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心の洗濯歴舟河原キャンプ

歴舟川の河原(8月28日〜29日)

天馬街道翠明橋公園で 日高路を十勝に向かって車を走らせる。
 天気予報とにらめっこする日々が一週間続き、ようやく昨日、歴舟川キャンプを決行することに決めたのである。
 その段階では、雨の心配は無さそうだけれど太陽の姿を見るのは期待薄だろうと、半ば諦め気味の気持ちが強かった。
 それが今日は自宅を出る頃から青空が広がり、天馬街道の翠明橋公園で湧き水を汲み、野塚トンネルを抜けて十勝側に出てからも、まだその青空は続いていた。
 まずは歴舟川河口部の下見をしてから、腹ごしらえのため大樹町の蕎麦屋「一秀(いっしゅう)」へと向かう。
源ファーム 住宅街の中の分かりづらい場所にあるとは聞いていたけれど、とうとうその店を見つけられず、代わりにホエー豚の豚丼が食べられる「源ファーム」へ行くことにした。
 こちらも大樹町郊外の幹線道路から離れた辺ぴな場所にある店だけれど、国道沿いの看板を頼りに何とかたどり着いた。
 林に囲まれた素朴な建物が良い感じである。
 ここの売りであるホエー豚については、普通の豚との違いが良く分からず、豚丼の味もあまり私好みではなかった。
 それよりもお土産に買ったソーセージの方が、焚き火で焼いて食べるとジューシーでとても美味しかったのである。
 その後は半田ファームでチーズを買って、これでようやく川下り前の準備が整った。

歴舟川河口の河原 車を河口に回して、そこからタクシーを呼ぶ。
 タクシーは川原までは入れないとのことだったので、川原へ降りる道を300メートルほど歩いて戻って車を待つことにする。
 確かにこの道は、以前より草が茂って、普通の車で走るのはためらう様な状況になってきている。
 ここでタクシーを呼ぶのは初めてなので、本当に来てくれるかどうか不安だった。
 電話に出たおじさんの話しぶりが、どうも頼りなく感じたのである。
 じっと待っていてもしょうがないので、そのままブラブラと孵化場の施設辺りまで出てきたところで、ようやくタクシーが来てくれた。
 運転手さんの話によると、数年前までは河口部にサケ捕獲用の網を入れていたので、その関連で川原に降りる道を整備していたけれど、その網を入れなくなってからは道も荒れてきているそうである。

 河口から大樹町市街地の大樹橋までタクシー料金は3千7百円ほど。
 今回下る区間はここから河口までで、ノンストップで下れば2時間もかからずに終わってしまうような距離である。
 今回は川原でのキャンプが主目的なので、カヌーで川を下るのは、そのための手段にすぎない。
 上流のキャンプ場からここまでの区間では、既に3回ほど川原キャンプを経験しているので、今回は新たな野営地を探しての川旅となるのだ。
 1人で1時間も待っていたかみさん。さぞ退屈していることだろうと思ったら、私が到着するなり「ちょっとちょっと、これ見て!」と言ってきた。
 石ころに小さな金色の粒が張り付いている。
 「これって砂金じゃないかしら?もっと沢山あるのよ!」
川の中の砂金? 川の中の岩盤の緩やかな窪みに薄っすらと砂が溜り、その中で沢山の金色の小さな粒がキラキラと輝いていた。
 その中の一粒をかみさんが石に貼り付けたのである。
 最近は大雨による増水が繰り返されていたので、砂金掘りをする時に使う揺り板の原理で、流されてきた土砂の中から比重の重たい砂金がそこに集まったと言うことは十分に考えられる。
 半信半疑ながら、砂金の混ざっているその砂を集めようとしたが、極薄く溜っているだけなので簡単には集められない。
 こんなところで砂金取りに時間を取られているわけにもいかないので、川を下り始めることにする。
 それにしても、本格的に砂金掘りをする人は石の川原を数メートルも掘り下げてやっているのに、本当にこれが砂金ならば、そんな努力が馬鹿らしく思えそうである。

スタート直後の瀬 去年ここを下った時は、大樹橋から下は本流が左岸側を流れていたのが、今回は右岸に変わっていた。
 おかげで、荷物を沢山積んだ状態で洗濯板の瀬を下らずに済むのはありがたい。
 それでも、そこから直ぐ下流の瀬ではガンネルを超えてカヌーの中に水が入ってきた。
 荷物は全て防水バッグに入っているとは言っても、こんな時はなるべく水を汲まないように下りたいものである。
 それにしても歴舟川の水の美しさは最高である。
 ここへ来る時に何本も渡ってきた日高の川は、4日前の大雨の影響が残っているのか、何処も茶色く濁った川ばかり。
 ここ歴舟川はそんな雨の影響など微塵も感じさせず、何時も以上の透明度を保っている。
 上空の澄んだ秋空が、川の水をより一層透明に見せているのかもしれない。
 もっとも、秋空と言っても今日の道内の最高気温は内陸部で30度を超えるとのことで、まだ真夏の暑さが続いている。
 そんな日に水の上にいられるなんて、本当に幸せである。


