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白樺の花粉の下で風連キャンプ

ふうれん望湖台自然公園キャンプ場(5月3日〜4日) 

 今年のGWは1泊キャンプ。
 何処へ行こうかと考えた時に、最初に浮かんできたのが旭岳での雪中キャンプだった。
 でも、桜どころか八重桜まで咲いてきそうな今年の暖かさ。こんな時にわざわざ雪の中でキャンプをしていたら、さすがに呆れられてしまいそうだ。
 これまで様々なシチュエーションのキャンプを楽しんできたけれど、唯一実現できていないのが満開の桜の下でのキャンプである。
 札幌では既に桜も散ってしまったけれど、北へ向かえばそんなシーンに出逢えるかもしれない。
 雪中キャンプの誘惑を振り切って、今年のGWはピンポイントで桜に狙いを定め、ふうれん望湖台自然公園キャンプ場へ出かけることにした。
 風連までは朱鞠内湖経由で向かうことにする。
 2週間前に訪れた時の様子から、ちょうど今頃はミズバショウやエンゴサクなどが花盛りになっているだろうと予想したのだ。
オナガガモの群れ 幌加内へと向かう国道275号は、何時もならばすれ違う車も稀なのに、さすがに4連休の初日とあって車も連なって走っていたりする。
 ここでこれなのだから、GWに観光地になど行く気にはなれない。
 幌加内へ近づくと、2週間前には白鳥が雪の解けた蕎麦畑に群がっていたのが、今日はオナガガモの大群が餌を漁っていた。
 何百匹もの群れがゾロゾロと畑の中を移動する姿は、小さな虫が這い回っているように見えてあまり気持ちの良いものではない。
 水鳥にはやっぱり水の風景にしか似合わないのだ。
 今日から明日にかけては全道的に良い天気のはずなのに、札幌を出てからずーっと薄曇りの空が広がっている。
 その雲が幌加内の手前で急に厚くなってきて、パラパラと雨粒さえ落としてきた。
 前回の朱鞠内湖キャンプをきっかけにようやく雨男の称号が取れたはずなのに、また元に戻るのかとウンザリしてしまう。
 その雨は直ぐに止んだけれど、今年もやっぱり雨には付いて回られそうである。

 幌加内の市街地を過ぎると、期待していたとおり道路際の湿地にミズバショウやエゾノリュウキンカが花を咲かせていた。
 2002年のゴールデンウィークにも朱鞠内湖でキャンプをしているが、この年も記録的に雪解けの早い年だった。
 その時にはエゾキンポウゲの大群落に感動したのだけれど、今年は花こそ咲いているもののそんな大群落にはお目にかかれなかった。
エゾキンポウゲの群落 添牛内を過ぎて朱鞠内に近づくと今度はエゾエンゴサクの群落が目立ってくる。
 ここまで来る間でも、まるで雑草のようにエンゴサクが道ばたで花を咲かせていたけれど、やっぱり青い絨毯のように一面を埋め尽くして咲いている風景がエンゴサクの見どころである。
 途中の当別町付近でも、ヒメオドリコソウが、こちらは紫の絨毯のようにびっしりと咲いている風景に出会ったけれど、所詮は畑雑草のヒメオドリコソウである。わざわざ車を停めて写真に撮る気にもなれない。
 自分でも、花の美しさとは一体何なんだろうと疑問に思ってしまう。
 私の感覚にとても刺激を与えてくれるエゾエンゴサクだけれど、今年は大きな群落が見あたらない。 それにカタクリの花も僅かに咲いているだけだ。
 花の時期には少し早過ぎたのだろうか。
 2002年のキャンプ日記を読み返すと、この時も「時期が早すぎたのか、まだカタクリも咲いていない」と書いてあった。でも、その時の写真を見てみると今回よりも見事な花畑の写真が写っている。
 我が家が初めて朱鞠内の早春の花の風景に感動したのは1997年の5月末。1995年に廃線になった深名線の線路がまだ残っていた頃である。
 その線路跡が次第に雑草に覆い隠されるに従って、鉄道沿いの花の風景も確実に衰退してきているのが現実なのかもしれない。

