今年のキャンプ始めは久しぶりにオホーツクの流氷キャンプへ行ってみようと、去年の暮れ頃から考えていた。
そのために、2月に入ってからは流氷の接岸状況と休みの予定と天気予報の三つを毎日のように見比べながら、流氷キャンプ決行日を何時にするか考え続けていたのに、肝心の流氷が全然接岸してくれない。
2月の始め頃に一旦接岸したものの、その後はずっと陸から離れたままだ。強い北風が一度でも吹けば直ぐに接岸するはずと思っていたけれど、いつの間にかオホーツク海自体から流氷が殆ど消えてしまっていた。
こうなると何時までも流氷キャンプに拘り続ける訳にもいかないので、次の候補地として考えたのが去年も初キャンプで泊まっている旭岳である。
その話をかみさんに提案したところ、もともと流氷キャンプに乗り気でなかったものだから「私も同じこと考えていたの!」と直ぐに話はまとまってしまった。
そうして仕事を休んだ金曜日の朝、曇り空の札幌を出発。天気予報は曇りのち晴れになっているので、そんな暗い空も気にならないくらい、今年の初キャンプに心は弾んでいた。
高速道路で一気に北上するうちに天気予報どおりに青空が広がってきた。ETCの通勤割引が適用されるギリギリの距離になる深川インターで高速を降り、その後は一般道で東川町へ。
ここで昼食の予定だったけれど、まだ11時前で早すぎるので道の駅に入ってみる。東川町の道の駅は本物の地場産品が沢山売られているので、見ているだけでも楽しいし、購買意欲もそそられる。お土産用にうどんや蜂蜜、キャンプで食べるために寄せ豆腐まで買ってしまった。
道の駅を出る頃には11時を過ぎていたので、駐車場に車を停めたまま近くの蝦夷と言うラーメン屋に入った。
ネットで調べると評判が良かったので目星を付けていたのだけれど、味噌もしょう油もかなりしょっぱめで、かみさんの評価は芳しくなかった。私としてはまずまずの味だと思う。
その後は、大雪旭岳源水でペットボトルに水を汲み、一路旭岳温泉を目指す。
今時期ならば、この付近まで来ると道路沿いのトドマツなどがその枝葉にたっぷりと雪を積もらせて、如何にも冬山らしい風景が広がっているはずなのに、数日前の気温が高くなった時に雨でも降ったのか、白い衣を脱がされた丸裸の木々が寒々と立っているだけである。
昨日まで冬型の気圧配置になっていたので旭岳にもたっぷりと雪が積もっているはず、との私の予想は完全に外れてしまったみたいだ。
おまけに山に近づくに従ってどんよりとした雲が広がり始め、旭岳の姿もその雲の中に隠れてしまっている。
それでもロープウェイ駅の駐車場まで来ると10cm以上のフワフワのパウダースノーが積もっていて、周りの木々もそれなりに白く雪化粧していた。
ロープウェイ事務所に一晩駐車場に車を停める断りを入れて、いよいよソリに荷物を積み込み旭岳山麓の森の中へ出発である。
スキーコースの中をソリを引いて歩いていると、上から滑り降りてきたスキーヤーに「キャンプするんですか?」と声をかけられた。
北海道では除雪用に使われるジャンボソリに荷物を積んでスキーコースを歩いている犬連れの夫婦を見れば、普通の人からは「こんなところで一体何をしているんだ?」と思われるはずのところを、すんなりと【キャンプ】と言われたのが嬉しくて「はい!キャンプするんです!」とにこやかに答えた。
すると次の一言が「ホームページ見てますよ〜」だった。
「あ・・・、やっぱり」と言った感じである。
でも、その後にすれ違ったボーダーやスキーヤーも皆、笑顔で「こんにちは」と挨拶してくれる。旭岳まで遊びに来るような人は、私達夫婦のこんな馬鹿みたいな遊びを何の違和感も無く受け入れてくれる、広い心を持った人達ばかりなのかもしれない。
最初の急な坂にさしかかる。今回はソリが良く滑るように底にワックスを塗ってきたのだけれど、この作戦は失敗だったようである。平らなところを引っ張る分には良いのだが、坂道を引っ張り上げる時にはソリが滑り落ちないように余計に力を入れなければならない。
それも半端な力ではなく、夫婦二人がかりで全身の力をこめなければソリが上ってこないのだ。
二人で必死に引っ張りながら「こんなことしている私達って馬鹿みたいよね!」と、周りの人間よりも自分達のほうが自分達の行動に呆れているような有様である。
その坂を上り終えたところで一休み。呼吸を整えて再び登り始める。
去年テントを張った付近までやってきたけれど、今年はもう少し上まで登って第一天女が原と呼ばれる場所まで行くつもりだった。
そこを通り過ぎて更に登り続ける。すると目の前に、殆ど絶望的に思われるような急斜面が現れた。さすがにそこをソリを引いて登るのは不可能と思われたので、スキーコースにソリを残して森の中へ入ってみた。
テントを張るのに良さそうな場所は有ったけれど、文句なしに決められるようなところでも無く、それにそこから見上げる斜面の上がどうしても気になってしまう。
スキーコースに戻って、無理と思われるその斜面にチャレンジしてみることにした。すると案の定、斜面の途中でどうしてもそれ以上ソリを引き上げられなくなってしまった。
そこで、山スキーで急斜面を登る時のように斜面に対してジグザグにソリを引っ張ることにする。
そうしてやっとの思いで坂を登りきると、そこには平らな雪野原が広がっていた。どうやら第一天女が原へ到着したようである。駐車場を出てから、かれこれ1km程の道のりだった。
そこから、誰の足跡もない森の中へと分け入る。新雪が20cm以上は積っているようだ。スノーシューでその中を歩くと、積った雪がそのまま全て舞い上がりそうなフワフワのパウダースノーである。
これまでパウダースノーと言う言葉をしょっちゅう使ってきたけれど、この様な雪こそ本当にパウダースノーと言えるものなのだろう。
アカエゾマツに囲まれた狭い場所を通り抜けると、そこにはちょうど良いスペースがあって、しかもその先が下り坂になっているので眺めも良い。直ぐにそこを今日のテント設営場所に決めて、スキーコースに残してきた荷物を取りに戻った。
まずは設営場所を踏み固める作業にとりかかる。気温が低いので簡単には雪が固まらず、体重がかかるようにスノーシューで飛び跳ねながら何度も歩き回って、ようやく整地完了。
家の庭木を剪定した時に出た枝を1m程の長さに切りそろえて持ってきたので、それをペグ代わりに使ってテントを設営。
今回はかみさん用のテントも別に設営することにして、それを張り終えると、フウマが待ってましたとばかりにその中に入ってしまった。
昔は立派なアウトドア犬だったのに、歳をとるに従ってすっかり軟弱犬になってしまって、テントの中で寝ている様子はまるで「もうこんなことには付き合ってられないわ!」と言った風情である。
そうして今夜の寝場所が出来上がった。
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