澄んだ水が美しい

川底の石がはっきりと見える   美しい河原で

 ふるさと大橋下流に去年まであった波の大きな瀬は、今回は大人しい瀬に変わっていた。
 以前にキャンプ道具を満載した状態でここを下った時は、思いっきり水を汲んで沈寸前の状態になったことがあるのだ。
 ふるさと大橋の姿が完全に見なくなったところから、キャンプに適した川原を探し始める。
 今夜は雨が降ることはほぼ無いと分かってはいても、アウトドアを趣味とする人間の端くれとして、増水時に水に浸かってしまうような場所にテントを張ることはできない。
柳がちょっと茂りすぎた河原 それを考えなければ、テントを張りたいような川原は沢山あるのだが、ある程度川面からの高さが確保され、突然の増水でも逃げ場があり、焚き火用の流木が沢山転がっていて、テントを張るのにちょうど良い平らな場所があって、そして眺めも良い川原なんて、簡単に見つかるものではない。
 最初に上陸した場所は、その条件をほぼ満たしていたが、今一満足ができない。
 今回の川原キャンプのイメージは、私の頭の中では広々とした川原の中にポツンとテントを張るものだった。
 そこに歴舟川下流部で川原キャンプをする価値があるのだ。
 その場所は、川原に樹木が少し茂りすぎていて、広々とした雰囲気をあまり感じられなかった。
 迷いながらもまた下り始めた。
 後から「やっぱりあそこが良かったな」と思っても、川を遡ってくることは不可能なのである。

のんびりと下る キャンプ地を探しながらのんびりと流れ下る。
 カヌークラブの例会でこの付近を下る時は、河口を目指してただひたすら漕いでいるので、心にもゆとりが無い。
 今回はそれも有って下る区間を短くしたのだが、やっぱり正解だった。
 歴舟川の美しい流れを思う存分満喫できるのだ。

 今回は事前に野営候補地を2箇所ほどGPSに登録しておいた。
 参考にしたのはGoogleの航空写真。
 大雨の度に流れを変える歴舟川でそんな写真は役に立たないと思いつつ、雰囲気だけは確認できるのだ。
 真っ白に写っている川原の中で近くに樹木が生えていそうな場所を基準に選んでみた。
 ところが実際の現地の川原は何処もヤナギなどの樹木が茂っていて、樹木が生えていない場所を探すほうが難しいくらいである。
 私の記憶では、歴舟の川原にこんなに木は生えていなかったはずである。
 今年の雨の多さと気温の高さの影響で、川原のヤナギが一斉に育ったのかもしれない。
 GPSの表示を見ると一箇所目の候補地近くに来ていることが分かったので、そこの川原にカヌーを寄せた。
 川から段差のある石原を登ると、まず目に入ったのが大量の流木である。
この河原を野営地に決定 これだけ流木があるという事は増水時にはここまで水が上がってくると言うことだけれど、そんな時は歴舟川の川原が全て消滅するような大増水時だけだろう。
 頻繁に水を被るような川原には流木などは殆ど無いのである。
 テントを張れそうな平らな砂地もある。
 できれば小砂利の方がテントが汚れなくて良いのだけれど、そこまでの贅沢は言わない。
 歴舟川の下流部らしく空も広い。
 唯一の不満は、近くに釣りができそうな瀞場が無いことだけである。
 今回のキャンプには本当の久しぶりに釣竿を持参していたのだ。

我が家のサイト 今日の野営地はこの川原に決定した。
 カヌーから荷物を降ろす。
 私がテントを張っている間に、かみさんは早くも焚き火用の流木を拾い集めている。
 わざわざ集める必要も無いくらいに、そこら中に手ごろな大きさの流木が転がっていた。
 カヌーのウェア類を干すのにロープも用意していたが、それも流木の枝が物干し竿の代わりをしてくれる。
 一段落したところでお待ちかねの冷たいビールをクーラーバッグから取り出す。
 プシュッとリングプルを開け、グビッと喉に流し込む。
 青い空が目に眩しい。
 最近はこんなシーンだけを夢見て、詰まらない日々をじっと耐えてきたような気がする。
 もしも今回のキャンプも中止になっていたら、気分的な落ち込みは回復不可能なところにまで達していたかも知れない。
 ギリギリセーフで間に合った今回の川原キャンプなのである。


