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それぞれの焚き火ポロトの森キャンプ

ポロトの森キャンプ場(4月18日〜19日)

 フウマのいない生活が始まって、はや一ヶ月が過ぎた。
 今でも仕事から帰ってくると、いるはずのないフウマの姿を探して、部屋の中を見渡してしまう。
 この一ヶ月、別に喪に服していたわけでもないけれど、そろそろフウマのことを忘れてキャンプに出かけるにも良い季節になってきた。
 この時期にキャンプをしようと考えて、場所選びに迷うことは殆ど無い。雪中キャンプの季節も終わり、GWを間近にして、オープンしているキャンプ場は道内に僅かしか無いのである。
 その限られた数の中から、今回は久しぶりに白老ポロトの森キャンプ場へ行くことにした。
 かみさんは何か考えがあるようで「厚真大沼が良いわ」と言っていたが、その考えていることは大体想像が付く。
 私としてはそのことよりも、買って間もない一眼レフカメラの被写体が周辺に沢山ありそうな、ポロトへ行きたい気持ちの方が大きかった。
 それに、今まではここがペット禁止のキャンプ場なので、人の少ないシーズンオフに管理人に頭を下げながらやっとの思いで泊まらせてもらっていたのが、これからは堂々と胸を張ってキャンプを楽しめるのである。
そして、せっかく高速道路料金が安くなったので、その恩恵にあずかれる場所なのも魅力だった。

 9時頃には家を出ようと話していたのが、半年振りのキャンプに気持ちも弾み、8時半には全て用意が完了して出発することとなった。
 白老インターのETC出口で「ごりようりょうきんはせんえんです」の音声を聞いて、何となく嬉しくなる。
 家を出てからキャンプ場に付くまで1時間ほど、我が家にとって北海道の高速道路はとてもありがたい存在である。
 この時間ならば当然一番乗りだろうと思っていたのに、管理棟前には車が1台停まっていた。
 「まさか、キャンパーじゃ無いだろう?」
 しかし、チラッとその車の荷室を覗き見ると、キャンプ道具らしきものが積んであるようだ。
 受付を済ませると、その車が場内へと入っていくところだったので、追いかけるように直ぐにその後を追った。
 「多分、今時期ならバンガローでも利用するんだろう」
 ところが、その車はバンガロー前をあっさりと通り過ぎ、テントサイトの方へと走っていく。
 「あ〜、あの場所を先にとられてしまう〜」
 車1台がやっと走れるような狭い道だけれど、気分的には前の車を追い越したいところだった。
 幸いなことに、その車は我が家が狙っているサイトではなくて、場内の一番低くなっているサイト前に停まってくれたのでホッとする。
 そこには既に、同じグループらしいテントが張られていた。
 出足の早さに驚きながらもその車の横をすり抜け、坂道を登ったところにある我が家のお気に入りサイトを目指す。
 目の前の崖下をウツナイ川が蛇行しながら流れ、木々の梢を小鳥達が飛び交い、それに向かってテントを張れば、完全に自分達だけの世界を楽しむことができる。
 ところが坂を登った瞬間、そこに見えたものに一瞬我が目を疑ってしまった。
 何とその場所にも、既に先客のテントが張られていたのである。

我が家のサイト ここのキャンプ場で他の場所にテントを張ることは全く考えられなかったので、先客の目障りにならない範囲で近くにテントを張らさせて貰うことにした。
 しかし、あらためて探してみると、その付近は車のわだち跡のようなデコボコや傾斜が多くて、適当な場所が見つからない。
 かみさんが「ここが良いわよ!」と見つけた場所は、枯葉が積もったままで、サイトとしては管理されていないようなところだった。
 さすがにそこでは酷すぎるので、崖際からは少し離れるけれど、芝生が平らで備え付けの野外卓も利用できそうなところにサイトを決めることにする。
 ところが、珍しくかみさんが抵抗した。
 最初に自分が見つけた場所から、どうしても動こうとしないのである。
 根負けしてそこにテントを設営することにしたが、完成したテントの中に座って外を眺めると、森の中を流れるウツナイ川の風景が一枚の絵となって広がっていた。
 一緒に持ってきたフウマの写真を、その風景の中にそっと置いてみる。
 何時もは部屋の中に置いてある見慣れた写真だけれど、フウマの表情が生き生きして見えるのは気のせいだろうか。


