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岩壁の下で本別キャンプ

本別町静山キャンプ場(9月25日〜26日)

 別寒辺牛川を下り終え、そのまま厚岸コンキリエで昼食を食べようと思ったが、ちょうど昼の時間にぶつかってしまって満席。
 直ぐに諦めて他に向かうことにする。
 思い付いたのが「フォト喫茶・風夢舎」だった。
 地図で見る限りでは相当に辺鄙な場所にその店はあり、一体そこで営業が成り立つのかどうか、そんな興味本位で行ってみたくなったのである。
 ところがそこへ向かう途中、猛烈な空腹感に襲われた。
 考えてみれば今日は朝早くに簡単な山食を食べただけで、その後ザックを背負って数キロ歩き、それから別寒辺牛川を下っているのだ。
 腹が減るのも当然である。
 それにしてもこれほどの空腹を感じるのは初めてのことだった。
 まるで妖怪「餓鬼憑き」にでも取り憑かれたみたいである。
フォト喫茶・夢風舎 不安なのは、これから向かう先がフォト喫茶であることだ。
 名前の通りにメニューにコーヒーしか無かっとしたら、私は空腹で倒れてしまうかもしれない。
 確か荷物の奥の方にアンパンが一個残っていたはずなので、その時は店の人にお願いしてそのアンパンを持込させてもらおうと本気で考えていた。
 牧場の中に続く道を所々に立てられた小さな看板を頼りに走っていくと、ようやくその店に到着した。
 かみさんが「あっ、この店見たことある!」と声を上げる。
 今流行の隠れカフェ。雑誌に載っているのを見ていたようである。
 店の前には数台の車が停まっていた。
 中へ入ると、大きなガラス窓の向こうには広大な牧場が広がり、その風景に向かって座れる席を選んだ。
 そして直ぐにメニューを開き、その中にホットサンドとグラタンがあるのを見て、本当にホッとした。
 私はグラタンを注文して、出てきたそれを「うめ〜ぇ」「生き返った〜」等と声を上げながらむさぼり付く様に食べる。
 かみさんから「あまり声を出さないように」とたしなめられた。
 何と言ってもここはお洒落なカフェなのである。
 量は少ないけれど空っぽの胃袋に少しでも物が入れば、それだけで空腹感は癒された。
 本当に生き返ったような気分だった。


風景を満喫できる席   私の食べたメニュー

 さて、問題はその後の行き先である。
 当初の予定では来止臥野営場に泊まることになっていた。ここは以前から私の憧れのキャンプ場であり、ここにテントを張ることが、日本の果てキャンプに続く今回の旅の大きな目的でもあったのである。
 ところが台風の北上の影響で釧路地方は夕方から雨が降り風も強まるとのこと。
 さすがにそんな時に、海に面した高台のキャンプ場にテントを張る気には私もなれない。
 なるべく台風の影響を受けないところまで逃げようと考えて、候補地に上がったのが白糠の青少年野営場だった。
 ここも機会があれば泊まってみたいと考えていたキャンプ場である
 ところがキャンピングガイドの説明を読むと、ここはツリーハウスの利用がメインとなっていて、その利用者がいない時だけテントを張れるとの事である。
 テント泊が軽視されているようなキャンプ場にとまる気にはなれず、かみさんの希望していた本別のキャンプ場まで走ることにする。
 疲れも溜っているので、今日は早めにキャンプ場入りしたかったけれど、台風の影響から逃れるのと、明日の札幌までの帰りの事を考えると、今日は無理してでも走っておいた方が良さそうだ。

 釧路から離れるに従って空を覆っている雲も薄くなってきた。
 来た時と全く同じ道を走るのもつまらないけれど、時間短縮のためにはやむを得ない。
 そうして本別町内で買出しをし、キャンプ場についたのは午後4時過ぎ。
 初めて訪れるところで、おまけに場内が大きな公園になっていて色々な施設があるので、何処がサイトなのか直ぐには分からなかった。
 園内の道路を走っていくと、川沿いの林間部分に巨大ドームテントが張られているのが目に入った。
 キャンピングガイドに載っているキャンプ場の地図を見て、川沿いのサイトが良さそうだなと考えていたけれど、その巨大ドームを見ると気がすすまなくなる。
 普通のファミリーがそんな巨大ドームを建てるとは思えないのだ。
 更に進んでいくと、バンガローの前では10人以上の団体がバーベキューの真っ最中である。
 8市街地から近いだけあって、シーズンオフに入っても利用者は多いようだ。
 「まいったな〜」と思いながら、キャンピングガイドの地図によるともう一箇所のサイトがあるみたいなので、そちらへといってみる事にした。
 川に架かる橋を渡ると、樹木に覆われた山肌に茶色い岩盤が露出するインパクトのある景観が現れた。
 そしてその手前に、やや傾斜のある芝生地が広がり、そこがもう一つのサイトらしい。
ようやくテントを設営 一目見ただけでその場所を好きになってしまった。
 芝生と岩壁、周りの緑、そこに建つ木製のバンガロー、森町のみどりとロックの広場にとても良く似ている。
 先客はライダーと長期滞在者風のソロテントが2張りと、ファミリのテントが1張り、それぞれ十分な間隔を開けて張られている。
 かみさんはそれらのテントからかなり離れた場所にテントを張ろうとしたが、そこまで荷物を運ぶのももう面倒くさい。
 夜遅くまで騒ぐようなキャンパーも居なそうなので、ファミリーの近くにテントを張らせて貰うことにした。
 入り口が反対側を向いているので、お互いの存在も大して気にならないのだ。
 そしてビールで乾杯。
 今日も長い一日だった。
 夕食の準備をしていると、周辺がやけに赤っぽく見えているのに気がついた。
 サイトの周りは山に囲まれているので、ここから見える空はとても狭い。
不思議な夕焼け その空に浮かぶ雲が、ピンク色に染まっていた。
 つい先ほど雨雲レーダーを確認すると釧路付近は既に雨が降り始めていたのに、ここで夕焼けを見られるとはキャンプ場の選択は大正解だったようである。
 ところが一瞬のうちにその夕焼けも消えてしまった。
 「今の夕焼けは何だったんだろう?」と狐に化かされた気分である。
 定番キムチ鍋の夕食を終えた後は、U字トラフをひっくり返しただけの簡易炉で焚き火を楽しむ。
 家から持参してきた薪が少し残っていたのと、サイトの周辺から拾ってきた僅かばかりの枯枝。
 夜遅くまで起きているわけではないので、それだけあればワインを1本空けるまでは燃え続けてくれる。
 ただ、このU字トラフは焚き火をするのにはあまり適さない。
 その形状のために薪を適当な形に組みづらく、かみさんは火箸で何度も薪の位置を変えたりして落ち着かない。
 それに、コンクリートの側面が焚き火の輻射熱を遮ってしまうので、あまり暖かくないのだ。
 それでも直ぐ横の大きな石をテーブル代わりに最後の夜の焚き火を楽しんだ。