焚き火周りの設営中   流木も物干し竿に

 集めた流木に火を付ける。
 良く乾燥した流木はあっと言う間に燃え上がった。
お気に入りの焼き串 焚き火を囲むように流木や石で寛ぎスペースを作っておいたのが、焚き火が熱すぎてもっと離れた場所に作り直さなければならなかった。
 源ファームで買ってきたウィンナーを焼いて食べる。
 ここで大活躍するのが伸縮式の焼き串。
 これはカヌークラブのメンバーが持っていたのを一目見て気に入り、直ぐに秀岳荘まで買いに走った一品である。
 焚き火の熱も全然気にならない場所から柄を長く伸ばし、クルクルと回しながらウィンナーを焼き、程好く焼きあがったらスルスルと柄を縮めてガブリとかぶりつく。
 我が家の数少ないキャンプグッズの中で一番のお気に入りである。


広大な河原で焚き火を楽しむ

 夕食はレトルト牛丼。かみさんは昼の豚丼で腹一杯になったと言って、半田ファームで買ったパンと自宅で採れたトマトのアルミホイル蒸しが夕食だ。
 川の上流の空が赤く染まってきた。
 8月も末に近づくと、日が短くなってきたのを実感する。
 今日は時間に余裕を持って行動しているつもりだったのに、あっと言う間に時間が過ぎてもう夕暮れである。
 草むらからは虫の鳴き声も聞こえてくる。
焚き火 赤く染まった西の空に一番星が姿を見せた。
 その赤味が消える頃には、一つ、また一つと星が姿を見せてくるはずだ。
 と思っていたら、いつの間にか雲が広がってきたようで、星の姿は完全に見えなくなってしまった。
 本当はこの歴舟川川原キャンプはお盆の帰省前に予定していて、歴舟川の川原に寝そべってペルセウス座流星群を眺めるつもりでいたのだ。
 もしもその時にこんな状況になっていたらショックは大きかっただろうけれど、今日はそれ程気にもならない。
 海に近い場所なので海霧が広がってきたのだろう。
 真っ暗闇となった川原を焚き火の炎が赤くて照らし出す。
 最近は寝不足が続いていたので、今夜は早く眠ることにする。
 と思ったものの、テントに入ったらその中にはまだ日中の暑さが篭ったままだったので、それが冷めるまでもう少し起きていることにした。
 今日は私のMSRのテントに二人で寝ることにしていたけれど、通気性の良いMSRでもこれなのだから、かみさんが何時も使っている通気性の悪いモンベルのテントなら、最悪だったことだろう。
 今日はそれだけ夜中になっても気温が下がらないのである。
 札幌にいたら寝苦しい夜を過ごすことになっていたかもしれない。

朝は曇り空 翌朝起きた時も空はまだ曇っていた。
 天気予報を確認すると朝から晴れることになっていたので、海霧がまだ上空に居座っているだけなのだろう。
 昨夜の焚き火は完全に灰と化していたので、新たな流木を積上げて火を付ける。
 朝のコーヒーを飲んだ後は釣りをしてみることにした。
 「前回釣りをしたのは何年前だろう?」と思い出せないくらいに久しぶりの釣りである。
 野営地の前はだらーっと流れる浅瀬なので、そこから少し下流の瀬の下で竿を出してみる。
 するといきなり仕掛けが水の中へと引き込まれた。
 竿先が大きくしなる。そして次の瞬間、水上に飛び上がった魚体の大きさを見て唖然とした。
 それで腕に力が入ったのが悪かったのか、糸がプツンと切れてしまった。
 子供が釣りをするような仕掛けのセットだったので、ハリスが耐えられなかったのだろうか。
久しぶりの釣り でも、これで魚がいることはハッキリしたので俄然やる気が出てきた。
 針を付け直して、今度はかみさんに竿を持たせてやる。
 でも直ぐに、川底に沈んでいた流木に針を引っ掛けてしまったので、また私に交代。
 場所を変えて小さな分流が流れ込んでいるところで仕掛けを流すと、また直ぐに魚がかかった。
 今度はばらさないように慎重に取り込み、最初に逃がしたのと比べるとかなり小さく感じたけれど、 20センチほどの魚を釣り上げた。
 かみさんの第一声は「模様付いてる?」だった。
 我が家の場合、たまに釣りをしてもウグイしか釣ったことがないので、「模様の付いた魚を釣りたい」が私達夫婦の合言葉なのである。
 最初はこれもウグイかと思ったが良く見ると小さな点々があるので、どうやら虹鱒らしい。
ニジマス もう一度かみさんに竿を渡した。
 すると今度はかみさんも直ぐにヒット。
 でも、いきなり竿を引き上げようとしたものだからあっさりと糸が切れてしまった。
 その後ピタリとあたりが無くなる。
 やがて上空を覆っていた霧の間から太陽が姿を現してきた。
 流れ込みを渡ればその先に良さそうなポイントがあるのだけれど、流れがきついので渡ることができない。
 口惜しそうなかみさんを促して、テントへ戻ることにした。

