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水のように生きるのさ朱鞠内キャンプ

朱鞠内湖畔キャンプ場(6月1日〜3日)

 新しく購入したカナディアンカヌー(マッドリバー フリーダム)が自宅に届いたのは3週間前。
 今まで乗っているアリーが壊れた時の予備艇のつもりで買った舟なので、一刻も早く新しい艇に乗ってみたいと言う感情はそれほど湧いてこない。
 それでもかみさんが、カヌーが届く前から進水式用のお酒まで買って用意しているものだから、今回のキャンプではフリーダムの進水式を目的に行き先を考える。
 そうして決まったのが朱鞠内湖だ。
 新品のカヌーの進水式をするのなら、支笏湖とか然別湖とか屈斜路湖とか、それに相応しそうな美しいロケーションの湖が浮かんでくる。
 それらに比べて朱鞠内湖はダム湖なので、湖岸は剥きだしの泥。こんなところで進水式をしたら真新しいカヌーが泥だらけになるのは目に見えているけれど、その方が我が家のカヌーに相応しそうだ。

 金曜日から休んで今回は2泊3日のキャンプ。しばらく続いていた愚図つき気味の天気もようやく解消されて、週末は素晴らしい天気になりそうだ。
 途中で、ちょうど満開を迎えている滝川市江部乙の菜の花畑に立ち寄る。
菜の花とオデッセイ ここの菜の花畑を初めて見たのは5年前。当時は、何処に菜の花畑があるのかも分からずに江部乙を訪れ、たまたま通りかかったイベント会場らしきところで簡単な地図を手に入れられたので、それを見ながら畑の中の道路を走り回ったものである。
 現在はインターネットで開花状況を見ることもでき、菜の花マップも公開されるようになっている。印刷したその菜の花マップを見ながら、そこに印されている菜の花畑を隈なく見て回った。
 平日なので人も少ないだろうと思っていたら、前日のSTVのズームイン朝で満開の菜の花畑が中継されたせいもあるのか、人気のスポットは結構な賑わいとなっている。
 観光バスを仕立てた撮影ツアーらしきグループもいて、ずらりと並んで高そうなカメラを菜の花畑に向けていた。
 まさに一面の黄色の絨毯である。初めてこの風景を目にした時は感動したけれど、2度めともなるとそれも薄れてきてしまう。
 原色だけで作られたとてもインパクトのある風景は、逆に言えば面白みに欠ける風景でもある。それをカメラで写そうとしても、黄色の絨毯はあくまでも黄色の絨毯でしかない。せいぜい、その周りに映りこむ風景で変化を出すしかないけれど、勝手に個人の畑に入り込むことはできないので、車で走り回りながらこれはと思える構図の場所を探すことになる。
 これも結局は限界があり、本当に良い写真を写そうとしたら、そこに数日滞在して光の当たり具合や天候の変化などを考慮して、菜の花畑が一番美しく見える瞬間を切り取らなければならないのだろう。
 普通の生活をしているとそんな時間の使い方はほぼ不可能だけれど、キャンプではこれができちゃうのである。
 だから私は、美しい風景に出会うとついついそこでキャンプをしたくなってしまうのだ。
 ここならば丸加高原キャンプ場が近いけれど、菜の花のためにだけここに泊まる気には、なかなかなれそうもない。

