我が家のキャンプへ行っている回数は、普通の人と比べれば十分に多いと思うのだけれど、私としては今年はなかなか思うようにキャンプへ行けなかったイメージがある。
10月のカヌークラブでの例会キャンプを終われば週末の予定も無くなり、思う存分秋の紅葉キャンプを楽しめる。そう考えて張り切っていたところ、私の父親が突然入院することになり、キャンプどころでは無くなってしまった。
クラブの例会キャンプがそのまま今年のキャンプ納めになってしまうのも何だか味気ないな〜と思っていたところ、手術を前にして父親の様態も安定してきたので、急遽この間に今シーズンのラストキャンプを決行する事に決定。
ところが既に11月に入ってしまい、オープンしているキャンプ場も限られてくる。行き先をじっくりと考えるような心の余裕も無かったので、今時期でも快適に泊まれそうな東大沼キャンプ場へ出かけることにした。
大沼まで行って1泊で戻ってくるのも勿体ないので、月曜日に休みを取って2泊3日の日程とする。
天気は土曜日こそ不安定なものの、日曜月曜と全道的に良くなってきそうな予報である。
岩内経由の日本海ルートで南下することにした。白波が打ち寄せるこの日の日本海は、早くも冬の訪れを感じさせるものだった。寿都から内陸に入り、黒松内の道の駅に寄ってトワ・ヴェールのパンを購入。その後長万部から高速に乗って八雲まで。
八雲のモダ石油はリッター135円だったので、まだ半分までも減っていなかったけれど、ここで給油しておくことにする。11月に入り札幌市内では150円のスタンドまであると言うのに、何故八雲のガソリンがこんなに安いのか、全くの謎である。
森町付近で昼になったので、どこか美味しそうな食事処が無いかと国道から離れ森町の市街地を走ってみることにした。
するとJRの森駅前に「東光亭」と言うラーメン屋があったので、この立地なら不味いラーメンを食べさせられることも無いだろうと考え、そこに入ってみる。
店に入ったときの第一印象は、「随分従業員の多い店だな〜」だった。ちょっと渋めの店主の他に、5人ほどのおばさん達が元気良く働いている。お客さんに対する愛想も良くて、ここなら美味しいラーメンが食べられそうだ。
二人ともしょう油ラーメンを注文。これがあっさり系の味でなかなか美味しかった。
ただスープがやたらに熱くて、食べていてもなかなかそれが冷めず、猫舌の私は食べるのにちょっと苦労させられた。かみさんの話では、この熱さはラードが利いているためだそうだ。そして、この麺ならば味噌味を頼めばよかったと後悔している。なるほど、後で調べてみたらこの店の人気は味噌ラーメンだそうである。
偶然に美味しい店を発見したことに気を良くして、その後は一路大沼へと向かった。
まずは大沼の手前で日暮山に寄り道し、そこからの大沼や駒ケ岳の展望を楽しむ。
今年の秋は道内各地で紅葉も遅れ気味と聞いていたので、もしかしたらここ大沼でもまだ美しい紅葉が見られるかもしれないと淡い期待を抱いていた。
しかし、去年もほぼ同じ時期にこの日暮山にきたけれど、その時よりも確実に紅葉は終わりに近づいているようだ。
その後、湖畔沿いの道路をキャンプ場まで走る途中でも、所々で散り遅れたモミジが赤く染まっている程度で、周辺の木々は殆ど葉を落として丸裸になっていた。
やがて、その葉を落とした木々の向こうにキャンプ場のある湖畔の様子が見えてきた。
東大沼キャンプ場は10月中でクローズしていることになっているけれど、11月上旬はまだトイレも水場も使えるようになっている。
到着は午後の1時過ぎ。週末で天気も良く、当然数組の先客がテントを張っているだろうと思っていたが、その湖畔にはテントどころか人影も見えない。
キャンプ場に到着して、まずかみさんがキャンプ場中央のトイレや炊事場の様子を見に行く。そしてかみさんが送ってきた合図は、両腕をクロスさせての×マークだった。
これはちょっと予定外である。こんな時のために第二候補地として11月上旬までオープンしている上磯ダム公園キャンプ場を考えてはいたけれど、ここと比べると確実に見劣りしそうだ。
ガッカリしながら、念のために駐車場近くのトイレと炊事場を調べてみたら、こちらの方は使えるようになっていた。最初に見た炊事場もそうだったけれど、こちらも片側の方に「故障につき使用禁止」の張り紙がされていた。どうやら給水系統が故障しているらしい。
でも、これならばキャンプは可能である。我が家が好きな北側の湖岸のサイトからでは、トイレまでかなり離れてしまうけれど、キャンプができるのならば少しくらいの不便さは全く気にならない。
他に誰もいなくて、広大なサイトの何処にテントを張るのも自由である。かみさんが選んだのはサイトの中央付近。直ぐ後ろに水の出ない炊事場があり、途中で雨が降り出しても、ここならば屋根の下に避難できると考えたらしい。
