隣にテントを張っていた4人連れのファミリーは居なくなり、その後には中学生くらいの息子と父親の二人連れキャンパーがやって来た。
もう一組、似たような父子キャンパーも居て、ロープ−ウェイで比較的簡単にやって来られるテン場だけあって、白雲小屋のテン場とは雰囲気が違っている。
桂月岳から下りてきたら、かみさんがビールを飲みたいと言い始めた。
黒岳石室ではビールも売られていて、値段は1本500円である。
最初にその値を見た時に私は「これは買えないな」と思ったのだけれど、かみさんはその値も気にならないようだ。
結局、氷でキンキンに冷やされたビール2本を千円で購入し、二人で乾杯することとなった。
その美味しさと言ったら、「1本千円でも購入する価値がある」と思ったものである。
黒岳石室にはバイオトイレも備えられているのがありがたい。
用を足した後は自分で自転車のペダルをこいで便槽内のおがくずを掻き混ぜる仕組みになっている。
前に入った人がそのペダル漕ぎをさぼったりすると、すぐ下に物がそのまま残っていたりしてがっかりさせられるが、比較的清潔に維持されているようだ。
トイレ利用者は1回200円の協力金を支払う必要があるが、石室やテン場の宿泊者は何度でも利用できるようになっている。
キャンプの時はどんな不自由さも我慢できるが、トイレだけは清潔であることに越したことはないのだ。
隣の親子が夕方頃になってから身支度を整え、桂月岳に登って行った。
「相変わらず雲も多いし、これから登っても楽しいことは無いだろうな〜」と思って見送ったら、間もなくして空を覆っていた雲が薄くなり始めたのである。
そして夕暮れを迎える。
夕日は凌雲岳の陰に沈むため派手な夕焼けは望めないものの、大雪の山々が暮色に染まり、しっとりとした夕景を楽しめた。
桂月岳を降りてきたお父さんに話を聞くと、頂上から見る夕日の風景は素晴らしかったようだ。
私達も、500mlのペットボトルに入れて持ってきたワインを飲んでいるくらいならば、山に登っていた方が良かったかもしれない。
この日も山時間に合わせて、6時過ぎに早々と就寝。
かみさんに体を揺すられて目を覚ます。
時間は11時。強烈に眠たかったけれど、寝ているわけにはいかなかった。
今回のキャンプの楽しみの一つに、山の上で見る星空があったのである。
白雲小屋のテン場でも星空は見られたけれど、薄い雲がかかっていたので他で見る星空と大差は無かった。
それが今日は、かみさんも「凄いわよ!」と言っているのだ。
慌てて服を着込んでテントの外に飛び出す。
空を見上げて最初に目に飛び込んできたのは天の川の姿だった。
これだけはっきりとした天の川の姿を見たのは生まれて初めてかもしれない。
まるで天体写真でも見るかのように天の川の細かな濃淡までがはっきりと分かるのである。
いつも真っ先に見つける白鳥座も、星が多すぎるので、その姿を確認するのに少し手間取るほどだ。
圧倒されながら満天の星空を眺めていると、時々流れ星が横切っていく。
何故かかみさんの方が流れ星を沢山見るのは何時ものことだった。
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