ミズバショウとエゾキンポウゲ   エゾエンゴサクとエゾノリュウキンカ
 

 僅かな花の風景を撮影するために車から乗り降りしているうちに、私達夫婦の花粉症の症状が悪化してきた。
 今年の白樺花粉の飛散量は過去最大となっているそうで、確かにこの2週間ほどはくしゃみと鼻水で大変な目にあっている。
 それなのに、ここ朱鞠内周辺では道路沿いに生えている木はほとんど全てが白樺なのである。
 芽吹き始めたばかりの淡い新緑の中の快適なドライブと言いたいところだが、私達夫婦にとっては地獄の中を走っている気分である。
 せめて窓を閉めていればいくらかはましなのだろうけれど、後部座席のフウマが窓を開けれとうるさいものだから、やむなく窓は開けたまま。
 涙と鼻水が止めどなく流れ落ちてくる。
 夫婦揃って鼻にティッシュを詰め込んでいる姿は、対向車のドライバーにはとても滑稽なものに見えていることだろう。

葉桜となった弥生公園 途中で名寄の弥生公園に立ち寄る。
 ネットで調べたところ、ここは名寄市の桜の名所となっているらしく、毎日の開花状況までネットに載っていた。
 それによると、5月2日現在でまだ咲き始めの状態らしい。
 GW後半戦の初日で、さぞ花見客で賑わっていることだろうと思いながら、「桜の名所弥生公園」と書かれた看板に従って公園内に車を乗り入れると、人の姿など何処にも見あたらない。
 それに肝心な桜は、咲き始めどころか既にほとんどが散ってしまって、葉桜となっているではないか。
 強い風に吹かれて最後まで残っていた僅かな花片が、人気のない園内をヒラヒラと飛ばされていった。
 「・・・。」
 札幌の円山公園でも既に桜は散っているはずだけれど、それでも園内では大勢の花見客が桜のことなど気にもかけないで宴会を楽しんでいることだろう。
 今年就職したばかりの息子も、明日は7時半に円山公園に行って会社の花見の場所取りをさせられるとぼやいていた。
 同じ桜の名所でも名寄と札幌では大違いだなと、何だか拍子抜けしてそこを後にした。

道の駅の大福売り場 今年オープンしたばかりの道の駅「もち米の里☆なよろ」に立ち寄る。さすがにこちらの方は駐車場も満車に近く大賑わいである。
 ここの「釜雑煮」を食べたかったのだけれど、ちょうどお昼時で順番待ちの列ができていたので、ソフト大福を買うだけにした。
 昼食はネットで調べてあった国道沿いのラーメン屋「風連正麺」に入る。
 結構美味しいラーメンに満足して、今回のキャンプ地ふうれん望湖台自然公園へと向かった。
 相変わらず空は薄い雲に覆われ、しかも風が強い。
 道沿いの周辺の山肌ではコブシの白い花が目立っているが、桜のピンク色は何処にも見あたらない。
 果たして桜は咲いているだろうか。
 2002年の朱鞠内湖キャンプの時は望湖台まで足を伸ばして、その時はちょうど桜が満開になっていた。その風景が忘れられず、翌年のGWには望湖台に泊まったのだけれど、今度は全然咲いていない。
 2002年の札幌の桜の開花日は今年より1日遅かったはずで、それから考えると望湖台の桜も今年は満開になっているはず。でも、弥生公園の桜は散っていたし・・・。
 期待と不安が入り交じったままキャンプ場に到着。センターハウスの周りの桜は散り始めてはいるけれど、まだ十分に花を楽しめる状態だった。
我が家のサイト 受付を済ませて、ワクワクしながらサイトへ向かう。
 湖寄りのサイトでは大人数のグループがバーベキューを楽しんでいた。テントを張っていないので日帰り客のようだ。
 これぞ正しい花見の姿。でも肝心の花の方は・・・。
 ここもやっぱり弥生公園と同じ状態でほとんど葉桜になってしまっていた。
 まだいくらか花は残っているけれど、思い描いていた満開の桜の木の下にテントを張る情景とはほど遠い。
 芝生広場の方には誰もいないのでじっくりとサイトを探したけれど、なかなか場所が決まらない。せめて満開の桜が1本でもあれば、ためらいなくそこに決めるのだけれど、全てが葉桜なのだ。
 結局、美しいシラカバ林が真正面に見える場所にテントを張ることにした。その直ぐ隣にも姿の良い白樺がそびえている。
 テント設営中もタラタラと流れ落ちる鼻水。こんなところにテントを張って大丈夫なのだろうか。桜と白樺のことさえ考えなければ、ほとんどベストポジションとも言える場所なのだけれど、複雑な気持ちである。
 心配していた風も、周りの樹木に遮られて気になるほどでもない。
 シラカバ林の中ではヒメイチゲが一面に白い花を咲かせていた。
 湿地の中の遊歩道を歩いてみると、エゾノリュウキンカやミズバショウは既にかなり大きく育っている。
 驚いたのはオオバナノエンレイソウが既に花を咲かせていたことだ。今年の異常なくらいに暖かな春のために、順番に咲いてくるはずの花が一斉に咲き始めているのである。
 テントに戻ってくるとまた涙と鼻水が酷くなってきた。
鼻水対策 みるみるうちにティッシュの山ができてくる。
  いちいち鼻をかむのも面倒なので、ティッシュを丸めて鼻に詰め込む。
 色々と試行錯誤を繰り返した結果、ティッシュを3分の1の大きさに切ってそれを2枚に分けて鼻に詰めるとちょうど良いことを発見した。
 2分の一では無駄に大きすぎるし、4分の1にすると小さすぎてそのままスッポリと鼻の奥まで入ってしまい面倒なことになる。
 いよいよ鼻水の量が多くなってきたなら、1枚のティッシュを四つに折って、それを2本の指でVサイン作って両方の鼻の穴に押し込む。
 鼻水でそのティッシュが湿ってくると、手を放してもそのまま鼻にくっついて固定される。
 この方法だと大量の鼻水を吸い取ることができるのだけれど、唯一の欠点は見た目が非常に格好悪いと言うことだ。