焚き火   夜のキャンプ場

岩壁だけに朝日が当たる 翌朝は天気も回復し、青空が広がっていた。
 サイトから見える岩壁は既に朝日に照らされているが、その陽射しがサイトまで降りてくるのにはしばらく時間がかかりそうだ。
 ちょうど太陽の出てくる方角に山が迫っているので、この季節はサイトに日の当たる時間そのものが少なそうである。
 コーヒーを飲んだ後は場内の散歩に出かける。
 川沿いの林間サイトは既に全面に日が当たりとても気持ち良さそうだ。
 そんな様子を見ると、こっちにテントを張った方が良かったかなと思えてくる。
 サイトの雰囲気はその時々によってがらりと変わるものである。


日の当たる林間サイト   林間に朝日が射し込む

 園内の遊歩道の地図を見ると神居山展望台と言う場所があるらしいので、そこまで登ってみることにした。
 と、気軽な気持ちで登り始めたけれど、いきなり急な階段が現れ、それがずーっと上まで続いていたのである。
 次第に汗をかいてきて、厚手のタイツをはいたまま出てきたことが悔やまれる。
急な階段が続く でも、道は良く整備されていて歩きやすい。
 やっと上まで登りきったと思ったら、今度は尾根の上のアップダウンが続く。
 そして登り始めてから15分ほどで展望台に到着。
そこからは素晴らしい展望が広がっていた。
 遠く地平線に二つの山並みが見えているが、何処の山なのかさっぱり見当が付かない。
 しばらくしてから地元の方らしい男性が登ってきたので、その山の事を尋ねてみたところ、一つが日高山脈でもう一つは大雪連峰との事。
 その間の平らな場所は富良野盆地になるのだろうか。
 日高と大雪がこんな風に見えるなんて新鮮な驚きだった。
 その後も地元の方が次々と登ってきて、皆、顔見知りらしい。
 山の事を教えてくれた男性も色々な山の名前がスラスラと出てきていたので、多分登山を趣味にされているのだろう。
 毎朝こんな場所を登っていたら、どんな山でも簡単に登れてしまいそうである。


展望台からの眺め

サイトに戻ってきてもまだ朝日は届いていなかった 軽い気持ちで歩き始めた朝の散歩が随分とハードなものになってサイトまで戻ってきた。
 陽射しは山に遮られ、まだ我が家のテントまでは届いていなかった。
 夜露に濡れたテントを早く乾かしたいのに困ってしまう。
 朝食を終えてから、今度はサイトの直ぐ裏の弁慶洞を見に行く。
 今度は神居山のように苦労することなく弁慶洞に到着。
 幅15m、高さ20mの洞窟が圧倒的な迫力で私の上に迫ってくる。
 でも、その中に鎮座する弁慶の像は、随分と可愛らしいものだった。


可愛らしい弁慶像   弁慶洞の中からの眺め

トクサの群落 サイト周辺の森は、その林床が見事なトクサの群落で覆われている。
 これだけ美しいトクサの群落はなかなか見たことが無い。
 その群落の中に何本も道ができている。
 人間が歩いて自然にできた道かと思っていたが、急な斜面にまでその道が続いているところを見ると、どうやらこれはシカの通った獣道らしい。

 ようやく我が家のテントにも日が当たってきた。
 気持ち良く撤収を終えて札幌への帰途に付く。
 本別からは直ぐに道東道に乗れるので、札幌まで大して時間もかからない。
 その道東道を走っていると、大雪の山並みが真っ白になっているのが見えた。
 冬はもう直ぐそこまで来ているのだろう。

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場内の風景   場内の風景


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