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思い出がロールバック朱鞠内キャンプ

朱鞠内湖畔キャンプ場(10月17日〜19日) 

 楽しみにしていた今シーズンの紅葉キャンプ。
 出かける紅葉スポットは決めていたけれど、その近くで適当なキャンプ場が思いつかない。
 幾つかの候補地を挙げてかみさんのご意見を伺ったところ、返ってきた答えは「朱鞠内湖は?」だった。
 「えーっ・・・」
 私の考えていたところとは全くの逆方向で、朱鞠内湖の紅葉は既に終わってしまっているはずで、この時期の朱鞠内には何度も泊まっている。
 否定的な考えは幾つでも思い浮かんできたけれど、「やっぱり朱鞠内湖かな」と言う気持ちは最初から心の底どこかに引っかかっていた。
 今回のキャンプが今年のラストキャンプになる可能性も大きく、そうなると今回はフウマと出かける最後のキャンプとなってしまうかもしれない。
 そう考えたときに、我が家の思い出が一杯詰まった朱鞠内湖ほどその場所に相応しいキャンプ場は他に思いつかない。
 紅葉などは来年でも見られるし、それよりも今回はフウマと一緒の時間を楽しむことを優先した。

トトロ峠の猫バス 2泊3日のキャンプを予定していたので、金曜日の朝に札幌を出発。
 通いなれた朱鞠内湖だけれど、少しは変化をもたせるために深川で少し寄り道することにする。
 まずは深川IC近くの戸外炉峠(トトロ峠)へ行ってみた。
 石狩川が蛇行しながら流れる深川盆地の風景が見ごたえがあり、この峠の名前の元となった猫バスも良い雰囲気を出している。
 その後は、まあぶオートキャンプ場の前を通って道の駅「ライスランドふかがわ」へ。
 我が家から朱鞠内湖へ向かう場合、深川留萌自動車道が一部開通してからは秩父別まで高速道路を利用するようになっていたので、ここの道の駅に入るのは初めてだった。
 地場産品が沢山あってなかなか楽しい。
 こんなところでは必ず商品ラベルで製造場所を確認するようにしていて、それが札幌市で作られたものだったりすると、途端に購入意欲が無くなってしまう。
ライスランドふかがわ それが、地元農協の婦人部が作った笹だんごが、その支部ごとに違うパッケージ・同じ値段で売られていたりすると、無性に食べ比べをしてみたくなるなど、購買意欲を大いにそそられるのである。
 笹だんごは買わなかったけれど、その他に色々と買い物をして店を出た。
 昼食は勿論幌加内町の蕎麦、今回はかみさんの希望で八右衛門のそばを食べた。
 幌加内町では何処の店に入ってもそれなりに美味しい蕎麦を食べられるのだけれど、既に今は無い「ほろほろ亭」の味を超える店にはなかなか出会えないでいる。

 平日の朱鞠内湖には、さすがに先客の姿は見当たらなかった。
 そんな時の我が家の常で、第3サイトの細長い岬の先端を真っ直ぐに目指す。
 ここにテントを張ったのは6年前の10月で、その時は素晴らしいキャンプを楽しめた記憶がある。
我が家のサイト ところが何故か今日はしっくりとせずに、沢を挟んだ向かい側の第3サイトの先端部分の方が魅力的に見えてしまう。
 そちら側に移動すると、今度はかみさんが湖畔側のもっと高い場所の方が良いと言いはじめた。
 そこは眺めは良いけれど、カヌーを出せる適当な場所が無いのが困るところだ。
 それに場内の通路が直ぐ脇を通っているので、早朝に釣り客が車で入ってくるとうるさくて堪らない。何年か前にはこれで酷い目にあっているのだ。
 我が家が朱鞠内湖を通い始めた頃は第2サイトの岬先端部が定番だったけれど、その後は何時も静かな第3サイトにばかりテントを張っている。
 結局今回も第3サイトの先端、去年の6月のキャンプと同じ場所にテントを設営することになった。

