路線バスの終点スコトンに到着。
いよいよここから礼文島トレッキングが始まる。
途中で野宿をする予定の私達は先を急ぐ必要も無いので、まずは売店の中を覗いてみることにした。
特に何かを買うつもりも無かったのに、かみさんがワインのハーフボトルを見つけて「ねぇねぇ、これ良いんじゃない?」
「そんなもの持って歩くつもりか?」
「良いわよ、私が持つから!」
長距離を歩いて、テントを設営して、ホッと一息ついたところで、冷たいビールが・・・、無い。
事前にバックパックの旅をシミュレーションしていても、どうしてもこの状況だけが想像できず、一体どうなるのだろうと心配していたので、かみさんのこの無謀な買い物にもあっさりと同意してしまった。
それにしても、少しでも荷物を軽くするのがバックパックの基本なのに、ビン入りのワインを買うのだから呆れてしまう。
結局そのワインは、私のザックのポケットに収められることとなった。
曇り空の下では、岬から眺めるトド島の風景もパッとしない。
「前に礼文島に来た時は、ここに来たっけ?」
そんな会話を二人で交わしながらも、7年前は車で島に渡っているので、こんな観光地を外す訳がない。
それなのに二人とも、その時の風景がどうしても思い出せなかった。
車での旅は、往々にしてこんなものである。何の苦労も無く目的地に着いてしまっては、そこの風景も心に残るものにはならないのだ。
と考えたものの、実際は二人のボケ症状が進んだだけなのかも知れない。
南へ向かって歩き始める。(7:30)
足の付け根の違和感も、今は殆ど気にならない。
相変わらず、空模様はパッとしないままだけれど、私の心の中には急速に晴れ間が広がってきていた。
途中、鮑古丹へと続く海岸線ルートと、トド島展望台への山道ルートの分岐は、迷わずに花の美しそうな山道ルートへと進んだ。(8:00)
そこからはもう、花園の中を歩いているようなものである。
原生花園定番のエゾカンゾウにチシマフウロ、それよりも目立っているのがレブンシオガマのピンクの花だった。
実はこの時、事前に調べておいたはずなのに、二人ともこの花の名前が思い出せずに、会話の中では「この何とか花は綺麗だね〜」と表現するしかない。
花を見る時は、その名前を知っておいた方が、知らないよりはずーっと楽しめるのは確実である。
そこら中で立ち止まっては写真を撮っているものだから、なかなか先へと進めない。
8時間コースをそのまま歩こうと思ったら、こんなことはしていられない。途中で野宿を予定したのは、こうやってのんびりと歩きたかったこともあるのだ。
花から目を離して、周りを見渡すと、先程までとは全然違う風景が広がっている。ダイナミックに変わっていく風景も、ここのルートの魅力だろう。
|