僅かな花の風景を撮影するために車から乗り降りしているうちに、私達夫婦の花粉症の症状が悪化してきた。
今年の白樺花粉の飛散量は過去最大となっているそうで、確かにこの2週間ほどはくしゃみと鼻水で大変な目にあっている。
それなのに、ここ朱鞠内周辺では道路沿いに生えている木はほとんど全てが白樺なのである。
芽吹き始めたばかりの淡い新緑の中の快適なドライブと言いたいところだが、私達夫婦にとっては地獄の中を走っている気分である。
せめて窓を閉めていればいくらかはましなのだろうけれど、後部座席のフウマが窓を開けれとうるさいものだから、やむなく窓は開けたまま。
涙と鼻水が止めどなく流れ落ちてくる。
夫婦揃って鼻にティッシュを詰め込んでいる姿は、対向車のドライバーにはとても滑稽なものに見えていることだろう。
途中で名寄の弥生公園に立ち寄る。
ネットで調べたところ、ここは名寄市の桜の名所となっているらしく、毎日の開花状況までネットに載っていた。
それによると、5月2日現在でまだ咲き始めの状態らしい。
GW後半戦の初日で、さぞ花見客で賑わっていることだろうと思いながら、「桜の名所弥生公園」と書かれた看板に従って公園内に車を乗り入れると、人の姿など何処にも見あたらない。
それに肝心な桜は、咲き始めどころか既にほとんどが散ってしまって、葉桜となっているではないか。
強い風に吹かれて最後まで残っていた僅かな花片が、人気のない園内をヒラヒラと飛ばされていった。
「・・・。」
札幌の円山公園でも既に桜は散っているはずだけれど、それでも園内では大勢の花見客が桜のことなど気にもかけないで宴会を楽しんでいることだろう。
今年就職したばかりの息子も、明日は7時半に円山公園に行って会社の花見の場所取りをさせられるとぼやいていた。
同じ桜の名所でも名寄と札幌では大違いだなと、何だか拍子抜けしてそこを後にした。
今年オープンしたばかりの道の駅「もち米の里☆なよろ」に立ち寄る。さすがにこちらの方は駐車場も満車に近く大賑わいである。
ここの「釜雑煮」を食べたかったのだけれど、ちょうどお昼時で順番待ちの列ができていたので、ソフト大福を買うだけにした。
昼食はネットで調べてあった国道沿いのラーメン屋「風連正麺」に入る。
結構美味しいラーメンに満足して、今回のキャンプ地ふうれん望湖台自然公園へと向かった。
相変わらず空は薄い雲に覆われ、しかも風が強い。
道沿いの周辺の山肌ではコブシの白い花が目立っているが、桜のピンク色は何処にも見あたらない。
果たして桜は咲いているだろうか。
2002年の朱鞠内湖キャンプの時は望湖台まで足を伸ばして、その時はちょうど桜が満開になっていた。その風景が忘れられず、翌年のGWには望湖台に泊まったのだけれど、今度は全然咲いていない。
2002年の札幌の桜の開花日は今年より1日遅かったはずで、それから考えると望湖台の桜も今年は満開になっているはず。でも、弥生公園の桜は散っていたし・・・。
期待と不安が入り交じったままキャンプ場に到着。センターハウスの周りの桜は散り始めてはいるけれど、まだ十分に花を楽しめる状態だった。
受付を済ませて、ワクワクしながらサイトへ向かう。
湖寄りのサイトでは大人数のグループがバーベキューを楽しんでいた。テントを張っていないので日帰り客のようだ。
これぞ正しい花見の姿。でも肝心の花の方は・・・。
ここもやっぱり弥生公園と同じ状態でほとんど葉桜になってしまっていた。
まだいくらか花は残っているけれど、思い描いていた満開の桜の木の下にテントを張る情景とはほど遠い。
芝生広場の方には誰もいないのでじっくりとサイトを探したけれど、なかなか場所が決まらない。せめて満開の桜が1本でもあれば、ためらいなくそこに決めるのだけれど、全てが葉桜なのだ。
結局、美しいシラカバ林が真正面に見える場所にテントを張ることにした。その直ぐ隣にも姿の良い白樺がそびえている。
テント設営中もタラタラと流れ落ちる鼻水。こんなところにテントを張って大丈夫なのだろうか。桜と白樺のことさえ考えなければ、ほとんどベストポジションとも言える場所なのだけれど、複雑な気持ちである。
心配していた風も、周りの樹木に遮られて気になるほどでもない。
シラカバ林の中ではヒメイチゲが一面に白い花を咲かせていた。
湿地の中の遊歩道を歩いてみると、エゾノリュウキンカやミズバショウは既にかなり大きく育っている。
驚いたのはオオバナノエンレイソウが既に花を咲かせていたことだ。今年の異常なくらいに暖かな春のために、順番に咲いてくるはずの花が一斉に咲き始めているのである。
テントに戻ってくるとまた涙と鼻水が酷くなってきた。
みるみるうちにティッシュの山ができてくる。 いちいち鼻をかむのも面倒なので、ティッシュを丸めて鼻に詰め込む。
色々と試行錯誤を繰り返した結果、ティッシュを3分の1の大きさに切ってそれを2枚に分けて鼻に詰めるとちょうど良いことを発見した。
2分の一では無駄に大きすぎるし、4分の1にすると小さすぎてそのままスッポリと鼻の奥まで入ってしまい面倒なことになる。
いよいよ鼻水の量が多くなってきたなら、1枚のティッシュを四つに折って、それを2本の指でVサイン作って両方の鼻の穴に押し込む。
鼻水でそのティッシュが湿ってくると、手を放してもそのまま鼻にくっついて固定される。
この方法だと大量の鼻水を吸い取ることができるのだけれど、唯一の欠点は見た目が非常に格好悪いと言うことだ。
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