 上空にはまだ青空が広がっていたけれど、今日の夜から天気が崩れるとの予報も出ていたので久しぶりにタープも張ることにした。
 年に1度張ることがあるかどうか程度なので、張り方が下手になったような気がする。
 少し皺がよっているのは敢えて無視することにしたけれど、これが後で事件を引き起こすことになるとは、この時には思いもよらなかった。
落ち葉を燃やす煙 第2サイトの方から落ち葉を燃やす煙がもうもうと立ち上っている。
 第3サイトにも何かを燃やした跡が方々に残っていて、誰かが落ち葉に火をつけて遊んでいたのだろうかと思っていたが、どうやらキャンプ場の管理作業の一環らしい。
 今までにそんな場面は見たことが無かったし、落ち葉は放っておいてもそのまま土に返るのだから、余計なことをしなくても良いのにと思えてしまう。
 でも、もしかしたら管理をしている人が落ち葉焚きを趣味にしているだけなのかもしれない。
 そう考えると、急にそれが微笑ましく見えてきた。どうせ場内には、燃やしきれないような大量の落ち葉が敷き詰められているのだ。

 かみさんが早速、湖に漕ぎ出した。
 最近になってようやくカナディアンの一人漕ぎにチャレンジする気になってきたみたいだ。
 カヌー歴が20年近くにもなるのに、一人でカナディアンに乗れないと言うのはちょっと恥ずかしいので、これは良い傾向である。
カヌーの練習 私はその間に焚き火用の薪を拾い集めることにする。自宅からも、車の荷室に積めるだけの薪は持ってきていたけれど、2泊3日で豪勢に焚き火を楽しむにはまだまだ足りない。
 場内をぐるりと回ったけれど、清掃が行き届いているのか、それとも、キャンパーに全て燃やし尽くされてしまったのか、枯枝などが全く見当たらない。
 しょうがないので、車に乗って第4サイトへ行ってみることにした。
 第4サイトとは私が勝手にそう呼んでいるだけで、勿論正式なサイトではない。
 でも、第3サイトからさらに奥に入ったところにあるその場所は、林間の下草も綺麗に刈られていて、極上のテントサイトに見えてしまうのだ。
 現在のように土のテント床が作られる以前の朱鞠内湖キャンプ場は、きっとこの第4サイトのような雰囲気だったのだろう。
 場内が混んでいるような時はこの第4サイトにテントを張ろうと昔から考えていたのだが、何時もがら空きの朱鞠内湖キャンプ場なものだから、その機会は未だに訪れないままなのである。
 さすがにここでは好きなだけの枯枝を拾い集めることができる。
 1本だけ、太くて長いシラカバの枯枝(枝と言うようりも枯幹)を拾い、これを二晩で燃やし尽くすのを今回の焚き火の目標に設定した。

逆さの森
 

 到着時には弱い風が吹いていて湖面にも細波が立っていたが、その風が止んでくると鏡のような湖面が広がり始めた。
 そうすると、対岸の森が逆さまになって湖面に映り込む。
 夢中になってその風景をカメラに収める
 多分、これまでにも同じ構図、同じ場所で何十枚、いや、もしかしたら何百枚もの写真を写しているはずだ。
 それでもやっぱりカメラを向けずにいられなくなるくらいに、私の好きな風景なのである。
 いつの間にかその湖面に沢山の枯葉が浮かんでいた。一体何処から現れたのかと不思議に思えるくらいに、唐突にサイト前の湖面に広がっていたのだ。
 風が止むと同時に、その風に吹き寄せられていた落ち葉が舞い戻ってきたのだろうか。

