それとも沢筋に落ち葉が集まった場所なのか、判然としないのだ。
 不安に感じながらも底を下っていくと、どうやらそれで正解だったようだ。尾根伝いに続いていた道が、そこから尾根を外れて下っていたのである。
 途中で行く手を塞ぐようにロープが張られていた。邪魔なロープだなと思いながらそれをまたごうとした瞬間、その手前で別の方向に道が続いていることに気が付いた。
 そのロープは、間違った方に進まない様に張られたものだったのである。
 でも、簡単にまたげる高さに張られた細いロープで、何の表示もなく、ぼんやりしていたらそのまま通りすぎてしまいそうだ。
ミズナラの巨木 落ち葉に覆われた道は真っ直ぐに続いているように見えて、もしもそのロープが切れていたりしたら、そこで道が曲がっていることには絶対に気が付かないだろう。
 そこは沢状の地形に落ち葉が溜まって道の様に見えていたので、もしもそのまま下っていけば、やがて本当の沢の中に入り込んで、初めて道に迷ったことに気が付くことになりそうだ。
 特にこの辺りまで下ってくると、疲れのために注意力散漫になっているので、余計に道を間違えそうだ。
 この辺りで道を間違えやすいことはネットの情報で事前に知っていて、念のためにハンディGPSにはルートを登録しておいたけれど、幸いにもそのお世話になることなく、今回は無事に歩き通すことができた。

 かなり下ってきたところで連続して巨木が出迎えてくれた。
 ブナではなくミズナラの巨木である。
 疲れ切った体に、その巨木が少しだけ元気を注入してくれた気がする。
 次第に人里の気配がしてきたけれど、まだまだ下り坂は続く。
 このルートには高倉森自然観察歩道の名前が付いているけれど、絶対に高倉森登山道の名前の方が合っていると思う。
 荷物を背負っているせいもあるけれど、山を下るのにこれだけ疲れたのは黒岳以外に記憶はなかった。

 そうしてようやくアクアグリーンビレッジANMONに到着。歩き始めてから3時間30分。やっぱりコースタイム通りの時間がかかってしまった。
 管理棟で受け付けをしてテントサイトへと向かう。平日だけれど、紅葉の最盛期。世界遺産の白神山地周辺でキャンプできる場所はここしかない。
 当然、他にもキャンパーは沢山いるだろうと考えていたのだが、我が家以外には誰もいなかった。 バンガローも1棟が埋まっているだけだ。
キャンプ場で乾杯 その事実に驚いたけれど、我が家にとっては嬉しい事態である。
 道外に来てまでもキャンプ場を貸切で利用できるなんて思ってもいなかった。
 フリーサイトの料金はテント1張り500円。
 何時もは別々にテントを張るのだけれど、さすがに今回は荷物を軽くするためにテントは1張りだけ。
 暗門川の清流に隣接した快適な広場を500円で独り占めできるのだから堪らない。
 テントを張り終え、汗で濡れた服を着替えとところで、管理棟で買ってきた冷えたビールで乾杯。
 現地でビールが帰るかどうかが一番の心配事だったけれど、ビールどころか食料品も結構売られていた。
 併設されているレストランが日中だけの営業なので、山食を持参してきたけれど、それも必要なかったようだ。
 一息ついたところで施設内の温泉で汗を流す。そしてまたビールを買って、テントに戻って乾杯。もう極楽キャンプである。
 夕食は、荷物を少しでも減らすために持ってきた山食を食べる。
 テントから出ると素晴らしい星空が広がっていた。
 川のせせらぎを聞きながら午後8時頃に眠りにつく。

美しい朝 寝台列車での寝不足と歩き疲れで、朝の5時まで約9時間、ぐっすりと眠りこんだ。
 キャンプでこんなに長い時間寝るのは初めてである。
 朝のコーヒーと朝食は、全て炊事場の建物の中で済ませる。
 何せ、他にキャンパーはいないので施設を自由に使うことができるのだ。
 やがて、キャンプ場の周りを取り囲んだ山の頂に朝日が当たり始め、紅葉が照り映える。
 それが次第に下界へと降りてきて、我が家のテントの隣に立つカツラの木が真っ黄色に染め上げられた。
 暗門川の川面からは川霧が立ち昇り、夜露を溜めた草の穂がキラキラと光り輝く。
 こんなに美しい朝のキャンプ場の風景はあまり記憶にはない。


