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癒しの新緑キャンプ

仮称良いところ(5月15日〜16日)

 週末があまりにもハードだったので、今週末は静かな場所でのんびりと過ごそう。
 既に桜も散り、季節は新緑のシーズンへと変わっていたので、できれば新緑の美しい場所が良い。
 そう考えて、私が決めた場所は桂沢湖のキャンプ場だった。
 今回は金曜日の午後から出発する予定だったので、かみさんが「平日に泊まるのなら支笏湖とか洞爺湖でも良いんじゃないの?」と言ってきたけれど、私の考えは揺るがない。
 桂沢湖には私自身、特別な思い入れがあるのである。

達布山からの展望 サイトを確保するために急いで現地へ到着する必要もないし、こんな時は普段は通り過ぎてしまうような場所に寄り道するのが楽しい。
 まず向かったのは、三笠市の達布山展望台。高速道路を三笠インターで降りて桂沢湖経由で富良野へ向かう時、山の上に見える展望台が何時も気になっていたところだ。
 1車線しかない細い舗装道を登っていくと、山頂の展望台直下の駐車場へと到着した。
 そこには観光客なのか、地元の方なのか良く分からない親子連れが一組。平日のこんな場所に先客がいたのには驚かされた。
 もっとも、そんなところにカヌーを積んだ車が登ってきたので、相手の方の驚きの方が大きかったかもしれない。
 その展望台からの眺めは、まさに360度のパノラマが広がる素晴らしいものだったけれど、歩くたびに大きく揺れるのが何とも気持ち悪かった。
 展望台そのものもかなり老朽化しており、数年後には立ち入り禁止の措置がとられるかもしれない。
 そんな、今はもう登れなくなったような展望台を、道内のあちこちで見てきているので、ここの展望台の先行きも何となく分かってしまうのである。

唐松駅 三笠と言えば炭鉱遺産。
 次に向かったのは、これも何時も気になっていた北炭幌内炭鉱幌内立坑櫓である。
 こちらは残念ながら、周辺が民間会社の敷地のため、道路上からしかその姿を楽しめない。
 その後、桂沢湖向かう途中、道路際に「唐松駅」の看板がかかった風変わりな建物を見つけて、車を停める。
 かみさんは、昔の悲惨な事故のニュースを思い出すので炭鉱遺産は嫌いだと言うが、鉄道遺産は好きなのか、直ぐに車を降りて駅舎の中を覗いている。
 鍵がかかっていて、その中には入れないが、私が駅跡で一番気持ちを惹かれるのはプラットホームなので、そこにさえ立てれば満足できる。

 今度こそ桂沢湖へ真っ直ぐに向かおうと思っていたら、幾春別で立杭の姿を見かけて、またまた寄り道。
 ここは住友奔別炭鉱立坑櫓、周辺の建物も含めて全てが廃墟となって聳え立ち、凄い迫力だ。
住友奔別炭鉱立坑櫓 廃墟フェチ気味な私なので、ここがすっかり気に入ってしまった。
 入り口の門にチェーンが張られ、立ち入り禁止と書かれてあったが、その周辺の何処からでも中に入ることができるので、恐る恐る足を踏み入れてみる。
 風が吹くと、誰もいるはずのない建物の中から、何かが擦れる様な物音が聞こえてきた。
 これだけ巨大な廃墟を目の当たりにしたのは、初めてである。
 そのまま映画のセットに使えそうな美しさ。
 興奮気味な私に、かみさんは車から降りようともせずに呆れ顔をしている。
 許されるものならば、この廃墟の中を自由に歩き回りたいものだと、そこに未練を感じながら、今度こそ桂沢湖へと向かった。


住友奔別炭鉱立坑櫓

 そしてようやく桂沢湖へ到着して、キャンプ場へと続く急な坂道を車で降りていく。
 念のため、途中にあるトイレや水場をチェックすると、何とそれらの施設は固く閉ざされたままである
 今頃になって、「キャンピングガイドに書かれていた、6月1日オープンと言うのは本当だったんだ」と驚いている私だった。
満水の桂沢湖 「前年のガイドブックには5月1日オープンと書かれていたし、仮にも観光地である桂沢湖がGW期間中に使えないわけが無い、今年のキャンピングガイドには6月1日なんて書いてあるけれど、それは建前だけであって、本当はトイレも水場も5月1日から使えるようになっているに決まってる」
 勝手にそう思い込んでいた私が甘かった。

