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のんびりまったり支笏湖ラストキャンプ

支笏湖(11月7日〜8日)

 10月の最後の週に熊野古道の旅に出かけ、今年はもうキャンプ納めをするチャンスも無いだろうと諦めていたら、その一週間後の週末に小春日和が訪れそうな天気予報になっている。
 でも、そんなことを言い出したとしても、どうせかみさんから「何言っているの!遊んでばかりで、庭の片付けとか何もやってないでしょ!」と一蹴されるのが落ちなので、何処か近くで日帰り登山にでも行くつもりで家に帰ってきた。
 すると夕食の席でかみさんが「カヌー納めしたかったな〜、焚き火納めもやってないな〜、庭の片付けも一人でやったしな〜」と独り言を言い始めたのである。私の心の中など何も気にしないで、自分のことだけ考えているかみさんに不満はあったけれど、キャンプへ行かない理由は何も無かった。
カヌーで荷物運び 後は支笏湖にするか、洞爺湖にするか。厚真大沼の案も出てはきたけれど、やっぱりカヌーは捨てがたい。
 そこで支笏湖経由で洞爺湖へ向かうことにして、支笏湖が気に入ればそのままテントを張ることにして、札幌を出発した。

 そうして最初に訪れた支笏湖で、着くと同時に、何の迷いも無く二人で車からカヌーを下ろし始める。
 霞みに包まれ静かな湖面が広がる支笏湖、文句の付けようのないキャンプコンディションだったのである
 車を停めたところからテントを張ろうと考えている場所までは、約400m。カヌーの中にキャンプ道具を積み込んで、そこまで運ぶことにした。
 荷物は少ないものの、焚き火もメインなので、大量の薪にダッチオーブンと、前後に浮力体を付けたままのカヌーでは一度に積みきることができず、2往復して全ての道具を運んだ。
 途中に釣り人がいたので、その邪魔をしないように大きく沖に出てから回りこむ。
 歩いて運ぶにはうんざりする様な距離だけれど、カヌーで漕げば何の苦労も無い。
 遠くの景色を真っ白に変えてしまうような霞が立ちこめる支笏湖、そのべたなぎの湖面をカヌーで進むのは最高に気持ちがいい。
我が家のサイト キャンプでのこんな楽しい荷物運びは、これまでにも経験したことが無いだろう。
 そうしてテントの設営。
 誰もいない湖岸、最高のロケーション、何処にテントを張ろうが最高のキャンプは約束されたようなものである。
 それでも何となく一番端っこにテントを張ってしまうのは、我が家の悲しい習性だろう。
 周辺の浜は砂ではなくて小砂利なので、そのまま寝そべっても汚れないのがまた気持ち良い。
 設営を終えると、早速かみさんは一人で湖に漕ぎ出す。
 白く霞んだ湖にポツンと浮かぶカヌー。何とも幻想的な風景である。
 遠くには三角の帆が見えている。最初はヨットかなと思っていたが、どうやらカナディアンカヌーに帆を立ててセーリングしているようである。
 今日の風景には、その白い三角帆がとても溶け込んで見える。
 支笏湖の水は飽くまでも透明で、これから冬にかけて更にその透明度を増していくかのようだ。
 かみさんの乗ったカヌーが岸に近づいていくると、その影がくっきりと湖底に映っていた。