我が家のサイト
文句の付けようのない素晴らしいサイトだ

暗門川   オートサイトと炊事場
暗門川を朝日が照らす   炊事場の建物とオートサイト


 朝8時、テントを出て暗門の滝を見に行く。
 ANMONの施設を出たすぐ先から、世界遺産のバッファゾーンの中へ足を踏み入れることになる。
 川沿いの歩道は工事中のため、途中までは山の中のブナ林散策道を歩かなければならない。
 入口の湧水で喉を潤してから、散策道へと入ってく。
ブナ林散策道 森の中はブナ以外の樹木も多く、その分、紅葉も色彩豊かで、昨日歩いた高倉森よりも美しく感じる。
 笹が生い茂っていないのも良い。
 階段も整備されていて歩きやすいが、路面は濡れて滑るので、あまり周りの景色ばかり眺めてはいられない。
 ANMONでは長靴の貸し出しもしているけれど、この道ならば登山靴よりも長靴の方が歩きやすそうだ。
 途中ですれ違ったおじさん二人連れが「この先は工事中で滝までは行けないぞ!」と言ってきた。
 「そんなわけないな」と思っていたら、「あっ!、あんたたちの靴なら大丈夫かな、工事現場の人に聞けば道を教えてもらえるだろう」とのこと。
 おじさんたちの足元を見ると、何とサンダル履きだった。親切のつもりで言ってくれたのだろうけれど、そのいい加減さに呆れてしまう。
 散策道を一気に下り、暗門川へと降りてきた。確かにそこでは歩道の工事が行われていたけれど、工事現場の横を歩く道はちゃんと用意されていて、工事現場を抜けるとその先はブナ林散策道よりも、歩きやすい川沿いの道が続いていた。
 あのおじさん達がどう勘違いしたのかは知らないが、あの調子だと途中ですれ違う人全部に「滝までは行けない」と言いふらしているのではと心配してしまう。

美しい渓谷 暗門川が削り出した深い峡谷は、澄みきった水が淵を作り、切り立った岩壁は草紅葉に彩られ、そしてそこに木々の紅葉が覆いかぶさり、絵画のような美しさだった。
 切り立った崖の下に沿うように作られた遊歩道を歩いて峡谷の奥へと進んでゆく。
 渓相は次第に険しさを増し、遊歩道も足場パイプで組み立てたものに変わって、大岩の間を縫うように進んでいく。
 美しい峡谷の中で、その足場パイプの遊歩道は非常に目障りである。
でも、対岸を見ると、以前はそこを歩いていたと思われる幅の狭い道が崖にへばり付く様に作られていた。
ちょっとでも足を踏み外せば、そのまま急な流れの中に真っ逆さまに落ちてしまうだろう。
目障りだとか、あまり贅沢なことは言ってられない。


暗門川の渓谷  
足場パイプの道に変わってくる   対岸には昔の道が見える

 やがて第3の滝が見えてきた。
 真っ直ぐに流れ落ちる美しい滝である。
暗門の滝 水しぶきのためにカメラを持ったままではあまり傍までは近寄れない。
 その滝の直ぐ脇を登って、道は更に奥へと続いている。
 錦に彩られた美しい渓谷美にため息をつきながら登っていくと、第2の滝が現れる。
 姿は似ているけれど、第一の滝よりも更に落差があり、迫力が増している
 更にその横を登っていくと、道は岩壁にうがたれたトンネルへと入っていく。
 腰をかがめて真っ暗な洞窟を通り抜けると、そこはちょうど第2の滝の流れ落ちる場所だった。
 どんどんと奥へと進むと、とうとう第1の滝が姿を現した。
 これも前の二つと同じく直瀑タイプの滝で、更に落差が大きくなっている。
 同じような形の滝が三つ連なり、進むにしたがって落差が大きくなる。自然の演出にしては面白すぎる構成で、まさに三つでワンセットの暗門滝と言えるだろう。 


暗門滝(第3の滝)   暗門滝(第2の滝)   暗門滝(第1の滝)
第3の滝   第2の滝   第1の滝

ANMONの駐車場に戻ってきた 帰り道では団体客と次々とすれ違う。
 殆どはツアーガイドらしき人が説明しながら集団を率いているけれど、スーツ姿に革靴を履いた添乗員風の若い男性が旗を持って団体さんを連れ歩いているのとすれ違ったのには驚かされた。
 アクアグリーンビレッジまで戻ってくると、週末前の金曜日だけあって多くの人たちで賑わっていた。
 週末になればもっと多くの観光客が詰めかけるのだろう。
 テントを撤収し炊事場の建物の中でザックの荷物を詰め直そうと思ったら、そこはカメムシの館と化していた。
 昨日の受付時に、「カメムシが異常発生しているので迷惑をかけるかもしれない」と言われていたけれど、気になるほどでもなかった。
 それが今日は気温が上がって、一気に活動を始めたらしい。
 トイレに入っても、天井からカメムシが降ってくるのでゆっくりとしてられない。
 それでも、朱鞠内に住む人のブログでもっと凄い状況を知っているので、それ程驚くこともなかった。
ベンチに座って昼食 管理棟の前の出店でおにぎりとキノコ汁を買って昼食にする。
 ベンチに座ってそれを食べていると、周りを虫がブンブンと飛び回っていた。良く見るとそれは全てカメムシである。
 やがてそのカメムシ達は一斉にどこかの建物に侵入を試みるのだろう。
 私たちのザックにだけは入ってこない様にお願いしたいものだ。
 12時25分発のバスに乗って弘前市内へと戻る。
 この時間帯の利用者は少ないようで、乗客は私達だけ。
 バスの中からゆったりと、最後の白神山地の風景を楽しむ。
 天気にも恵まれ、最高の白神山地トレッキングとキャンプを楽しむことができた。

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