 ここに泊まったのはもう20年近くも前の話になる。
 その時の紅葉の美しさが忘れられずに、その後、一度再訪したけれど、自分達の狙っていたサイトに先客がいたため、別のキャンプ場へ変更するしかなかった。
 紅葉の美しい場所は、必ず新緑も美しいものである。
 そう考えてここまで来たのに、本当に残念だった。
 悔しいけれど、自分達がテントを張るつもりだった場所だけでも見ておくことにする。桂沢湖は完全な満水状態で、通路際の柵ギリギリまで湖面が迫ってきていた。
 その通路を奥まで進むと、斜面の下の方にかろうじてテント一張り分の平らなスペースがある。
 「こんなところだったかな〜」
 そこは、永い年月を経るうちに私の頭の中に出来上がっていたイメージとは、全然違う場所だった。
 何だか、これでようやく桂沢湖の呪縛から逃れられたような、晴々としたした気分で、次のキャンプ場を探すことにした。
 それにしてもこの様子では、ここが閉鎖されるのも時間の問題のような気がする。

設営完了 変更先のキャンプ場はすんなりと「良いところ」に決まった。(正式なキャンプ場では無いため仮名とします)
 最初からその案も出ていたけれど、何処にも増して桂沢湖が優先されていたのである。
 あちらこちらへと寄り道し過ぎた後でのキャンプ場変更だけれど、今時期は日が長いので、少しくらい時間が遅くなってもそう慌てることもない。
 午後4時過ぎにキャンプ場に到着。
 当然のことながら、平日のここにキャンパーがいる訳はない。
 綺麗に手入れされた芝生だけが、太陽の陽射しに暖かく照らされていた。
 しかし、その陽射しが照らしているのはサイトの半分だけ。
 既に太陽は西に傾き、サイトに迫る森の木々に隠れようとしていた。
 ここのサイトは東西を山に囲まれているので、日の入りが早く日の出が遅い。
 明朝のことを考えれば、朝日が早く射し込むような場所にテントを張るのが良いのだけれど、そこは既に日が沈んでしまっている。
 せっかく太陽の陽射しがある中で、わざわざ日陰の暗い部分を選ぶ気にはなれず、少しでも日が長くあたっていそうな場所にテントを設営した。


日が陰る場内

 冴え冴えと晴れ渡った青空、サイトを囲む山肌は赤や黄色の、春紅葉とも呼ばれる新緑に染まっている。一つ一つの木々を観察してみると、一番赤く色づいて見えるのはイタヤカエデの新緑だった。
 他の樹木も、それぞれが特徴のある芽吹きの形態をしていて、なかなか面白い。
良いところだ! そんな新緑の木々の間から響いてくる野鳥達の歌声。
 下手なキャンプ場よりも、ずーっと落ち着ける。
 見聞録のBBSでは、ここは「良いところ」として通っているけれど、正にそのまんまの「良いところ」である。
 そんなサイトのあちこちに、直火の焚き火跡が黒々と残っている。「ここで直火はやらないだろ〜」って言いたくなってしまう。
 以前はここのトイレには温風乾燥機まで取り付けられていたけれど、今はその壁にはボルトの穴が開いているだけだった。
 管理人もいなく、キャンプ場としても公表されていないこのような場所。
 利用者のマナー、にその存続がかかっていると言えるだろう。

 日が沈むと急速に気温が下がってきたので、焚き火の隣りに小テーブルを置いてそこで夕食を食べることにする。
焚き火の時間 今時期は暗くなるのも遅いので、ゆっくりと食事を・・・、と言いたいところだけれど、今日の夕食はスープ系メニューなので、冷めない内に食べなければならない。
  ガツガツとかっ込んで、慌しい夕食を終えた。
 食事が済めば、後は焚き火のそばでのんびりと時間を過ごすだけである。
 今日は空気が澄んでいるので、美しい星空も楽しめそうだ。
 既に場内もかなり暗くなってきたけれど、一向に照明に明かりが灯る様子が無い。
 「トイレや水場は開放していても、場内照明は消しているのかも」と期待していが、残念ながら午後7時ジャストに照明灯が点灯してしまった。
 誰もいない場内に、焚き火の爆ぜる音が響き渡る。
 そんな静けさを楽しんでいたら、砂利道を登ってくる車の音が聞こえてきた。
 「こんな時間に、まさかキャンパー?」と驚いていると、大きなキャンピングトレーラーを引いた車がサイトに入ってきた。そしてその後ろからももう1台の車が。
明る過ぎる場内 全くの予想外の出来事に呆然としてしまった。
 我が家のテントの直ぐ隣りに停まったキャンピングトレーラー。さすがにそこでは近すぎると思ったのか、反対側へと移動したものの、なかなかトレーラーの置き場所が決まらないようだ。
 そのうちに若い男性がこちらにやって来て、「すいません、騒がないので隣に停めさせてもらっても良いですか」と聞いてきた。
 団体キャンパーかと思ったら、礼儀正しい家族連れキャンパーの方だったのでホッとした。
 後ろから付いてきた車は奥さんが運転していたらしい。
 キャンプ場独占の楽しみは消えてしまったけれど、静かな夜に変わりは無かった。
 その夜はかえって、私達夫婦の話し声の方が大きかったかもしれない。
 背中がゾクゾクと冷えてきたので温度計を見ると2度である。どうりで寒く感じるわけだ。
 明朝も早く目覚めそうなので、10時にはテントの中にもぐりこんだ。