フウマの写真

 今回のシーズン初キャンプで、新しく登場したものがある。それはテント。
 これまで使っていたものと同じテントに見えても、実は全くの新品である。
 ある方から、倉庫の中に眠っているテントがあると、フライシートだけを譲ってもらったのだ。
 その方からは、強風でテントのフレームが折れてしまった時も、フレーム一式を譲ってもらっているので、今となってはインナーテントだけが唯一の生き残りとなっている。
 今までの色褪せたテントと違って、鮮やかな青色が目に眩しい。
 それを見ていると、このテントを始めて張った時、10年前のニセコサヒナキャンプ場での情景が目に浮かんできた。

色鮮やかなテント   新旧比較

 昼食は、白老の町に出て何か食べることにする。
 昼まで時間があるので、仙台藩白老元陣屋資料館に寄り道をした。最近は地方の町へ行き、郷土資料館のような施設を見つけると、直ぐに入ってしまう。
資料館内部 以前は入館料がと取られるような施設はパスしていたけれど、現在は「こんなしょぼい施設で金取るの?」って思えるようなところでも文句を言わずに支払っている。
 町村レベルの資料館では、何処に行っても同じような展示物しか無いのだけれど、本州などと比べて歴史の浅い北海道なので、そのことに不満は感じない。
 その土地土地で開拓時代から必死になって生きてきた先人の生活が、展示物を通して伝わってくる。
 そんなところに魅力を感じてしまうのかもしれない。

 次に向かったのは白老たまごの里「マザーズ」。
 シュークリーム等の洋菓子や生卵の販売、親子丼や卵かけご飯なども食べられる人気の施設らしく、私達が訪れている間も、駐車場にはひっきりなしに車が出入りしていた。
 今日の昼食には話題の白老バーガーを食べる予定だったけれど、ここの親子丼がとても美味しそうだったので急遽予定変更。
 食べてみての感想は、親子丼はやっぱり親子丼。厳選された材料である卵や鶏肉の味の違いが分かるほど、私の舌は肥えていないのである。
 その後はウヨロ川フットパスの様子を見たり、ウエムラ牧場まで足を運んだりしながらキャンプ場へとも戻ってきた。

 受付時に「今日は利用者も少ないから、車は中に停めておいても良いですよ」と言われていたので、入り口のチェーンを開けて中に入ろうとしていると、管理人のおじさんが近づいてきて「キャンパーが増えてきたので、やっぱり駐車場を利用してください」とのこと。
 何となくそんな予感はしていたけれど、実際にサイトの様子を見て驚いてしまった。
 まだ4月中旬だと言うのに、サイトのそれはハイシーズンを思わせるような賑わい振りである。
 もっとも、このキャンプ場のハイシーズンの様子を見たのはもう20年も昔の話しで、その後はがら空きのキャンプ場しか知らない。
混雑?する場内 メインの芝生広場に3組、中央通路の一段下がった場所に3組、ファイヤーサークルの近くにグループキャンパーを含めて2組、そしてウツナイ川沿いに我が家を含めて2組。
 それなら十分に空いていると言う人もいるだろうが、もしも我が家が到着した時にこの状態になっていたとしたら、テントを張る場所が無くて途方に暮れていたことだろう。
 他のキャンパーの存在を気にせずに時間を過ごせるのは、この程度でほぼ限界かも知れない。
 この時期にキャンプに来るくらいだから、集まっているのは本当のキャンプ好きの方々ばかりなのだろう。
 それぞれのテントが、他のキャンパーの邪魔にならないように絶妙な位置に張られているのには感心してしまう。
 そして、まるで夏休みのキャンプのように、小さなお子さん連れのファミリーが沢山来ているのにも驚かされた。
 何だか、これが正しいキャンプ場の姿なのだと、改めて知らされたような気がする。