落ち葉の浮かぶ湖面
 

 ゴムボートでトローリングをしている釣り人が静かに我が家のサイトの前を通り過ぎていく。
と思ったら突然「ヒデさんですか〜!何時もホームページ見てますよ!」と声をかけられた。
 「あ、ありがとうございます」
 「犬はどうしたんですか?」
 「あっ?!テ、テントの中で寝てます」
 「ゆっくりしていって下さいね〜」
 「あ、ありがとうございます」
声をかけられた釣り人 そのままゴムボートは静かに遠ざかっていった。
 キャンプ中に声をかけられることは時々あるけれど、こんなパターンは初めてである。

 見ず知らずの方からも心配してもらったフウマは、リードを付けられたままテントの中で寝ている。
 周りに誰もいないときは、これまでならば好き勝手にさせていたのだけれど、さすがに今回はそれができなかった。
 テント床の端の段差がある場所で、つまづいた拍子に横向きに倒れ、そのままなすすべも無く横向きに一回転しながら転がり落ちる有様なのである。
 そのもう少し先は崖になって、そのまま湖に落ち込んでいるのだ。
 歩いていても、目がほとんど見えないものだから、そこが崖になっているのにも気付かずに真っ直ぐに進もうとする。
 昔は歴舟川をフェリーグライドしながら泳いで渡ったフウマだけれど、今は湖に落ちたら何もできずに沈んでしまうかもしれない。
 病気のために死んでしまう覚悟はできているけれど、朱鞠内湖で溺れ死んだなんていったら、あまりにも哀れである。
 そんなわけで、可哀想だけれど今回は繋がれたままになっているフウマなのだ。

月の出 夕食を終えて寛いでいると、対岸の森の中から月が昇ってきた。
 「えっ?」
 満月から三日ほど過ぎてはいたけれど、今回のキャンプでは月の出も楽しみの一つにしていた。
 でもその月は、第2サイトの方から昇ってくるものだとばかり思っていたのに、その方向は90度もずれていたのだ。
 去年の6月にここから見た月の出があまりにも美しく印象に残っていたので、朱鞠内の月はそこから昇るものだと頭の中に刷り込まれてしまっていたようである。
 昇ってくる場所は違っていたけれど、今日の月の出もとても美しい。
 今日は天気が崩れるとの予報だったので、月の姿を見るのはほとんど諦めていたのに、とっても得した気分である。
 しかし、次第に雲が広がり始め、その月もやがて姿を消してしまった。
 遠くからは雷の音も聞こえてくる。
 せっかく集めた薪が濡れないように全てタープの下に運び込んで、この日は寝ることにした。

月夜

 深夜の0時過ぎ、強烈な雷の音で叩き起こされた。
 これまでも朱鞠内湖では雷の洗礼を何度か受けているけれど、札幌の雷とはその迫力が全く違っているような気がする。
 まさに天地が裂けるといった表現がぴたりと当てはまる雷である。
 そんなもの凄い雷なのに、テントの中のフウマはスヤスヤと眠ったままだった。最近は耳も遠くなってきたようだけれど、ここまで聞こえないとは驚きである。
 でもそのおかげで、家の中にいる時でさえ雷の音でパニックになるフウマが大人しく寝ていてくれるのだから大助かりである。
 がしかし、ついに目を覚ましてしまった。
 こうなると大変である。テントの外へ逃げ出そうとするので、必死になって懸命落ち着かせなければならない。
 そのうちに雨も降り始め、その雨がテントを叩く音も強烈である。
 ピカッと光っただけで不安そうにあたりを見回すフウマ。その途端に地面が揺れるような雷が鳴り響く。
 1時間ほどフウマをなだめ続け、そのうちに雷の音が遠ざかるとともにいつの間にか眠ってしまった。