菜の花畑   菜の花畑

 途中の幌加内町で蕎麦を食べることにする。
 バスターミナルの中にあったホロホロ亭が、いつの間にか「幌加内町伝承手打ち蕎麦 せい一」と言う仰々しい名前の新しい蕎麦屋に変わっていた。試しにそこに入ってみたけれど、ここの蕎麦もかなり美味しい。
 さすがに蕎麦を中心にした町づくりを進める幌加内だけあって、何処の店に入ってもレベルの高い蕎麦を食べられるのは嬉しいことである。
新緑の朱鞠内湖 札幌周辺の山は既に初夏の装いに変わっているけれど、朱鞠内周辺はちょうど新緑の美しい季節を向かえていた。
 周辺のミズバショウは既に葉が大きくなり始め、エゾノリュウキンカの花も所々に残っている程度である。
 その代わりに、林の中ではオオバナノエンレイソウの白い花が目立っていた。何時もならばこんな風景を見て感激するところだけれど、先々週にこの花が咲く風景をたっぷりと堪能してきたばかりなので、「へ〜、この付近でもオオバナノエンレイソウが咲いているんだ」程度の感想しかでてこない。
 私は去年、ソロで朱鞠内湖に泊まっているけれど、かみさんにとっては一昨年の3月以来、雪の無い時期で言えば2004年の8月以来の朱鞠内湖になる。
 そして新緑のこの時期に限っては2000年の5月以来と言うことになり、毎年訪れている朱鞠内湖なのに何故か懐かしさを感じてしまった。
 受付を済ませ、何の迷いも無くそのまま第3サイトへと向かう。サイトへ通じる道沿いにはチシマザクラの花がまだ散り残っていた。
 目的の場所は第2サイト寄りの岬の先端部。ところがそこには既に先客のテントが張られていたので、諦めて通常の第3サイトの一番下にあるサイトへ移動する。
 カヌーに乗るのならばやっぱり、このどちらかにテントを張りたいところなので、その中の片方を確保できたのでひとまず安心だ。第2サイト側にも親水性の高い場所があるけれど、そちらは釣り人の出入りが多いので落ち着けないのである。

 天気も良くて、テントを張り終える頃には薄らと汗が浮かんでいた。
 7年前もそうだったけれど、今の季節の朱鞠内湖はブヨが多い。テントを張り終えた後は、ブヨが煩いのでテントの前室の中に閉じこもる。寒いのは全く気にならないのだけれど、これからの季節のキャンプは暑いし虫が多くなるし、どうも苦手である。
 一息付いたところで、いよいよ新しいカヌーを湖に浮かべることにした。
 キャンプ場へ来る途中、車の中でのかみさんとの会話。
 「ところで進水式用に買ってあったお酒は持ってきてるよな。」
 「うん、ちゃんと持ってきたわよ。」
 「あ〜良かった、もし忘れてきたら進水式できないところだった。」
 「そうね、でも忘れたとしてもビールがあるから良いんじゃないの。」
 「・・・。」
上善如水とフリーダム 一般的な船の進水式にはシャンパンが使われ、漁船とかの場合は日本酒が使われる。だからと言って、アルコールが含まれれば何でも良いという訳では無いと思うのだけれど・・・。
 かみさんが用意していた日本酒は「上善如水(じょうぜんみずのごとし)」と言う変わった名前で「水のように生きるのさ」とのキャッチコピーも書かれていた。
 「何となくフリーダムに合ってるんじゃない?」とご満悦の様子のかみさんである。
 私もカヌーの性能などはともかく、このフリーダムの名前がとても気に入っている。
 全然関係無いけれど、最近の日清カップヌードルのCMで流れている大友克洋制作のSFアニメ「フリーダム」も大好きで、「このカヌーに乗って憧れの地球へ旅立とう!」何て気分にもなってしまうのだ。
 進水式と言っても、カヌーの先端にこの上善如水をチョロチョロとかけるだけ。神仏の類を何も信じてないくせに、こんな儀式だけはとりあえずやってしまう我が家なのである。
朱鞠内湖にカヌーを浮かべ おざなりな儀式を済ませた後は、早速カヌーを湖に浮かべそれに乗り込む。
 湖岸の濡れた土が長靴の底にこびり付き、新品のカヌーの中は直ぐに泥だらけになってしまうが、そんなことは大して気にもならない。
 これまでのアリーと比べるとかなり重量があり、最初の一漕ぎでその重たさがパドルを通して腕に伝わってきた。でも、一度動き出せばその重さは関係なくなる。
 サイト周辺で一しきり漕いだ後、今度はかみさんが一人で乗ってみると言うので、私は陸からその様子を眺める。ぎこちないけれど何とか真直ぐ進んでいるようだ。
 岸に戻りカヌーから降りてきたかみさんは「見てた?スカーリングで岸に寄せたのよ!アリーみたいにフラフラしないで真直ぐ進むわ!」と得意顔である。
 どうも、私よりもかみさんの方が、このフリーダムに対する思い入れが強いみたいだ。