 鳥のさえずりに目を覚まさせられる。
 そんな心地良さにまどろんでいると、すっきりと目覚めた時には既に5時を過ぎていた。せっかくのキャンプなのに、家にいる時よりも朝寝坊するとは勿体ない。
焚き火で暖をとる テントから出ると、外に置いてあったものは全て、霜に覆われて真っ白になっていた。
 そう言えば昨日、場内の隅の方で芽を伸ばしていたイタドリが妙に黒ずんでいるのが気になっていたけれど、どうやらそれは霜にやられたものらしい。
 新緑の季節を迎えてからの霜とは、過去のキャンプでもあまり記憶が無い。

 大型のキャンピングトレーラーがもう1台増えていた。
 私はぐっすりと寝ていたので気が付かなかったけれど、かみさんの話では夜中の11時頃に到着したらしい。
 仕事を終えてからやって来たようで、話を聞いてみるとここを結構利用されているとのことである。
 誰もいないキャンプが楽しめたのはもう以前の話しで、ここの存在もかなり知られてきたようだ。

 ダム湖にカヌーを浮かべる。
 ダム湖ではカヌーが禁止されているところも多いので、一応は周辺をチェックしてみたけれど、何処にもカヌー禁止とは書かれていない。
カヌー散歩 それでもかみさんは「管理の人が来る前にこっそりと乗りましょう」と、何だか悪いことでもしているような様子である。
 静内湖でカヌーに乗ってキャンプ場の管理人のおばさんに叱られたことがあるので、ダム湖でカヌーに乗ることに罪悪感を感じているようだ。
 ここのダム湖もほぼ満水となっているようで、おかげでカヌーを出すのにもちょうど良い場所があった。
 淡い緑の衣をまとったヤナギの木が、まるで水面から生えているかのように枝葉を広げている。
 対岸に渡って細い入り江のような場所に入ってみることにした。
 立ち枯れたマツが水面から立ち上がる姿は、朱鞠内湖を思い出させる。
 思いのほか奥行の深い入り江だった。
 朝日が新緑の木々を照らし、湖面に写ったその風景が静かにゆらゆらと揺れている。
 「あっ!カワセミ!」
 かみさんが指差す先を見ると、湖面に張り出した枝の途中に青い鳥がとまっていた。
 音を立てずにカヌーをゆっくりと近づけようとすると、その気配に気が付いたカワセミは、直ぐに飛び去ってしまった。
 湖岸に近づいてみると、行者ニンニクの畑になっている場所があった。カヌーに乗ったまま手を伸ばせば、それを収穫することができる。
 好きな人ならば大喜びするところだろうけれど、我が家はその中の1本を採って匂いを嗅ぎ、「臭いわね〜」、「そうだね〜」程度の反応で終わってしまう。


美しい風景

トンビとカラスの戦い サイトに戻って朝食を食べていると、私達の頭上からけたたましい鳴き声が聞こえてきた。
 トンビが2匹のカラスに執拗な攻撃を受けているのだ。
 近くの木にトンビが巣を作っていて、カラスがそこからトンビを追い出そうとしているのだろうか。
 それともカラスの巣を襲ってきたトンビを、カラスの夫婦が追い払っているのだろうか。
 でも、どうしてもカラスの方が悪役に見えてしまう。
 我が家の隣のゴミステーションを荒らしまくり、それを追い払おうとするかみさんを何時も小馬鹿にしているカラス。
 フウマがかなり弱ってきた時、その後ろをついて回って、お尻を突っつこうしたことさえあった。
 それ以来、カラスだけは憎たらしくてしょうがないのだ。
 何時終わるとも知れないその戦いが気になって、ゆっくり朝食を食べることもできなかった。