潰れたタープ フウマが動き回る気配で再び目が覚めた。
 今度はトイレのようである。幸い、雨も上がっていたので、服を着込んでテントの外へと這い出す。
 そして、その横に張られているタープを見て愕然とした。見事に潰れてしまっていたのである。
 ロープを張って、雨水が下に流れ落ちるようにしていたつもりが、完全ではなかったようだ。タープの上に水が溜まり、そして地面も雨で緩み、片面のペグが全て抜けてしまっていた。
 潰れたタープが、かみさんの寝ているテントの上に覆い被さっている。
 「・・・」
 この状態で平然と寝ていられるのが信じられない。
 フウマのトイレを済ませてから、タープを張りなおす。
 ようやくテントの中から顔を出したかみさんは、その惨状を見て驚いている。タープが落ちたのは知っていたようだけれど、せいぜいポールが1本外れた程度に思っていたらしい。
 タープの下に入れておいた椅子は無事だったけれど、せっかく集めた薪がびしょ濡れになってしまったのはショックだった。
 私がこちらの一人用テントに寝ていたとしたら、雷が鳴り出したら直ぐに起き出してタープの下で雷のスペクタクルショーを楽しんでいただろうし、そうすればタープが潰れることも無かったのに。
 まあ、今更そんなことを考えてもしょうがないし、朝までもう一眠りすることにした。

上に水の溜まったタープ 明るくなってテントから出てみると、またタープの上に水が溜まっていた。もう少し雨が降っていたら、再びタープが潰れるところである。
 タープの張り方のへたくそさに、自分でもがっかりしてしまう。
 雨上がりの場内はしっとりとして良い雰囲気だ。
 一時期、我が家の朱鞠内湖キャンプは何時も雨と雷の洗礼を受けることが続いた頃があったけれど、雨の日のキャンプも良いものである。
 ただ、テントの裾が泥まみれになっているのを見ると、うんざりしてしまう。
 生活スペースをタープの下に移して寛いでいると、第2サイトの方から騒ぎ声が聞こえてきた。
 どうやら大物のイトウが釣れたようである。
 昨日、ボートの上から声をかけてくれた方もイトウが2匹釣れたと言っていたし、どうりで朱鞠内湖に釣り人が集まってくる訳である。
しっとりとした場内 軽トラックがやってきて、男性が一人降りてきた。
 何処かで聞いたことのあるような関西弁。
 「あれ?!」と思ったら、今年の4月に雨竜川を下ったときにお世話になったKさんの旦那さんだった。
 漁協から頼まれて入漁料の集金に回っているとのことである。
 Kさんの旦那さんは、その後も集金で回ってくる度に我が家のサイトに寄ってくれて、面白い話を沢山聞かせてもらった。
 ここでもその内容を少し紹介したいけれど、そのまま書くと朱鞠内湖キャンプ場のお客さんが減ってしまうような内容も含まれているので、止めておくことにする。

 二人でカヌーで漕ぎ出す。
 今年は例年より雨が少なかったので、朱鞠内湖もかなり減水しているだろうと思っていたら、満水に近いくらいまで水が増えていた。
湖畔の切り株 この時期になるとダムからの放水が減らされるので、水位も上がってくるらしい。
 水が少ない時の朱鞠内湖の風景を見てがっかりする人もいるようだけれど、水位が下がると何時もは水中に沈んでいるような切り株がその姿を現してきて、他では見られないような風景を楽しめるので、私は結構好きだったりする。
 今日は水が多いので、そんな切り株も数が少なめだけれど、一つ一つが独特の形をした切り株の姿を楽しみながら、ゆっくりと湖畔沿いにカヌーを進める。
 空は薄い雲に覆われ、遠くの島は霧にかすんで見えている。青空の下の朱鞠内湖も美しいけれど、こんな朱鞠内湖の風景も味わいがある。
 訪れる度にその時々の表情で我が家を迎えてくれる朱鞠内湖、だから何度ここを訪れても、けして飽きることは無いのである。

 第2サイトでカヌーを降りて、その中を歩いてみた。
 見事なほどに辺り一面が落ち葉に埋め尽くされている。これでは管理人さんがいくら落ち葉を燃やしても、追い付くわけが無い。
 第2サイトの湖畔から離れた林間部分、ここのキャンプ場の中で我が家がまだ一度もテントを張ったことが無い場所である。
 と言うか、ここにテントが張られているのも一度も見たことが無い。
落ち葉のサイト 我が家はカヌーがあるのでどうしても湖畔近くにテントを張ってしまうのだけれど、この落ち葉に埋もれたサイトもなかなか素晴らしい。
 いつの日か 、晩秋の季節を狙ってここにテントを張りたいものである。