ヒメイチゲの咲くシラカバ林   美しいシラカバ林だけど・・・

 芝生広場にはその後2組のキャンパーがやって来たけれど、どちらも大量の犬軍団を引き連れてきていた。
 若い頃のフウマならばその鳴き声に反応してしまったけれど、今は我関せずといった様子でテントの中でゴロリと横になったままである。
 場内には子供達の舞い上がった歓声と犬の鳴き声が交錯し、小鳥たちのさえずりがそれにかき消されてしまう。
 日帰り客が帰っていくと、場内にもようやく静けさが戻ってきた。
焚き火風景 明るいうちに夕食を済ませて焚き火を始める。
 今回は2月に6本セットを6000円で購入したワインの最後の1本を持ってきていた。最後まで残しておいたこのワインは、本来なら1本3000円くらいする高級ワインだそうだ。
 厳かにかみさんと乾杯をして、まずは香りから楽しむ。
 しかし、鼻が完全に詰まっているので匂いなど全く分からない。匂いが分からなければ味だって分からない。
 折角の高級ワインをこんな状態で飲まなければならないなんて、悲しすぎる。
 昼間は20度を超えていた気温も夜になると急速に下がってきていた。それに風もあるので、2週間前の朱鞠内湖での雪中キャンプの時よりも寒く感じる。
 途中で焚き火も切り上げて、テントの中で残りのワインを空けた。

 深夜に犬の鳴き声で目が覚めた。鳴き声の主は、バスに乗ってきていた隣のキャンパーが連れていた犬みたいだ。
 鳴き止むのをじっと待っていたけれど、ずーっと吠え続けている。
 スクリーンテントだけ張っていたので、飼い主はおそらくバスの中で寝ているのだろう。
 「まさか犬だけ外に出したままなの?」
 朝がくるまで、何度もその犬の吠える声で目を覚まさせられた。
 これだから犬連れキャンパーが嫌われる訳である。
朝の場内 テントの中が明るくなってくると、一斉に小鳥達が鳴き始める。そして直ぐ近くからキツツキのドラミングの音が聞こえてきた。
 2003年のキャンプの時は、このキツツキのドラミングの音で目覚めたのだけれど、今回は犬の吠え声でとっくに目覚めていたのだ。
 全く大きすぎる違いである。
 朝の気温は2度。
 風も止んで青空も広がっていた。
 焚き火にあたっていると、朝の光が芝生の上に木の影を落としてくる。
 気持ちの良い朝だったけれど、相変わらず鼻水は止まることを知らない。
 昨日ここへ着いてから開けたティッシュ一箱が既に空になってしまった。車用に積んでおいたティッシュが残っていたから良かったものの、これが無かったら大変なことになっていたところだ。
 朝の白樺林の中を散策する。
 ヒメイチゲが朝日を浴びて輝いている。ツルアジサイの新葉が朝日に透きとおる。
 森の中は小さな感動で一杯だ。
 でも、そんな感動を一発のくしゃみが吹き飛ばしてしまう。
 森の美しさより、早くこの白樺地獄から抜け出したい気持ちの方が強かった。
 朝食を済ませて直ぐに撤収を開始。
 この後は神門の滝を見に行くことにする。

