滝の音は明け方まで聞こえていたけれど、起き出す頃には雨もあがっていた。
川の様子を見に行くと、清流歴舟川はその面影もなく、完全な濁流に変わってしまっていた。
それでも、大増水とまではなっていないので、何とか川下りができそうな状況である。
皆で朝食を食べていると、Kenjiさん夫婦が早々と到着。
話しを聞くと日高方面の国道は大雨のために通行止めになっているとのこと。
日高山脈を挟んだ反対側では、かなりの雨が降っていたようである。
こちらの歴舟川は朝方よりも若干濁りが取れたようで、これ以上の増水の心配は無さそうなので、今日は上流部の坂下からキャンプ場までを下ることに決定する。
快適な一夜を過ごさせてくれた場所を綺麗に後片付けして、キャンプ場へと移動することにした。
カムイコタンのキャンプ場は中段サイトにファミリーが数組、河原サイトにカヌーのグループが一組いるだけでがら空きだった。
この天気ではキャンプに来る方が不思議だけれど、それにしても7月の3連休にしては寂しい状態である。
私達は河原サイトの方にテントを設営することにする。
空模様もまだ不安定で、雨が降ればバーベキューハウスに避難できるので中段サイトも良いかもしれないとの意見もあったが、ここは私の好みで河原サイトにさせてもらった。
トイレや炊事場が近くて便利が良くても、周りの見通しが利かず、近くにはファミリーのテントが張られ、そんな場所でキャンプをするのならば、ここに泊まる意味が何も無いのである。
S吉さんがトレーラーのセッティングをしている間に、他のメンバーでビッグタープを設営する。
これまでは全てS吉さんに頼り切っていたタープの設営も、ようやく自分たちでできるようになってきたのだ。
先月の例会キャンプで設営した時よりは上手に張れたかもしれない。
川下りの準備を整えて歴舟川の上流へと向かった。
増水した歴舟川でのスリリングな川下りを終えて、買い物や風呂に入るため全員で大樹の町へと向かう。
銭湯の開く時間が4時なのでその前で待っていると地元の老人の方から「日方川を下ったのかい」と声をかけられた。
最初は何のことか分からなかったけれど、歴舟川は地元では日方川とも呼ばれていることを初めて知った。
日方とは南西の風の意味で、日方風が吹けば川に大水が出ると言われているらしい。
多分今回も日方風が吹いていたのだろう。
風呂を出た後は皆で町内の食堂「味の龍月」に入る。
kenjiさんは、ここの大盛りあんかけ焼きそばを食べることを最大の目的にしていたようだ。
安さとボリュームで地元でも人気店になっているようで、次々とお客さんが入ってくる。
私達夫婦は二人ともチャーハンを頼んだけれど、普通盛りでも結構な量である。かみさんは当然食べきれなくて、その分まで食べた私もゲップが出そうなくらいに腹一杯になる。
キャンプ場に戻ってからもしばらくは何も食べる気にはならず、ここは我が家向きの店ではなさそうだ。
I山さんに電話が入った。
テントで寝られないK岡さんと、お天気の神様と言われてその気になってしまっているO橋さんから、明日日帰りで川を下りたいとの内容である。
天気が悪そうなので、お天気の神様に「どうか例会に参加してください」とお願いしたのに、3連休で家族サービスがどうのとか、家内安全に集中するため天気のことまで手が回らないとか、とても神様とは思えないような言葉で逃げてしまったO橋さん。
それが連休最終日になって、天気予報で雨の降らないことを確認してからやって来るのだから、神様の正体見たり!神様は結局、天気予報を頼りに行動していただけなのである。
私は今日で川下りを十二分に満喫できたので、最終日は漕がずに帰るつもりでいた。
そこへI山さんとF本さんから執拗な勧誘を受ける。
そうやって誘えば私の決断が簡単に揺らぐことを見透かしているようで、私自身も簡単にその誘いに乗ってしまうことが最初から分かりきっていて、結局最後には「え?漕がずに帰るなんて言ってたっけ?」てことになり、隣でそのやりとりを聞いていたかみさんを呆れさせることになるのである。
時々霧雨が降ってくるものの雨にはならず、増水していた歴舟川の水も次第に減りつつあった。
今日の川下りの疲れでアルコールの回りも早く、皆早めに就寝となる。
|