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礼文島プロローグキャンプ

久種湖畔キャンプ場(7月2日〜3日)

 7年前の礼文島キャンプ。
 デジカメの操作ミスで、せっかく撮影した大量の画像データが一瞬の間に消えてしまい、「写真なんか無くても、礼文島の風景はしっかりと自分の頭の中に焼き付けてあるんだ」と自分を慰めていたものである。
 しかし、1週間前に何処でキャンプをしたのかも思い出せないような現在の状況では、7年前の記憶など無に等しい。
 そこで、今度こそは確実な記憶媒体に礼文島の思い出を残そうと、7年ぶりに礼文島へ渡ることになった。

曇り空のオロロンライン しかし、今年のこれまでのキャンプの例に漏れず、今回もまた天気予報の内容はパッとしない。
 やむなく出発を1日遅らせたけれど、太陽の姿を拝めるのは後半になってからのようだ。
 10時50分稚内発のフェリーに間に合うように、朝の4時半前に札幌を出発。
 高速道路は利用せずに、日本海側のオロロンラインを一気に稚内まで北上する。
 ドライブルートとしては最高に気持ちの良い日本海オロロンラインだけれど、曇り空では一向に気分が盛り上がらない。
 一ヶ月前にも、焼尻島へ渡るため、同じ様にどんよりと曇った空の下を羽幌まで走ったばかりなので、尚更である。
 天塩町から先の海岸線の道は、私が北海道の中で一番好きなドライブルートである。
 でも、それもやっぱり天気が良ければの話であって、沖に浮かぶ利尻島の姿が無ければ、その魅力も半減してしまう。
 この時期に沿道を彩るエゾカンゾウの花も、数日前の大雨の影響なのか、萎れた花が黒ずんでいて見栄えがしない。
 浜勇知の遊歩道を歩いて、ようやくエゾカンゾウの咲く美しい風景を楽しむことができた。


利尻島が見えない   浜勇知の風景
 

 そうして、出航時刻の1時間半前に、余裕を持って稚内に到着。
 フェリーターミナル駐車場の利用料は1日千円。今回は3泊4日で島に渡るので、駐車場代だけで4千円も取られることになる。
 ターミナルから少し離れるけれど、無料の駐車場に停めておくことにした。
 4日間も無人の場所に停めておくのはちょっと不安だったけれど、そこにはキャンピングカーなど沢山の車が既に停められていて、悪戯されるとしたら我が家のボロ車よりもそんな車が先に狙われるのは確実だ。
徒歩旅のスタート ザックを背負って、フェリーターミナルを目指す。いよいよここからが、徒歩旅の始まりである。
 前日に家で計ったザックの重さは15キロ。そして、ウエストバッグに入れた重たい一眼レフカメラ。島に渡れば、ここに水も加わって、総重量は20キロ近くになりそうだ。
 歩き始めて直ぐに、太腿の付け根付近に違和感を覚え、この先の旅がちょっと不安になってきた。

 稚内のフェリーターミナルは去年の5月に移転オープンしたばかりで、まるで空港ターミナルの様な雰囲気だ。
 私達が入った時は2階の待合室もまだ閑散としていたけれど、団体客がやってくると急に賑やかになってきた。
 出航10分前にそこで改札が始まる。まるで千歳のターミナルで飛行機に搭乗する時みたいで、羽幌から焼尻島に渡るのに乗ったフェリーとは大違いだ。
 でも、改札を抜けた先は、階段を降りてターミナルビルの外に出て、結局は普通のタラップから船に乗り込むことになる。
 足の悪い人には、階段の上り下りが余計な負担となるだけで、あまり人に優しい施設とは言えなさそうだ。


