しげさんとkenjiさん、Kevipaさんのところは、前日の然別湖キャンプで一緒になっている。Kevipaさんとサダ吉さんのところは前日に一緒に歴舟川を河口まで下っているし、我が家とkenjiさんのところは昨日樹海ロードですれ違っていた。
S藤さん夫婦は今日の早朝に苫小牧に到着し千歳川を下った後は富良野に寄って、今日の夜遅くにおち庵まで来ることになっている。
それぞれがそれぞれの夏休みを過ごし、所々ですれ違ったり一緒になったりしながら、そしてこの「おち庵」の庭先で全員が一緒になる。夏休みならではのキャンプ風景と言った感じで、他の人たちの夏休みの楽しさまで分けてもらえるような気がして、とてもハッピーな気分にひたれるのだ。
道内組みが全員揃った後、Kevipaさん夫婦が到着。3匹の犬達、ケビン・ルーク・クレアとも1年ぶりの再会である。
レトリバーのケビンは老犬になってしまって、足元が少しふらついている様にも見える。
もしかしたら今年が最後の北海道になるかもしれないとの話しだ。
我が家のフウマも連れて来てやりたかったけれど、川下りの予定もあってこの猛暑の中で車の中においておくわけにもいかず、今回は札幌で留守番させることにしたのだ。
まあそれは表向きの理由で、今回のようなグループキャンプには恥ずかしくて連れて来られないと言うのが本当の理由だったりする。
今までもグループキャンプの時など、何か食べている人を見つけるとすかさずその側に駆け寄って必死の形相でその人を見つめ続けるのである。
「フウマちゃんのその目で見つめられると弱いのよね〜。」と言われながら、時々食べ物を分け与えられていたのだけれど、最近は必死どころか鬼気迫る形相に変わってきているのだ。
見つめるだけでなく、空きあらば奪ってしまおうとも考えている。実家に行っている間も食卓テーブルが低いものだから、一瞬の隙を付いて鮭の切り身やおにぎり、肉などを次々とテーブルの上から持ち去ってしまった。
怒鳴りつけようとしても、両親が庇って「フウマちゃんはお腹が空いているんだからしょうがないよね〜。それじゃあ代わりにこの煎餅を食べなさい。」とか言って、また食べさせるものだからどうしようもない。
もっとも、怒鳴りつけたところで、食べたもの勝ちと考えているフウマには全く意味が無いかもしれない。
家に居るときも、かみさんが夕食の支度をしている間中、その足元で上を見上げながら何かが落ちてくるのをじっと待ち続け、私がビールを飲んでいるときも、そのつまみを狙ってミニテーブル越しに私を見つめ続けているのだ。
そんなフウマを美味しそうなご馳走が飛び交うこんなキャンプへ連れてきたら一体どんなことになるのか。それを想像すると、絶対に連れては来られないのである。
庵主Sさんが薪を燃やしてくれる。
この暑さでは焚き火もできないだろうと思っていたけれど、日が沈むと同時に気温も一気に下がってきて、焚き火の炎が頼もしく感じられるくらいだ。
kudopapaが本格的なラーメンを作ってくれた。限定どんぶり5杯分、それぞれ味が違うので皆の間を回しながら一口ずつ食べさせてもらう。
このラーメンがどれも最高に美味しかった。ガンネルズのグルメキャンプの様子はそのホームページで良く見ていたけれど、今夜はその片鱗を味わえたような気がする。
カヌー談義に花を咲かせながら楽しくお酒を飲んでいると、しげさんがいつの間にかイスに座ったまま寝てしまっていた。
これもガンネルズのホームページの写真でよく見る風景だ。
初めて目にするしげさんの生寝姿である。ガンネルズキャンプではこの後、顔に落書きされたりするようだが、今回はさすがにそれは免れたみたいだ。
何故か突然ギターの話題になり、ミエさんが持ってきていたギターをkudopapaが借りて弾きはじめた。
kudopapaは昔ブルーグラスのバンドをやっていたらしく、久しぶりにギターを手にしたと言う割には、その腕は鈍っていないようだ。
今日集まっているメンバーは所謂フォーク世代の年齢の人が多く、kudopapaが歌うフォークソングは皆にとっても懐かしい曲ばかりだ。
生まれた年の話になり、私の隣に座ってそれを聞いていたミエさんが突然、「それじゃあこの中ではヒデさんが一番年上なのね」と話しかけてきた。
「うげっ!」
何時も自分の年齢のことは頭の中から消し飛んでいるのだけれど、時々こうした現実を目の前に突きつけられてガッカリしてしまうのである。
