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春はいずこに日高路キャンプ

オロマップキャンプ場(3月29日〜30日) 

 週末毎に色々と予定が入ってキャンプへ行くための連休を確保できずにいたけれど、3月末になってようやく何の予定も無い週末が巡ってきた。
 今年の北海道の3月は各地で記録的な暖かさを記録し、元々が例年よりも積雪の少ない冬だったので、既に多くの地方で雪が無くなってしまっている。
 ここ最近の我が家のキャンプは雪中キャンプから始まっているのだけれど、この陽気では雪中キャンプの気分にもなれず、見聞録のBBSで教えてもらった情報を元に、雪の無い日高のオロマップキャンプ場に出かけることにした。
 つい先日まで、札幌では6日連続で最高気温が10度を超えると言う観測史上初めてとなる暖かさを記録していて、家の周りの雪もすっかり解けてしまっていた。
 それが出発当日の土曜日の朝に目覚めると、庭が薄らと雪化粧していたので驚いてしまう。
 3月に雪が降るのは極々普通のことなのだけれど、それまでが暖かすぎたので季節外れの雪が降ったような気がするのだ。
明るくなってきた空 天気予報では今日の夜から晴れてきて明日は全道的に良い天気になるとのことなので、そんな朝の雪にもめげることなくキャンプへと出発した。
 我が家の周りはそれほどの雪でもなかったのに、高速道路を北広島付近まで来ると周りの木々が真っ白に雪化粧していて、久しぶりに見るかのような真冬の雪景色。
 しかし、日高自動車道まで走ってくるとその雪も消えて、上空のどんよりとした曇り空も何となく明るくなってきた気がした。
 「意外と天気の回復も早いかも」なんて淡い期待を抱いたけれど、それはやっぱり泡よりも淡い期待だった。

 休憩のために寄った判官舘森林公園。
雪景色の判官舘 「何だ!この雪は!」
 雪中キャンプをするためにわざわざ日高までやって来たわけでは無いのである。
 気を取り直して再び日高路を東行する。
 雪が多かったのは判官舘付近だけだったようで、その後は雪も消えてきた。
 ただ、明るさを増してきたかと思った空は、再び鉛色に戻ってしまっている。
 静内町で昼食にする。
 今回はあらかじめネットで検索して、入る店も決めていた。
 「ねこや食堂」。
 少し奥まった場所に建物があるので、国道からは直接店が見えない。
 道路沿いに小さな看板があり営業中と書かれたのぼりも立っているけれど、それを見ただけでこの店に立ち寄るお客さんなどほとんどいないのではと思えてしまうような店である。
 ある程度ネットで予備知識は持っていたけれど、入るのにちょっとした冒険気分が味わえるこんな店もなかなか楽しい。
 そして、冒険した結果、そこで美味しい食べ物にありつけたらこれはもう最高である。
 普通の民家のような店内には薪ストーブが焚かれ、その横では気持ちよさそうに真っ白なネコが寝ている。
 旅先でこんな店を発見するととても嬉しくなる。

ねこや食堂  

 ねこや食堂を出て様似へと向かう。
 様似町は去年のオオバナノエンレイソウを訪ねる旅で観音山に立ち寄っているが、そこから見える見えるエンルム岬は雨が降っていたので登ることができなかった。
 今回はそのエンルム岬に登るのが目標である。
 今読んでいる司馬遼太郎の「菜の花の沖」で、高田屋嘉兵衛がここ様似も立ち寄っていることを知って、エンルム岬の上から高田屋嘉兵衛が当時見たであろう同じ風景を自分の目でも確かめてみたかったのだ。
 岬の駐車場から先には急な丸太階段が続いている。
急な階段を登るフウマ かみさんが「フウマにこの階段は無理だから車に乗せておきましょう」と言う。
 2月に14才になったばかりの愛犬フウマは急に老け込んでしまって、車への乗り降りも介助が必要な状況なのである。
 そうは言ってもフウマだって一緒に歩きたいはずだと思い、車から降ろしてやって一緒に急な階段を登る。
 すると、家の中の階段さえ登れなくなっているのに、時々足を踏み外しながらもエンルム岬の展望台まで無事に登りきることができた。
 太平洋に突き出したこのエンルム岬のおかげで、昔は日高沿岸での唯一の良港だったのだろう。
 辰悦丸に乗った高田屋嘉兵衛がこの様似にやって来た時の様子を頭の中に描こうとしたけれど、私の貧弱な想像力ではとても描ききれなかった。
エンルム岬から見る様似港 嘉兵衛が「神々の国だ」と思った風景は一体どんなだったのだろう。
 雲に邪魔されずに、日高の山並みまで見渡すことができれば、私もそう感じることができたかもしれない。
 次は、港の奥に見えている観音山に行くことにした。

