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楽しみは色々黒岳キャンプ

黒岳石室キャンプ指定地(7月29日〜30日)

 白雲小屋のテン場を出てから5時間、午前11時40分に黒岳石室に到着。
 簡単に辿り着けると思っていたが、体力的には結構きつかった。
テント設営完了 1リットル入りのハイドレーションシステムは殆ど空になり、アミノ酸飲料を入れてあった750mlのボトルも残り僅かになっていた。
 ここのテン場は白雲小屋よりもやや狭く、石もゴロゴロしている。先客テントは2張りだけだったが、他にはあまり良い場所が無い。
 撤収中の方が一人いて、そこが良さそうなので待たしてもらうことにした。
 昨日の雨の話しをすると、ここでも降った様で、そのテントの辺りを雨水が流れていたとのこと。
 確かにそこが一番低くなっているが、水が溜まることは無さそうだ。
 テントを張り終え、まずは汗で濡れた服を着替える。
 テン場からは凌雲岳と桂月岳が目の前に見え、凌雲岳に半分隠れた北鎮岳、御鉢平を囲む間宮岳や北海岳も見渡せて、眺めは白雲小屋のテン場よりも勝っている感じだ。
 ただ凌雲岳と桂月岳の間から次々と霧が流れてきて、時々その風景を掻き消してしまう。
 この時に限っては霧が出てくれた方がありがたかった。太陽が照り付けると、暑くてテントの中に居られないのである。
温い金麦を飲む 問題が一つあった。
 家から持ってきた2本の金麦は昨日の白雲小屋のテン場で飲んでしまったけれど、層雲峡でバスに乗る前にザックのポケットが一つ空いていたので、コンビニでビールを1本買ってそこに忍ばせてきたのだ。
 ところがそのビールを冷やす場所がテン場の近くに無いのである。雪渓は目の前に見えているもののそこへ降りる道はない。
 黒岳石室の水は、近くの沢からポンプアップしてタンクに溜めたものを利用している。
 その水も結構冷たかったので、鍋に水を入れそこに缶ビールを漬けて冷やすことにした。
 でも、途中で待っていられなくなり、1本のビールをかみさんと二人で分けて飲んでしまう。
 山歩きでたっぷりと汗を流した後でも、冷えてないビールはやっぱり美味しくはなかった。

 
隣の建物が黒岳石室   雲に隠される凌雲岳

 昼食にラーメンを食べてから桂月岳に登ることにする。
 石室から15分ほどで登れる山だけれど、今日は霧の流れが速く、その山頂も直ぐに隠れてしまう。
熊が出てくるらしい凌雲岳 幸い、私達が頂上に立った時は霧も晴れていて雲の平から御鉢平を囲む山々が見渡せた。
 しかし、そこから見えるはずの北大雪の山は完全に雲の中に隠れたままである。
 桂月岳の山頂は多分、看板の柱だけが残っている辺りなのだろうが、そこより高い岩峰がいくつかあるのでそちらに登ってみる。
 すると、凌雲岳が迫力のある姿で目の前に迫ってきた。
 石室管理人さんの話では、その山腹の丸い雪渓辺りにヒグマがちょくちょく現れるらしい。
 カメラの望遠レンズを通して探してみたが、その姿は確認できず。
 そんな風景を楽しんでいるうちに凌雲岳側と黒岳側から湧き上がってきた霧が、まるで両開きカーテンを閉じるように目の前の風景を隠してしまった。
 なかなか晴れそうにもないので下山を開始する。
 その途中にナキウサギらしい声を聞き、しばらくの間、息をひそめて声の聞こえた方向の様子を窺う。
 シマリスはチョロチョロしているものの、結局ナキウサギの姿は確認できず。もしかしたら、シマリスの鳴き声をナキウサギと勘違いしたのかもしれない。


岩峰の上に立つ   霧のカーテンが閉じる

 隣にテントを張っていた4人連れのファミリーは居なくなり、その後には中学生くらいの息子と父親の二人連れキャンパーがやって来た。
冷えたビールが嬉しい! もう一組、似たような父子キャンパーも居て、ロープ−ウェイで比較的簡単にやって来られるテン場だけあって、白雲小屋のテン場とは雰囲気が違っている。
 桂月岳から下りてきたら、かみさんがビールを飲みたいと言い始めた。
黒岳石室ではビールも売られていて、値段は1本500円である。
 最初にその値を見た時に私は「これは買えないな」と思ったのだけれど、かみさんはその値も気にならないようだ。
 結局、氷でキンキンに冷やされたビール2本を千円で購入し、二人で乾杯することとなった。
 その美味しさと言ったら、「1本千円でも購入する価値がある」と思ったものである。

バイオトイレの建物 黒岳石室にはバイオトイレも備えられているのがありがたい。
 用を足した後は自分で自転車のペダルをこいで便槽内のおがくずを掻き混ぜる仕組みになっている。
 前に入った人がそのペダル漕ぎをさぼったりすると、すぐ下に物がそのまま残っていたりしてがっかりさせられるが、比較的清潔に維持されているようだ。
 トイレ利用者は1回200円の協力金を支払う必要があるが、石室やテン場の宿泊者は何度でも利用できるようになっている。
 キャンプの時はどんな不自由さも我慢できるが、トイレだけは清潔であることに越したことはないのだ。

 隣の親子が夕方頃になってから身支度を整え、桂月岳に登って行った。
夕暮れの風景 「相変わらず雲も多いし、これから登っても楽しいことは無いだろうな〜」と思って見送ったら、間もなくして空を覆っていた雲が薄くなり始めたのである。
 そして夕暮れを迎える。
 夕日は凌雲岳の陰に沈むため派手な夕焼けは望めないものの、大雪の山々が暮色に染まり、しっとりとした夕景を楽しめた。
 桂月岳を降りてきたお父さんに話を聞くと、頂上から見る夕日の風景は素晴らしかったようだ。
 私達も、500mlのペットボトルに入れて持ってきたワインを飲んでいるくらいならば、山に登っていた方が良かったかもしれない。
 この日も山時間に合わせて、6時過ぎに早々と就寝。