立派な待合室   結局はここからフェリーに乗り込む

 6月7月の礼文行きフェリーは朝の時間帯は大混雑するみたいだけれど、昼にかかるこの便は空いているので、2等船室でもゆったりと寛ぐことができる。
雲に隠れる礼文島 12時45分に礼文島に到着。
 低く垂れ込めた灰色の雲のため、海岸沿いの集落の様子しか見ることができない。
 名物の桃岩荘YHのお出迎えも少人数で、以前の元気の良さが無くなってしまった気がする
 何となく寂しさを感じながらフェリーから降りてターミナルの中に入っていくと、その中は小さなザックを背負った人達で結構な賑わいだった。
 「何だこれ〜、おじさんとおばさんばっかりだ!」と私が驚いていると、かみさんから「あなたもその仲間の一人でしょ!」と釘を刺される。
 昔の礼文島は、旅をする若者達が訪れる島のようなイメージだったけれど、現在は完全に中高年パワーに席巻されている雰囲気だ。
 これでは、桃岩荘YHの若者達がいくら頑張っても、影が薄くなるのは如何ともしがたいだろう。
 ターミナル2階の食堂(武ちゃん寿司)は、順番待ちのお客さんで大混雑だったので、周辺で適当な店を探して入ることにする。
 そうして入ったのが「樽っ子」の看板が出ている店。
 ドアを開けた途端、そこはどう見てもスナックの店内。そのままUターンして外に出たい気分だったけれど、覚悟を決めてカウンターに座る。
スナックのカウンターでカレーを食べる メニューを見ると釜飯が美味しそうだったけれど、初日から贅沢はしてられないので、1100円の海鮮カレーで我慢することにした。
 礼文島に到着早々、スナックのカウンターでカレーを食べる図は何か奇妙だったが、この先しばらくは、まともな食事を食べられなくなるので、しっかりと腹ごしらえをする。

 今日の宿泊地は、島の北部の久種湖畔キャンプ場。そこへ向かうバスは15時10分発なので、時間を持て余してしまった。
 後で考えれば、もっと有効に時間を使う行程があったものの、何せ重たいザックを背負ったままでは移動できないとのイメージが強かったので、大人しくバスを待つことにしたのである。
 礼文島のバスは何処でも乗り降りできるので、地元の人が手を挙げてバスを停めては乗ってきて、「○○で下ろしてちょうだい」と、運転手さんとやり取りしている。
 私が、「病院前」の車内アナウンスを聞いて停車ボタンを押すと、運転手さんが「次で降りるの?」と聞いてきた。
 「はい、キャンプ場に行くので」と答えると、「それじゃあキャンプ場の前で停めてあげるよ」
 万事がこんな調子である。
 停めてもらった場所とバス停は、100m程しか離れていなかった。

テントを張り終えてビールをグビッ キャンプ場にはソロテントが数張りと、オートキャンパーらしき車、それにバンガロー利用者の先客もいたが、いたって静かな佇まいである。
 湖から吹き付ける強い風と、鉛色の空。
 「陰鬱な佇まい」と言い替えた方が、この場に似合っているかもしれない。
 風を避けるように、湖畔の草地の陰にテントを設営する。
 その直ぐ横には、板張りの個別サイトがあるものの、どう見ても今日はそこを利用するキャンパーも居なさそうなので、巨大なテーブルとして使わせてもらうことにした。
 設営が終わったところで、礼文島到着を祝ってビールで乾杯。
 フェリーターミナルで買ってきたビールは、バスに乗っている間にぬるまっていた。寒い屋外で飲む冷たくないビールは、全然美味しくなかった。

町営住宅が目の前に見えるサイト それにしても、礼文島にやってきた実感が全然湧いてこないのは何故だろう。
 中高年で混雑するフェリーターミナル、スナックで食べるカレー、路線バスに揺られ、町営アパートが丸見えのテントサイト、そして暗い空。
 これで礼文島を実感しろと言うのは、確かに無理かも知れない。
 礼文島らしき風景に、まだ一度も触れていないのである。
 湖畔の遊歩道を歩いてみることにした。
 急な階段を登って行くと、眼下に久種湖の全景が見渡せるようになる。
 強風が作り出す波紋が湖面全体に広がり、とても寒々とした風景である。
 これが、静かな湖面に真っ青な空が映しこまれていれば、全然違った風景に見えるのだろう。


