今夜は研修センターの畳の上でゆっくりと寝るつもりでいたけれど、そこの直ぐ隣には緑の木陰にテントを張って気持ち良さそうに寛いでいるキャンパーの姿が見えている。
小中学校夏休みの最後の週末なので、キャンプ場はさぞかし大混雑だろうと予想していたが、思ったほどではなかった。とは言っても、普段の私の間隔から言えば、とてもテントを張る気にはならないような混み方である。
それでも、面積の広いキャンプ場なので、駐車場から遠い端の方まで行けばかなりゆったりとテントを張っているようなキャンパーも見受けられる。
研修センターの艇庫前広場は小高くなっているので、そこからのロケーションはなかなかのもだ。朝、テントの入り口を開けると、その風景が目の前に広がっているなんて、考えただけで嬉しくなってくる。
屋根の付いた畳の上で寝るのと、こんな素晴らしい環境の中でテントで寝るのとどちらが快適かと考えたら、私は絶対にテントの方を選択してしまう。
酔っ払って足元がふらつき始める前に決断を下して、広場の隅にテントを設営することにした。
最初から屋根の下で飲み食いしているのなら、そのまま屋根の下で寝ることに何の抵抗も無いのだけれど、こうして空の下で飲み食いしていたら、寝るときだけ屋根の下に入ると言う行為がどうもしっくりとこない。
そのまま空の下で眠ってしまうのが、人間の本能に基づく一番自然な行為なのである。
などと訳の分からない理屈を並べているけれど、一番の理由は酔っ払ったらそのまま隣のテントに潜り込んで寝てしまえば楽で良いと言うことだったりするのだ。
とは言っても、最近はあまり遅い時間まで飲んでいると翌朝にもろに影響するようになってきたので、明日の川下りに備えて11時前にはサッサとそのテントに潜り込んでしまった。
1週間前の落合キャンプでは、シュラフを忘れてしまい寒くて寝られなかったのに、今夜は逆に、シュラフに入っていると暑くて目が覚めてしまった。
時間は午前2時前、テントの外からは虫達の合唱が聞こえてくる。
「やっぱりテントで寝て良かったな〜」と思いながら虫の鳴き声に耳を傾けていたら、それに混じってキャンパーの話し声も聞こえてきた。
数人のグループのようだけれど、この静けさに似合わないような大きな声で話している。おまけに時々バイクのエンジンをかける音まで響いてきた。虫の声だけを聞いていようと努力したけれど、どうしてもその話し声が気になって眠れない。
気晴らしにテントの外に出てみると、雲の切れ間から美しい星たちが覗いていた。空気が澄んでいるので、雲がなければ素晴らしい星空が広がっていたことだろう。
再びテントに入ったが、3時過ぎまではその話し声は続いていたようだ。こちらはまだ離れているから良いけれど、近くにテントを張っているキャンパーはうるさくてたまらないだろう。
これがあるから、夏休み時期のキャンプ場には泊まる気になれないのだ。
その後一眠りしてテントの中が明るくなってきた頃に目を覚ますと、早くもテントの外から話し声が聞こえてきた。何時も一番の早起きのS吉さんの声である。
そのままもう少し微睡んでいようと努力しても、私も早起きなものだからそれ以上はどうしても寝ていられない。話し声の中にはかみさんの声も混ざっているようだ。かみさんも私以上に早起きなのである。
諦めて私も起き出すことにした。
朝露に濡れるテントの入り口を開けると、まず目に入ってくるのは湖畔の木々とその向こうの山の姿。これを楽しみにわざわざテントを張ったようなものだ。
何時も使っているソレアードでは、一旦インナーテントを出てフライの窓を開けなければ外の景色が見られない。それに比べて小さなテントではシュラフに入ったままの体勢でも外の様子を見ることができる。
だから何なのだ?と言われたらそれまでだけれど、「目が覚めたらそのままテントの入り口を開けて朝の透き通った風景を楽しむ」私はこの瞬間に小さな幸せを感じてしまうのである。
テントから抜け出すと、かみさんを含めた早起きメンバーが4人、朝のコーヒーを飲んでいるところだった。
まだ朝も早いのに、何となく空気が暖かく感じられ、数日間遠ざかっていた夏がまた舞い戻ってきそうな雰囲気だ。
S吉さんの入れてくれたコーヒーを飲んで寛いでいると、一人また一人と眠そうな顔で起きてくる。話を聞くと、建物の中は暑苦しく、おまけにIさん、Kさんの鼾も相当にうるさかったようで、あまり快適ではなかったようである。
やっぱりテントの中で寝たのは正解だったみたいだ。
それにもし私も建物の中で寝ていたとしたら、IさんとKさんとTさんの鼾がうるさかったと言われていたかもしれない。
早朝はまだ上空にも雲が広がっていたけれど、気温が上がってくるといつの間にかその雲は無くなり、真っ青な空が広がっていた。
夏休み最後の週末、今日も一日楽しく過ごせそうだ。
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