霞んだ湖にポツンと浮かぶカヌー
何処までも澄んだ支笏湖   真っ白な風景の中をカヌーで進む
  カヌーが浮いているようだ
 

 昼はお湯を沸かしてカップ麺を食べる。
 コンビニ弁当にしようかとも思ったけれど、最近の店名入りカップ麺はとても美味しいし、暖かいものを食べたかったのでカップ麺に軍配が上がったのだ。
 昼食の後は温泉へ。支笏湖温泉街の山側に位置する、源泉かけ流しの北海ホテルのお風呂に入る。
水鳥と帆かけカヌー 男湯、女湯ともに貸切り状態で、まったりと美肌の湯を楽しむことができた。
 サイトに戻ってくると直ぐに、クーラーボックスの氷の下からビールを取り出す。
 それが「金麦」だったのには、ちょっとガッカリしたけれど、かみさんの「先週はお金を沢山使ったのだから我慢しなさい」との一言に納得して、良く冷えた「金麦」をグビッといただく。
 釣り人が数名、黙々とキャスティングを繰り返しているが、魚が釣れた様子は全くない。
 カヌーに乗っていても魚影は全く見えず、そのルアーに魚がヒットする確立はかなり低そうである。
 でも、沖の方にポツンと浮かんでいる水鳥は、何度も潜水を繰り返して忙しそうだ。
 その辺りにだけは魚が群れているのかもしれない。
 私達のいる湖岸だけが、時々陽射しが遮られる。
 ちょうど日陰を作るようなところに、小さな雲が浮かんでいるのである。直ぐに風に流されていくのに、何故かその場所から雲が消えることはない。
湖に浮かぶ雲 周りの地形の関係からなのか、支笏湖の空のその一点だけが雲の発生ポイントになっているようである。
 周りを見渡すと、湖の遠くの方にもそんな場所が何箇所かあるみたいだ。
 直ぐに消えるだろうと思っていた支笏湖全体を覆った靄がなかなか晴れないのは、そこから次々と霞が湧いてくるからなのだろう。
 太陽がその靄の中に沈んでいけば美しい夕焼けが見られるかもしれない。
 しかし、日が傾いてくるに連れて、その沈んでいく場所が山の斜面の中腹になりそうなことが分かってきて、ちょっとガッカリだ。
 自然の流れる時間の中に身を置いて、何もしないでボーっと過ごすキャンプ。心から幸せを感じるキャンプである。


フウマも一緒   霞む風景

 そんな幸せな気分を壊すように、西の空に灰色の雲が低く広がり始めた。
 これでは山の斜面に沈む夕日さえも見られなくなりそうだ。
 更に雲は広がり続け、これでは星空も駄目かもしれないとガッカリしてしまう。
私もカヌーで ところが、西の空に固まっていたその雲が、いつの間にか散り散りになって消えかけていた。
 雲の出現と共に湖面に広がってきたさざ波も次第に治まり、また元のようなぬめりのある湖面へと戻ってきた。
 西の空に傾いた太陽が再び姿を現す。
 このチャンスを逃さないように、私もカヌーで漕ぎ出した。
 上空の雲は次々と姿を消していく。
 私が岸まで戻ってくると、待ちかねていたようにかみさんがまた乗り込んで漕ぎ出していく。
 その頃には、雲はほとんど消えて無くなっていた。
 風で流される訳ではなく、微妙な大気の温度差により、雲が作られたり消えたりしているのだろうか。
 冬が間近に迫った11月のこの時期、突然訪れた小春日和の悪戯なのかもしれない。
 逆光の中、キラキラと輝く湖面にカヌーが映え、何とも言われぬ美しさだ。


光る湖面とカヌー

 今度は私がバウに乗って二人でカヌーを漕ぐ。久しぶりのバウマンになった喜びで、私が力一杯のパドリングをしていたら、後ろのかみさんから「今日はゆったりカヌーでしょ!」と怒られた。
 そのままカヌーの上から、日が沈んでいく様子を眺める。
 少し風が出てきて、湖面に細波を立てる。
 夕日がその小さな波の一つ一つを輝かせ、それらが連なって支笏湖の湖上に光の道を作り出す。
 太陽が山の陰に完全に隠れてしまうと、湖上の空気が突然冷たくなったような気がする。


山陰に沈む夕陽   湖面の光の道
残照に染まる空  

 これからは焚き火の時間である。日が沈んだ後も、徐々に赤味を増し続ける空の様子を眺めながら、ダッチオーブン料理の準備をする。
ダッチオーブンで料理中? レシピを見ながらダッチ料理を作ることもあるかみさんだけれど、今日はまるで思いつきだけでナベの中に食材を放り込んでいるようだ。
 後は焚き火の上に吊るして、ビールを飲んでいるだけで良い。
  暗くなるのが早い秋のキャンプでは、ダッチオーブン料理が一番である。
 ビールからワインへ飲み変える頃、ちょうど料理が出来上がった。
 時折山の中から響いてくるエゾシカの鳴き声に耳をすませながら、鳥もも肉の煮込み料理を美味しくいただく。
 と言いたいところだけれど、木々が葉を落とした今時期は、道路を走る車の音がまともに響いてくるので、それが結構耳障りだったりする。
 こんな時はラジオを聴くしかない。
 今日は日ハムVS巨人の日本シリーズ第6戦をやっているので、キャンプに来ていてもそれだけは気になってしまう。
 でも、負けていたものだから、日ハムのチャンスの時だけラジオのスイッチを入れるような感じである。
焚き火風景 上空には星空も広がっていた。
 邪魔な明かりのない場所では、自分達のランタンの明かりさえ遮れば、直ぐに真っ暗闇の星空が楽しめるので最高だ。
 残念ながら日ハムは負けてしまったけれど、自宅のテレビで巨人の胴上げを見るよりは良かったかもしれない。
 気持ち良く酔ってテントの中へ潜り込んだ。