 ポロト湖への遊歩道を歩いてみた。
 ウツナイ川の蛇行する流れを横に見ながら歩を進める。
 途中で水芭蕉が花を咲かせていたが、もっと素晴らしい群落に方々で出会っているので、あまり興味も湧かない。
 でも、真っ白なその色は、茶一色の風景の中で、唯一の春を感じさせる色彩だった。
 ポロト湖に近づいてくると、森の中で一際大きく枝を伸ばしている樹木が目に付くようになってきた。クリの巨木らしい。
 直接その巨木に触れてみたいけれど、林床に笹が茂っていて近づくのもままならない。
 そんな気持ちを察してくれたかのように、森の中に聳え立っている巨木にも負けないくらいのクリの木が、遊歩道の先で待ち構えていてくれた。
 そんな樹木に抱きつくと、ポロトの森の自然の豊かさを実感できるのである。


ウツナイ川の流れ   ミズバショウ

遊歩道

 テントサイトで寛いでいると、「見聞録のヒデさんですか?」と突然声をかけられた。
 「は、はい、そうです」とびっくりした表情で返事をしたけれど、実はこれはあらかじめ予想していた事態で、「や、やっぱり・・・」と言うのが本当の気持ちだった。
 この時期に、そして数少ないオープンしているキャンプ場に泊まれば、知っている人に会う確立はかなり高くなる。
 のんびりキャンプの好きなかみさんが「厚真大沼が良い」と言っていたのは、そんな理由もあったのだろう。
 声をかけてくれたのは「北海道のにわかキャンパー」のサイトを公開しているアッチさんだった。
 ネット上では既に知り合いなので、初対面と言う感じが全くしないのは何時ものことである。
 気温が下がってきたのでコーヒーを入れ、マザーズで買ってきたシュークリームにパクリと噛み付いた瞬間、「見聞録のヒデさんですか」と再び声をかけられた。
 さすがに今度は本気で驚き、慌ててシュークリームをテーブルの上に置いて立ち上がる。
 BBSに何時も書き込みをしてくれていたなべべ〜さんと、その奥さんに二人の子ども達だった。
 アッチさんもなべべ〜さんご夫妻も、会ったこともないフウマのことをとても心にかけていてくれて、本当に嬉しかった。
 でも、もしもフウマがまだ生きていたら、テントに近づく人間には誰彼かまわずに吠えかかっていたはずで、それを考えると冷や汗が出てしまう。
 キャンプ場で突然声をかけられるのは何となく気恥ずかしいけれど、ネットでしか繋がりの無かった方々とこうして実際に会って本当の知り合いになれるのは楽しいものである。

焚き火風景 寒くてたまらないので焚き火を始める。
 夕方になると弱い霧雨が降ってきた。弱いといっても、長い間外に出ていると濡れてしまうような降り方だ。
 テントの前室の中で夕食を済ませ、その後もしばらくテントの中から焚き火を眺めていた。
 焚き火の温もりはそこまで届いてこないけれど、赤い炎の揺らめきを見ているだけで心が落ち着く。
 やがて霧雨も止んだので、焚き火のそばに椅子を移す。
 ワインを飲み、フウマの思いで話をし、ゆっくりと時間が過ぎていく。
 立ち上がって場内の様子を見回すと、それぞれのサイトから赤い小さな炎がチロチロと上がっているのが見える。
 それぞれのキャンパーが、それぞれの方法でキャンプを楽しんでいるのが分かる、良い風景だった。
 やがて雲の切れ間から星が覗けるようになり、それが満天の星空に変わるのにもそれほど時間はかからないだろう。
 でも明日の朝は目覚めるのも早いだろうし、寝不足にならないように早めに寝ることにする。

霜の降りた場内 野鳥の多いポロトの森なので、そのさえずりで目が覚めることになりそうだ。
 そう考えていたのに、目が覚めたときに聞こえていたのは、トラツグミの「ヒーー、ヒューー」と笛を吹くような悲しい鳴き声だった。
 まあ、鳥のさえずりに変わりは無いけれど、朝のBGMとしてはあまり嬉しくない声である。
 テントから出ると、霜が降りて芝生が真っ白になっていた。テントもバリバリに凍り付いている。
 去年まで、しばらく暖かな日のキャンプばかり続いていたので、久しぶりに味わうこの冷え込みが逆に心地良く感じる。
 この冷えた空気の中、冷たい水で顔を洗うのもまた気持ちが良い。冷え込みが強ければ強いほど、水が温かく感じられるのである。
 それでもやっぱり、サイトに朝の光が届くまでは、焚き火にかじり付いて暖を取らなければ耐えられない