ダム湖沿いの林道 食後は、ダム湖沿いの林道を歩いてみることにした。
 目的はたらの芽。サイトの直ぐ横で一握りのたらの芽を収穫できたことに気を良くして、少し欲が出てきたのだ。
 行者ニンニクにはあまり興味が湧かないけれど、山菜の王様「たらの芽」となるとやっぱり食欲をそそられる。
 しかし、たらの芽はなかなか見つからないし、途中から湖の様子も見えなくなって歩いていても楽しくないので、途中から引き返すことにした。
 帰り際にかみさんがたらの木を見つけて、これで二握りのたらの芽となった。
 夕食のおかずにするのにはちょうど良い量で、我が家にとってはこれで十分なのである。
 大量の山菜を収穫して塩漬け等で保存する人もいるが、我が家はそんな習慣も無く、旬の山菜を一、二度食べることができれば満足できるので、量を採る必要も無い。
 でもやっぱり、もしも大量のたらの芽があったとしたら、大喜びでそれを収穫することになるのだろう。

 どうせ歩くのなら景色の良い場所を歩きたかったので、テントを撤収して万字炭山の森林公園に行くことにする。
 途中でパン工房ミルトコッペに立ち寄る。
 もう11時を過ぎていたので、予約客の分しか残っていなかったけれど、たまたま予約数を間違えて一つだけ多く焼いたレーズンパンが有ったので、それを売ってもらえた。
 それにしてもこんな山奥にもかかわらず、パン屋として営業できているのが信じられない。
 それだけ、美味しいパンを作っていると言うことなのだろう。

新緑に包まれる集落 旧万字炭山付近に残る集落は、新緑に染まった山々に囲まれ、とてもほのぼのとした雰囲気が漂う。
 実際にここで暮らしていくには厳しいものもあるのだろうが、何だか心が癒されるような気持ちがする土地である。
 以前は民家だったのだろうか。道路際に残された、コンクリートが崩れかけた廃屋。
 ツルウメモドキのような植物が絡み付いた、そんな廃屋にさえ親しみを感じてしまう。
 森林公園の中は案内板も整備されていないので、適当に見当を付けて車を走らせるしかない。
 道幅が極端に狭くて急勾配の道に迷い込み、「こりゃ参ったな〜、何処かでUターンできるだろうか」と思っていたら、その道の終点は広々とした駐車場になっていた。
 知っている人でなければ、たどり着けないような場所である。
 その駐車場から丸太階段の園路が伸びていたので、早速そこを歩いてみる。
遊歩道を登る 新緑の木々に覆われて、気持ちの良い園路だ。
 しばらく登っていくと分かれ道があり、「展望の森」と書かれた看板の先には、天に向かって真っ直ぐに伸びるかのような丸太階段の道が続いていた。
 「よし、面白そうだから登ってみよう!」
 と勇んで登り始めたのは良いけれど、丸太階段を何処まで登ってもその先が見えてこなくて、本当に天まで届いているんじゃないかと思えてしまう。
 「もしかしたらこれって、ずり山じゃないの?」
 ようやくその事実に気が付いた。
 新緑の山の中をのんびりと散策するつもりでやってきたのに、思わぬハードな山登りとなってしまった。
 ここまできたら、ずり山の頂上まで登るつめるしかない。
 赤平の方には777段の階段が付けられたずり山があると聞いて、面白そうだから近くに行った時にでも登ってみようと以前から考えていたけれど、その前にここでずり山に登ることになるとは思いもよらなかった。
 そうしてやっと頂上に到着。
 苦労して登っただけの甲斐がある景色が広がっていた。
 帰りには、段数を数えながら降りたけれど、直線部の段数だけでおよそ770段。
 何だか赤平のずり山に対抗して階段を付けたかのような段数である。
 でも、そこから駐車場までまだしばらく階段が続いているので、段数勝負をするのならこちらに軍配が上がりそうだ。


天に伸びる階段   ずり山頂上で

 最初の予定では、桂沢湖に泊まって、その後はシューパロ湖の方まで足を伸ばすつもりだったのが、全く違う行程になってしまった今回のキャンプ。
 まあそれは何時ものことなので大して気にもならず、一番の目的だった新緑の風景だけはたっぷりと楽しむことできて、心を洗われるような癒しのキャンプになった。
 ただ、キャンプから帰ってきた翌日、ずり山の不規則な階段を下りた影響でふくらはぎを痛めてしまったかみさんは、歩くたびに悲鳴を上げていたようである。

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