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時雨の中で洞爺湖キャンプ

曙公園(10月1日〜2日)

 カヌークラブの納会が洞爺湖の曙公園で予定されていた。
 しかし、その週末の天気予報は土日ともに雨マーク。しかも日曜日には気温も下がって峠道では雪になるかもしれないとの話である。
 先々週の9月例会に引き続いての雨の中でのキャンプ&カヌー。
 これがクラブの例会でなかったならば、家の中に引き籠ってダラダラと週末を過ごしているのだから、そんな時にアウトドアで遊ぶことができると考えれば、もしかしたらこれは良いことなのかもしれない。
そば屋いし豆で 土曜日は朝から時雨模様の天気で、車に荷物を積み込むのもままならない。
 雨のやみ間を狙って荷物を積むのだけれど、直ぐにまた叩きつけるような強い雨が降ってくる。
 雨雲レーダーを見ても、日本海から次々と雨雲が流れ込む冬の雪雲と同じ動きになっている。
 ようやく荷物を積み終えて家を出た時は既に午前11時を過ぎていた。
 昼過ぎに真狩村までやってきたので、羊蹄山山麓の「そば屋いし豆」で昼食にする。
 初めて入る店だったけれど、なかなか美味しい蕎麦を食べることができた。
JINの看板 その後はかみさんの希望により、真狩村の「ブーランジェリー JIN」でパンを購入し、洞爺湖へと向かう。
 これは、昼食で入った店こそ少し違うものの一昨年の洞爺湖納会の時とほとんど同じルートである。
 道を間違えるのもその時と同じような場所で、一度走った道でも2年も過ぎると道路地図を何度も見ながらでなければ走れない。
 札幌を出てからずーっと降り続いていた雨も、洞爺湖に近づいたところでようやく止んできて、青空ものぞいてきた。
 洞爺湖の小公園や曙公園にはこんな天気にもかかわらず、数台のトレーラーやキャンピングカーの他にテントも数張り張られていた。
 最近は大きなスクリーンタープが普及しているので、雨の中でも気にしないでキャンプを楽しむ人達が増えてきている。
 私たちが利用するところは曙公園に隣接する団体利用専用の場所である。
青空が広がる そこにはS吉さんのビッグタープが張られ、既にK原さんやG藤さんも到着していた。
 他に、G藤さんが連れてきた若くて美しい女性が一人。
 4面をブルーシートで囲った路上生活者の住処の様なビッグタープの中が、彼女がいるだけでいつもとは全く違った華やかさが満ちていた。
 間もなくC葉さんも到着。
 石油ストーブの上に置かれたダッチオーブンの中には美味しそうな焼き芋が並んでいた。S吉さんが用意してくれたものである。
 我が家は何時も、芋をアルミホイルにくるんで焚き火の中に埋め込んで焼いているけれど、ダッチオーブンの方が手軽に美味しい焼き芋を作れるようだ。
 G藤さんが愛犬、ボーダーコリーのアリスを連れてきていた。
 冬には手稲山の山頂まで登って人間が滑るよりも早く駆け下りてくると言うアリスだが、内気な性格で飼い主以外には心を許してくれない。
 我が家のカヌーに乗って沖に出て行く姿を羨ましく眺めるだけである。

 
タープの下で寛ぐ   カヌーで水上散歩
ストーブを囲んで談笑   フウマを乗せていた頃を思い出す

 今回は、明日のカヌー運動会で対戦するカヌークラブガンネルズと帯広畜大チームが合流するのでビッグタープをもう一張り連結する。
 近くのいこいの湯で一風呂浴びて戻ってくると、畜大チームが到着してテントを設営しているところだった。
燻製のできあがり それまでがらんとしていた2連結のタープの中が、元気な学生たちが入ってくると急に賑やかになる。
 G藤さんがここに着いた時からスモークしていたらしい、卵や肉の燻製が出てきた。
 スモーカーは段ボールで自作したもので、使い終わればそのまま焚き火で燃やしてしまうとのこと。 そんなスモーカーで作った燻製でも味は最高である。
 私も一時期、段ボールのスモーカーで燻製作りにチャレンジしたことがあったけれど、その後はなかなかやる機会がなく、アウトドアショップで本格的なスモーカーを見るたびに、購入意欲をそそられていた。
 それがこの燻製を食べたおかげで、また燻製作りへの意欲が掻き立てられそうである。