 かみさんに体を揺すられて目を覚ます。
 時間は11時。強烈に眠たかったけれど、寝ているわけにはいかなかった。
 今回のキャンプの楽しみの一つに、山の上で見る星空があったのである。
 白雲小屋のテン場でも星空は見られたけれど、薄い雲がかかっていたので他で見る星空と大差は無かった。
星空の下のテント それが今日は、かみさんも「凄いわよ!」と言っているのだ。
 慌てて服を着込んでテントの外に飛び出す。
 空を見上げて最初に目に飛び込んできたのは天の川の姿だった。
 これだけはっきりとした天の川の姿を見たのは生まれて初めてかもしれない。
 まるで天体写真でも見るかのように天の川の細かな濃淡までがはっきりと分かるのである。
 いつも真っ先に見つける白鳥座も、星が多すぎるので、その姿を確認するのに少し手間取るほどだ。
 圧倒されながら満天の星空を眺めていると、時々流れ星が横切っていく。
 何故かかみさんの方が流れ星を沢山見るのは何時ものことだった。


天の川がくっきり

 テントに入ると急に風が強まってきた。それと同時に気温も下がってきたのか、シュラフにすっぽりとくるまっていても寒くてたまらない。服を着込むのも面倒で、そのまま震えながら朝を迎えた。
 次の楽しみは、桂月岳の山頂から朝日を見ることである。
 風はまだ、テントを揺らすほどに吹いていた。入り口を開けて外の様子を窺うと、桂月岳を超えて真っ黒な雲が流れてきている。
 「これは朝日どころか、雨が降り出すんじゃないだろうか」
 私はそんな心配をしていたのに、かみさんは隣のテントの中で既に出発準備を整えているようだ。
雲間から昇る朝日 昨日の夕方の親子の例もあるので、私も覚悟を決めて服を着替える。
 テントの外に出てみたら、その黒い雲も一部分にかかっているだけで、思っていたほど天気は悪くない。
 桂月岳を見ると、すでに登っている人の姿も見える。
 昨日も一度登っているので足取りも軽く、先を登っていた人達を直ぐに追い越してしまった。
 頂上までやってくると、北大雪の山並みは相変わらず雲の中に隠れたままだった。
 その雲の一部が明るくなっているところを見ると、朝日はその雲の中から昇ってくるようだ。
 下界を埋めるような雲海から昇る朝日ならば見ごたえがありそうだが、雲の陰から出てくる朝日はあまり見栄えがしない。
 それよりも、その朝日に照らしだされた山々の姿に惹きつけられる。
 昨日は雲に隠れていた白雲岳もはっきりと見える。
白雲岳が見える 奇妙な鳴き声が聞こえてきたのでそちらに目をやると、見たことのない鳥が岩の上にとまっていた。
 「もしかしてライチョウ?」と思ったけれど、写真で良く見る姿とは違うような気がする。
 後で調べてみたらホシガラスと言って、ハイマツの実などを餌にして高山帯に生息する鳥らしい。
 付近のハイマツの実で上半分が無くなっているものが所々にあり、「これはきっとリスが食べた跡かもね」なんて話していたのが、その犯人はホシガラスだったみたいだ。
 朝日を見るために登ってきた人たちは皆先に下りてしまったけれど、天気も良くて私たちはそこからの展望をもうしばらく楽しんでいた。
 それでも、大雪山縦走最終日の今日は北鎮岳にも登る予定でいたので、まだ名残惜しいもののテン場まで戻ることにした。


ホシガラス   先に下りていく人達

朝日を浴びる山の風景

そろそろテン場を出発 私たちが朝食を食べている間に、隣の親子はテントを片付け出発していった。
 お父さんのザックは多分30キロは超えているだろう。
 富良野岳を目指すような話をしていたそうだけれど、強者登山者なのかもしれない。
 私たちは身軽な格好で北鎮岳を目指し、6時30分にテン場を出た。
 天気は良いし、重い荷物を背負わずに歩くのがとっても気持ち良く、結局は御鉢平を一周して、5時間後にテン場へと戻ってくる。
 昨日と同じで、朝は青空が広がっていても、徐々に周りから雲が湧き上がってきて、テン場に到着する頃には黒岳はすっかり雲に隠れてしまっていた。
 今日は土曜日だけあって、テン場にもテントが増えてくる。
 昼食を食べて、私達がテントを片付けていると、ソロの男性がやってきたのでそのまま場所を譲ることにした。
 昨日の私たちと同じで、快適にテントを張れる場所は限られているのである。
 その男性は「5日分の食料を持ってきたのでその間は山の上にいられる」との話をしていた。
 無理に縦走計画など立てないで、自由気ままに山上の生活を楽しむ。男性の話を聞いて、そんな登山スタイルもありかなと思った。

層雲峡温泉街に下りてきた 雲の中に入って何も見えない黒岳を越え、ロープーウェイで三日ぶりに層雲峡温泉街に下りてきた。
 ちょうど火祭りの当日らしく、温泉街のメインストリートは賑わいを見せ、そこを汗臭いままの山装備で歩くのは何となく違和感を覚える。
 その汗を黒岳の湯で洗い流し、そこに併設されたイタリアンレストランで食べた料理は、接客の心得を知らない初老男性ウェイターの感じ悪さは差し引いても、無茶苦茶に美味しく感じたのである。

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