そのまま最初の場所にテントを張っていたら、後悔して、もしかしたらサイトの引越しまでしていたかもしれない。
ソロキャンプの、しかも川下り用装備と、通常のオートキャンプ用の装備と、ごちゃ混ぜになって荷室に詰め込まれているのを全て車から降ろした。
テントは小川のソレアードを設営する。
ソレアードの前室部分にシートを敷き、お座敷風にして寛ぐのが、我が家の最近のスタイルである。
そのために、腰掛けた位置が低いBYERの椅子が、今までは物置に入ったままだったのが、今年は大活躍しているのだ。
今日の夕食は途中で買ってきたコンビニ弁当。
川下り中は軽食を取っただけだったので、二人とも無茶苦茶にお腹が空いていて、何かを作って食べるなんて悠長な考えは全くなし。むさぼる様にして弁当を食い尽くす。
何時ものキャンプならばテントを張り終えたところでホッと一息付けるのだが、今日はテントを張り終えて、飯を食べ終えたところで、ようやく一息付くことができた。
ビールを飲みながら、のんびりと荷物の片づけをする。
どうやら、心配していた雨も降らずにすみそうだ。
野良猫が悠然とキャンプ場の奥を歩いていく。
チャリダーが我が家の近くにテントを張り始めた。
いつの間にか日も沈んだようで、辺りが次第に暗くなってくる。
林間にテントを張り、その中にこもって過ごしていると、夕暮れの時間の区切りに気付かないまま時間が過ぎていく。
直ぐ近くで猫の鳴き声が聞こえた。
先程の野良猫らしい。
テントに前足をかけ、メッシュの窓から中を覗き込もうとしていたので、裾を持ち上げてやると、そこからするりと中に入ってきてしまった。
体を擦り付けてきて、やけに馴れ馴れしい。
飼い猫なのだろうか?
思わぬお客さんに私が喜んでいると、大の猫好きのはずのかみさんが、冷たい態度しかとらないのが意外だった。
「これは野良猫よ、こうやってキャンパーから餌をねだりながら暮らしているんじゃない。」
テントの中の食べ物を漁るものだから、おにぎりの残りがあったので、しょうがなくそれを少し食べさせると、美味しそうにガツガツと食らい付いている。
満腹になったようなので、テントの外に出してやると、「にゃあ」と一声鳴いて、他のテントに向けてスタスタと歩いていった。
かみさんが小樽に住んでいた頃、何時もこんな野良猫の相手をしていたので、その扱いには慣れているようである。
「ところでこのキャンプ場って、ペット禁止じゃなかったっけ?ペットじゃなくて野良なら良いのかな?」
そんなことを考えてしまう小さな出来事だった。
キャンプ場の門限午後7時間際に一組のキャンパーが到着し、辺りが暗いので車のヘッドライトでサイトを照らしながら設営を始めた。
しばらくその状態が続いたので、管理人さんらしき人が注意をしにいったようである。場内通路への車の進入は、荷物の積み下ろし時だけ認められているのだ。
さすがに、ペット禁止も徹底されているだけあって、この辺の管理はしっかりしているなと感心していたが、結局そのキャンパーはその後も30分くらい、同じ状態で設営を続けていた。
なんだかんだ言っても、管理する側よりもキャンパー側の問題の方が大きいのである。
ワインを1本空けて、午後8時には就寝。
翌日も早朝から素晴らしい青空が広がっていた。
今回のキャンプでは、天気予報が全て良い方に外れてくれている。
キャンプ場から近くの悲恋沼まで通じる散策路を歩いていみる。
襟裳岬と聞けば、伐採により砂漠化した土地を植樹により蘇らせようとしている話しが思い浮かぶが、散策路沿いのカシワ林の意外な豊かさに驚いてしまう。
カシワ林を抜けて沼まで出てくると、アオサギだろうか、人の気配に驚いた鳥達が一斉に飛び立ってしまった。
海岸に背の高い展望台が見えたので、そこまで行ってみる。
もっと早起きしてこの上から朝日を見れば良かった、と思いながら下までやってくると、利用時間は午前9時からとなっていたのでガッカリしてしまう。
キャンプ場までの帰り道は、道路の方を歩いてみる。
道路の両側には街路樹が植えられた歩道が整備されているが、こんなところに歩道を作って歩く人なんているのだろうか?
そもそも、ブロック舗装されたその歩道は雑草に覆われて、最初はそこに歩道があることさえ気が付かなかった有様なのである。
街路樹として植えられているナナカマドは、その実を赤く色づかせて、秋の訪れを私達に教えてくれていた。
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