逆光に浮かぶヒメイチゲ   朝日に透けるガクアジサイの新葉

 下川町からサンル川に沿って北上する。
 サンル川と言えばサンルダムの建設が進められているところだ。反対運動も盛んだと聞いている。
 街の中には「サンルダムに私達の夢を託して」と書かれた看板が立てられていた。
 私はこのダムに関して詳細は知らないけれど、それにしてもふざけた内容の看板である。
 ダムに一体どんな夢を託そうと言うのか?
 このキャッチフレーズを考え出した人間から、その夢について説明してもらいたいものだ。きっと呆れるような夢が語られるのだろう。
水仙の咲く廃墟跡 もう一つ、サンル川と聞いて「ウッシーとの日々」を書いたはた万次郎さんのことを思い出した。
 道路沿いの古い家を見ると「ここがはたさんの家だろうか?」なんて思ってしまう。
 道路を走っていると、所々の空き地で水仙の花が咲いているのを見かけた。
 かってはそこに人々の暮らしがあったのだろう。
 原野に咲く水仙は、遠い過去の人間の営みを思い出させて、何かもの悲しさを覚える。
 サンル川は雪解け水でやや増水気味のようだ。それなのに川の水は透明度を保っている。
 最近はちょっとした増水でも直ぐに濁ってしまう川が多い中で、ここは健康を保った川と言えるだろう。
 最近はどうしてもカヌー乗りの目で川を見てしまう癖が付いているけれど、増水したサンル川はとてもスリリングで楽しそうな川である。
サンル川 道路沿いのそんな風景を楽しみながら神門の滝へと続く林道入口に到着。
 その入口では森林管理署の人が何か作業をしていた。
 嫌な予感がして「滝まで行きたいんですけど」と聞いてみたら、「ああ、ここから先は林道が崩れているので通行止めだよ」と言われてしまった。
 わざわざ滝を見るために40kmも走ってきたのに、また同じ道を引き返さなければならない。
 「楽しいドライブだったから良いじゃない」とかみさんが慰めてくれたけれど、このままただで帰るのは悔しすぎる。
 途中で「下川鳴る石入口」と書かれた古い標柱があったのを思いだして、どんなものなのか知らないけれど神門の滝の代わりにそこに行ってみることにする。
 ところがその標識を曲がった直ぐ先で、再び林道通行止めのチェーンに行く手を阻まれてしまった。
 それでもめげずに、今度は下川町の市街地近くの山の上に展望塔が建っていたのを思い出して、行く先をそこに変更した。
 その展望塔までの道が分からなかったけれど、直ぐに道路際に「象の鼻公園展望塔入口」の看板を発見。
 「なかなか面白そうなところかも」なんて考えながら、看板に従って走っていくと、またしても行く手をチェーンに遮られ、その横には「公園閉鎖中」と書かれていた。
 「ゴールデンウィークの真っ最中なのに、今開けないでどうするんだ〜」と思わずぼやきが出てしまった。
 「こうなったら日進湖畔キャンプ場でも下見して帰ろうか」と車を走らせていたら、いつの間にかそこへの分かれ道を通り過ぎてしまっていた。
 もう何処にも行く気力もなくなり、そのまま岩尾内湖白樺キャンプ場経由で南下し、愛別町でコンビニ弁当を買って町内の農村公園の駐車場でそれを食べる。
 キャンプの帰りは最近はこのパターンばかりである。

岩尾内湖の桜と新緑

 振り返ってみると、何の収穫もない今回のキャンプだった気がする。
 何時も充実したキャンプばかりが続くわけではないし、たまにはこんな時もあるのだろう。
 でもこうしてキャンプ日記を書いていると、色々なことが沢山あって、結局は長文の日記になってしまった。
 何の収穫もないキャンプが、意外と思い出に残るキャンプになるのかもしれない。
 ただ、白樺花粉の飛ぶ時期にはもう2度と白樺林のあるキャンプ場には行かないことだけは確かである。

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