 夕食のバーベキューを食べ終える頃には朱鞠内湖にも夕暮れが訪れ、静まり返った湖面にフクロウの「ホーッ、ホーッ」と言う鳴き声が響き渡る。
 木々の梢越しに宵の明星金星が一際明るい光を放っていた。
一番星 次第に夜の帳が下りてくる中で、焚き火を眺めながら月が昇ってくるのを待つ。
 今日が満月である。朱鞠内湖の湖面に映る月の姿も、今回のキャンプの楽しみの一つにしていたのだ。
 やがて、第2サイトの方向から真っ赤な巨大な月が昇ってきた。私はもっと湖の中央部分から昇ってくると考えていたので、ちょっと拍子抜けである。
 かみさんは、周辺で輝いていた星を見て、月の出る方向をほぼ正確に予想していたみたいだ。そう言えば今時期、月の出る方向には火星だか木星だかが輝いていると何かで見たような気がする。
 ちょうど2つの明るい星の間からその満月は昇ってきた。
 我が家のサイトからは、その満月にちょうど第3サイトの岬先端がかかるような位置になっていて、月が昇るに従ってそこの木立の中に月が隠れてしまう。それでも、月の灯りが湖の中に長く延びて、期待していたとおりの美しい風景だ。
 その邪魔になっている第2サイトの岬先端部分は、我が家の以前のお気に入りサイトになっていたところだ。そこには今日は別のキャンパーがテントを張っている。
 月の出と同時に、彼らの上げる感嘆の声がこちらまで聞こえてきた。今宵に限っては、そこが多分キャンプ場の中のベストサイトで間違いないだろう。
 邪魔になっているそこの木立だけれど、湖に映る月の明かりの中にその木の陰が浮かんでいるのもなかなか面白い風景だ。
 月が高く昇り、朱鞠内湖を明るく照らすようになった頃、私一人でカヌーに乗ってみた。満月の夜のナイトカヌーも素晴らしい。酔っ払っていたのであまり沖まで出ないで戻ってきたけれど、今度機会があれば満月の夜の朱鞠内湖で本格的にナイトカヌーを楽しんでみたいものである。
 静かな月夜を楽しみ、我が家にしては夜更かしの部類に入る午後10時にテントに入った。