 釣った魚はアルミホイルに包んで焚き火の灰の中に埋め込む。
 太陽が照り付けると急に気温も上がってくる。
 もう焚き火に近づく気にはなれず、ゴミの焼却と一匹の魚の調理用にだけ燃やしているようなものだ。
 焼きあがった虹鱒はとっても美味しかった。
 朝食は、この魚の他はお湯を入れるだけでできる山食。
朝の河原 暑さに耐えかねたかみさんは、川岸の石に腰掛けて足を川に付けながらそれを食べている。
 私も真似てみたがこれは気持ちが良い。
まるで真夏のキャンプである。
私が汗を流しながらテントを撤収している間も、かみさんは裸足になって「痛い痛い」と言いながら川の中を歩き回っている。
川底の小石が足のつぼを刺激し、足裏健康法でも試しているつもりだろうか。
そのうちに、早々とカヌー用ウェアに着替えたと思ったらそのまま川の中に全身を浸けていた。
私もパンツ一枚で川の中へ入る。
歴舟川の上流部では、たとえ真夏でもこんな姿で水に入る気にはなれないが、さすがにこの付近ではその冷たさもかなり和らいでいる。
しかも水の透明度は上流部と全く変わらない。
こんなに気持ちが良くて申し訳ないと、ここにいない全ての人達に頭を下げたくなってしまう。


足裏健康法?   一泳ぎ

 片付けを終えて川原を去る時間がやって来た。
 来月はカヌークラブの歴舟川例会がある。
河原にオブジェを残して その時まで残っているかどうか試そうと、大きな切り株に流木を沢山立ててオブジェを作ってみた。
 ただの川原に名残惜しさを感じながら川下りを再開する。
 その後ももう一つの野営候補地など、何箇所かで上陸してみたが、今回の川原に勝る場所は見つからなかった。
 最後の歴舟橋を通過すると更に川幅は広がり、この辺ではもう野営できそうな川原も無くなってくる。
 流されてきた樹木がそのまま折り重なるように川原のあちらこちらに堆積している状況を見ると、とてもそこでテントを張る気にはなれないのである。
 そんな倒木の山が所々で流れを塞いでいたりしてヒヤッとさせられる。
 私がカヌークラブに入ったのは、こんな川でも単独で安心して下れるだけのスキルを身に付けたかったからだ。
まだ未熟な部分もあるけれど、こうしてキャンプ道具を積んで楽しく川を下っていられるのは、カヌークラブのおかげである。


相変わらず瀬が続く   水の透明度も変わらず

突然飛び立った丹頂鶴 途中で目の前から丹頂鶴が飛び立って驚かされる。
 3匹でいたところを見ると親子なのだろうか。
 以前からこの近くで丹頂の姿は見ていたけれど、川下り中に出会ったのは初めてである。
 河口の様子はこれまで下った時とは大きく様子が変わっていた。
 以前は河口付近全体が大きなプールになっていて、砂丘を登って海の姿を見られたのが、今はそこにはっきりとした口が開いてしまっていた。
 間違って海に流れ出てしまわないように場所を選んで慎重に上陸する。
 そうしてとうとう海に到着だ。

 その少し前、車をデポしてあった付近での夫婦の会話。
河口で記念撮影 「え〜、わざわざ海まで行くの〜?」
 「当たり前だろ、ここまで下ってきて海を見ずに帰れるわけ無いだろう!」
 「ふ〜ん、クラブの例会とかで海まで出たら皆感動しているでしょ。それが理解できなくって。本当は私、全然感動しないのよね〜。」
 感じ方は人それぞれである。
 まあ、今回は川原キャンプが全ての目的だったので、河口到達はおまけのようなものだった。
 海を見た後は私が責任を持って、浅瀬の中をカヌーを引きずって車の入ってこられる場所まで戻ったのである。

8月28日12:00歴舟川水位(尾田観測所)102.39m

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