オークション開始 賑やかな宴会が進んだところで恒例のオークションが始まる。
 毎年このオークションでは必要のないものまで競り落として、かみさんから白い目で見られるので、今回はおとなしくしていることにした。
 ところが今回はそのかみさんの方が積極的で、何とF本さんの出品したクロスカントリー用のスキー板を競り落としたのである。
 以前からクロスカントリーに興味は持っていたようだけれど、板だけあっても靴が無ければどうしようもない。
 それに、一人で始めるわけにもいかないので、そのうちに私の分も買うことになるかもしれない。
 安く競り落としても、結局は随分と高いものになりそうな気がするのである。

 焚き火の煙が充満するタープの中から逃げ出すと、上空には美しい星空が広がっていた。
 雨に洗われて空気も澄んでいるのだろう。
 I山さんを呼ぶと、早速、星の解説をしてくれる。
 「カシオペア座から○×を辿っていくと見えている明るい星が△□です。そこから同じ長さだけ左に行くと暗い星が見えているでしょう。そのちょっと下にぼんやりと見えるのがアンドロメダ大星雲です。」
 皆、「へ〜」とか「は〜」とか言いながら目で追っているようだけれど、私にはどれがどれだかさっぱりわからなかった。
 それでも、子供のころに学研の付録に付いてきた望遠鏡でアンドロメダ大星雲を初めて見た時の感動をおぼろげに思い出した。

 昼の2時ころから延々と飲み続けていると、さすがに飲み疲れてくる。
 夜の11時には脱落して、歯も磨かずに自分のテントへと直行。急に冷え込んできたようで、震えながらシュラフの中へと潜り込んだ。
 私は気が付かなかったけれど、かみさんの話ではこの時間に気温は0度まで下がり、テントに下りた夜露も凍り付いていたとのことである。


洞爺湖の星空
昴もはっきりと見える程に澄んだ星空が広がった

 翌朝目覚めると、寝る時よりも気温が上がっているような気がした。
 天気予報ではこの日は雨になっていたので、雲が広がって放射冷却も一段落したのだろう。
 寝不足にならないように、もう少しシュラフの中で微睡んでいることにする。
 ところがテントの中が次第に明るくなってきた。
 「あれ?曇りじゃないのかな?」と思いながらテントの外の様子をうかがうと、そこから見える洞爺湖の東の空は明るく染まりつつあった。
 そうなると、寝ている場合ではないので、慌てて服を着込んでテントから起き出す。
 空に浮かんだ雲が赤く染まり始めていた。
 タープの中で人の気配がするので覗いてみたら、K原さんが既に焚き火に火をつけてコーヒーも入れ終わったところだった。
 クラブのキャンプで一番最初に起きるのは私達夫婦かS吉さんと相場は決まっているけれど、K原さんはそれをはるかに上回る早起きなのである。
 テントから起き出した時は空に浮かぶ雲もまばらだったのに、気が付くといつの間にか空のほとんどは雲に覆われ、東の空の低い場所だけが雲が無い状態になっていた。
 そこに姿を現した朝日は一瞬だけ湖畔のサイトに朝の光を浴びせ掛け、その後直ぐに雲の中へと消えてしまった。
 他の人達が起きてくるころには、雲は空全面に広がっていた。
 早起きは三文の徳なのである。


赤く染まる雲   朝日に照らされる
日の出前に雲が赤く染まる   一瞬だけ朝日に照らされたキャンプ場

 雲は次第にその濃さを増し、遠くからは雷の音まで聞こえてくる。
 そうしてとうとう、雨粒までポツポツと落ち始めた。
 皆が食事をしている間はその程度で済んでいたけれど、雷の音が次第に近づくにつれて時折突風が吹いてくるようになる。
タープの下は大騒ぎ突然タープの一部が大きく煽られてポールから外れてしまった。
 慌てて張り綱で固定し直したが、それを合図にするかのように更に風が強まってきた。
 同時に叩きつけるような雨が降り始める。
 回りを全てブルーシートで囲っているために風をまともに受けて、スチールのポールが大きくしなっている。
 それぞれのポールに人が付いて体で支える。
 このビッグタープで何度も嵐を経験しているS吉さんによると、タープの中に風が吹き込みさえしなければ耐えられるとのこと。
 でも、現状はそうでもなさそうだ。
 センターポールが外れてタープが潰れかけ、慌ててその下に置いてあった焚き火台をタープの外へと出す。雨は更に激しく、バケツをひっくり返したような降り方となってきた。
 そんな状態がどれくらい続いただろうか。始まった時と同じく、嵐は突然治まった。
天気が回復 空には明るさが戻り、青空さえも広がってきた。
 大きな被害は無かったけれど、ビッグタープの真ん中に穴が開いていた。
 センターポールが外れた時に突き破ったのだろうか。
 私のテントも、フライシートの一か所がポールから外れていたものの無事だった。
 見ていた人の話では、風が一番強まった時には、どのテントも湖の中に飛ばされるんじゃないかと思えるくらいに大きくしなっていたとのことである。
 朝起きた時に張り綱が緩んでいたのには気が付いたのだけれど、ここまで風が強まるとは思いもせずそのままにしていたので、危ないところだった。
 と、一安心していたら、実はフライシートの一部が裂けていたのである。
 ショックは大きかったけれど、まだ補修可能な程度の裂けだったのが不幸中の幸いだった。