月の出   木のシルエットが浮かぶ

 翌朝、目を覚まして時計を見るとまだ午前3時だった。
 まだテントの中は薄暗いけれど、早起きの鳥達はもう朝のコーラスを始めている。こうなるとこちらも寝ていられない。
 勇んで起きだしてみると、朱鞠内湖は濃い霧に包まれていた。
 これはちょっと嬉しい状況である。湖を覆っていた霧が日の出と共に掻き消されていくその様子は、これまでにも何度かここで経験しており、とても美しい風景である。
霧の朝 朝の焚き火とコーヒーを味わいながらその瞬間を楽しみに待っていたけれど、一向に霧の晴れそうな気配が無い。朝食を済ませても、依然として朱鞠内湖は霧に包まれたままである。
 既に太陽は高く昇っているはずだ。
 その霧もやや薄くなってきたので、朱鞠内湖カヌーツーリングに出かけることにした。
 微風が吹いているので、さざ波がたってしまい、楽しみにしていた鏡の湖面を曇らせているのがちょっと残念だ。
 今日は、湖の西側の入り江の奥を探検しようと思っていたけれど、途中で気が変わって去年の夏にもそこで写真を撮っている例の枯木を見に行くことにした。
 湖の中からにょきりと生える二股に分かれたその枯木は、朱鞠内湖のパンフレットに使われたこともあるくらいのとても印象的な風景を作っている。
 湖の水位が下がるとそれが1本の木であることが分かるけれど、今回はかなり満水に近いくらいまで水位が上がっているので完全に別々の木のように見えている。
二叉の枯木 次第に湖面も凪いできて、枯木の姿がそっくりそのまま湖に映りこんでいるけれど、青空ではないのでその風景も今一である。
 今度は別の枯れ木の方へと移動する。こちらは4本の朽ち果てた幹が水面から突き出ていた。水位が下がっている時は、この様な枯木がもっと沢山水中から伸び出ていて朱鞠内湖独特の風景を楽しめるが、今回のように水位が上がっている時は、北欧を思わせるような美しい湖の風景をそのものを楽しめる。
 そのまま近くの島に上陸した。
 その岸辺を少し歩いていみると朽ちた切り株や流木が累々と転がっている。面白い形をしたものが多く、流木マニアにはたまらない場所だろう。
 かみさんが木石(珪化木)を見つけた。いわゆる樹木の化石である。
 かなり以前にも朱鞠内湖でこの木石を拾ったことがあり、その後も朱鞠内湖を訪れるたびに木石を探しているのだけれど、それ以来再び木石に出会うことは無かった。
 それが今回かみさんがたまたま見つけたものだから、私もその気になって探してみると直ぐにまた見つけることができた。
 つい先ほどまでは形の面白い流木探しをしていたのに、今度はそれが木石探しに変わってしまった。木石以外にも変わった石が結構見つかる。
 人造湖の中の島なので、他から流れてきたわけでも無いだろうし、この付近はもしかしたら特徴的な地質なのかもしれない。こんな時に地質学の知識がないのが残念である。
霧が晴れた そんなことをしているうちに、しつこく空を覆っていた霧がいつの間にか消えて無くなり、真っ青な空が広がっていた。
 新緑に色付いた朱鞠内の森の向こうには、まだ雪の残る天塩山地の山並みが見えている。本当にダム湖とは思えないような美しさである。

 サイトへ戻る頃には気温も上がってきて、そろそろブヨも活動を始めていた。このまま湖畔で過ごしてもブヨが五月蠅いので、宇津内湖の方にある釜ヶ淵なるものを見に行くことにする。
 ここは以前に見に行こうとしたことがあったけれど、そこまでの遊歩道が雨降り後でグチョグチョになっていて断念。まだ見ぬB級観光地として、私のこだわりの場所にもなっているところだ。
 そこへ向かう途中、「ウドでも生えていないかな〜」と、キョロキョロ辺りを見回しながら車を走らせていた。
 キャンプの帰りに朱鞠内で雑貨屋をやっているHoshibooさんのところに寄った時、この付近にも札幌ナンバーの車がやってきて周辺の山菜を根こそぎ採っていってしまうのだと、とても怒っていた。畑仕事をやっている時にそんな人間がのこのことやって来たら「よそ者は出てけ〜!」と大声で追い返すそうである。
 釜ヶ淵へ向かう途中、軽自動車とすれ違った。「今の車って、Hoshibooさんの店の前に停まっていたのと同じ車じゃない?」
 後で聞いてみたところ、畑仕事を終えてちょうど昼に家に帰る途中だったのだとか。そして、辺りをキョロキョロ見回しながら走っている札幌ナンバーの赤い車に気が付いて、すれ違う時「出てけ〜!」と怒鳴りつけたそうである。
 その直ぐ先で、釜ヶ淵へ通じる道路は通行止めのゲートで封鎖されていた。またしても釜ヶ淵へはたどり着けずに終わってしまった。
日向森林公園キャンプ場 B級観光地探検を諦めて、和寒町の日向温泉に入りに行く。
 この温泉の道路を挟んだ向かい側に日向森林公園キャンプ場がある。一昨年の秋に、ここに穴場キャンプ場的な臭いを感じて泊まりに来たことがあったが、芝生はジメジメしているし、テントを張れそうな平らな場所が何処にもなくて、そのまま引き返したことがある。
 改めてこのキャンプ場の中を歩いてみたけれど、場内の木立の新緑も美しく、その木立の間からは名寄盆地の田園地帯の風景も見下ろせ、結構快適である。しかし如何せん平らな場所が無く、そもそもここをキャンプ場にするのには無理があるような気がする。
 日向温泉の方は、中に入った途端、強力な塩素臭に思わず後ずさりしてしまった。まあ入浴料が300円で、汗を流すだけと考えれば別に不満も無い。
 後で調べてみたら、源泉温度が11度で湧出量も少なく循環ろ過しているとなっていたが、こちらの方も温泉に指定するのに無理があるような気がする。