 昼食を済ませてから、ドライブがてら日向温泉に入りに行くことにした。
 出かける前に、雨に濡れてしまった木の枝を乾きやすいように積み上げておく。
でも、しばらくは晴れそうにないので、これも気休めにしかならない。
 日向温泉は塩素臭が強く、これならば幌加内のせいわ温泉ルオントに行った方が良かったかもしれない。
 キャンプ場へ戻ってくると、我が家が最初にテントを張ろうとした第3サイトの半島部にテントが二張り増えていた。
 本来の第3サイトの方は、日中にいた釣り人も帰ってしまい、今日も我が家だけである。
 のんびりと夕暮れまでの時間を過ごす。
 カケスの「ギャァギャァ」と無く声が喧しい。せめてもう少し美しい声で鳴けないものだろうか。
 でも、カケス以上に喧しいのがカラスの鳴き声だった。
 これまで朱鞠内湖でカラスがうるさいと感じたことは一度も無かった気がするので、もしかしたら今年になって朱鞠内湖にもとうとうカラスが棲み着いてしまったのかもしれない。
 朱鞠内湖でカラスの鳴き声で目覚めさせられるなんて、相当なイメージダウンだ。
 その一方で、これから朱鞠内湖をイメージアップしてくれそうなのがクマゲラである。
 今年の4月にここに泊まったとき、朱鞠内で初めてクマゲラの姿を見ることができたのだけれど、今回もまた我が家のテントの直ぐ近くにクマゲラがやってきて喜ばせてくれた。
 その独特な鳴き声が滞在中も絶え間なく聞こえていたので、クマゲラもこの付近に棲みついているようだ。
 それにしても、同じ鳥なのにもかかわらず、人間の方でこうやって勝手に差別してしまうのだから、鳥たちも気の毒である。

濡れた薪を乾かす 乾かしておいたつもりの薪は、やっぱりほとんど乾いていなかった。
 頭の中で、今夜と明日の朝の焚き火まで必要となる薪の量を思い浮かべてみたけれど、目の前にあるだけの薪ではどうも心許ない。
 幸い、家から持参したダンボール箱の中の薪はあまり濡れなかったので、それを燃やしながら濡れた薪を乾かすことができる。
 しかし、そのためには乾いた薪がもう少し必要となる。
 結局、管理棟で売られている1束300円の薪を買ってくることにした。
 これでもう薪の量を心配する必要は無くなったので、明るいうちから焚き火を始められる。
 今日から天気が回復してくるとの予報だったのに、空を覆っている雲はなかなか無くならない。
 でも、昨日と同じく月が昇ってくるころになってようやく雲が取れてきた。
焚き火 二日続けて月の出を眺めながらの焚き火を楽しめるのだから、それだけで満足である。
 初日に拾ってきたシラカバの長くて太い幹も、めでたく全てが灰になった。
 一番目の焚き火では半分以上が燃え残り、そして夜の雨にあたって水分をたっぷりと吸い込んでしまい、燃やし尽くすのはもう無理かと諦めかけたけれど、それでも何とかなるものである。
 これも買い足した薪のおかげだろう。
 明日の朝用の薪を少し残して、今宵の焚き火は終了。
 今日も私がフウマと一緒に寝ることにする。
 雷の心配も無いので、今夜はぐっすりと寝られそうだ。

