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構造相転移丸瀬布キャンプ

丸瀬布いこいの森オートキャンプ場(5月15日〜16日)

 カヌークラブの5月例会では湧別川を下ることになり、その宿泊地として選んだのが丸瀬布いこいの森オートキャンプ場である。
 下る区間は瀬戸瀬から遠軽町と湧別町から河口までの区間なので、できれば遠軽町に適当なキャンプ場があれば良いのだけれど、以前にあったえんがる公園キャンプ場は既に閉鎖されていて選択肢は少ない。
 久しぶりにこのキャンプ場のフリーサイトにテントを張りたかったので、私の独断で場所を決めさせてもらった。
広いサイトにビッグタープがポツンと一張り 旭川紋別自動車道が丸瀬布まで繋がったので、自宅を出てから3時間もかからずにキャンプ場に付いてしまう。
 以前から人気の高いキャンプ場なので、これからはますます混み合う事になりそうだ。

 川下りの集合時間前にキャンプ場入りして、先にテントを張っておくことにした。
 既にS吉さんご夫婦が前日からキャンプ場入りしていて、何時もの大型タープを張ってくれていた。
 オホーツク方面はGWを過ぎてから最高気温が10度に満たない日が続いていて、海に近いところでは最高気温が3度とか4度の世界である。
 サダ吉さんが到着した時も気温は3度、寒々とした場内の様子にとんでもないキャンプ場に来てしまったと感じたらしい。
 それが今日は、気温も既に20度近くまで上がり、場内の木々はまだ丸裸のままでも、キャンプ場全体にほのぼのとした空気が漂っていた。
 キャンプ場のイメージはその時の天気次第でガラリと変わってしまう。

区画割りされたフリーサイト 14年前に始めてここのフリーサイトを利用した時、落ち葉で埋め尽くされた場内で晩秋の暖かな陽射しの下、素晴らしいキャンプを体験できた。
 その時の落葉の絨毯は無く、林間部分は一面の土のグランドである。
 その土の上には、幾何学模様でも描くようにロープが張りめぐらされていた。
 フリーサイトと言えども、混雑時にはこれで区画を指定されるのかもしれない。
 S吉さんをすっかり興ざめさせた、このフリーサイトの区画線。
 混乱する場内を整理するためには必要なのだろうけれど、そんな風に区画を指定されるような時には絶対に泊まりたくない気がした。
 土の上にテントを張る気にもなれず、川沿いの土手の上にやや草の生えた場所があったのでそこを我が家の寝場所に決めた。
我が家のサイト 我が家の伝説にもなっていた快適なフリーサイトが、今はもうここしかテントを張りたい場所が残っていないなんて、寂しい限りである。
 違う季節に訪れたならばもっと違うイメージになるかもしれないが、現在の状況ならば、各スペースは狭いけれどオートサイトの方が快適なキャンプを楽しめそうな気がする。

 テントを張り終えたところで川下りの集合場所である丸瀬布道の駅に移動。
 集まったのは我が家を含めて僅か9名。
 近年のクラブの例会では一番少ない人数である。
 でも、これくらいの人数の方が川を下るのにはちょうど良い。
 GWの頃の大増水時からは水位も下がり、濁りも取れた湧別川で快適なダウンリバーを楽しんで、再びキャンプ場へと戻ってきた。

 久しぶりに天候の回復した週末、フリーサイトは大賑わいだろうと思っていたら、私達が出発した時と様子は何も変わっていなかった。
 日帰りの家族がバーベキューをしているだけである。オートサイトにも人影はない。
 例会参加者の少なさ、そしてこのキャンパーの少なさ。
 「みんなどうしたの?」と聞いてみたくなる。
我が家のサイト 今回のキャンプで一番心配していたのは、大勢のファミリーキャンパーのど真ん中で、集まったクラブのメンバーが大宴会を繰り広げて、周りの顰蹙をかってしまうと言うことだった。
 しかし、我がクラブは比較的大人しい人が多く、そもそも周りには誰もいなく、そんな心配は皆無である。
 サダ吉さんは何時ものように大型タープの周りをビニールで囲ってくれていたけれど、まだ陽射しも暖かく、その中に篭ってしまうのが勿体無いような陽気だ。
 外のベンチに腰掛けてビールを飲む。
 蒸気機関車の汽笛が聞こえてきた。ここの一番人気、SL雨宮号の本日最終運行である。
 鉄ちゃん気分でカメラを構えていると、目の前で汽笛を鳴らして煙を高く吹き上げてくれるのはサービスなのだろう。
 乗客は先程までバーベキューをしていたファミリーだろうか。その一組だけである。
 始めてここに泊まった時、息子と一緒にそのSLに乗ったことを思い出す。もっとも、息子はSLよりもゴーカートに乗った方が喜んでいたような気がする。