 買い物を済ませた後は、キャンプ場でのんびりと寛ぐことにする。
 そもそも今回は連泊キャンプなので、何時ものようにせわしなく動き回らずに、キャンプ場にじっくりと腰を据えたままで過ごそうと考えていたのである。
 しばらくすると突然一人の男性が我が家のサイトまでやって来て、驚いたフウマが激しく吠え立てた。掲示板などを通じて親しくしてもらっている「北海道酔狂キャンパー西東」の直人さんだった。
 直人さんは以前、私がカヌークラブのキャンプでモーラップにいる時にわざわざ訪ねてきてくれたことがあったけれど、この様にお互いにキャンプ目的で遭遇するのは始めてである。
 お互いにいつも似たような場所に出かけているので、これまで遇わなかったことの方が不思議かもしれない。
 夜に一緒に焚き火をすることにして、それまでは時々カヌーに乗ったりしながら気ままな時間を過ごす。寝不足とカヌー疲れで、私にしては珍しくイスの上でうとうとしてしまった。何時ものせっかちキャンプでは、サイトで昼寝するなんてあり得ない話しなのだ。
今夜の焚き火はここで 夕食を済ませた後は焚き火を始める。昨夜は水際ギリギリで焚き火をしたけれど、今夜は直人さん夫婦が一緒なので、上の方のサイトに焚き火台をセットした。
 場所が少し変わるだけで、周りの風景がガラリと違って見える。複雑な地形のおかげで、それぞれのサイトにそれぞれのロケーションの存在するところが朱鞠内湖キャンプ場の奥深さである。
 辺りが暗くなる頃、直人さん夫婦が小川のキャンプチェアを抱えてやってきた。
 最近は、私達がそうなものだから、夫婦キャンパーと一緒になる機会が多い。友人同士のキャンプやファミリーでのキャンプとは一味違う夫婦キャンプ。同じ夫婦キャンプでもそれぞれの個性は全く違う。でも、夫婦ならではのそれぞれの阿吽の呼吸が存在して、本当にリラックスしてキャンプを楽しんでいるのが夫婦キャンプの特徴だろう。
 直人さんのところもそんな夫婦キャンパーである。酒豪の直人さんは1リットルの焼酎の入ったボトルを小脇に抱え、飲むほどに気持ち良さそうになってくる。奥さんは全然アルコールを飲まないようだけれど、それでいて二人とも何とも楽しそうだ。
 それに釣られてこちらもリラックスして、夫婦でちびりちびりとワインを飲む。キャンプの話しなどで盛り上がっているうちにあっと言う間に時間は10時を過ぎていた。
 第3サイトには我が家と直人さん夫婦だけ、第2サイトの方は週末だけあってかなりのテントで賑わっていたけれど、既にその時間にはしんと静まりかえり灯りもほとんど見えない。
 焚き火用の薪はまだ大量に残っていたけれど、そこでお開きにして、今日も我が家としては大いに夜更かしとなる午後10時半に就寝。

