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2006年最後は流星キャンプ

厚真町大沼野営場(12月14日〜15日)

 11月はじめの道南キャンプで我が家の無積雪期アウトドア活動は終わりを告げ、後は雪が積もるまでしばらく家の中で大人しく過ごすつもりでいた。
 ところが、12月の双子座流星群が再び我が家をアウトドアへ引きずり出してくれたのである。
 今年の双子座流星群は月明かりもなくて観測に適しているのは知っていたけれど、12月の中頃になると雪も積もって、札幌近郊では適当な観測場所が無くなってしまう。
 流れ星を見る程度のことなら郊外の車を停められる場所なら何処でも良さそうな気もするけれど、我が家の場合どうしてもその場所がキャンプ場でなければ納得できないと言うのが困ったものである。
 ところが今年は例年より雪が積もるのが遅れていて、我が家の流れ星観測の定番キャンプ場である厚真町大沼キャンプ場ならば、まだ車で中へ入れそうだ。5年前のしし座流星群はここで見たし、8年前にも双子座流星群を見に来ている。
 仕事を終えて大急ぎで家に戻り、夕食を食べてからキャンプ場へと向かった。
 ラジオでは双子座流星群を見るのに恰好の天気だとアナウンサーがしゃべっているけれど、出発前に確認したひまわりの衛星画像が気になっていた。本州方面から北上してきた雲の塊が道南方面にかかりはじめていたのである。
 高速道路を走りながら空を見上げても、何処にも星の輝きが見あたらない。8年前のときは、車で走っている最中から流れ星が見えて興奮したものである。それでも日高自動車道に入ると、少しは星の姿も見えてきたようだ。
 自動車道を降りて上厚真の市街地に入る。札幌を出る時は真っ白な雪国だったのに、ここまで来ると道路沿いの雪も見当たらなくなっていた。大沼野営場まではかなり分かりづらい道になっているが、交差点ごとに看板があるので、それを辿って行けばキャンプ場まで行きつくことができる。
 5年ぶりの訪問でも、道順はほぼ頭の中に残っていたので、地図も見ないでそのまま車を走らせる。「そろそろ看板があるはず」と思いながら真っ暗な夜道を走り続けるが、何処まで走ってもその看板が見つからない。全く記憶に無いような直角の曲がり角にさしかかって、ようやく道を間違えているらしいことに気が付いた。
 そこで同じ道を引き返せば良いものを、道路が何本もあるのでそのうちに何とかなるだろうと先に進み続けたのが悪かった。真っ暗闇なので周りの様子も見えないし、仕舞いには自分が何処にいるのかも分からなくなってきた。
 所々にある道路標識も聞いた事の無いような地名が書かれているので、その度に車を停めて地図で確認する。
 遠くに明るい光が見えてきた。そこが何処なのかは、とりあえずはどうでも良い。灯りに群がる蛾になった気分で、明るい場所に向かって車を走らせた。
 その途中でついに厚真大沼野営場と書かれた矢印看板を発見。これでやっと迷路から抜けられると、ホッとしながらその矢印の方向に曲がった。
 もっとも、その先もまだ迷路は続いているようなもので、交差点ごとに立てられている矢印に従って何も考えずにハンドルを切るだけ。どちらに曲がったか覚えておかないと、帰りにまた道に迷ってしまいそうだ。
 真っ暗闇の中に突然、派手な電飾が現れて驚かされた。「な、なんだ?これは?」
 やぐらを組んで、そこにイルミネーションを取り付け「2007」とか「WELLCOME」等の文字も描かれている。農家のおじさんが趣味で飾り付けているのだろうけれど、酔っ払って歩いているうちに畑の中にポツンと建てられた安キャバレーにやって来たような、おとぎの国で道に迷っているうちに光のお城にやって来たような、何とも不思議な感覚に心が包まれた。