 途中に様似町郷土館があったので入ろうとしたら、閉館の表示も無いのに鍵がかかっていた。これにはちょっとガッカリしてしまった。
 国道に出ると様似町重要文化財と書かれた「等樹院」と言うお寺を見付けて、ここにも立ち寄る。徳川11代将軍家斉の命により建てられたものらしいが、見るべきものはあまりなかった。
 でも、行き当たりばったりのこんな旅がとても楽しい。
 観音山は去年は一面にオオバナノエンレイソウが咲いていたけれど、さすがにこの時期は殺風景である。
 でも、落ち葉の絨毯の中にひっそりと佇む石像観音や展望台からのエンルム岬や親子岩の眺めなど、好きな場所だ。

観音山のしっとりとした風景   展望台からのエンルム岬の眺め

 観音山から下りてくると、今度は「様似名物 たこまんまのかまぼこ」と書かれた看板に引き寄せられて、セラーズというコンビニに入る。なかなか美味しそうなので、ビールのつまみ用にそれを購入して、そろそろキャンプ場へと向かうことにした。
 濡れるほどでは無いけれど、パラパラと小雨が降り続いている。
山の上は真っ白だ 雲にほとんど隠れているけれど、山の上の方は真っ白だ。
 もしかしたら先客が入るかもしれないと思っていたけれど、この季節、そしてこんな天気の日にキャンパーがいるわけは無かった。
 懐かしい風景が広がっていた。
 11年ぶりのオロマップである。
 苔生した場内を落ち葉が埋めていた。
 ぐるりと場内を一回りしてテントを張る場所を探したけれど、ここでは何処にテントを張ってもロケーションにそれほど違いはない。
 気をつけなければならないのは、幌別川を挟んで対岸に走っている国道からの騒音である。
 特にシェルターになっている部分では車の走行音が反響して、余計にうるさく感じるのだ。
 川の上流側に行くと、今度は砂防ダムからの轟音が聞こえてくる。
 でも、木々が葉を落としていて音を遮るものは何もないので、結局は何処に張ってもあまり違いはなさそうだ。
我が家のサイト 中央付近にテントを設営。
 いつもは自分用のテントを別に設営するかみさんも、今日は寒いから一緒のテントで寝るという。
 温度計を見ると気温は2度だった。
 年と共に寒さに弱くなってきたフウマの震えが止まらないので、車の中に入れてやることにした。
 これまでならばキャンプ場に着くと同時に車から降りたくて興奮していたフウマなのに、今日は設営中も車の中からぼんやりとその様子を眺めているだけ。
 車から降りても、直ぐにテントの中に入って自分の寝床の中でブルブルと震えていたのだ。
 エンルム岬の急な階段で体力を使い果たしてしまったせいもあるのだろうけど、これではもう雪中キャンプなどには連れて行けそうもない。