カヌーの上で朝のコーヒー さすがに翌朝は午前5時過ぎまで寝てしまった。
 こんな時に限って、素晴らしい青空と鏡のような湖面が広がっているのが皮肉である。
 慌てて顔を洗って、直ぐにカヌーで漕ぎ出した。朝のコーヒーセットも、しっかりと積み込んである。湖の北側の方だけはまだ朝霧にかすんで見えているが、私達の頭上には青空が広がり、既に高度を上げている朝の太陽から強烈な陽射しが頭の上に降ってくる感じだ。
 島陰にカヌーを浮かべて、コーヒーを沸かす。アリーの時もこうやって舟の上でコーヒーを沸かしたことがあるけれど、リジット艇のカナディアンは安定しているし、中で火を使っても全然安心できる。
 舟を乗り換えて、ようやくカナディアンカヌーらしい楽しみ方ができるようになった。かみさんなどは、ガンネルに乗せるテーブルも有った方が良いわよねと言い出す始末だ。
 電動の船外機を付けた釣り人の舟が、鏡の湖面の中を静かに移動していく。今朝カヌーで漕ぎ出す時も、第2サイトや湖畔の駐車場前には釣り人がずらりと並んで竿を振っていた。
 今回我が家がテントを張った第3サイトの湖畔部分は、朝も明けきらぬうちから釣り人の車が侵入してきて、砂利をタイヤで引掻く音が直ぐ枕元で聞こえるものだから、とても寝ていられないと言う欠点がある。
 ところが昨日も今朝も、そんな騒音で目が覚めることも無かった。
 釣り人のマナーが良くなってきたのか、第2サイトと第3サイトで釣り人と一般キャンパーの棲み分けができてきたのか、いずれにせよ嬉しいことである。
 船上のコーヒータイムを楽しんだ後は、昨日の二股の枯木のところまで行ってみる。やっぱり曇り空と青空ではその印象が全然違う。おまけに今朝は鏡の湖面が湖全体に広がっているのだ。
 突然、その枯木の先端に一羽の鳥が止まった。ちょうど枯木から離れていたので鳥の種類までは分からないが、結構大きめの鳥で、その枯木に止まった様子が素晴らしく絵になっている。
 そーっとカヌーを近づけながら、背景との構図がピタリと納まる位置まで移動し、良しここだ!と思った瞬間、パドルを置いた音に驚いてその鳥は飛び立ってしまった。
 「この様子を写真に写せたら、今年の幌加内フォトコンテストの最優秀賞はいただき!」と思っていただけに、鳥と一緒に賞も逃げて行ったような気分だった。
 素晴らしい朱鞠内湖の風景を満喫してサイトまで戻る。

最高に美しい朱鞠内湖   二叉の枯木に鳥が

 のんびりキャンプなので、今日は昼頃までゆっくりしようと考えていたけれど、次第に気温が上がってきてブヨも飛び回り始めた。
 シュラフも完全に乾いてしまったし、こうなるとこれ以上キャンプ場に滞在する意味が無いような気がしてくる。
 結局何時もと同じく早々と撤収を始めることになってしまった。
 最初の日よりもブヨが少ないなと思っていたが、撤収を始めると同時に待ってましたとばかりに一斉に襲い掛かってくる。まるで頭の周りに蚊柱じゃなくて蚋柱が立っているような感じだ。
 暑さで汗も流れてきて、そうなると余計にブヨが集まってくるような気がする
 そして両手が離せないような時に限って体に止まってくるのである。そんな時は頭だけを必死になって振り回すしかなく、はたから見ていたら半狂乱になっているおじさんと思われそうだ。
新緑の山並み 直人さん夫婦と「また何処かで一緒に焚き火しましょう」と約束して、キャンプ場を後にした。
 Hoshibooさんの店にも顔を出し、後は一気に札幌を目指して車を飛ばすところだけれど、周りの新緑の風景がやたら名残惜しく感じて、それを眺めながらノロノロと車を走らせた。
 GWの道南キャンプから楽しんできて新緑の風景も今年はこれで見納めだろう。そして季節は既に初夏へと移り変わっている。
 我が家の春のキャンプももうこれで終わりかなと言う気持ちに囚われて、一抹の寂しさを感じてしまう札幌への帰り道であった。

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