 寝袋の中でうつらうつらしていると、テントの前室からポツポツと音が聞こえてくる。
 「雨が降るはずはないし、少し風が吹いているので、そこにぶら下げてあったハンガーが揺れる音だろう」
 あまり気にしないで再び眠りに落ちる。
 隣りのテントでかみさんが起きる気配に目を覚まさせられる。
 テントの中が少し明るいのは、夜明けのせいではなくて、月明かりによるものだろう。
朝の月 「晴れてるかい?」と声をかけると、「頭の上に月が出てるわよ!」と返事が返ってきた。
 曇って何も見えないような朝なら、なかなか起きる気にもなれないけれど、かみさんの返事を聞いて直ぐに跳ね起きた。
 インナーテントの入り口を開けると、フライシートの内側にびっしりと付いた大きな水滴に驚かされる。
 夜中に聞こえてきた音は、あまりの結露のため、その水滴が雨となってテントの中に降っていた音だったのである。
 ちょうどその下に置いてあったBYERの椅子の座面が、二つともびしょ濡れになっている。
 空では、まだ丸みを感じられる二十夜の月が明るい光を放っていた。
 焚き火に火を付け、その火にかざして椅子の座面を乾かす。
 濛々と白い湯気を上げて椅子は直ぐに乾いてしまった。
 支笏湖の水で顔を洗う。
 とっても爽快な気分だ。
 多分、洞爺湖の水で顔を洗っても、こんな爽快感は得られないだろう。
 水が全然違うのである。
 前日に汲んでおいた湧き水でコーヒーを入れる。
 サイトの直ぐ裏の山の中腹に、大量の湧き水が流れ出す穴があるのを発見したのだ。
 それほど大きな山でもないのに、どうしてこれだけの水量があるのか、不思議な気がする。
 湧き口には取水施設も作られているので、この付近の施設の水はこの湧き水を使っているのかも知れない。
 かみさんに「湧き水で入れたコーヒーは美味しいだろう?」と言っても、曖昧な返事が返ってくるだけだった。
 対岸の空に浮かぶ雲が、一足早く朝の光を受けてほんのりとピンク色に染まり始める。
支笏湖の朝 今日も昨日と同じような天気になりそうだ。
 本日の雲の発生源は、昨日太陽が沈んでいった山の山肌みたいだ。
 山肌から湧き上がった霧が、そのまま空の上の雲に繋がっているのである。
 温度計を見ると8度だった。
 テントを早く乾かしたいので、雑巾で水滴をふき取るけれど、拭いたその後から直ぐに結露してくるほどである。相当に湿度が高いようだ。
 アスファルト舗装の上には水溜りもあったので、もしかしたら夜中に霧雨でも降ったのだろうか。
 でも、テントの結露の状況を見ていると、その水溜りは夜露が溜まってできたような気もしてくる。
 ようやくサイトまで朝の陽射しが届いてきた。
 多分、今回がラストキャンプになると思うので、テントだけは完全に乾かして撤収したいところである。真っ白な霧が、後ろの山を越えて湖岸へと流れ落ちてきそうな様子も見せているので、気が気ではない。
 風も少し強まって、そのおかげで何とかテントも乾かすことができた。
 再びカヌーに荷物を積み込んで車へと戻る。
 帰り道、サイトの後ろにあった山の裏側まで走ると、霧雨がポツポツと降り始めていた。
 際どいタイミングの撤収だったけれど、今シーズンで一番の条件に恵まれたキャンプで今年を締めくくることができ、これで心置きなくウィンターシーズンに心を切り替えることができそうである。



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