さて、問題はその後の行き先である。
当初の予定では来止臥野営場に泊まることになっていた。ここは以前から私の憧れのキャンプ場であり、ここにテントを張ることが、日本の果てキャンプに続く今回の旅の大きな目的でもあったのである。
ところが台風の北上の影響で釧路地方は夕方から雨が降り風も強まるとのこと。
さすがにそんな時に、海に面した高台のキャンプ場にテントを張る気には私もなれない。
なるべく台風の影響を受けないところまで逃げようと考えて、候補地に上がったのが白糠の青少年野営場だった。
ここも機会があれば泊まってみたいと考えていたキャンプ場である
ところがキャンピングガイドの説明を読むと、ここはツリーハウスの利用がメインとなっていて、その利用者がいない時だけテントを張れるとの事である。
テント泊が軽視されているようなキャンプ場にとまる気にはなれず、かみさんの希望していた本別のキャンプ場まで走ることにする。
疲れも溜っているので、今日は早めにキャンプ場入りしたかったけれど、台風の影響から逃れるのと、明日の札幌までの帰りの事を考えると、今日は無理してでも走っておいた方が良さそうだ。
釧路から離れるに従って空を覆っている雲も薄くなってきた。
来た時と全く同じ道を走るのもつまらないけれど、時間短縮のためにはやむを得ない。
そうして本別町内で買出しをし、キャンプ場についたのは午後4時過ぎ。
初めて訪れるところで、おまけに場内が大きな公園になっていて色々な施設があるので、何処がサイトなのか直ぐには分からなかった。
園内の道路を走っていくと、川沿いの林間部分に巨大ドームテントが張られているのが目に入った。
キャンピングガイドに載っているキャンプ場の地図を見て、川沿いのサイトが良さそうだなと考えていたけれど、その巨大ドームを見ると気がすすまなくなる。
普通のファミリーがそんな巨大ドームを建てるとは思えないのだ。
更に進んでいくと、バンガローの前では10人以上の団体がバーベキューの真っ最中である。
8市街地から近いだけあって、シーズンオフに入っても利用者は多いようだ。
「まいったな〜」と思いながら、キャンピングガイドの地図によるともう一箇所のサイトがあるみたいなので、そちらへといってみる事にした。
川に架かる橋を渡ると、樹木に覆われた山肌に茶色い岩盤が露出するインパクトのある景観が現れた。
そしてその手前に、やや傾斜のある芝生地が広がり、そこがもう一つのサイトらしい。
一目見ただけでその場所を好きになってしまった。
芝生と岩壁、周りの緑、そこに建つ木製のバンガロー、森町のみどりとロックの広場にとても良く似ている。
先客はライダーと長期滞在者風のソロテントが2張りと、ファミリのテントが1張り、それぞれ十分な間隔を開けて張られている。
かみさんはそれらのテントからかなり離れた場所にテントを張ろうとしたが、そこまで荷物を運ぶのももう面倒くさい。
夜遅くまで騒ぐようなキャンパーも居なそうなので、ファミリーの近くにテントを張らせて貰うことにした。
入り口が反対側を向いているので、お互いの存在も大して気にならないのだ。
そしてビールで乾杯。
今日も長い一日だった。
夕食の準備をしていると、周辺がやけに赤っぽく見えているのに気がついた。
サイトの周りは山に囲まれているので、ここから見える空はとても狭い。
その空に浮かぶ雲が、ピンク色に染まっていた。
つい先ほど雨雲レーダーを確認すると釧路付近は既に雨が降り始めていたのに、ここで夕焼けを見られるとはキャンプ場の選択は大正解だったようである。
ところが一瞬のうちにその夕焼けも消えてしまった。
「今の夕焼けは何だったんだろう?」と狐に化かされた気分である。
定番キムチ鍋の夕食を終えた後は、U字トラフをひっくり返しただけの簡易炉で焚き火を楽しむ。
家から持参してきた薪が少し残っていたのと、サイトの周辺から拾ってきた僅かばかりの枯枝。
夜遅くまで起きているわけではないので、それだけあればワインを1本空けるまでは燃え続けてくれる。
ただ、このU字トラフは焚き火をするのにはあまり適さない。
その形状のために薪を適当な形に組みづらく、かみさんは火箸で何度も薪の位置を変えたりして落ち着かない。
それに、コンクリートの側面が焚き火の輻射熱を遮ってしまうので、あまり暖かくないのだ。
それでも直ぐ横の大きな石をテーブル代わりに最後の夜の焚き火を楽しんだ。
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