 そんな楽しい行程を経て、何とか8時前には大沼野営場の入り口まで辿り着くことができた。
 林の間を抜ける坂道を降りていくと、車のヘッドライトが照らし出す先に大沼の湖面が白く浮かび上がった。雪は積もっていないので、その白さは湖面が凍っているせいなのだろう。
 大沼の北側が我が家が流れ星を見るときの定位置となっているので、そのまま車を走らせる。
 ラジオでも双子座流星群の話をしていたし、もしかしたら先客がいるかもしれないと思っていたが、やっぱりソロ用テントが一つだけ張られていた。車やバイクが見当たらないので、何処かに出かけている最中か、徒歩の旅行者なのかもしれない。
 我が家がテントを張るつもりでいた場所はそのテントからは離れているものの、先客が既に寝ていたりしたら悪いので、直ぐに車のエンジンを止めたりとか、余計な気を使わなければならないのが面倒だ。
 車から降りて空を見上げると、オリオン座の姿がくっきりと見えていた。全体に薄い雲がかかっているものの、天頂から東にかけての3分の1ほどは美しい星空が広がり、これならば何とか流れ星も見られそうである。
 地面はバリバリに凍っている。
 何時ものキャンプならばまず最初にテントの設営をするところだけれど、今日はその前に焚き火の準備をする。あたりは真っ暗で、しかもこれだけ冷え込んでいたら、とてもではないが焚き火無しではやってられない。
 その焚き火の炎が安定してきたところで、今夜の寝場所の設営に取り掛かる。そんな作業中も空の様子が気になってしょうがないが、流星群のピークは午後9時から10時頃となっているので、そんなに焦る必要も無い。
 そうしてテントの設営が完了した。かみさんは今回は車の中で寝てみると言って、そのスペースを作り始める。私は一足先に、焚き火の横に用意した椅子にどっかりと座り、流れ星見物の体勢に入った。
 早速、目の錯覚かと勘違いするようなかすかな光跡の流れ星が空を横切った。その次に流れたのはもう少し明るい流れ星。そうして三つ目の流れ星は東の空低くに現れた。
 それは流れるのではなく、殆ど場所を変えないまま光の強さを増して、最後にはフッと掻き消えてしまった。
 流れる度に私が「おぉ〜っ!」っと喚声を上げるものだから、寝床の準備をしているかみさんがむくれている。何時もはこの逆のパターンが多いものだから、たまにはこんな事があっても良いだろう。
流れ星見物中 ようやくかみさんも準備が終わって、流れ星見物の体勢に入った。
 その後も退屈しない程度に流れてくれる。目を放している隙に大きいのが流れると悔しいので、なかなか他の事に手を付けられない。
 燃え尽きた薪が焚き火台の上から落ちそうになっていたのを素早く元に戻して、再び空を見上げた瞬間、そこで目に入ってきた光景に呆気にとられてしまった。
 「なんだこりゃ・・・」
 火の玉のような物体が彗星のような長い尾を引きながらゆっくりと夜空を流れて、そして消えた。
 それが巨大な流れ星だったと認識するまでにしばらく間が開いてしまった。
 時間は午後8時35分頃、いわゆる火球に分類される流れ星である。しし座流星群のときは流星痕を残すもの、音が聞こえるもの、地上を明るく照らすものなど、もっと凄いものもあったが、尾の大きさなどは今まで見た流れ星中では最高のものだったと思う。
 次第に雲が広がってきて観測条件も悪くなってきたが、先ほどの火球を見られただけでも満足である。家から持ってきた薪だけでは足りないので、周りを歩いて枯れ枝を拾い集める。
 先客のテントは相変わらず暗いままだ。流星観測のキャンパーかと思ったけれど、この時間で寝ているのなら目的は違うみたいだ。
 気温はマイナス5℃くらいだろうか。風も無く、完全装備で身をくるんでいるので、寒さは殆ど感じない。
 突然、湖の方から大きな音が聞こえてきた。
 かみさんと顔を見合わせる。
 「何の音だろう?」
 何かが唸るような、これまでに聞いたことが無いような種類の音だった。
 「鳥かしら?」、「遠くの工場の音かも」
 何気ない表情でかみさんと話をしながらも、内心はかなり怯えていて、無理に何かの音に結び付けて自分を納得させようとしてた。正体不明のソロテントと言い、何となく不気味な雰囲気を感じてしまう。
 かみさんはその時、数年前にこのキャンプ場で車の中から自殺者が見つかったというニュースを思い出していたとのことである。私はその出来事をすっかり忘れていたので、その話を聞かされていたらもっとビビッていたかもしれない。

 星空が見られるのは全天の5分の1ほどの面積まで狭まってきてしまった。
 時々、その周囲のうす雲を通して明るい光が走るのも確認できて、晴れていたらもっと沢山の流れ星が見られたかもしれないと悔しく思えてしまう。
 11時を回り、それ以上晴れてくる気配も無さそうなので、それぞれの寝床に分かれて眠ることにする。
 夜中に寒さで目が覚めた。テントの中の温度はマイナス5℃である。これでは真冬のキャンプと大差ない。
 凍った地面の上は雪の上より冷たいのかもしれないし、今回はテントの中で一人なので、中の空気も温まらないのだろう。
 シュラフの中に頭まで潜り込んでもう一度眠りについた。