 キャンプ場とは道路を挟んだ向かい側にある「丸瀬布温泉やまびこ」で川下りの汗を流す。
 そしてタープの下でまたビール。
 例会でのキャンプはどうしても慌しくなりがちだけど、今日はとっても余裕がある。下り終えた時間が早かったのと、やっぱり日が長くなってきているのが一番の理由だろう。
 長風呂の他のメンバーも戻ってきて、プシュッと音をたてて次々とビールを開ける。
コゴミにアズキナ ジンギスカンに焼き魚、シャブシャブとそれぞれの食事が始まるけれど、メインディッシュは川下りの途中で採取してきた山菜だった。
 大量のコゴミとアズキナ(ユキザサ)を大鍋で茹でて、山椒、ポン酢山わさび、マヨネーズと味を替えて皆で食べる。
 山菜採りにはそれほど興味の無かった我が家だけれど、アズキナの見分け方も教えてもらえたので、これからは春の山歩きの楽しみが増えそうだ。
 ゴールデンウィークでの「FMさん留辺志部川カヌー流出20キロ奇跡の回収事件」の話を酒の肴に盛り上がる。
 クラブのメンバーも高齢化が進み、焚き火を囲んでのこの日の話題も次第に老後の話へと変わっていく。
 「後20年経ったら俺も六十幾つでしょう。それでもう十分だと思うんだよね〜。」
 「80過ぎて何か楽しいことってあるのかな〜」
 「自分の好きな事をしている時にポックリ死ねるのが一番良いかも」
 「やっと波に入れてサーフィンしている時とか?」
 「なかなか波から出てこないので様子を見たらそのまま死んでたりして」
 「良いね〜!そんな死に方!」
 こうやって今の瞬間を楽しく遊んでいると、それができなくなった時の自分の姿などなかなか思いつけないのである。
 午後9時を回った頃から一人、また一人と欠けていき、年寄りは寝る時間も早い。
 我が家も11時前には自分のテントに戻り、川の流れの音を子守唄にして、直ぐに眠りについた。


老後の話に真剣な表情   夜は更けてゆく

 6時近くまでぐっすりと眠り、昨日の川下りの疲れも酔いも抜けて、気持ちの良い朝を迎えた。
 テントの中をサッサと片付けてしまうことにする。
 シュラフを片付け、次にテントマットを両膝で押さえて空気を抜きながら丸めていく。
 そんな体勢のまま、少しお腹が張っていたので、その原因のガスを放出するためお尻の筋肉を緩める。
 何時もならば、そのまま「プスー」っとガスが抜けていくはずだった。
 ところがこの朝は何時もとは違っていたのである。
オオバナノエンレイソウ その感触は「プスー」ではなくて、「プシュ〜〜ゥ〜〜」。
  「!、・・・」
 直ぐには何が起こったのか理解できずに、その体勢のまま暫し固まってしまう。
 こ、これは明らかに気体ではなく、液体、いやそれよりも液体に近い固体と言ったほうが正しいかもしれない。
 気相の状態から、同じ流体でありながら分子の動きが制限された液相へと、何らかの原因により構造相転移を起こし、言わば液体分散媒のコロイドであるゾルと化したのである。
 時間が経つと共に自分の置かれた困難な状況が認識できてくる。どうやってこの危機から脱出すれば良いのか。
 この脱出の様子はあまりにも生々しいので、ここで書くのは差し控えさせてもらう。

 最悪の危機は何とか切り抜けたので、後はトイレまで行かなくてはならない。
 テントの外を覗くと人影は無いもののタープの下からは数人の話し声が聞こえてくる。
 あまり人には会いたくなかったので、そのままこっそりとトイレに向かって歩いていると、かみさんがタープの下から出てきた。
 そして私の顔を見るなり「大丈夫?体は何ともない?」と聞いたきたのだ。(?、何で分かった?、俺ってそんなひどい顔をしているのか・・・)

エゾエンゴサク 「ぜ、全然、大丈夫じゃないよ」

 するとかみさん。

 「やっぱり!みんな大変なのよ、吐いたり下痢したり」

 「げ、下痢・・・」

 自分の名誉が回復された気分だった。
 これは私の失態ではなく、なるべくしてなった状況なのである。
 結局、9名中無事だったのはかみさんを含めて2名だけ。
 その病状は、軽い下痢程度で済んでいる人もいれば、夜のうちから嘔吐と下痢に見舞われた人、まるで大腸検査を受ける前のように腸の中が空っぽになってしまった人、散歩途中に急にもよおしてそのまま野○○をしていたら釣り人が歩いてきて焦った人、そして中に出てしまった自分まで、様々である。

 さて、この騒動の原因となったのは何だろう?
 唯一、生もので食べたホタテが一番最初に疑われたが、これが原因の食中毒ならばもっと重病の人も出てきそうである。
 今回は腹痛を訴える人も無く、症状は下痢だけである。
 怪しいのはやっぱり山菜。それも、コゴミは他のものと間違いようもないので、残るはアズキナだけである。
 アズキナに似た毒のある野草もあるらしく、この時はアズキナ原因説が有力だった。
 しかし後日、本当の原因はコゴミであることが判明。 コゴミは加熱が十分でないと下痢や嘔吐の中毒症状になるとのこと。
 茹でた人の話では、火力が弱くて沸騰しなかったけど野菜と同じだからとあまり気にしていなかったそうである。
 コゴミ恐るべし!
 下手な下剤を飲むくらいならば、半茹でのコゴミを食べた方が効果が高いかもしれない。

 皆、これだけひどい目に合いながらも、この日の朝食で大量のスパゲティを茹でて、それにカレーのルーを入れて食べるのだからたいしたものである。
 まあ私にしても、自分の下着の中の状態を直接目にしていた割には、そのカレースパゲティを美味しく食べることができた。
 そして片付けを終え、皆、何となくお腹の状態を気にしながら今日の川下りの集合場所へと向かったのである。




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