帰る途中、用足しのために上陸した林の中でびっしりとキノコの生えた倒木を見つけた。
「もしかして美味しいキノコ?」と思って近づいたら、丸いホコリタケである。
地面に生えているホコリタケは良く見かけるけど、こんな風に倒木に密生しているのは初めて見た。
でも、所詮はホコリタケと思って無視していたが、後で調べてみると倒木に生えるタヌキノチャブクロと言うキノコだったようだ。
幼菌のうちなら食べられるそうで、マッシュルーム代わりに今夜の我が家のメニューであるビーフシチューに入れれば良かったと後悔した。
サイトに戻り何時もどおりの宴会が始まる。
今回のスペシャルメニューはS吉さんのダッチビビンバ丼。
去年の歴舟川原キャンプで大好評を博して以来の登場である。
それは皆の期待を裏切らない美味しさだった。
そして恒例のバザー。
今回は、明日のカヌー運動会で合同チームを組むガンネルズ、三笠CC、畜大カヌー部のメンバーも参加してとても賑やかである。
私は去年のバザーで使いもしないものを沢山買ってしまったため、かみさんから「今年は何も買うな」ときつく言われていたので、欲しいものがあっても手を上げずにじっと我慢していた。
一方のかみさんは、何に使うかも分からない犬の置物や、使いもしないようなパドルを競り落としてとても満足そうである。
無料にしても最後まで買い手が付かなかったのが冷風扇である。
今年の夏の暑さならば確実に役に立っていたはずなのに、今となっては粗大ゴミである。
結局は会長判断により、この冷風扇は明日の運動会でMVPとなった人に賞品として提供されることとなる。
翌朝は車の盗難防止装置のけたたましい音で目が覚める。
しばらく経っても、なかなか鳴り止まない。
多分、鳴らしてしまった本人はその止め方が分からずにオロオロしているのだろう。
場所がキャンプ場であるという事を考えれば、まさにパニックである。
ようやく止まったと思ったら、申し訳無さそうに「すいません」と誤る声が聞こえてきた。
時間は4時過ぎで、何時もならばこのまま起きてしまっても良い時間だけれど、飲み過ぎのために起きる気になれず。
もう一度眠ってから目を覚ますと、今度はテントを叩く雨音と湖の波の音が大きく響いていた。
それだけで何だかやる気が失せて、全く起きる気になれず。
しばらくうつらうつらしてから時計を見るともう朝の7時になっていた。
キャンプでは勿論、家にいる時でさえこんな時間まで寝ていたことは無い。
びっくりして起きていくと、タープの下には既に全員が揃って朝食中だった。
「死んでるのかと思った」と笑われたが、たっぷりと寝たおかげで昨夜のアルコールも完全に抜けて、たまの朝寝坊もなかなか良いものである。
雨は次第に上がってきたものの、風は更に強まり湖の沖合いには白波も立ち始めている。
石狩全域には強風注意報も出ているとの事で、今日のカヌー運動会は完全に中止だろうと誰もが思っていた。
その中でただ一人、S吉さんだけはやる気満々で、競技種目の一部は中止するけれど運動会は予定通り行うとの事である。
そんな時に隣りにやって来たご夫婦がインフレータブルカヌーに空気を入れ始めた。
「えっ?まさかこの風の中で?」
しばらくそのまま眺めていたけれど、さすがにこれで漕ぎ出したらまずいだろうと言うことになりF本会長が話をしにいった。
聞くと、そのカヌーを買って今日始めて乗るつもりらしい。
カヌーをやっている人間ならこの状況で舟を出す危険性は十分に理解できるけれど、未経験者とはこんなものなのだろう。
同じインフレータブルでも、ダっキーの様なタイプならまだしも、彼らの膨らましていたのはカナディアンのような形状の玩具みたいなものだった。
岸から離れないところでと言うことで、ご主人が一人でその舟に乗り込む。
もしもの時を考えると、私達がドライスーツなどに着替えた後に乗って欲しかったけれど、少し乗っただけで直ぐに諦めてくれたようである。
私達も準備を始める。
ドライスーツを着てしまえば、波立つ湖面にも何とか漕ぎ出す気になれる。
これが海水浴場ならば、間違いなく遊泳禁止の赤旗が強風にはためいていることだろう。
試しに湖に漕ぎ出してみたが、波に負けないようにパドリングするだけで疲れてしまう。
そしていよいよウィルダネスCCチーム対ガンネルズ・三笠CC・帯広畜大カヌー部合同チームによる水上運動会が始まった。
最初の種目はしゃもじリレー。両手に持ったしゃもじで水をかきながらOC-1を操作する。
これがなかなか思うように進まない。第2走者としてカヌーに乗り込んだ私は、沖に浮かべたブイ代わりの幼児用プールに向かって一気に漕ぎ進む。
もう少しでターンだと思って顔を上げると、近くにあるはずの幼児用プールは遥か彼方だった。
風で押し流されていたのだ。
そこから向かい風の中をプールに向かって必死に漕ぐが、カヌーは全く進まない。
一時はギブアップしようかと思ったものの、何とか第3漕者にカヌーを繋ぐことができた。
第3走者はクラブに入ったばかりのN浜さん。
今回は見学だけするつもりが、I山さんから中国直輸入の怪しいドライスーツを譲り受けてしまったばかりに、強制的に運動会に出されることに。
初めて乗るOC-1。いとも簡単にひっくり返ってしまった。
水を抜くのを手伝ってやろうとしたら、審判部長も務めているS吉さんから「手伝っては駄目です!」との厳しい言葉が飛んできた。
気の毒なN浜さんは、次々と岸に打ち寄せてくる波に揉みくちゃにされながら、再びカヌーに乗り込んで沖を目指した。
それでもまだ逆転可能な差のまま、アンカーのI上さんがカヌーに乗り込んだ。
誰もが「I上さんなら」と期待して見守っていたが、直ぐにそれは諦めに変わってしまった。
I上さんの乗ったカヌーは漕者の意思とは全く違う方向へ進んでいったのである。
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