 雪中キャンプの時に気温が2度もあれば、温かくて極楽気分になれるのに、雪の無い時の2度は心の中まで寒さが染み入ってくるようである。
 直ぐに焚き火を始めることにした。
焚き火風景 家からも十分な量の薪を持参してきていたけれど、3時過ぎから燃やし始めていたらさすがに夜までは持ちそうもない。
 ここのキャンプ場には無料の薪も用意されていると聞いていたけれど、残っているのは直径30cmくらいの太い丸太ばかり。
 その隣には伐採されたばかりのような木の枝などが山積みされていたけれど、こちらはほとんど生木に近く、しかも濡れて湿っている。
 その中から適当な太さのものを選び出して、焚き火台に立てかけるようにして乾かしながら燃やすことにした。
 するとこれがジュウジュウと音を立てて水を染み出させながらも、結構燃えるものなのだ。
 これでもう薪の不足を心配することも無くなり、寝るまでの6時間、豪勢に焚き火を楽しむことができたのである。
 焚き火があれば、どんなに寒くてもビールが旨い。
 そして、様似町で仕入れた「タコマンマかまぼこ」、これを温めて食べたら最高に美味しかった。
 ますますビールが旨くなる。
 暗くなってくると今度はワインに切り替える。
 空を見上げると木々の枝の向こうに星が煌めいていた。いつの間にか雲も晴れて満天の星空が広がっていたのだ。
 茫然とその星空を見上げていると、長く尾を引きながら流れ星が横切っていった。
 寝る時はフウマもインナーテントの中に入れてやる。
 テントに入ると砂防ダムからの水音が余計に大きく聞こえてくる。久しぶりに耳栓をして寝ることにした。

朝の焚き火 耳栓のおかげでよく眠ることができた。
 かみさんも、キャンプでこんなにぐっすり眠れたのは初めてだと喜んでいる。
 テントから出ると直ぐに焚き火を始める。
 白いものが周りを舞っているので焚き火の灰かと思ったら、それは細かな雪の粒だった。
 空は再び鉛色の雲に覆われてしまっていた。
 朝の気温は0度。
 曇ってしまったのでそれほど気温は下がらなかったようだけれど、もっと寒くなっても良いから朝には青空を見上げたかった。
 川の水で顔を洗う。
 その横ではネコヤナギの芽が大きく膨らんでいた。

川で洗顔   ネコヤナギ

 改めて場内をゆっくりと歩いていみる。
 川縁の土手では行者ニンニクが小さな芽を伸ばし始めていた。
 福寿草もあちらこちらで群落を作って花を咲かせている。 しかしその花は、日が射さないので閉じたままだ。
 今日こそは太陽が顔を出して、福寿草もその光を目一杯浴びるために花弁を大きく広げるだろうと期待していたのに、上空を覆った雲は簡単には取れそうもなかった。
 今回のキャンプでは福寿草の花と我が家のテントを一枚の写真に収めることが密かな楽しみだったのに、下のような写真が精一杯だった。


福寿草と我が家のテント

福寿草の群落   行者ニンニク

 結露で濡れたテントは、この天気ではなかなか乾きそうにもなかったので、そのまま撤収することにした。
 その後、キャンプ場の横を通って幌別川の上流へと続く林道を探検してみる。
 林道沿いの湿地ではカエル達が活動を始めている。
 森の中で大きく両手を広げる巨木や、牧場の中で悠々と枝を広げる独立樹。
 河原へ下りる道を見付けて車を乗り入れると、そこには美しい河原が広がっていた。
 そしてその付近の森の林床には福寿草が群落を作り、ナニワズも黄色い蕾を膨らませている。
 途中のゲートで通行止めになっていたけれど、なかなか楽しい林道ドライブだった。

両手を広げる巨木   牧場の独立木
美しい河原   福寿草の咲く森

 そうしてオロマップを後にして、札幌への帰途につく。
 静内温泉に寄る頃には、しつこく上空を覆っていた雲が嘘のように消えて無くなり、その後は素晴らしい青空が札幌まで続いていた。
 家に着いてからアメダスの日照時間を調べてみたら、この日は朝から全道的に快晴だったのに、日高のごく一部分だけが雲に覆われていたようである。
 今年は山スキーの時から天気に見放され続け、それはキャンプシーズンに入っても続いていた。
まあ、天気のことは諦めているけれど、心配なのはフウマである。
寒さには弱くなっているし、体力もかなり落ちていて、そして目もかなり見えなくなってきている様子だ。
何となくおどおどしているのは、目が見えなくて不安なのかもしれない。
一緒に歩いていても、時々確認するように私の方を振り返る。リードを付けると元気良く歩くのは、その方が安心できるからなのだろう。
 こんなフウマが安心してくつろげるように、今年はキャンプをする場所にも気を使うことになりそうである。

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