夜も更けて、一人また一人とテントの中に入り始めた頃、ようやくS藤さん夫婦が到着した。
我が家のキャンプとしては珍しく、そのまま12時過ぎまで飲み続けて、テントに潜り込む。
しかしこれからが問題だった。
テントを設営した後にかみさんからこっそりと知らされていたのだけれど、何とシュラフを忘れてきたと言うのだ。これまでも色々な忘れ物をしたことがあるけれど、さすがにシュラフを忘れたのは初めてだった。
出発時に気になったものだから、わざわざシュラフのことを口に出して確認したのに、それでも気が付かなかったのである。
最初にそのことを聞いたときは「今日なら別にシュラフなんか無くても関係ないだろう」と軽く考えていたのだけれど、落合の夜は冷え込みも厳しく周りの芝生は夜露でぐっしょりと濡れている。つい先ほどまでは焚き火の温もりが頼もしく感じられ、途中で忘れたことに気が付いて家に取りに戻った長袖のシャツを、今はしっかりと着込んでいるような状況である。
テントの中にあるのはバスタオル1枚。上半身を覆うだけの大きさしかないけれど、酔っ払っているものだからそれに包まっているうちに直ぐに眠りについてしまった。
しかし明け方近くになって寒さで目が覚めた。遅くまで起きていたのでまだ強烈に眠たいのだけれど、その寒さで寝ていられない。上半身はバスタオル1枚のおかげで十分に温かいのだが、何も被せるものが無い下半身が寒くてしょうがない。
そのうちにおち庵の庭先で放し飼いされている鶏達がけたたましく時の声を上げ始めたので、それ以上寝るのは諦めて早々と起き出すことにする。
隣のテントに寝ていたかみさんも起きてきた。かみさんも寒かっただろうと思ったら、かみさんはテントの中に敷いていた銀マットに包まって寝ていたそうである。
「そうか!その手が有ったんだ!」
「山で遭難した時の訓練だと思えば良いのよ」
どこまでも脳天気なかみさんである。
ひんやりとした山の空気が心地良い。
と言いたいところだけれど、その空気が冷え切った体に染み入ってくる。
ようやく太陽の光が射し込んできたので、日の当たる場所にイスを移動して体全身に太陽の光を受けると、ようやく人心地つくことができた。
それぞれが朝食を済ませ、今日の川下り開始予定の10時までのんびりと時間を過ごす。
つい先程まではあんなに頼もしく感じていた太陽が、次第に鬱陶しい存在に変わってきていた。
今日もまた暑くなりそうである。
道路沿いに立てられている「おち庵」の看板を見たのか、時々一般の車が入ってくる。その度に私達がジロジロと見るものだから、怪しげな一団に恐れをなしたかのように、直ぐにそこから出て行ってしまう。
完全な営業妨害集団である。
今日はシーソラプチ川のダウンリバーの途中で一旦上陸し、おち庵で蕎麦を食べさせてもらって、その後国体コースまで下る予定になっていた。
そして皆で川下りに出かけ、一般のお客さんがいなくなりそうな午後1時頃に合わせて再びおち庵まで戻ってきた。
店の方は繁盛しているようで、まだ数台の車が店先に停まっている。 しばらく待っていると、このおち庵には全く似合わないような小奇麗な格好の人達が店から出てきた。
ここではそんな人間が異質なものに見えてしまうけれど、彼らから見れば、川を下っているそのままの格好で庭先にたむろしている私達の方が余程異質な存在に見えているのだろう。
全てのお客さんが帰ったところで、ようやく私達が蕎麦にありつける番である。
さすがに庵主Sさんの打つ蕎麦は美味しかった。そしてその後に出してくれたトロリとした蕎麦湯も絶品である。
すっかり満足して、その後の川下りが億劫になってきたけれど、車を全て下流に置いてあるので無理してでも下り続けなければならない。
そうしてシーソラプチ川や空知川の清流でたっぷりと遊んでおち庵に戻ってきた時は、既に午後5時近くになってしまっていた。
ここにもう1泊して明日のフェリーで群馬に帰るKevipaさん・ミエさん夫婦、これから北海道を回るS藤さん夫婦に最後の分かれの挨拶をして、札幌までの道程を急いだ。
こうして楽しい夏のカヌーキャンプは今年も終わってしまい、明日からはまた普通の生活に戻らなければならないのだった。
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