 フウマのトイレに一度起こされただけで朝を迎えることができた。
 ポチャンポチャンと音が聞こえていたので、早起きの釣り人がルアーを投げているのかと思ったら、それは魚のライズする音だった。
霧の湖へカヌーで漕ぎ出す 静まり返った湖面に魚達が作る波紋があちらこちらに広がっている。
 その様子を見ると無性に釣りがしたくなる。
 一応、車に釣竿は積んであるし、そこらを掘って餌のミミズを見つければ釣りはできるのだけれど、そのために千円を払うのはやっぱりもったいない。
 今日は霧の朝だった。
 湖も森も全てが乳白色に霞んでいる。
 かみさんが霧の湖に漕ぎ出した。
 その間に私は場内を歩いてみる。
 昨日の雨上がりの風景も美しかったけれど、今朝の霧に包まれた森の風景も格別に美しい。
 霧はますます濃くなり、カヌーに乗るかみさんの姿も霞んで見えなくなってくる。
 焚き火に火をつけ、コーヒーが入った頃、ようやくかみさんが戻ってきた。

霧に霞む森   ますます濃くなる霧

 このように朱鞠内湖で朝から霧が出ている時は、その霧が晴れるとその後には必ず素晴らしい青空が広がってくる。
 この、霧の晴れる瞬間が、また素晴らしく幻想的で美しいのである。
 焚き火をしながらその時を待ち続けているのに、一向に霧が晴れそうな気配がない。
 フウマがのそのそと焚き火の近くに歩いてきた。
フウマと一緒に焚き火を囲んで 2年前の美笛でのキャンプで花火の音に悩まされて以来、焚き火の爆ぜる音が大嫌いになってしまったフウマは、私達が焚き火を始めると直ぐにテントの中に逃げ込んでしまうようになっていた。
 幸い今朝の焚き火はほとんど爆ぜることがないので、フウマも安心しているようである。
 久しぶりにフウマと一緒の焚き火のシーン。
 慌ててカメラをセットして、もしかしたらこれが最後になるかもしれない貴重なシーンを撮影した。

 霧はなかなか晴れないけれど、最後のカヌー散歩に出かけることにする。
 できれば最後にフウマもカヌーに乗せてやりたかったけれど、テントの中で気持ちよさそうに寝ているのを起こすのもかわいそうなので、二人だけで出かける。
 かみさんも一人でかなり漕げるようになったので、初めて私がバウを漕ぐことにした。
バウを漕ぐ これがとっても楽しくて、バウマンの魅力にすっかり嵌ってしまった気がする。
 まず第一に、自分の前に遮るものが何もないので、風景をそのまま楽しむことができるのだ。(決して、かみさんが邪魔だと言ってる分けではないが・・・)
 そして第二に、後ろから右だ左だと言わなくても、自分の好きな方にカヌーを進められるのが最高である。
 ただしこれは、スターンでそれに合わせて操作してくれていることが条件である。
 たまに思うように進まなくて後ろを振り返ると、かみさんが全く違う操作をしていたりして、これはバウマンとして非常にストレスを感じてしまう。
 私がスターンを漕ぐ時は、しっかりと自分の意志をバウマンに伝えなければならないと言うことが、これで良く分かった気がする。
 それに、鬼漕ぎする時も、バウマンは何も考えずにひたすら漕ぐだけで良いので楽しい。これで石狩川カヌーレースにも出てみたい気がしてきた。

最後の撤収 サイトに戻ってくる頃になってようやく青空が広がってきた。
 テントが完全に乾くのを待って、撤収をはじめる。
 これがシーズンのラストキャンプになるかもしれないので、テントの泥も丁寧に拭き取る。
 暖かな日射しを浴びながらシーズン最後の撤収をするのは、とっても気持ちが良い。
 横ではフウマが、その日射しの中で気持ちよさそうに転がっている。
 今回の2泊3日の朱鞠内キャンプには、過去のここでのキャンプシーンがすべて凝縮されていたような気がした。
 これがフウマとの最後のキャンプになるかもしれない。
そのキャンプに朱鞠内湖を選んだのは、やっぱり大正解だったようである

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フウマ、朱鞠内湖にて
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