日の出前の朝 6時を回ってテントの中も幾分明るくなってきたので起き出すことにする。
 昨夜の雲も何処かへ消え去り、群青色の空が広がっていた。
 大沼の湖面は完全に凍り付き、あたりにはキーンと冷えた空気が立ち込めている。真っ白な息を吐きながら、焚き火台に薪を乗せて火をつける。
 思い切り冷え込んだキャンプの朝のとても楽しい儀式である。
 コーヒーを煎れる用意をしていると、テーブルの上に出したものが見る見るうちに霜に覆われてしまった。
 その朝の気温はマイナス8℃程度で、それほど冷え込んではいなかったものの、雪が積もってなくてその気温だと、気分的にはかなり寒く感じる。
 恐る恐る凍った湖面に乗ってみたけれど、結構厚く凍っているみたいで、これならば湖の真ん中まで歩いて行けそうだ。
 かみさんは絶対に氷の上に乗ろうとしない。フウマも最初は氷の上に乗るのに抵抗していたけれど、無理やり引きずり出したところ、やっとその上を歩けることに気が付いた様である。
氷の湖 そこでリードを外してやった。
 何時もならばこんな誰もいないようなキャンプ場ではリードも付けずに、好きなようにさせてやっているのだけれど、先月の美笛雪中ピクニックで大変なことをやらかしたものだから、すっかり信用を無くしているのだ。
 ここのキャンプ場も殆ど管理されていないようなところなので、何が落ちているか分かったものではない。さすがに凍った湖の上なら何も無いだろうと、ようやく放してもらえることになったのである。
 ようやく自由になって走り出そうとするフウマに、「待て!」とブレーキをかけなければならない。
 実は1週間前、雪の中を走っている最中に左前足を痛めてしまっていたのだ。半日ほどは足を下に付くこともできなかったので、完全に脱臼したのだと思ったけれど、その後次第に回復してきたようなので病院へも行かずに済ませていた。
 完全に直ったかなと思っても、散歩の途中に氷の上で滑ったり、車から飛び降りた瞬間などに、再び悪くなってしまう。
 そんな状態なのに、この氷の上で全速力で走ったりしたらどんなことになるのか。
 本人はまだまだ元気なつもりでいるみたいだけれど、確実に老犬の域に入ってきているのである。
 湖の中央まで氷の割れ目の跡が走っているところがあった。その上を歩こうとするとミシッと音がしたので慌てて引き返した。
 焚き火用のまきを集めていると、タヌキの死骸が転がっているのを見つけた。生きているのも含めて、直接タヌキの姿を目にするのはこれが初めてである。
 フウマを放したままにしていたら、このタヌキでまた一騒動起こしていたかもしれない。

朝の風景   日の出の風景

 湖の対岸の木陰から、凍った湖面に光の縞模様を描きながらようやく太陽が昇ってきた。
 霜に覆われた湖岸の枯れ草が、朝の光に照らされて宝石を散りばめた様にキラキラと輝いてとても美しい。
 12月の今頃でこんなに快適なキャンプを楽しめるとは思ってもみなかった。
快適なキャンプ 何時も10月末になるとそろそろキャンプ納めの時期だなどと考え始めるけれど、条件さえ整えば何時でもこんなキャンプができるのだから、別に無理して納める必要も無いのだろう。
 などと考えながらも、これが今年のキャンプ納めになりそうだ。
 真っ白に凍りついたテントを撤収して車に詰め込む。
 例のソロテントは朝になっても人影の無いままで、多分留守なのだろう。それでももしもの事態も考えられるので、帰り際に中を確認してみる。
 裏に廻ると入り口のファスナーが開いたままになっていたのでホッとした。もしもそれが閉じていたら、開いて中を確認するのにはかなりの勇気を必要としたはずだ。
 恐る恐る中を覗いてみると、小さな折りたたみ椅子とか雑誌類があるだけで、しばらくの間この状態のまま放置されている様子だった。
 シュラフや他のキャンプ道具こそ無いものの、どうしてテントを放置することになったのか、その理由を色々と想像してしまう。
 このまま放置して雪の中で潰れさせてしまうのも勿体ないので、「もって帰るか?」とかみさんに聞いたら「止めなさい!」と一喝されてしまった。
 テントの近くに結構高そうなペグハンマーが落ちているのを見つけた。こんなハンマーを使っているのなら、きっとベテランのキャンパーなのだろう。それが何故?とますます謎が深まる気がした。
 「このハンマーなら持って帰って良いかな?」
 「だから止めなさいって!」
 再び一喝されてしまい、諦めてそのまま置き去ることにした。

素晴らしいテントサイト  我が家がテントを張った近くには簡易トイレが置かれていて、今回はそれを利用することができて助かった。
 ところが、謎のソロテントの近くにあるトイレや、昔の管理棟に併設されているトイレも、シャッターも下ろされずにそのまま使えるようになっていたのには驚いてしまった。
 まるで、冬季閉鎖のための管理もされずに、謎のテントと同じく放置されている状態と言っても良いだろう。
このまま来年になっても閉鎖されたままになってしまうのではと心配になってしまうような状態である。
 初めてここを利用した時にテントを張った林間の様子を見てみたが、そこは他のキャンプ場でも滅多に無いような極上のテントサイトであった。
 かみさんなどは、ここでもう1泊していきたいとまで言い出す始末である。
 来年の再訪を決めてキャンプ場を後にした。
 帰り道、最初の大沼野営場の矢印看板を来た時とは反対方向に曲がったために再び道に迷ってしまい、今度は同じ道を最初の場所まで引き返して、何とか無事に厚真の迷路を脱出することができた。

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