道路上に車を停めて、まずは荷物を全部降ろす。そしてテントを張る場所を決めようとしたけれど、観光客がその付近まで歩いてくるのがどうも気になる。
それに、確かに夜に雨が降るかもしれないと天気予報で言っていたけれど、それも今夜だけで明日からは良い天気が続くことになっている。
そう考えると気が変わって、駐車場から離れたもっと北側の方にテントを張ることに変更した。
全て車から降ろしてしまったキャンプ道具を、今度はそこまで歩いて運ばなければならないけれど、快適なキャンプを楽しむためならば少しくらいの苦労は厭わないのだ。
湖側からやや強めの風が吹いていたけれど、テントの入り口はやっぱり湖側に向けたい。
ここのキャンプ場で湖側から吹いてくる西風に悩まされるのは何時ものことである。かと言って直ぐ後ろを道路が通っているので、そちら側にテントを向ける向ける訳にもいかない。
結局、湖に向かって微妙に斜めに向けながらテントの設営を完了。そのうちに風も弱まってきて、これならば焚き火をするのにも支障が無さそうだ。
到着した時には青空が覗いていた空も、いつの間にか雲が全体に広がってしまっていた。
今時期は午後4時を過ぎると直ぐに暗くなってしまうので、テントを張り終えると直ぐに場内を回って枯れ枝を拾い集める。そしてその後は、秋の夜長を焚き火をしながら過ごすだけである。
今日の夕食はダッチオーブンを使ったビーフシチュー。
焚き火の上に吊るしてじっくりと煮込むようなダッチオーブン料理は、秋の夜長には打って付けだ。
時々、顔に冷たいものが当るのを感じるようになってきた。
霧雨とまではいかないけれど、テントの表面を見ると細かな水滴が付いている。
そんな状態がしばらく続き、屋根の下に避難するかどうか迷っていたけれど、遠くに見える山の姿が暗闇の中でも霞んできているように見えるので、今のうちに炊事場の中に生活の場を写すことに決定した。
普通の料理ならば、テントの前室に入れば良いのだけれど、ダッチオーブン料理ではそうもいかないのである。
料理と食事に必要な道具類だけを、やや離れた炊事場の中へ何度も往復しながら運び込む。
「私が最初に選んだ場所にテントを張っていれば楽だったのに」と口には出さないけれど、かみさんのそんな視線をひしひしと感じてしまうのであった。
そしてスパゲティとビーフシチューの夕食が完成。じっくりと煮込んだビーフシチューは絶品である。
食後もしばらくその場所で焚き火を続けていたけれど、そのうちに雨も完全に止んだようなので再びテントの前へと生活の場を移すことにする。
同じ焚き火でも、屋根の下、そしてコンクリートの土間の上でする焚き火ではあまりにも味気なく感じてしまうのだ。
ユラユラと上がる赤い焚き火の炎を見つめていると、本当に心が落ち着いてくる。
世の中の全ての人間がこうして焚き火を楽しむようになれば、世の中はもっと良いものに変わる気がする。
それにしても今時期のキャンプにしては全く寒さを感じない。恒例の気温当てクイズをやったけれど、実際は10度近くあるのに、お互いの予想は4度とか6度とかで、大外れだった。
暖かな日ばかり続いていたので感覚も鈍ってしまっているようだ。
ワイン一本を空けて、9時過ぎに就寝。
目が覚めるたびに貨物列車の音が聞こえているのは、貨物列車が通る度に目が覚めていると言うことなのだろう。
木々が葉を落としてしまった今時期は、列車の音もとても大きく聞こえてくるのだ。
でも寝るときに聞こえていた、波が湖岸を洗うチャポンチャポンと言う音は、全く聞こえなくなっていた。
5時を過ぎてもテントの中はまだ真っ暗だったけれど、外の様子を見るのが楽しみで起き出すことにする。かみさんも同時に隣のテントからできてた。
まず最初に目に飛び込んできたのは、雲一つ無い夜空に浮かぶ三日月と金星の姿である。
然別湖キャンプの時も、この二つが並んで輝く姿に感動したのだけれど、今回はその時よりもお互いの距離が離れてしまっている。
東の空は既に白み始めていたので、その時のような眩いほどの輝きも無いけれど、濃紺の夜空に浮かぶその姿は何とも言えず美しい。
そして大沼の湖面は何処までも鏡のように静まりかえり、そこからは真っ白な水蒸気がけあらしのように立ち上っている。
テントの表面は真っ白に凍りついていた。雲が晴れて風も無くなり、放射冷却で明け方になって一気に冷え込んだみたいだ。
気温はマイナス3度、今年のキャンプで初めて経験する寒さである。
その寒さの中で炊事場の水で顔を洗う。気合を入れて水を両手で受け止め顔へとかける。
手がしびれそうな冷たさだったけれど、その感覚も直ぐに薄れて、その冷たさを全く感じなくなってしまった。考えてみれば外気温より水のほうが温かいのだから、これも当然の話である。
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