穴の空いたタープ   裂けたフライ
センターポール部分に穴の空いたビッグタープ   これくらいなら補修できそうなのが救い

時雨模様の天気 その後も晴れたと思ったら突然雨が降り出したりと、時雨独特の天気の変化が続く。
 それでもカヌー運動会が始まる頃には雨も上がって、まずまずの運動会日和となる。
 去年の支笏湖での運動会は強風が吹き、海の様な波が立つ中でやっていたので、それと比べれば全然ましである。
 最初の競技はスローロープ投げ。
 沖に浮かべた子供用プールに向けてロープを投げ、制限時間内に何本投げても良く、最後にそのプールに入った本数で勝負を決めるというルール。
 これがなかなか難しくて、1本も入らない人が結構いたりする。
 一人ずつの対抗戦で、私の相手の学生さんは1本が入っただけなので、私が2本入れれば勝ちとなる。
 「最初の2本で決めてやる」と宣言し、その言葉通りに2本とも成功させてあっさりと勝利。最近はスローロープ投げを真面目に練習しているので、その成果を出すことができ大満足だった。
 このスローロープ投げと次のしゃもじリレーは我がウィルダネスチームの勝利。


スローロープ投げ   しゃもじリレー
湖面に浮かべたプールに向かってスローロープを投げる   両手に持ったしゃもじでカヌーを漕ぐしゃもじリレー

チームレスキュー競争 チームレスキュー競争はガンネルズ・畜大チームの勝利となり4種目目はカヌーポロ。
 ウィルダネスチームのカヤックメンバーは、このカヌーポロを得意としているのだけれど、今回ばかりは学生達の圧倒的な若さに翻弄されっ放し。
 クラブのメンバーももう若くはないのだと実感させられる結果となった。
 この試合中にF本会長が相手チームのパドルが額にぶつかって流血。
 遊びの域を通り越したガチンコ勝負となってきて、このまま運動会最後の種目カヌー騎馬戦をやるとまた怪我人を出しそうなので、安全のためにこの種目は中止することにした。
 ここまでの成績は2勝2敗。勝負は次のカヌー綱引きで決する。


カヌーポロ  
遠くから眺めるとのどかな風景だけれど・・・   ボールめがけてカヌーが集中するともう大変

カヌー綱引き カヌーをチェンジしながら2戦して1勝1敗。次の3戦目で、この勝負だけでなく運動会の勝敗が決着することとなる。
 それまでのカメラマン役から私もメンバーに入り、ホイッスルを合図に一斉にパドルを漕ぐ。
 その瞬間に「あっ、折れちゃった」との声が私の後ろから聞こえた。
 何のことか分からずにそのまま漕ぎ続けたが、ずるずると後ろに下がってあっさりと負けてしまう。
 最初の一漕ぎでS吉さんの使っていたパドルが折れてしまったのである。
 それはS吉さんが釧路川沿いの某店で作ってもらった美しい形のパドルで、元々は釧路川をのんびりと下るような時に使うパドルとして作られたもので、こんな風に大男が何人も乗り込んだカヌーで全力で綱引きすることなど全く想定されていない。
 S吉さんもできればここでは使いたくはなかったのだけれど、シングルパドルの数が足りなかったために止むを得ず出してきたのである。

 そんなこともあって今年のカヌー運動会はガンネルズ・畜大チームの勝利で終わった。
 それぞれの種目では真剣に勝ち負けを競っていた参加者だけれど、終わってしまえば勝敗などは関係なく、水の上で楽しく遊んだ充実感だけが残る。
 かみさんとS吉さんの奥さんが作ってくれたうどんを皆で食べて解散となる。
 皆が次々と洞爺湖を後にする中で、学生チームは再び湖上に出てカヤックの練習を始めた。
 その姿を見て、彼らの若さにはやっぱり敵わないと改めて思い知らされたのである。


カヌー綱引き   最後に晴れた
S吉さんのパドルが折れたのが敗因   運動会が終わる頃には青空が広がった


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