 朝食を終えて、ポロトの森の遊歩道を歩いてみることにする。
 樽前山を展望できる望岳台までは以前に歩いたことがあるので、今日はもう少し足を延ばして一番遠くのもみじ平を目的地にする。
 案内図によると望岳台まで1.2キロ、望岳台からもみじ平まで1.8キロ、そしてサイトまで戻ってくるのに2.5キロの合計5.5キロ。
 気軽に歩くにはちょっとためらうような距離だけど、最近は毎朝の散歩で4、5キロは歩いているので、それほど苦にもならない。
 昨日のコースでもクリの巨木を楽しめたけれど、今日のコースはそれ以上に巨木が多い。
 特に展望台からもみじ平へ続く尾根筋の遊歩道は、巨木の道と名付けたくなるくらいである。
 1本1本が特徴のある姿で存在を誇示していて、歩いていても飽きることが無い。


巨木 巨木 巨木

ウツナイ川源流 もみじ平の手前にはウツナイ川の源流がある。
 こちらは、楽しみにしていた割にはちょっと期待外れだった。
 ウツナイ川の水が全てそこから湧き出している様子を想像したいたのだけれど、その源流から湧いている水は少しだけ。
 樽前山の火山灰層の中を流れる地下水があちらこちらから染み出して、ウツナイ川の流れとなっているのだろう。
 もみじ平へ続く道、足元の落ち葉の上にぽつぽつと黒いシミが付いているのが気になった。
黒いシミ 上を見上げても、そこから何かが降ってきた様子も無い。
 そのシミは何処まで行っても続いている。
 シミの付着したモミジの葉を1枚拾い上げてみると、それは上から何かが降ってきて付いたものではなくて、モミジの葉に元々出来ていたものの様だ。
 後で調べてみると、何かの病気が原因の斑点らしいが、ハッキリはしない。
 この葉が、まだ木に付いていた時からこの状態だったことを想像すると、何とも気持ち悪い風景が浮かんできた。
 そのことはあまり考えないことにして、新緑や紅葉の時期には歩くのがもっと楽しくなりそうな遊歩道である。
 帰り道はウツナイ川沿いの林道を辿ることにした。
 ポロトの森は野鳥の種類も多いことで知られていて、森の中に目をやると小さな鳥達が枝から枝へと飛び交っている。
 新しいカメラのズームレンズを駆使して、そんな鳥達の姿を写そうとするが、なかなか難しい。
 やっとピントが合ったかと思ったら、直ぐに飛び立ってしまう。
 突然直ぐ近くの枝にとまったので、慌ててカメラを向けるが、またしても逃げられてしまう。
 まるで「写せるものなら写してみなさい!」と、こちらを挑発しているかのようである。
 あまり鳥を追いすぎると、そのうちにバズーガ砲のようなレンズも欲しくなってくるだろうし、素直に「すいません、あきらめました」と、カメラをしまいこんだ。

 サイトに戻って一休みし、撤収開始。
 アッチさんファミリー、なべべ〜さんファミリーに別れの挨拶をして、キャンプ場を後にする。
 アッチさんのサイトに挨拶に行ったとき、そこにいた男性と軽く挨拶を交わしたが、その方は後で聞いたら「北海道ドタバタキャンプ」のかずとさんだったらしい。
 やっぱりこの時期にオープンしているキャンプ場に泊まると、知っている人に会う確立はかなり高そうである。

 こうして何時もどおりのキャンプで、我が家の今年のキャンプシーズンが幕を開けたのだが、何となく物足りなさが残っていた。
 その原因は、フウマが欠けていたことによるものだろうか。
 フウマと一緒のキャンプでは色々と制約も多かったけれど、それを克服しながらキャンプをするのも我が家のスタイルの一つだったのかもしれない。
 その制約が無くなった今、そろそろ新しいスタイルに変える時期がきているような気がする。



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