久種湖

レブンシオガマ でも、遊歩道沿いに咲く花々が、ようやく礼文島に来ている事を実感させてくれた。
 レブンシオガマが密生して咲いている場所を見つけて、感激してカメラを向ける。
 翌日からたっぷりとその姿を味わうことになる礼文島の花々。この時はまだ、一輪の花を見つけただけで単純に喜んでいたのである。
 坂道を登りきったところに展望台があった。
 この付近が礼文森林の丘と名付けられていて、平成14年に新しく整備された施設らしい。わざわざここを歩くのは、久種湖のキャンプ場利用者くらいだろう。
 晴れていれば、眺めもかなり良さそうなところだ。
 その先の遠くの丘にも展望台らしき施設が見えていたが、歩くのは明日が本番になるので、今日はここで引き返すことにした。


花にカメラを向ける   船泊の町が眼下に見える

 キャンプ場に戻って、そのまま近くの商店「ファミリーマートよこの」まで行ってみる。
 酒類は置いていないものの、冷凍食品などそれなりの品揃えがあり、これならばここで夕食の食材も調達できそうだった。
 現地で何も手に入らないことを想定して、今日の夕食用にフリーズドライ食品を持参していたので、荷物を少しでも減らすためにもそれを食べるしかない。
 冷えたビールを売っている店は更に遠くになるので、これもフェリーターミナルで買ってきたぬるいビールで我慢するしかない。ぬるいビールが美味い? 私は、オートキャンプもバックパックキャンプもそれほど大きな違いは無いと思っている。
 でも例外がただ一つ。
 何時でもクーラーボックスから冷えたビールを取り出せるか否か、このことによって両者のキャンプが全く別次元のものに変わってしまうのである。
 質素な夕食を済ませ、ぬるいビールを飲み干し、早起きの疲れもあって、8時前にはそれぞれのテントにもぐりこんだ。

 朝、目覚めると、テントのフライに大きな水滴が付いているのが目に入った。
 私は気が付かなかったけれど、夜中には音が聞こえるくらいの霧雨が降っていたとのことである。
 焼尻島でのキャンプ、愛別でのキャンプに続いて、また雨のキャンプとなってしまった。
 もう、雨にはすっかり慣れっこになっているので、特にガッカリもしない。何時ものキャンプと、何ら変わりの無い朝を迎えただけの話しである。
 既に雨は上がっていたので、少しでも早く乾くようにと直ぐにテントの水滴をふき取る。
 朝のコーヒーと朝食を済ませた後は、それぞれのテントに入って、ザックに荷物を詰め込む。
 バックパックの旅では、朝のこの作業が何だか神聖な儀式のようで、気持ちの引き締まる思いがする。
 そうして全ての荷物が一つのザックの中に収まった。

二人のザック

 気温も低く、周りも濡れているので、雨具を着込んでザックを背負う。
 スコトン行きのバスの時間は7時3分。
 バス停まで歩く途中、稚内で感じた太腿の付け根の違和感がまた蘇ってきたので、バスが来るまでの間、入念に足のストレッチをする。
 今日は20キロ近くを歩かなければならないのに、今からこれでは先が思いやられる。
スコトン行きのバス 時間どおりにやってきたバスに、地元の人がしていたように手を挙げて合図を送る。
 キャンプ場宿泊者でこのバスに乗ったのは、私達だけだった。
 バスの乗客は10人程度で、思っていたより少ない。皆、デイパック程度の小さなザックを背負っていて、8時間コースか4時間コースを歩く人達なのだろう。
 もちろん、私達のような大きなザックを背負っている人は誰もいない。
 「何でわざわざ、そんな大きな荷物を背負って歩くの?」との目で見られているかもしれない。
 でも、私達夫婦が今回礼文島にやってきた大きな目的は、8時間コースを歩くことではなくて、その途中の何処かで野宿をすることなのである。
 一日で歩けるところを、野宿をするためだけに、わざわざ重たい荷物を背負って歩くなんて、普通の人には理解できない感覚だろう。
 我ながら物好きな夫婦だと思う。
 そうしてスコトン岬に到着。
 いよいよここから、私達夫婦の本当の旅が始まる

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