|  観音山から下りてくると、今度は「様似名物 たこまんまのかまぼこ」と書かれた看板に引き寄せられて、セラーズというコンビニに入る。なかなか美味しそうなので、ビールのつまみ用にそれを購入して、そろそろキャンプ場へと向かうことにした。濡れるほどでは無いけれど、パラパラと小雨が降り続いている。
 
  雲にほとんど隠れているけれど、山の上の方は真っ白だ。 もしかしたら先客が入るかもしれないと思っていたけれど、この季節、そしてこんな天気の日にキャンパーがいるわけは無かった。
 懐かしい風景が広がっていた。
 11年ぶりのオロマップである。
 苔生した場内を落ち葉が埋めていた。
 ぐるりと場内を一回りしてテントを張る場所を探したけれど、ここでは何処にテントを張ってもロケーションにそれほど違いはない。
 気をつけなければならないのは、幌別川を挟んで対岸に走っている国道からの騒音である。
 特にシェルターになっている部分では車の走行音が反響して、余計にうるさく感じるのだ。
 川の上流側に行くと、今度は砂防ダムからの轟音が聞こえてくる。
 でも、木々が葉を落としていて音を遮るものは何もないので、結局は何処に張ってもあまり違いはなさそうだ。
 
  中央付近にテントを設営。 いつもは自分用のテントを別に設営するかみさんも、今日は寒いから一緒のテントで寝るという。
 温度計を見ると気温は2度だった。
 年と共に寒さに弱くなってきたフウマの震えが止まらないので、車の中に入れてやることにした。
 これまでならばキャンプ場に着くと同時に車から降りたくて興奮していたフウマなのに、今日は設営中も車の中からぼんやりとその様子を眺めているだけ。
 車から降りても、直ぐにテントの中に入って自分の寝床の中でブルブルと震えていたのだ。
 エンルム岬の急な階段で体力を使い果たしてしまったせいもあるのだろうけど、これではもう雪中キャンプなどには連れて行けそうもない。
  雪中キャンプの時に気温が2度もあれば、温かくて極楽気分になれるのに、雪の無い時の2度は心の中まで寒さが染み入ってくるようである。直ぐに焚き火を始めることにした。
 
  家からも十分な量の薪を持参してきていたけれど、3時過ぎから燃やし始めていたらさすがに夜までは持ちそうもない。 ここのキャンプ場には無料の薪も用意されていると聞いていたけれど、残っているのは直径30cmくらいの太い丸太ばかり。
 その隣には伐採されたばかりのような木の枝などが山積みされていたけれど、こちらはほとんど生木に近く、しかも濡れて湿っている。
 その中から適当な太さのものを選び出して、焚き火台に立てかけるようにして乾かしながら燃やすことにした。
 するとこれがジュウジュウと音を立てて水を染み出させながらも、結構燃えるものなのだ。
 これでもう薪の不足を心配することも無くなり、寝るまでの6時間、豪勢に焚き火を楽しむことができたのである。
 焚き火があれば、どんなに寒くてもビールが旨い。
 そして、様似町で仕入れた「タコマンマかまぼこ」、これを温めて食べたら最高に美味しかった。
 ますますビールが旨くなる。
 暗くなってくると今度はワインに切り替える。
 空を見上げると木々の枝の向こうに星が煌めいていた。いつの間にか雲も晴れて満天の星空が広がっていたのだ。
 茫然とその星空を見上げていると、長く尾を引きながら流れ星が横切っていった。
 寝る時はフウマもインナーテントの中に入れてやる。
 テントに入ると砂防ダムからの水音が余計に大きく聞こえてくる。久しぶりに耳栓をして寝ることにした。
  耳栓のおかげでよく眠ることができた。 かみさんも、キャンプでこんなにぐっすり眠れたのは初めてだと喜んでいる。
 テントから出ると直ぐに焚き火を始める。
 白いものが周りを舞っているので焚き火の灰かと思ったら、それは細かな雪の粒だった。
 空は再び鉛色の雲に覆われてしまっていた。
 朝の気温は0度。
 曇ってしまったのでそれほど気温は下がらなかったようだけれど、もっと寒くなっても良いから朝には青空を見上げたかった。
 川の水で顔を洗う。
 その横ではネコヤナギの芽が大きく膨らんでいた。
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